1.06 九州電力 アニュアルレポート 2012
2012年度経営方針
2012年3月、
九州電力では、
極めて厳しい経営環境を踏まえ、
「2012年度経営方針」、「2012年度緊
急経営対策」
を策定しました。
ここでは、
ステークホルダーの皆さまからの声にお答えしながら、2012年度経営方針に掲げる重点課題と対応方針についてご説明します。
ステークホルダーの声 | 経営層も含め社員一人ひとりが意識改革して、
前向き
に信頼回復に努めてほしい。
1. 信頼回復に向けた取組み
経済産業省主催の県民説明番組
(2011年6月26日)
における当社社員による意見投稿呼びかけや、
過去
の原子力発電に関するシンポジウム等における同様の働きかけの有無について、
「第三者委員会
(社外有識
者で構成)」を設置し、
調査・原因分析を行い、
2011年9月30日、
第三者委員会最終報告書を受領しました。
当社はこの報告書を真摯に受け止め、
2011年10月14日に、
経済産業省へ事実関係と今後の対応
(再発防
止策)
について報告書を提出しました。
社内及び第三者委員会による調査の結果、
判明した事実関係
原子力発電所の発電再開に関連して2011年6月26日に開催された経済産業省主催の県民説明番組のなかで、
九州電力は、
皆さまからの信頼を大きく損なう事態を引き起こしてしまいました。ここでは、
当該不祥事の経過に関する皆さまからの声に
お答えいたします。
補足情報
経済産業省主催の県民説明番組
における賛成意見投稿呼びかけ
副社長
(原子力担当)
ほかが佐賀県知
事と面会した際、
同知事から県民説明
番組と関連した発言があり、
メモを作
成。県民説明番組に際し、
当社社員が
社内及び協力会社等に対して、
イン
ターネットによる原子力発電所の発電
再開に賛成する意見投稿を要請し、結果 的に151名 が 意 見 投 稿を行 いま
した。
佐賀県主催プルサーマル公開討
論会における仕込み質問
プルサーマルの安全性等をテーマと
して開催された佐賀県主催のプルサー
マル公開討論会
(2005年12月25日)
において、
事前に質問者として社員を
確保し、
質問内容を割り当てた結果、
原子力推進の立場からの質問者8名
中7名が当社社員等によるものとな
りました。
その他原子力発電関連シンポジ
ウム等への参加・自主的発言呼
びかけ
プルサーマル導入や川内原子力3号
機増設に関するシンポジウム、
公開ヒ
アリング等に際し、
当社社員、
協力会
社、
関係団体に対し、
参加及び自主的
な発言の呼びかけを行いました
(ただ
し、
具体的発言内容を示すなど、
当社
からの特定の意見表明の要請は行っ
ておりません)。重点課題と対応方針 Re:アニュアルレポート 2012 九州電力 07
当社は現在、
創立以来、
最も厳しい状況にあると私は認識し
ています。今年度の経営方針に掲げているとおり、
当社は
「信
頼回復」、「電力の安定供給」、「経営合理化」
の三つを重点課題
として明確にし、
これらに対して当社役員及び社員全員の力を
結集して、
この難局を乗り越えていく考えです。
当社のブランドメッセージ
「九州電力の思い〜ずっと先まで、
明るくしたい。
〜」
にもあるように、
当社は、
電力の安定供給を
通じて、
九州地域の社会経済の持続的発展を支え続ける企業で
ありたいと考えており、
そのためには、
まずはお客さまや地域
社会との信頼関係の再構築に努めていく必要があります。
昨年6月の経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼
びかけ問題などを受け、
社外有識者で構成する第三者委員会
を設置し、
事実関係の再調査及び問題の本質と原因の究明並び
に再発防止策の深掘りを行いました。
その結果、
一連の事象の
根本原因は、
原子力発電に係る急激な環境変化の中、
お客さま
の視点に立った
「透明性の高い事業運営」
を行うことができな
かった点などにあったと認識しています。
このため、
当社で発生した事故や企業倫理に反する行為など
のマイナス情報を含めた迅速・的確な情報発信に加え、
あらゆ
る機会を利用したお客さまとの対話活動により、
当社の事業活
動に関するご理解を深めていただくことで、
企業活動の透明性
を確保していくことが重要と考えています。
信頼というものは、
企業活動の透明化や企業風土の改善など
に地道に取り組みながら、
お客さまとのコミュニケーションを
図ることで、
徐々に構築されていくものだと思います。
今後の取組みについては、
過去に培ってきた信頼の
「回復」
という発想ではなく、
様々な環境の変化を踏まえ、
「お客さまや
地域の思い・ニーズに照らし合わせた新たな信頼関係を
『再構
築』
する」
という考えのもと進めてまいります。
会社を180度変えるということではなく、
当社が持っている
安定供給への使命感など良いところは良いところとして残しな
がら、
それを再構築し直して、
一方でお客さま意識や世間の常
識への感度を高くし、
社会環境の変化に対応できる会社にしま
す。
フェイス・
トゥ
・フェイスでの対話を重ねつつ、
しっかりとし
た業務遂行を地道に行いながら、
時間をかけて信頼の再構築
を果たしてまいります。
一連の事象に関する再発防止と信頼再構築に向けては、1企業活動の透明化、
2組織風土の改善、
3コンプライアンス体制
や危機管理体制の再構築、
の三つの柱を立て、
社長を本部長と
する
「信頼再構築推進本部」
により取組みを進めています。
私たちの答え | 再発防止と信頼再構築に向けて
「三つの取組み」
を進めます。
08 九州電力 アニュアルレポート 2012
1 企業活動の透明化
企業活動の透明化に向けた取組みを二つご紹介します。
一つ目として、
当社が一連の事象を真摯に反省し透明な企業
活動を徹底する方針をお伝えするとともに、
原子力の安全対策
も含めた当社の概況をご説明し、
いただいたご意見、
ご要望を
これからの当社の事業活動に反映していくことを目的に、
九州
各地でお客さまとの対話活動を実施しています。出席された
お客さまの多くは、
対話の機会を有意義なものと捉えられ、大変積極的にご意見・ご要望を発言くださいました。
大変厳しい
ご意見から、
当社を応援しているとのご発言に至るまで、
当社
に対する率直な気持ちをお伝えいただいたと感じています。
お客さまの生の声をお聞きすることができ、
非常に参考になり
ました。
いただいたご意見は社内で共有し、
これからの事業活
動に活かしてまいります。
二つ目として、
原子力部門の業務運営の透明性向上等に向
け、
組織の見直しを実施しました。その一つが、
原子力発電本
部と火力発電本部の統合による
「発電本部」
の設置です。火力
部門と統合し、
本部内に多様な人材や視点を確保することによ
り、
原子力部門の業務運営の一層の透明性向上を図ることがで
きるとともに、
双方向の人材交流による多様な視点を持った人
材の育成や、
双方の品質・安全管理の水平展開による業務改善
などの効果を期待しています。
もう一つが
「原子力コミュニケーション本部」
の設置です。原
子力情報に対するニーズを踏まえた的確な自治体・地域対応や
情報公開を実行するため、
従来、
原子力発電本部が実施してい
た原子力関係の地域対応や情報発信機能を同本部に移管しまし
た。発電所のトラブル時の周辺自治体への連絡や、
原子力に関
する住民説明会など、
きめ細かな対応を実施してまいります。
このように
「発電本部」
は原子力発電所の運転や技術的対応
に専念し、
「原子力コミュニケーション本部」
は原子力発電所関
係の地域対応や情報公開をこれまで以上に積極的かつ的確に
行うことにより、
原子力部門の業務運営の透明性が向上するも
のと考えています。
お客さまとの対話の会
(鹿児島)
アニュアルレポート 2012 九州電力 09
2 組織風土の改善
組織風土の改善に向けては、
組織風土の課題や改善の方向
性について、
各機関で対話の場
(ワークショ
ップ)
を設置し、意見交換を実施しているほか、
階層別の研修についても、
上司と
部下のコミュニケーション活性化や管理職のマネジメント能力
向上に向け、
内容を充実・強化しているところです。
有事の際にはしっかりとした指示命令系統が必要ですが、いわゆる金太郎飴のように、
どこを切っても同じ顔、
是非を判断
せず言われた方向を向いてしまうという風土では企業は伸び
ていかないと思います。私は、
自らがやれることをしっかりと
考えて行動し、
職場一体となった自発的な取組みができる組織
風土を作っていきたいと考えています。
3 コンプライアンス体制や危機管理体制の
再構築
コンプライアンス体制については、
社会的影響の大きい不祥
事等が発生した際には、
社外委員へ速やかに報告し、
外部の視
点から適切な助言をいただくなど、
コンプライアンス委員会機
能を強化するとともに、
従業員のコンプライアンス意識の継続
的な醸成等を目的に、
全支社にコンプライアンスの担当職位を
設置するなどの見直しを行いました。
一方、
危機管理体制については、
危機発生時に迅速・的確に
対応するため、
危機管理官
(副社長)
及び危機管理担当部長を
新たに設置し、
初動判断や具体的対応の迅速化及び強化を図っ
たほか、
社外専門家による支援体制を整備しました。
不測の事
態には社長をトップとする危機管理対策総本部を設置し、
危機
管理対応全般に関する責任者として事態の進展や対応状況な
ど全体の把握、
指揮を行うこととしています。
また、
新たにリスク
・危機管理対策会議を設置し、
リスク
・危
機管理マネジメントサイクルの推進機能や、
危機発生時の情報
共有や対応能力を強化しています。
今夏の節電のお願いにあたっては、
お客さまにとって痛みを
伴う節電のお願いであるため、
当社における最大の危機と認識
し、
危機管理対策総本部を立ち上げました。危機管理の要は、
起こりそうな危機を事前に自ら認識することだと思います。この対策総本部では、
今後予想される対応すべき事象の洗い出
しを行った上で、
まずはその事象が起こらないようにするため
にはどうすればよいか、
もしその事象が万一起こってしまった
場合にはどう対応するかなどについて検討しました。
施策 具体的な内容 実施時期
コンプライアンス行動指針の
改正
しかく シンポジウムや説明会等において、
本来の開催趣旨に反するような動員や意見投稿呼びかけ等を禁止する
旨の記載を追加
しかく 自治体との健全な関係を構築するための取組みに関する記載を追加
しかく 不祥事発生時の対応
(調査への協力等)
を追加
2012年4月
コンプライアンス委員会の
機能強化
社会的影響の大きい不祥事等発生時には、
社外委員から助言等を受けるなど、
委員会機能を強化 2012年5月
コンプライアンス所管部門の
一元化
責任体制を明確化し、
主体的に全社のコンプライアンス経営を推進するため、
コンプライアンス所管部門を
一元化
(地域共生本部、
人材活性化本部、
経営管理本部で分担しているコンプライアンス推進業務を全て
地域共生本部に一元化)
2012年7月
全支社へのコンプライアンス
担当職位の設置
従業員のコンプライアンス意識の継続的な醸成
(教育・研修)、不祥事等の兆候把握機能の強化
(問合せ窓口
の設置)
等を目的に、
「コンプライアンス支社所管エリア担当」
を設置
2012年7月
コンプライアンス推進体制等に関する主な見直し内容

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