1.経営成績・財政状態に関する分析

(1) 経営成績に関する分析
当期のわが国経済は、一部に弱さが残るものの、復興関連需要、政府の経済対策、輸出
環境の改善などを背景に、持ち直しの動きがみられるようになりました。九州経済におい
ても、同様の動きがみられましたが、主要業種の中国などアジア向けの輸出・生産が減少
した状態が続いたことなどから、全体として横ばいで推移しました。
当社グループにおきましては、全ての原子力発電所の運転停止が継続し、厳しい需給状
況の中、代替となる火力発電等の供給力確保に最大限努めたことや、お客さまの節電への
ご協力などにより、電力供給に大きな支障を生じることなく乗り切ることができました。
1当期の経営成績
ア 収支
このような状況のもと、当期の連結収支につきましては、収入面では、電気事業におい
て、販売電力量の減少はありましたが、燃料費調整の影響による料金単価の上昇などによ
り電灯電力料が増加したことや、昨年7月に開始された「再生可能エネルギーの固定価格
買取制度」に基づき買取実績に応じた交付金を計上したことなどから、売上高(営業収益)
は前期に比べ 2.5%増の1兆5,459億円、経常収益は 2.5%増の1兆5,601億円となりまし
た。一方、支出面では、電気事業において、原子力発電所の運転停止の影響により火力燃
料費や購入電力料が大幅に増加したため、緊急経営対策など可能な限りの経営合理化を推
進しコスト削減に努めましたが、経常費用は 9.0%増の1兆8,913億円となりました。
以上により、経常損益は 3,312億円の損失、当期純損益は 3,324億円の損失となりまし
た。
事業の種類別セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりとなり
ました。
セグメント別の業績(内部取引消去前)
(単位:億円、%)
24年度 23年度 増 減 前年比
( A ) ( B ) ( A−B ) ( A/B )
売 上 高 388 102.8
営業損益 しろさんかく 1,126 −
売 上 高 しろさんかく 39 97.6
営業損益 25 47 しろさんかく 22 53.9
売 上 高 945 969 しろさんかく 23 97.5
営業損益 76 66 9 114.7
売 上 高 272 273 − 99.9
営業損益 24 31 しろさんかく 6 78.8
(注1)「電気事業」は、当社事業から附帯事業を除いたものです。
(注2)しろさんかくは損失を示しています。
電気事業
14,083 13,695
しろさんかく 3,126 しろさんかく 1,999
エネルギー 1,606 1,645
関連事業
情報通信事業
その他の事業
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−2−
(ア)電気事業
売上高は、販売電力量の減少はありましたが、燃料費調整の影響による料金単価の上
昇などにより電灯電力料が増加したことなどから、前期に比べ 2.8%増の1兆4,083億
円となりました。営業損益は、火力燃料費や購入電力料の大幅な増加などにより、
1,126億円悪化し 3,126億円の損失となりました。
(イ)エネルギー関連事業
売上高は、発電所補修工事の完成高減少などにより、前期に比べ 2.4%減の1,606億円、
営業利益は 46.1%減の 25億円となりました。
(ウ)情報通信事業
売上高は、情報システム開発の減少や情報機器販売の減少などにより、前期に比べ
2.5%減の 945億円となりました。営業利益は、光ファイバ心線貸し事業の減価償却費
の減少などにより、14.7%増の 76億円となりました。
(エ)その他の事業
売上高は、前期並みの 272億円、営業利益は、賃貸建物の竣工に伴う減価償却費の増
加などにより、前期に比べ 21.2%減の 24億円となりました。
イ 販売及び生産の状況
当期の販売電力量につきましては、電灯、業務用電力などの一般需要は、お客さまの
節電の影響や、6月から7月の気温が前年に対し低めに、2月から3月の気温が前年に
対し高めに推移したことによる冷暖房需要の減少などから、前期に比べ 2.0%の減少と
なりました。また、大口産業用需要は、鉄鋼や化学などの生産が増加したものの、電気
機械などの生産が減少したことや、お客さまの節電の影響などから、1.4%の減少とな
りました。
この結果、総販売電力量は 837億8千万kWhとなり、1.8%の減少となりました。
販 売 電 力 量 比 較 表
(単位:百万kWh、%)
電 灯 29,509 29,990 しろさんかく 481 98.4
電 力 5,204 5,475 しろさんかく 271 95.1
電灯電力計 34,713 35,465 しろさんかく 752 97.9
特定規模需要 49,074 49,887 しろさんかく 813 98.4
販売電力量合計 83,787 85,352 しろさんかく 1,565 98.2
再 60,173 61,408 しろさんかく 1,235 98.0
掲 23,614 23,944 しろさんかく 330 98.6
一 般 需 要
大 口 電 力
前年比
( A/B )
23年度
( A ) ( B )
24年度 増 減
( A−B )特定規模需要以外
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−3−
供給面につきましては、原子力発電所の運転停止の影響がありましたが、自社火力発電
や他社受電の増加などにより対応しました。
発 受 電 電 力 量 比 較 表
(単位:百万kWh、%)
水 力 4,704 4,760 しろさんかく 56 98.8
( 出 水 率 ) ( 112.8 ) ( 105.9 ) ( 6.9 )
火 力 61,221 52,425 8,796 116.8
原 子 力 − 14,481 しろさんかく 14,481 −
(設 備 利 用 率) ( − ) ( 31.4 ) ( しろさんかく 31.4 )
新エネルギー等 1,368 1,367 1 100.1
計 67,293 73,033 しろさんかく 5,740 92.1
21,248 19,167 2,081 110.9
( 1,957 ) ( 1,671 ) ( 286 ) ( 117.2 )
融 通 2,402 1,326 1,076 181.1
揚 水 用 しろさんかく 641 しろさんかく 1,033 392 62.1
合 計 90,302 92,493 しろさんかく 2,191 97.6
(注)「新エネルギー等」は、太陽光、風力、バイオマス、廃棄物及び地熱の総称です。
前年比
( A/B )
( A ) ( B ) ( A−B )
24年度 23年度 増 減自 社
(新エネルギー等再掲)
他 社
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−4−
2次期の見通し
売上高につきましては、電気事業において、販売電力量の増加に加え、電気料金の値上
げや燃料費調整の影響による料金単価の上昇などにより、前期に比べ増加する見通しです。
なお、原子力発電所の再稼働に関する見通しが不透明な状況であることから、燃料費な
どの費用を合理的に算定できないため、利益を未定としております。
今後、業績予想が可能となった時点で、速やかにお知らせします。
次 期 業 績 見 通 し
(単位:億円)
第2四半期
連結累計期間
通 期
第2四半期
累計期間
通 期
8,600 17,600 8,100 16,600
〔112.7%〕 〔113.8%〕 〔112.7%〕 〔114.6%〕
(注) [ ]は前年同期比
主 要 諸 元 表
第2四半期
累計期間
通 期
423億kWh 847億kWh
〔100.5%〕 〔101.1%〕
(注) [ ]は前年同期比

為 替 レ ー ト
原 油 C I F 価 格
− −
− −
− −
110$/b
経 常 利 益
95円/$
連 結
販 売 電 力 量
営 業 利 益
個 別
売 上 高
当 期 純 利 益
− −
− −

九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−5−
(2) 財政状態に関する分析
1資産、負債、純資産及びキャッシュ・フローの状況に関する分析
ア 資産、負債及び純資産の状況
資産は、設備投資の効率化に努めたことや減価償却が進んだことなどから固定資産が
減少しましたが、現金及び預金などの流動資産が増加したことから、前期末に比べ
984億円増の4兆5,265億円となりました。
負債は、有利子負債の増加などにより、4,287億円増の3兆9,687億円となりました。
有利子負債残高は、4,274億円増の2兆9,107億円となりました。
純資産は、当期純損失の計上などにより、3,303億円減の 5,577億円となり、自己資
本比率は 11.9%となりました。
イ キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、電気事業において電灯電力料収入の増加はあ
りましたが、火力燃料代及び購入電力料の支出の増加などにより、前期の 169億円の収
入から 1,351億円の支出に転じました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の効率化に努めたことなどにより、
前期に比べ 517億円減の 1,765億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べ 489億円増の 4,122億円の収入と
なりました。
以上により、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ 1,012億円増加し
3,792億円となりました。
2キャッシュ・フロー関連指標の推移
自 己 資 本 比 率 (%) 25.7 26.4 25.4 19.7 11.9
時 価 ベ ー ス の 自 己 資 本 比 率 (%) 25.4 23.7 18.4 12.6 10.2
8.5 5.7 6.9 146.9 −
7.0 9.9 8.7 0.5 −
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注記)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
(注記)×ばつ期末発行済株式数(自己株式控除後)により計算しています。
(注記)営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッ
シュ・フロー及び利息の支払額をそれぞれ使用しています。
(注記)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、社債、長期借入金(いずれも1年
以内に期限到来のものを含む)、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーを対象としています。
なお、社債については、連結貸借対照表価額ではなく社債金額を使用しています。
(注記)平成24年度は営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため、キャッシュ・フロー対有利子
負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載しておりません。
23年度 24年度
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
インタレスト・カバレッジ・レシオ
22年度
21年度
20年度
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−6−
(3) 利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
当社は、安定配当を維持するとともに、中長期的な観点から株主の皆さまの利益拡大を
図ることを利益配分の基本方針としております。
しかしながら、当期の業績は、原子力発電所の停止に伴う、火力発電の燃料費等の大幅
な増加により、通期で 3,380億円の純損失となりました。
こうした厳しい状況を踏まえ、期末の配当につきましては、誠に申し訳なく存じますが、
中間配当に引き続き無配とさせていただきます。
また、次期の配当につきましては、引き続き厳しい収支・財務状況が続くことから、中
間配当は無配の予想とさせていただきます。株主の皆さまにはご迷惑をおかけし、深くお
詫び申し上げます。なお、期末配当につきましては、今後、業績予想が可能となった時点
で、速やかにお知らせします。
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−7−
(4) 事業等のリスク
当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のあ
る主なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したもの
です。
1電気事業を取り巻く制度変更等
現在、国において、お客さまの選択肢拡大等を図る小売全面自由化や、競争環境の整備
等を目指した卸電力市場の活性化、送配電部門の広域化・中立性の一層の確保など、「電
力システムに関する改革方針」が閣議決定され、実施に向けた議論が進められています。
また、エネルギーのベストミックスや原子力政策などエネルギーの需給に関する基本的
な方針等を定める「エネルギー基本計画」の見直しも進められています。
こうした電気事業を取り巻く制度の変更等に伴い、当社グループの業績は影響を受ける
可能性があります。
2原子力発電を取り巻く状況
原子力発電に係る規制については、平成24年6月の原子炉等規制法の改正により、「重
大事故対策の強化」や「運転期間延長認可制度」、「バックフィット制度」などが導入さ
れ、現在、原子力規制委員会において、具体的な下部規則の施行に向けた検討が進められ
ています。
当社としては、平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故の後においても、原
子力発電の重要性は変わらないという認識のもと、より一層の安全性を確保するため、電
源や給水源の確保のための緊急安全対策や、福島事故の技術的知見30項目を踏まえた指揮
所となる免震重要棟の設置等の安全対策に着実に取り組んできました。
さらに、原子力発電所の早期再稼働を目指し、施行される規則全てに、適切に対応する
という方針のもと、重大事故の防止対策等の安全性向上に取り組んでいます。
今後も、当社は、福島事故の教訓を踏まえ、より一層の安全性・信頼性の向上を目指し
た取組みを自主的かつ継続的に進めるとともに、地域の皆さまにご理解をいただく活動を
積極的に行っていきます。
しかしながら、再稼働に向けた審査など今後の規制の動向等による原子力発電所の稼働
状況によっては、燃料費、資金調達コスト等の一層の増加、これらの費用負担の継続に伴
う繰延税金資産の回収可能性の判断への影響などにより、当社グループの業績は影響を受
ける可能性があります。 3販売電力量の変動
電気事業における販売電力量は、景気動向、気温の変化のほか、住宅用太陽光発電の普
及、さらには省エネ等に関する規制・制度改革の動向などによって変動することから、当
社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−8−
4燃料価格の変動
電気事業における燃料費は、火力発電燃料であるLNG、石炭などを国外から調達して
いるため、CIF価格及び為替レートの変動により影響を受けます。
ただし、燃料価格の変動を電気料金に反映させる燃料費調整制度により、燃料価格の変
動による当社グループの業績への影響は緩和されています。
5原子燃料サイクルに関するコスト
原子燃料サイクル事業は超長期の事業であり不確実性を伴いますが、国の制度措置等に
より事業者のリスクは低減されています。しかしながら、原子燃料サイクル政策に関する
議論の動向、将来費用の見積額の変更などによっては、当社グループの業績は影響を受け
る可能性があります。
6地球温暖化対策に関するコスト
当社グループは、地球温暖化への対応として、原子力発電の安全・安定運転、再生可能
エネルギーの積極的な開発・導入、火力総合熱効率の維持・向上など、発電の一層の低炭
素化・高効率化に向けた取組みを進めていますが、今後、地球温暖化に関する政策の動向
などによっては、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
7電気事業以外の事業
当社グループは、グループ各社の保有する経営資源を活用し、電気事業以外の事業につ
いても着実に展開していくことにより、収益基盤の充実を図っています。事業運営にあた
っては、収益性を重視し、効率性の向上と成長性の追求に努めていますが、事業環境の悪
化等により計画どおりの収益が確保できない場合には、当社グループの業績は影響を受け
る可能性があります。
8金利の変動
当社グループの有利子負債残高は、平成25年3月末時点で2兆9,107億円(総資産の
64%に相当)であり、今後の市場金利の変動により、当社グループの業績は影響を受ける
可能性があります。
ただし、有利子負債残高の 95%が社債や長期借入金であり、その大部分を固定金利で
調達していることなどから、金利の変動による当社グループの業績への影響は限定的と考
えられます。
9情報の流出
当社グループは、グループ各社が保有する社内情報や個人情報について、厳格な管理体
制を構築し、情報セキュリティを確保するとともに、情報の取扱い等に関する規定類の整
備・充実や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報管理を徹底しています。しかしなが
ら、社内情報や個人情報の流出により問題が発生した場合には、当社グループの業績は影
響を受ける可能性があります。
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−9−
10自然災害等
当社グループにおいては、お客さまに電力を安定的に供給するため、設備の点検・修繕
を計画的に実施し、トラブルの未然防止に努めています。しかしながら、台風、集中豪雨、
地震・津波等の自然災害、又は事故や不法行為等により、設備の損傷や発電所の長期停止
などが発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、危機管理体制を整備し、事業運営に重大な影響を及ぼす様々な
危機に備えていますが、危機に対し適切に対応ができなかった場合には、当社グループの
業績は影響を受ける可能性があります。
11コンプライアンス
当社グループにおいては、ステークホルダーの皆さまに信頼していただけるよう、グル
ープ一体となってコンプライアンス意識の徹底を図り、法令遵守はもとより、お客さまや
地域の皆さまの視点に立った事業活動に取り組んでいますが、コンプライアンスに反する
行為により社会的信用の低下などが発生した場合には、当社グループの業績は影響を受け
る可能性があります。
当社グループは、引き続きステークホルダーの皆さまとの信頼関係構築に取り組んでま
いります。
九州電力株式会社(9508) 平成25年3月期 決算短信
−10−

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /