会場からの質問豊島日本の原発立地は過密制御棒の利きに差はない工藤木元 きょうはいろいろな考えが出された。坂本さんからは専門家同士の論議を聞く場を設けてほしい—という提案があった。坂本 分かりやすい言葉でぜひやってほしい。木元 ここで会場の方から質問を受けたいと思う。会場参加者 人間は神ではない。必ず間違いを犯す。使用済MOX燃料はウラン燃料の十五万倍の放射能を持ち、制御棒の効きが悪くなり、事故が起こりやすい。フランスの再処理工場周辺では白血病が増えていると聞く。また、この危険な使用済MOX燃料の後処理の方法が考えられていない。そのまま玄海町に蓄積され、事故やがんが増えるのではないのか。チェルノブイリ原発事故では八百圏内に放射能がばらまかれた。プルサーマル事故はその何倍もの規模になるのではないのか。玄海町や佐賀県だけの問題でなくなる。やめてほしい。プルサーマルの後処理費用が十九兆円かかるというが、それではすまないと思う。木元 これまでの議論の中で答えられた部分もかなりあったが、いまのご意見に答えていきたい。工藤 制御棒の効きが悪くなると心配されていることについて、専門家として答えたい。MOX燃料を使った場合とウラン燃料を使った場合で、原子炉の特性にはほとんど差がない。制御棒の効きに差はないと言い切ってもいい。 原子炉を緊急停止する時は二—三秒で制御棒が入り、百万の出力が約二十秒間で五千まで急速に下がる。その下がり方はMOX燃料もウラン燃料もほぼ同じで、それ以後も両者に差はなく、制御棒の効きにほとんど差がないことを知ってほしい。野口 英国、フランスの調査によると、再処理工場周辺では白血病の増加はあっても因果関係は認められない—という結果が出ている。松下 チェルノブイリの事故はルールを犯した運転や貧弱な設計が原因。あの発電所には格納容器がついていない。私はチェルノブイリと同じような事故が、ほかの発電所では起こり得ないと思う。人間は確かに間違いを起こす。そのため対策を考え、発電所員は日夜訓練している。プルサーマルをやるからチェルノブイリと同じことが起こるというのは発想のジャンプが大きいと思う。豊島 スリーマイル島事故のように、発端は単純でもカオスに陥ると怖い。原発の数と人口密度で危険度を評価すると、日本の原発は過密で、外国に比べ異常に大きなリスクを抱えている。木元 正直に言うが、私の息子は原子力発電所で働いている。自分の信念で入った。そんなことがあったら息子は死んでしまうし、私は許さないという覚悟でいる。私は息子が一生懸命働いていることを知っているし、真剣に話し合ってもいる。そういう立場でも今日は参加している。吉岡 いま国会で再処理コストの引当金が論議されている。この法案は四十年間で十九兆円の処理費用ということで計算されているが、それで済むとは思えない。野口 六ケ所で再処理する分に対応した金額を積み立てていくことになる。会場参加者 私は隣町の鎮西町出身だが、原子力はなくてはならない大切なエネルギーだと思っている。町のみんなも一定の理解をしている。それはこの三十年間、ずっと発電所を見てきたことで、そういう気持ちになったのだと思う。ただ、MOX燃料を使うことで、事故が拡大しないかと心配している。松下 いまの炉心にMOX燃料を入れたら危険なのかという質問だと思うが、原発事故の訓練は五重の壁がすべて破れたと仮定して行っている。その通りのことが起こると、放射能が漏れてしまうわけだが、そのような場合を仮定しても国の指針の目安であるKmでの影響は今の炉とMOXの炉で差はない。今の原子炉にMOX燃料をいれても状況は変わらない。どうして変わらないかというと、ウランとプルトニウムで核分裂の際に出てくる放射性物質に大きな差がないからだ。木元 いまのは万が一の話。これまでMOX燃料を装荷したことで起きた重大事故はない。 以前、フランスの人が来たとき、どうしてフランス、ドイツで問題は起こらないのかと尋ねたことがある。両国は三十年前、計画を立てた時に将来、MOX燃料を装荷すると言っていたそうだ。日本とは随分やり方が違う。

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