玄海原子力発電所4号機の安全性に関する総合評価(ストレステスト)の一次評価結果について

当社は、原子力安全・保安院の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施について(指示)
」に基づき、
玄海原子力発電所4号機において、総合評価を行ってまいりました。このたび、当該プラントの一次評価結果について取りまとめました。
◇ 政府が、統一見解を公表(平成23年7月11日)
・ 現在の原子力発電所については、現行法令による安全性の確認に加え、緊急安全対策等が
実施されており、従来以上に慎重に安全性の確認が行われている。
・ 原子力発電所の更なる安全性の向上と国民・住民の方々の安心・信頼確保のため、欧州諸国で
導入されたストレステストを参考に、安全評価を実施する。
・ この安全評価は、定期検査中で起動準備の整った発電所の再稼動の可否を判断する一次評価と、
全ての発電所の運転継続の判断を行う二次評価により行う。
◇ 原子力安全・保安院が総合評価(ストレステスト)の実施を事業者に指示(同年7月22日)
設計の想定を超える地震や津波に対し、原子力発電所がどこまで耐えられるかについて評価。
・ 想定した地震や津波を徐々に大きくしていったときに、安全上重要な施設や機器等が
どの程度まで安全性を確保できるか(どの程度まで燃料が損傷せずに耐えられるか)
の定量的な安全裕度を評価
・ 緊急安全対策を含む燃料の重大な損傷を防止するための対策の有効性を評価
地震や津波の度合いを大きくしていった時、ある大きさを境に事象の進展が
大きく変わる時点(クリフエッジ)を特定
原子力安全・保安院の指示に基づき、以下の項目について、評価を実施。
評価項目 評 価 内 容
地震、津波 想定を超える地震、津波に対して、燃料が損傷せずにどの程度耐えられるか評価
地震と津波の重畳 想定を超える地震と津波の同時発生に対して、燃料が損傷せずにどの程度耐えられるか評価
全交流電源喪失(注記)1 全交流電源喪失時に、外部からの支援がない条件で、燃料が損傷せずにどの程度
耐えられるか評価
最終ヒートシンク喪失(注記)2 最終ヒートシンク喪失時に、外部からの支援がない条件で、燃料が損傷せずにどの程度
耐えられるか評価
その他のシビアアクシデント・
マネジメント
これまで、当社が整備してきたシビアアクシデント対策について、多重防護の観点から
その効果を評価
しろまる一次評価結果概要
クリフエッジ(下段:対象となる設備)
評価項目
クリフエッジ
評価の指標
燃 料
緊急安全対策後 緊急安全対策前
原子炉
約 1.83 倍(約 988gal)(注記)4
低圧・高圧しゃ断器
約 1.83 倍 (約 988gal)
低圧・高圧しゃ断器
地 震
津波との
重畳も同じ
地震による機器の損傷に
より、
燃料の冷却手段が確
保できなくなる地震動と
基準地震動(注記)3
(540gal)との比較
使用済
燃料ピット
約 2.00 倍 (1080gal)
使用済燃料ピット
約 1.83 倍(約 988gal)
低圧・高圧しゃ断器
原子炉
13.0 m
タービン動補助給水ポンプ
7.70 m
海水ポンプ
津 波
地震との
重畳も同じ
燃料の冷却手段が確保で
きなくなる津波高さ
(想定津波高さ:2.1m) 使用済
燃料ピット
24.6 m
仮設ポンプ等の資機材保管高さ
11.3 m
燃料取替用水ポンプ
原子炉
約 65 日後
高圧発電機車等の燃料
約 5 時間後
蓄電池
全 交 流
電源喪失 使用済
燃料ピット
約 65 日後
仮設ポンプ用発電機の燃料
約 2.3 日後
2次系純水タンク
原子炉
最終ヒート
シンク喪失
外部からの支援がない
条件で燃料の冷却手段
が確保できなくなるま
での時間
使用済
燃料ピット
約 378 日後
仮設ポンプ用発電機の燃料
約 2.3 日後
2次系純水タンク
その他のシビア
アクシデント・
マネジメント
・これまでに整備した防護措置が、燃料の重大な損傷及び放射性物質の大規模な放出を防
止する措置として多重防護の観点から有効に整備されていることなどを確認。
しろまる評価結果のまとめ
(注記)1 全交流電源喪失:外部電源、非常用ディーゼル発電機の機能が喪失し、発電所が完全に停電すること
(注記)2 最終ヒートシンク喪失:燃料の冷却に必要な海水を取水できなくなること
(注記)3 基準地震動:原子力発電所周辺で起こると想定される最も大きな地震による揺れの大きさ。なお、gal(ガル)とは、地震
による地盤や建物等の揺れの強さを表す加速度の単位
(注記)4 緊急安全対策前後で安全裕度(クリフエッジ)は同じであるが、緊急安全対策により、燃料冷却手段の更なる多重性を確保
1.経 緯
2.ストレステスト(一次評価)の概要
3.一次評価項目
4.一次評価結果
福島第一原子力発電所での事故概要
・地震発生に伴い原子炉自動停止
・鉄塔倒壊などにより外部電源が喪失し
たものの、
非常用ディーゼル発電機が
正常に機能し原子炉を冷却
・想定を超える津波により非常用発電機
などが被水
・全交流電源喪失、最終ヒートシンク喪
失が発生
・その備えが不十分であったことから事
故が進展・拡大し燃料損傷に至った
玄海4号機における安全性の確認・評価結果
・緊急安全対策を講じる以前においても、ある程度想定を超える地
震に対して従来の冷却設備により、燃料を冷却することが可能
・仮設ポンプ・高圧発電機車を配備した緊急安全対策により、
燃料冷却手段の更なる多重性の確保・地震に対する安全裕
度(クリフエッジ)の向上を確認
・想定を超える津波高さにおいても、仮設ポンプ・高圧発電機車
の配備、扉の水密性向上などの緊急安全対策により、確実に燃
料を冷却することが可能
・全交流電源喪失、最終ヒートシンク喪失に対しても、緊急安全
対策による電源確保および水源確保により、
外部からの支援を
期待するのに十分な時間が確保でき、
クリフエッジを回避する
ことが可能
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