2.10 九州電力 アニュアルレポート 2012
2. 安定供給の確保
原子力発電所の安全確保の基本は、
原子炉を安全に
「止める」、燃料を水で
「冷やす」、放射性物質を
「閉じ
込める」
ことです。
しかし、
福島第一原子力発電所では、
地震発生時に、
原子炉を止めることには成功しましたが、
その直後
に起こった想定を上回る津波の影響で、
非常用ディーゼル発電機や海水ポンプなどが冠水し、
全ての電源を
失うとともに、
冷却用の水の供給もできなくなりました。
このため、
燃料を冷やすことができず、
最終的には放射性物質を閉じ込められなくなるという事故に至り
ました。(1)原子力発電所の更なる信頼性向上と安心・安全の確保
東京電力
(株)
福島第一原子力発電所において深刻な事故が発生したことで、
原子力利用やエネルギー供給のあり方などが問
われています。
ここでは、
原子力発電所の運営に関する皆さまからの声にお答えいたします。
補足情報
ステークホルダーの声 | 原子力発電については、
安全性に対する信頼が大きく
揺らいでおり、
安全第一で取り組んでほしい。
当社は、
福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、
津波により全ての電源、
海水冷却機能、
使用済燃料貯
蔵プール冷却機能を失ったとしても、
原子炉や使用済燃料貯蔵プールを継続的に冷却することができるよ
う、
緊急安全対策を実施しました。
原子炉を安全に
「止める」
燃料を水で
「冷やす」
放射性物質を
「閉じ込める」
津波による全電源喪失により実行できず
[緊急安全対策]
[緊急安全対策訓練] [外部電源復旧訓練]
高圧発電機車による
電源供給訓練
移動用機器による
電力供給訓練
仮設ポンプによる
冷却水供給訓練
鉄塔等の仮復旧訓練
1電源の確保
・高圧発電機
車の配備
・外部電源復旧
対策の実施
2冷却水を送るポンプ等の確保
・仮設ポンプ・
仮設ホース
の配備
・重要機器が
あるエリアへ
の浸水防止
対策
3冷却水の確保
・水源の確保 Re:アニュアルレポート 2012 九州電力 11
私たちの答え | 原子力発電に対する信頼を確保していくため、
より一層の安全性・
信頼性の向上を目指し、
自主的かつ継続的な取組みを進めてい
ます。
当社の実施した緊急安全対策については、
適切に実施されて
おり、
炉心損傷の発生防止に必要な安全性は確保されているこ
とが国により確認されています。
また、ストレステスト(一次評価)
において、
緊急安全対策で原
子力発電所の安全性が更に向上していることを確認し、
国の審
査を受けているところです。
さらに、
原子力発電に対する信頼を確保するためには、
より一
層の安全性・信頼性の向上を目指した取組みを、
自主的かつ継
続的に進めていくことが不可欠であり、
現在、
国が示した福島第
一原子力発電所事故の技術的知見等を踏まえて、
更なる安全性・
信頼性向上対策について、
取組みを進めています。
ストレステスト
(一次評価)
における評価結果ストレステス
トとは、
設計上の想定を超える地震や津波に対し
て、
原子力発電所がどこまで耐えられるかについて評価するも
のです。
想定を超えるス
トレス
(地震・津波)
に対し、
地震については基準
地震動の1.61倍〜1.89倍、
津波については13.0m〜15.0m
まで、
燃料を冷却する機能が維持されることを確認しました。
また、
外部の支援なしに燃料を冷やし続けられる時間につい
ても、
約65日〜104日と外部からの支援を期待するのに十分
な時間を確保できることを確認しました。
更なる安全性・信頼性向上への取組み
免震重要棟の設置
(2015年度目途)
全交流電源喪失に関する評価の場合
号機 燃料の場所
外部の支援なしに燃料を冷やし続けられる時間
緊急安全対策前 緊急安全対策後
玄海原子力発電所 1号機 原子炉 約5時間 約65日
使用済燃料貯蔵プール 約2.6日
2号機 原子炉 約5時間
使用済燃料貯蔵プール 約2.7日
3号機 原子炉 約5時間
使用済燃料貯蔵プール 約2.2日
4号機 原子炉 約5時間
使用済燃料貯蔵プール 約2.3日
川内原子力発電所 1号機 原子炉 約5時間 約104日
2号機 使用済燃料貯蔵プール 約1.8日
格納容器フィルタ付ベント装置の設置
(2016年度目途)
データ
センター
中央制御室
首相官邸
原子力規制庁
本店
汚染水槽・受水槽
非常用発電機
休憩室
宿直室
環境
放射能
測定室
出入
管理室Gテレビ会議等
緊急時対策室 作業要員控室F空調整備
燃料
原子炉蒸気発生器格納容器
スプレイ
加圧器
制御棒
格納容器フィルタ付ベン
ト装置
薬液
隔離弁
金属フィルタ 2.12 九州電力 アニュアルレポート 2012
2. 安定供給の確保
今夏は、
当社の全ての原子力発電所が運転を停止しており、
代替となる火力発電所について追加の燃料
調達や補修時期の調整、
長期停止火力発電所の再稼動及び他電力会社などからの電力購入など、
供給力確保
のため最大限の努力を行いました。(2)今夏の需給対策
原子力発電所の運転停止により、
電力の安定供給に不安を持つお客さまの声が高まっています。
ここでは、
今年の夏の需給対策
の概要についてお伝えします。
補足情報
火力発電所の補修停止時期の調整
・ 石油火力5台の定期検査を今秋以降に延期
(50万k×ばつ4、
37.5万k×ばつ1)
・ 新大分発電所1号系列第1軸
(10万kW)
のガスタービン更新工事の延期
長期停止火力の再稼動
・ 2011年度末に廃止予定であった苅田新2号
(37.5万kW、
経年40年)
の運転
再開
ステークホルダーの声 | 安心できる生活のためにしっかりと電力を供給して
ほしい。
緊急設置電源
・ 豊 前 発 電 所にディーゼ ル 発 電 機
(0.4万kW)
を設置
火力燃料の追加調達
他社からの受電
・ 他電力会社からの計画的融通の受電
・ 自家発からの受電
[計画段階で実施した供給力対策]
・ 離島の移動用発電設備
(0.3万kW)
の活用 Re:アニュアルレポート 2012 九州電力 13
今夏は、
一昨年
(2010年)
並みの猛暑となった場合、
昨年
(2011年)
からお 客 さまにご 協 力 いただいた 節 電 の 効 果
(2010年比さんかく7%程度)
を見込んだとしても、
供給力が不足し、
電力需給は極めて厳しい状況となることが予想されました。
このため、
お客さまには、
需給ひっ迫が予想される7月2日
から9月7日までのお盆を除く平日において、
一昨年の使用最
大電力のさんかく10%以上を目標とした節電へのご協力をお願いし
ました。また、
万が一の不測の事態への最終的な備えとして、
同期間において、
計画停電についても準備してまいりました。
お客さまには、
大変なご心配とご迷惑をおかけしました。
このような状況の中、
今夏の最大電力需要は、
お客さまの節
電へのご協力などにより、
期間を通して、
気温の影響を除くと、
一昨年比さんかく10%程度低く推移しました。
また、
供給面において
は、
他電力会社からの応援融通の受電や取引市場からの電力
調達など、
追加供給力確保に向けた取組みを行った結果、
電力
供給に大きな支障は生じませんでした。
皆さまの節電へのご協力に対しお礼を申し上げます。当社
は、
今後とも、
電力の安定供給確保に向けて、
社員一丸となっ
て最大限の努力を尽くしてまいります。
[電力需給の状況を踏まえた更なる供給力対策]
他電力会社からの追加の電力融通受電
電力取引市場からの電力調達
[節電のお願い期間を通じた需要抑制対策]
節電のご協力のお願い
夏季計画調整契約の拡充
更なる需要抑制メニューの導入
私たちの答え | 電力の安定供給確保に向けて、
今後とも社員一丸となって最大
限の努力をしていきます。 2.14 九州電力 アニュアルレポート 2012
2. 安定供給の確保(3)再生可能エネルギーの積極的な開発・導入
エネルギー政策全般に関する国レベルでの議論などを背景に、
再生可能エネルギーの開発に注目が集まるようになっています。
ここでは、
再生可能エネルギーの開発に関する皆さまの声にお答えします。
一ツ瀬発電所
八丁原発電所
当社は、
太陽光・風力・地熱については、
全国より比較的導入が進んでおり、
バイオマスや水力も含めた
再生可能エネルギーの積極的な開発・導入に取り組んでいます。
補足情報
ステークホルダーの声 | 再生可能エネルギーの開発にもっと積極的に取り組
んでほしい。
設備導入量
(万kW) 説明
風力発電
41(6.7)
グループ会社と積極的な開発を推進するとともに、
風力発電事業者からの電力購入により41万kW導入
(全国の約15%)。太陽光発電
74(0.5)
発電所跡地や事業所等への太陽光発電設備の設置
に取り組むとともに、
2009年11月から余剰電力買
取制度が開始されたことにより、
住宅用を中心に74
万kW導入
(全国の約20%)。水力発電
183(128)
周辺環境に配慮しながら積極的に開発を行ってきて
おり、
183万kW導入
(揚水発電を除く)。地熱発電
21 (21)
九州は地熱資源に恵まれており、
国内最大規模の八
丁原発電所
(11万kW)
をはじめ、
総出力は21万kW
(全国の約40%)。バイオマス発電・
廃棄物発電 25 (4)
鶏糞や木質チップ、
ごみなどを燃料とした発電を行
うとともに、
バイオマス発電やごみ発電事業者から
の余剰電力購入により、
25万kW導入。
(注記)( )は、
当社及びグループ会社の設備量を再掲 2011年度末実績
メガソーラー大牟田発電所
長島ウインドヒル
(株)
みやざきバイオマスリサイクル
(株) Re:06 20201110090807075150225300
23 2530354041
50 56769611527 30 33 41567463アニュアルレポート 2012 九州電力 15
当社は、
国産エネルギー有効活用の観点から、
また地球温暖
化対策面で優れた電源であることから、
再生可能エネルギーの
積極的な開発・導入を進めています。
このうち、
風力発電及び太陽光発電については、
昨年度の計
画では2020年度までに設備量であわせて250万kWの導入
に向けて取り組んでいましたが、
住宅用太陽光の増加や固定価
格買取制度の導入を踏まえ、
導入見通しを300万kWに見直し
ました。
また、
風力発電については、
2012年5月より系統連系の随
時受付を開始
(従来は毎年度受付規模を設定して一括抽選方式
にて受付)
し、
導入量の拡大に取り組んでいます。
太陽光発電については、
長崎県大村市の大村発電所跡地に
おいてグループ会社の
(株)
キューデン・エコソルによるメガ
ソーラー発電所
(13,500kW)
の開発を進めており、
2013年
春に運転開始予定です。
水力発電については、
大規模な水力地点はほぼ開発済みで
すが、
今後とも経済性や立地環境面などを勘案し、
調査・開発
を計画的に進めるとともに、
河川の維持用水などの未利用エネ
ルギーを活用した小水力発電の導入及び技術支援に取り組ん
でいきます。
風力・太陽光の設備導入量
万kW
風力 太陽光
(注記)数値は自社開発及び他社購入分を含む
2020年までに
300万kW
私たちの答え | さまざまな再生可能エネルギーの開発・導入に向けてしっかりと
手を打ち、
確実に前進しています。
地熱発電は、
他の再生可能エネルギーに比べ、
年間を通じて安
定した電気を供給することができます。
これについては、
技術面、
経済性、
立地環境面などを勘案し、
有望と見込まれる地域の現地
状況など新たな開発に向けた調査・情報収集を行っています。
バイオマス発電については、
下水汚泥を加工し、
燃料化した
ものを2013年度から松浦発電所において石炭と混焼開始す
る予定としています。

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