玄海原子力発電所 1 号機原子炉容器の照射脆化に対する健全性について
1.概 要
しろまる 原子炉容器は、炉心から中性子を受けることにより照射脆化(注記)
が進むことが知
られています。
しろまる このため、原子炉容器と同じ材料でできた監視試験片を、あらかじめ原子炉容
器内に装着しておき、この試験片を計画的に取出し機械試験等を行うことによ
って、関連温度(脆性遷移温度)の上昇量等を確認しています。
しろまる 原子力発電所の運転に当たっては、原子炉容器が脆性破壊を生じないよう、
関連温度等に基づき、1次冷却材の温度と圧力を管理しています。
しろまる 原子炉容器の健全性は、将来にわたって、万一の事故において冷却水が注入
され原子炉容器表面が急冷されても、問題ないことを確認しています。
しろまる なお、関連温度は脆化の傾向を示すものであり、原子炉容器が割れる温度では
ありません。
(注記) 照射脆化:中性子は高いエネルギーを持っているため、原子炉容器を構成する鋼材に中
性子が衝突すると、原子の配列に乱れが生じ、この結果、鋼材の破壊に対す
る粘り強さ(破壊靱性)が低下するなど特性が変わる現象をいう。 しろまる 監視試験片は、原子炉容器より炉心に
近い位置にあり、中性子を多く受けて
いるため、将来の影響を先行して確認
できます。
しろまる 取出した監視試験片は、
専門の調査機関
で約1年かけて機械試験等を実施し、
健全性の評価を実施します。
しろまる 監視試験片の設置数は、
法令等の要求
より余裕を持って装着しています。 【玄海1号機の監視試験片数】
法令要求数 4個
初期装着数 6個
2.監視試験片
炉心
監視試験片
原子炉容器
中性子
(水により減速) 水 【中性子照射に伴う脆化】
平成23年6月8日 (1)玄海1号機の関連温度 取出時期
監視試験片の中性子照射量
から換算した原子炉容器の
相当運転年数(注記)1 監視試験片(母材)
の関連温度(注記)2
(°C)
[実測]
第1回取出
第1回定検
(昭和 51 年 11 月)
約5EFPY(昭和 57 年頃) 35
第2回取出
第4回定検
(昭和 55 年4月)
約 20EFPY(平成 15 年頃) 37
第3回取出
第 14 回定検
(平成5年2月)
約 33EFPY(平成 31 年頃) (注記)356 第4回取出
第 26 回定検
(平成 21 年4月)
約 66EFPY(平成 72 年頃) (注記)398 (注記)1 定格負荷相当年数(EFPY)であり、定格出力で連続運転したと仮定して計算した
年数。なお、定格負荷相当年数は容器内面から板厚 1/4 の位置において算出。
(注記)2 関連温度は脆化の傾向を示すもので、原子炉容器が割れる温度ではなく、この値自体が
判定の対象となるものではない。
(但し、新設炉に対しては、運転期間末期の予測値
が93°C未満と規定している。) (注記)3 平成 23 年度から稼働率 0.8 として算出(0.8EFPY=1 年) 【玄海1号機 関連温度の予測カーブ】 (2)
玄海1号機の原子炉容器の健全性
1 加圧熱衝撃事象に対する原子炉容器の健全性
万一の事故において冷却水が注入され、原子炉容器が急冷される事象に対する
健全性を関連温度等に基づき評価した結果、基準値(注記)4
を上回っており、60年
運転を想定しても原子炉容器の健全性に問題はないことを確認しています。
2 上部棚吸収エネルギー
上部棚吸収エネルギー(材料の粘り強さ)の測定結果は、基準値(注記)4
を満足して
いることから、60年運転を想定しても問題ないことを確認しています。 (注記)4 電気技術規程 JEAC4206(
「原子力発電所用機器に対する破壊靱性の確認試験方法」
(社)日本電気協会)に記載。
3.監視試験片による健全性確認結果
電気技術規程 JEAC4201‐
2004(「原子炉構造材の監視
試験方法」
(社)日本電気協
会)に基づく予測カーブ
(照射に伴い温度が上昇) -100-50050100150
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0
中性子照射量 (×ばつ1019
n/cm2
,E>1MeV)
温度
(°C)
第1回 第2回 第4回
第3回
予測
運転開始後60年
約91°C
運転開始後85年
98°C(実測)
平成23年5月
約80°C

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