1新しい火力電源入札の運用に係る指針(3次改訂)
平成24年9月18日策定
平成25年5月17日一部改訂
平成26年2月26日一部改訂
平成26年9月8日一部改訂
資 源 エ ネ ル ギ ー 庁
I.はじめに
東日本大震災後、電力需給のひっ迫や、燃料コスト増による電力コスト上昇懸念等、我が国の電
気事業を巡る環境は激変し、従来以上に安定的かつ効率的な電力の供給が強く求められている。
電力供給の効率化に向けた発電部門への競争原理の導入については、平成7年の電気事業法改正
により卸電気事業に係る参入規制が原則撤廃され、発電事業への新規参入促進を目的とした火力入
札制度が導入された。当時の火力入札制度は、募集に対して4〜5倍の活発な応札があり、一般電
気事業者が設定した上限価格と比較して1〜3割程度低い価格で落札される等、一定の効果を上げ
ていた。このため、平成12年より、一般電気事業者の自社分も含めた原則すべての新規火力電源
を入札の対象とする火力全面入札制度が導入されたが、卸電力取引所の整備を契機として、平成1
5年に廃止されることとなった。
火力全面入札制度の廃止以降も、電気事業法上は一般電気事業者が自主的に入札を行うことは可
能であったが、平成14年度を最後に入札は実施されておらず、卸供給事業者(以下「IPP事業
者」という。)をはじめとする新規参入者による卸供給は活発とは言い難い。
このような状況の中で、平成23年11月にエネルギー・環境会議が取りまとめた「エネルギー
需給安定行動計画〜エネルギー構造改革の実現に向けた需給安定策の具体化〜」では、多様な主体
を活用した供給力増強や卸市場の活性化による電力コスト低減に向けて、新規電源設置におけるI
PP入札 1
を実施する方針が示された。
また、平成24年3月に電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議(以下「有識者会議」と
いう。)が取りまとめた報告書においては、一般電気事業者の設備関係費用一般について複数の調
達先があるものについては入札等を行うことが原則とされ、とりわけ、一般電気事業者が火力電源
を自社で新設・増設・リプレースしようとする場合には、原則としてIPP入札 1
を実施すべきであ
る旨の方針が示されている。
一般電気事業者は、1電気事業法に定められた安定供給義務と、2経営の一層の効率化による規
制部門の電気料金の原価の一層の適正性の確保、を両立する観点から、自社電源のみならず、卸電
気事業者又はIPP事業者その他の発電事業者(以下「発電事業者」と総称する。)、他の一般電
1 一般電気事業者が、IPP事業者等の発電電力を対象に、その長期購入(電源調達)を目的とした入札を
実施すること。 2気事業者の保有する電源を最大限活用することが不可欠である。電力の安定供給と電源調達の効率
化は、両立しうる。
本指針は、上記の趣旨にかんがみ、一般電気事業者が行う電源調達に入札による競争原理を導入
し、IPP事業者をはじめとする新規参入者による卸供給を拡大することによって、電力の安定供
給と電気料金の一層の適正な原価の形成を促すことを目的に、一般電気事業者が入札により火力電
源を調達しようとする場合の基本的な事項を定めるものである。
本指針は、現行の電気事業制度の下で、一般電気事業者に対して入札の実施を法的に義務づける
ものではないが、一般電気事業者が入札により火力電源を調達しようとする場合には、一般電気事
業者は本指針に基づく入札を実施することを原則とする。ただし、一般電気事業者が入札の実施に
際して、本指針に基づくものの他、自発的に公平性や競争性を高めるための追加的な措置を講じる
ことは、入札の公正性や競争性を高める観点から有用であり、妨げられるものではない。
なお、平成23年11月、資源エネルギー庁は、東日本大震災以降の電力需給や今後の見通しを
踏まえた新規IPP事業への参入の可能性等について、主要IPP事業者十数社に対するヒアリン
グ調査を実施した。同調査によれば、発電所の建設に十分な広さがあり、パイプラインの近傍であ
る等IPP事業の適地は、ヒアリング先のみの合計で、ポテンシャルとしては25箇所、発電容量
としては1,965万kW程度であった。候補となるエリアとしては、東京湾岸、北関東、東北の各
地域に多数存在するが、ポテンシャルとしては関西、中国、四国、九州の各地域にも相当程度存在
している。こうしたIPP事業者の潜在的な可能性を最大限活用することが重要である。
II.新しい火力電源入札の実施に関する基本的事項
1.基本的方針
(1)有識者会議における議論を踏まえ、一般電気事業者の電気料金算定の前提として、合理的な
経営効率化努力を織り込んだ適正な原価の形成を促すためにも、
今後、
一般電気事業者が火力電
源を自社で新設・増設・リプレースしようとする場合は、既に建設プロセスが進んでいるため入
札を実施しても運転開始予定日に間に合わない案件等を除き、
原則全ての火力電源について、本指針に基づくIPP入札(以下「火力入札」という。)の実施対象とする。
(2)火力入札の実施主体は一般電気事業者(注)とし、自社で電源を新設・増設・リプレースし
ようとする場合は一般電気事業者自身も応札することが可能な制度とする。
電気料金算定に当た
っては、料金認可プロセスにおいて、一般電気事業者が設置した電源のうち入札を経たものは、
落札価格を適正な原価とみなし、
入札を経ないものは、
入札された場合に想定される価格等を参
考にしつつ査定する。
(注)火力入札実施時における一般電気事業者の子会社(会社法第2条第3号に定める子会社を
いう。)が電源を新設・増設・リプレースしようとする場合も、
火力入札を実施するものとする。 3(3)火力入札は、本指針に基づき入札を実施する一般電気事業者(以下「入札実施会社」という。)
が策定する入札要綱により、これを実施する。
(4)一般電気事業者が自社の電源開発とは無関係に他社から電気を購入する場合(自家発余剰購
入を含む。)は、必ずしも火力入札を実施することは要しないが、電気料金審査のプロセス等に
おいて卸電力取引所からの調達や入札等の効率化努力がなされているか否かが問われることと
なる。
(5)火力入札の目的が、競争原理を導入して安価な電源を調達することにより電力供給の効率化
を図るものであることを踏まえれば、
入札実施会社が自社応札する場合を含め、
上限となる価格
は入札実施会社が自社で電源を設置する場合に要すると考えられるコスト以下に設定されるこ
とが望ましく、こうした観点についても配慮する。
(6)本制度は、平成24年9月18日をもって実施する。
2.入札の実施を要する電源
(1)一般電気事業者が火力電源を自社で新設・増設・リプレースしようとする場合は、原則全て
の火力電源を本指針に基づく入札の対象とし、
自社及び他の一般電気事業者、
発電事業者が応札
することができることとする。
ただし、
平成24年度の供給計画に平成30年度までに運転開始
するものとして記載されている電源(以下「既決定電源」という。)については、既に建設プロ
セスが進んでおり入札を実施しても運転開始予定日に間に合わないと考えられることから、
火力
入札の対象外とする。
(注1)今回実施する火力入札は、総括原価方式による料金規制の下で、一般電気事業者が合理的
な経営効率化努力を織り込んだ適正な原価を形成することを促すために実施するものであるた
め、発電事業者が、自社の電源を調達するための入札の実施は要しない。なお、一般電気事業者
が入札によらず、発電事業者と相対で契約し、電気を調達する場合、一般電気事業者の営業費用
のうち購入電力料の査定で一般電気事業者側の効率化努力が問われることとなる。
また、
本指針
に基づく入札を実施することなく、自社で火力電源を新設・増設・リプレースした場合には、電
気料金審査のプロセス等において、調達価格その他について評価されることとなる。
(注2)一般電気事業者が10万kW以下の火力電源を新設・増設・リプレースしようとする場合
は、
平成24年度の供給計画に平成27年度までに運転を開始するものとして記載されている電
源に限り、既決定電源として取り扱う。
(注3)既決定電源についても、開発の進捗状況等を踏まえつつ、機器入札を実施する等可能な限
り競争的手段を活用し、最大限の効率化努力がなされることが望ましい。
(2)火力以外の大型電源については、発電事業者の参入による競争が実態的に想定できないこと
から、本指針の対象外とする。また、再生可能エネルギー電源については、固定価格買取制度が
導入されたことから、本指針の対象外とする。 4(3)卸供給規制や自家用発電所運転半期報の対象となっていない1,000kW未満の供給につ
いては、
火力入札の実施に要するコストや運用段階での業務効率等にかんがみ、
上記の例外とし
て必ずしも火力入札の実施を求めない。ただし、有識者会議での議論を踏まえれば、機器入札を
実施する等可能な限り競争的手段を活用し、最大限の効率化努力がなされることが前提となる。
(4)離島電源についても、合理的な経営効率化努力を織り込むことが必要であるため、原則とし
て火力入札の対象とする。
一方、
需要家側における負荷の導入又は導入取り下げにより電源開発
時期や規模の流動性が高いため、
必要に応じて運転開始時期の調整に応じられるものを評価する
こと等が考えられる(なお、1,000kW未満の電源の扱いについては既述の通り)。
(5)副生ガス利用が前提となっている電源については、当該地点での電源開発・リプレースが実
施されない場合、
別途副生ガスの利用方法を検討することとなり、
設備の重複投資等で結果的に
社会的費用の増大につながるおそれがあるため、
必ずしも火力入札の実施は要しない。
その場合、
機器入札を実施する等可能な限り競争的手段を活用し、
最大限の効率化努力がなされることが望
ましい。
(6)上記で火力入札の対象外としたものであっても、事業者の自主的な取組として入札を実施す
ることは、妨げられない。
(7)なお、上記で火力入札の対象としたものであっても、入札では対応し難い緊急時等の極めて
短期の電源開発が必要になった場合は、例外的に火力入札の対象外とする。また、火力発電の高
度化のための技術開発に資する設備を建設する場合等、
上記の整理により難い特別の事情がある
場合において後述する中立的機関が特別に認めたときも、
例外的に火力入札の対象外とする。ただし、例外措置の適用は限定的になされるべきである。
3.入札実施方法に係る基本的考え方
(1)電力供給の効率化のため、新規の電源確保に当たっては、電力の安定供給確保という要請に
も配慮しつつ、
多様な電源を最大限効率的に活用することが喫緊の課題との認識の下、
発電事業
者の潜在供給力を最大限活用することとする。
(2)入札対象量(枠)や入札のスケジュールについては、発電事業者の予見可能性を高めるため、
電気事業法第29条の規定に基づき一般電気事業者が経済産業大臣に提出する電力供給計画に
おいて、将来の電源開発計画、その内訳としての各年度の入札対象量(枠)、募集時期、調達期
間を可能な限り明らかにするとともに、
該当部分を各社のホームページに掲載する等、
広く一般
に公表することとする。 5(3)応札者の提案する発電設備は、既設、新設の別を問わないが、契約期間を通じて安定的に運
転できる発電設備であることが条件となる。
(4)応札者の提案する発電設備は必ずしも単一の設備であることを要さず、複数の電源を集約し
一体的に供給(アグリゲーション)することも可能とする。この場合、供給条件についても複数
の電源を一体的に取り扱うこととなる。
(5)一般電気事業者が発電用地として取得している土地については、既存の電源線を活用するこ
とにより系統連系が容易かつ連系コストを安く抑えられる、
共用設備を活用することにより電源
設置コストを抑えることができる等、
有利な条件が揃っている場合がある。
入札実施会社におい
ては、
当面利用の予定がない自社遊休地について、
土地を開放して第三者が発電所を建設する形
での入札についても検討すべきである。
(6)入札実施会社の資産を他の事業者に売却又は貸与し、当該事業者に代替的にリプレースを進
めてもらうことや、
外部のパートナーとの間でリプレースを行う共同プロジェクトを設立し、自社が実施する火力入札に応札することは、
それによって価格が低下するのであれば、
入札実施会
社の保有資産を有効に活用する観点を含め、望ましいことである。この場合、例えば、火力入札
を実施する前に、
土地の購入条件や外部パートナーを選定するための事前入札を実施すること等
が想定される。
(7)入札実施会社は、公正かつ有効な競争の観点から、火力入札の実施を通じて知り得た他の一
般電気事業者や発電事業者に関する情報を、
当該火力入札を実施する目的以外の目的のために利
用すること等公正かつ有効な競争を阻害する行為を行うことのないよう、
情報の保全その他必要
な措置を講じるものとする。また、入札実施会社自らが応札しない場合であって、上限価格を事
前に公表しない場合は、
入札実施会社の火力部門が他社と提携して応札を実施することも想定さ
れることから、
入札実施会社は、
上限価格の漏洩を防止し公正かつ有効な競争を実現するために、
その入札実施部門と火力部門との間の情報遮断その他必要な措置を講じるものとする。
4.入札要綱(評価項目・基準・方法を規定)の策定及び公表
(1)主体
入札要綱については、原則として本指針に従って、入札実施会社が作成し、公表するものと
する。なお、入札実施会社は入札要綱を公表する前(後述する提案募集の実施後)に、入札要
綱案を後述する中立的機関に提出し、中立的機関が入札要綱案を本指針に合致していないと認
めるときには、入札実施会社はこれを修正するものとする。
(2)入札の地理的要件
入札実施会社が自社管内における潮流や系統運用上の制約から地点を限定する必要があるこ
とを定量的なデータを示した上で十分に立証し、その必要性について中立的機関が特別に認め 6る場合を除き、原則として電源の立地地点に制約を設けないこととする。なお、系統の空き容
量があっても、実際には前後区間の事故時安定性が確保できない等の理由により電源立地に制
約がある場合も想定されるが、入札実施会社はこうした事情について徹底的な説明を行うこと
が求められる。また、次項に定める「系統情報の公開・提示」が適切に行われていることが前
提となる。
(3)系統情報の公開・提示
電源開発に当たっては、発電事業者の予測可能性を高めるため、その電源の系統への連系可
能容量、
電源線敷設及び系統増強に係るコスト及び工期について、
発電事業者に対する十分な事
前の情報公開・提示が必要である。また、系統情報を有するのは一般電気事業者であるが、火力
入札では、
系統情報を有する一般電気事業者の発電部門が競争の当事者となることもあることか
ら、
入札実施における透明性を確保する観点からも、
以下のような系統情報は可能な限り事前に
広く公開・提示される必要がある。なお、系統情報の事前公開は、応札検討中の発電事業者から
多数の地点について接続検討が実施されることを回避する観点からも有効である。
(a)現状及び確定している将来の流通設備建設計画の公開(b)連系制約について、
マッピング方式
(一次変電所単位を基本とする)
で公開するとともに、
連系可能容量の目安について提示
(c)電源線敷設に係るコスト及び工期については、発電事業者側においても評価可能な標準化
方式で提示
(d)具体的地点における更に詳細な連系可能容量や電源線敷設及び系統増強に係るコスト及び
工期の情報については、火力入札実施の公表から応札前までに接続検討を実施(接続検討
に係る期間を可能な限り短縮することや、接続検討を依頼した地点での連系が困難である
場合に代替案を提示する等、入札実施会社の送電部門による柔軟な対応が望まれる)
(注記) 入札実施会社の管外に電源を設置することを予定している発電事業者は、当該電源設置予
定地域を供給区域とする一般電気事業者に対して、系統情報の提示及び接続検討を求める。
(4)募集規模及び時期
(a)募集規模及び時期については、入札実施会社の判断であるが、入札制度を通じて安定的・
効率的電源を最大限確保し得る規模及び時期とされることが必要であり、
その募集は開発期
間を踏まえた適正な時期(少なくとも、入札対象電源が運転を開始する予定の年度から7年
度程度前。ただし、10万kW以下の電源はこの限りではない。)に行われるものとする。
(b)募集期間については、発電事業者側に十分な事業検討期間が確保される必要があることか
ら、適切な期間を取ることが必要である(後述する、入札要綱に対する提案募集を実施する
期間を含め、概ね6ヶ月程度が目安となる)。
(c)単年度ごとの募集が現実的でないケース、また大規模電源開発の必要性等を踏まえ、複数
年分をまとめて募集することも可能とする。
(d)融通型の広域電源開発が経済的に優れている場合があることも踏まえ、
1単一のプロジェクトから複数の入札に対して同時に応札すること、 72各一般電気事業者の募集に対し同一のプロジェクトから異なる価格で応札すること、
についても可能とする。
また、この観点からも、入札実施時期に係る情報を事前に広く明らかにすることが必要で
ある。
(5)運転条件の指定
電力供給の効率化という観点からは、電源種別の指定をすることにより供給コストが増加す
ることは望ましくなく、電源種別はあくまでも経済合理性に基づいて選択されるべきである。
一方、入札実施会社の電源運用ポートフォリオの中で今後必要となる運転条件(ベース型・
ミドル型・ピーク型・予備力型)には一定の制約があると考えられることから、こうした状況
を踏まえ、火力入札の募集規模は、運転条件別に指定することを基本とする(その際、入札実
施会社は、入札要綱において想定される典型的な運転パターンを例示すること等が求められる。
実運転時の運転パターンについては、入札後の協議により決定する)。
(6)入札対象電源の弾力的運転(需給運用)
一般電気事業者に対し卸供給を行う電源について、特定規模電気事業者(以下「新電力」と
いう。)や卸電力取引所へも同一の電源から電力の併売を行うことを認め、販売先の多様性を
確保することは、1発電事業を営む上での様々なリスクへの対応力を高め、発電事業の安定性
に寄与すること、2事業の安定性が増すことで、発電事業への参入を促す効果があること、3
一般電気事業者のみに供給をする場合に比べ、より規模が大きく効率の良い電源の設置により
効率的な設備形成に寄与すると考えられること等から、発電事業者のみならず入札実施会社に
とっても有益であり、また、電力需給の緩和や卸電力市場の活性化に寄与する等、社会全体に
とっても有益である。
こうした観点を踏まえ、入札対象電源の弾力的運転については以下の通り整理する。
(a)入札実施会社が策定する入札要綱において、容量(kW)での契約も含め、入札分以外
に係る卸売供給電源の電力供給先の自由度を確保できること、夜間・休日等における発電余
力を新電力や卸電力取引所等を通じて売却できること(いわゆる「余力活用」)を明らかに
する。
なお、発電事業者が、新電力や卸電力取引所等を通じて売却すること等により、その保有
する電源の余力活用を行う場合、入札実施会社が発電事業者に支払うべき料金の全部又は一
部の割り戻しを求めることは、適当ではない。
(注記) 平成23年11月に資源エネルギー庁が策定・公表した「卸・IPP電源の発電余力活
用の具体的スキームについて」は、あくまで、余力活用を前提としていない既存の卸供給
契約において余力活用を可能とする場合の考え方を示したものであって、余力活用を前提
とした今回の火力入札に基づく卸供給契約においては、余力の活用による収益をあらかじ
め考慮して応札するものと考えられるため、これを適用することは、適当ではない。 8(b)ELD(経済負荷配分)運転、AFC(自動周波数制御)運転、ガバナフリー運転やD
SS(起動停止)等の需給運用に参加する電源については、電源の需給運用への貢献の度合
いに応じて、加点評価することとする。
(c)入札対象電源が、余力部分について取引所における取引を活用し売電することを可能と
するため、通告変更期限は、ベース型電源については週間計画通告期限の前日まで、ミドル
型、ピーク型及び予備力型電源については、遅くともスポット取引の入札日の前日(原則と
して2営業日前)までを基本型とし、より直前の通告変更に対応できる電源については加点
評価することとする。ただし、需給が厳しい場合は、発電事業者との協議により、発電事業
者の他の売電契約に影響しない範囲で、上記の期限以降の通告変更により電気の供給を受け
ることを可能とする。(d)今後の再生可能エネルギーの大量導入への対応を考慮すると、
調整力確保等の観点から、
AFC運転、ガバナフリー運転やDSS等の電源が必要となることも考えられる。入札実施
会社は、将来の需給運用を考慮し、ELD運転を含む需給運用への参加可否の項目を入札要
綱に設けることを可能とするが、その理由について説明することとする。
(7)供給期間
発電事業は巨額の投資を伴う事業となり確実な資金回収が必要であることや、入札実施会社
が自社応札する場合は入札実施会社の自社電源に代替しうる電源として確保することから、長
期契約ができる必要があるが、一方、長期契約では状況変化に柔軟に対応することが困難であ
ること、卸電力市場の流動性が低下すること等のデメリットも考えられる。
こうした状況を踏まえ、供給期間は15年間を原則としつつ、応札者の希望があれば15年
未満又は15年を超える期間の応札も可能とする。なお、供給期間の異なる電源の評価におい
て公平性、透明性を担保する観点から、評価の方法を事前に公表することが適当である。
(8)上限価格について
入札実施の目的が、競争原理を導入して安価な電源を調達することにより電力供給の効率化
を図るものであることを踏まえれば、入札実施会社が自社応札する場合を含め、上限となる価
格は自社で電源を設置する場合に要すると考えられるコスト以下に設定されることが望ましく、
こうした観点についても、具体的な基準を策定する際に配慮する必要がある。
(a)入札実施会社が自社応札する場合
落札した場合に実際に設置される電源の原価に基づき、他の応札者と同様の方法により算
定する。落札価格が電気料金算定上の適正な原価とみなされることから、ここで設定される
上限価格は、能率的な経営の下における適正なコストを前提とする必要がある(この場合、
事前に上限価格を公表することは要しない)。
(b)入札実施会社が自社応札しない場合 9特定の電源設置を入札電源の購入により直ちに取りやめるものではないため、入札実施会
社が自らの開発電源を中長期的に調整し、
火力電源の一部の開発を取りやめることを想定し、
入札対象電源と類似の時期に運転開始する予定の火力発電所の平均的なデータや、至近の電
源開発に係る実績コスト等を参考に設定することとする。
なお、上限価格としては、発電に係る費用の他、電源線建設費用等の系統アクセスコスト
もこれを考慮したものとすることが適当である。
上限価格の実際の算定に当たっては、基本諸元を示した上で、資本費、燃料費、運転維持
費に分けて算定した発電原価に、
系統アクセスコスト、
CO2対策コストを加えて設定する。
(事前に上限価格を公表するか否かは、応札の見込み等応札者間において競争が十分に生じ
るかを踏まえ、入札実施会社が選択できるものとする)
(i)基本諸元 :耐用年数、利用率、所内ロス、割引率
(ii)資本費 :建設費、土地代、減価償却方法を前提に、減価償却費、資金調達費、固
定資産税等を算定
(iii)燃料費 :必要燃料量、初年度燃料価格、燃料価格変動率により算定
(iv)運転維持費:運転員経費、修繕費、委託費、一般管理費、公租公課(事業税・法人税)等(v) 系統アクセスコスト:平均的な流通設備建設費用
(vi) CO2対策コスト:現在のCO2クレジットの市場価格や国際的指標の見通しを元に
算定等
(注記)燃料費とCO2対策費用の将来見通しについては、国際エネルギー機関(IEA:
International Energy Agency)が毎年発表している World Energy Outlook(WEO)に
おける化石燃料の輸入価格とCO2価格の見通しが、国際的な指標として参考となる。
なお、入札実施会社が自社応札しない入札の場合で、入札の結果、応札事業者が提示する応
札価格がすべて上限価格を超えるものであった場合(この場合、通常は応札者なしで入札不調
となる)、入札条件を変更して再入札を実施するか、入札実施会社が自社応札する形式での入
札を改めて実施することとする。
(9)応札条件及び評価項目・基準の設定及び事前公表
応札条件及び評価項目・基準については、入札制度の透明性確保のためにも、可能な限り具
体的、客観的、定量的な基準により設定されたものであり、かつ、あらかじめ公表されること
により入札を検討する者にとっての予見可能性が確保されたものであることが必要である。ま
た、入札制度の透明性確保のためにも、可能な限り基準・重み付けの考え方について説明され
ることが必要である(詳細は「6.評価及び落札者の決定の方法」を参照)。
(10)落札者が入札実施会社以外の者の場合の契約期間終了後の扱い
落札した発電事業者(以下「落札者」という。)が入札実施会社以外の者の場合の契約期間
終了後の扱いについては、優先交渉権を規定する等といった制限を設けてはならず、期間終了 10前の契約量の全部又は一部の電気を、引き続き入札実施会社へ卸売りすること、他の一般電気
事業者へ卸売りを行うこと、新電力へ卸売りを行うこと、卸電力取引所を通じて卸売りを行う
こと等、落札者の判断で自由に電気の供給先を選択することが可能であることを、入札要綱及
び標準契約書において明確化する。
(11)契約違反、契約解消等の取り扱い
落札者が契約違反した場合(計画遅延等)や、契約を解消する場合に、その事由を勘案しつ
つ、一定のペナルティを課すことは、モラルハザードを防止する観点からも合理的である。こ
うした観点から、落札者に対し契約保証金や違約金を課すことは可能とする。
- ただし、契約保証金については、発電事業者のイニシャルコストの増加として事業者の資
金繰りを圧迫する要因ともなることから、参入を阻害する条件にならないよう配慮する必
要がある。
- また、天変地異その他の、落札者の責めとならない、客観的に見て予測困難なやむを得な
いと判断できる事由により、発電所建設の見通しを立てることが事実上困難になる場合は、
上記の契約保証金等の支払いは免責又は軽減されるべきである。
- 本指針に基づき火力入札を実施した電源については、自社電源の代替として通常の他社購
入電源とは異なる性質を帯びると考えられるため、営業運転開始後の解約に対しては、解
約申出の期限を代替供給力確保のためのリードタイムを考慮した時期とすることや、解約
と同時に設備所有権を移転する事業方式とすることを規定する等、通常の契約条件とは異
なる規定を置くことを可能とする。
5.実効性・競争性の確保策
新しい火力入札の目的が、競争原理を導入して安価な電源を調達することにより電力供給の効率
化を図るものであることを踏まえれば、入札要綱策定や落札者の決定時において、実質的な競争が
生じるような入札となるよう配慮する必要がある。
(1)本制度についても、原則として入札実施会社が入札募集及び評価・決定を実施することが適
切であるが、
(a)本指針を基本的な入札ガイドラインとし、これに基づいて入札実施会社が具体的な入札
手続きを実施すること
(b)入札仕様・評価方法については、入札要綱の確定・公表前に提案募集(RFC:Request
for Comments)を実施することとし、入札実施会社は提案内容についての回答を公表し、提
案内容を踏まえ反映できるものは反映することで、あらかじめ競争阻害的な要件を排除する
こと
(c)一定の範囲において競争当事者以外の中立的機関が入札プロセスに関与及び検証し、透
明性・公平性を確保すること
といった、公平性や競争性を確保するための措置が必要となる。 11(2)入札実施会社自らが応札するか否かにかかわらず、中立的機関は、入札要綱の策定・提案募
集実施、応募案件の評価・落札者の決定等の各段階において、透明性・公平性を確保する観点か
ら関与することが適当である。
(3)中立性確保の必要性、中立的機関に求められる機能等を踏まえれば、中立的機関は有識者に
より構成される委員会とし、入札仕様等に係る提案募集後の入札要綱の確定・公表、応募案件の
評価・落札者の決定等の際に、意見を聴くという体制が適当と考えられる。
よって、本指針に基づく中立的機関として、火力電源入札ワーキンググループ(以下「火力電
源入札WG」という。)を総合資源エネルギー調査会の下部組織として設置し、入札実施会社が
作成する入札要綱案及び評価報告書案の審査等を行うものとする。
6.評価及び落札者の決定の方法
(1)応札条件及び評価項目・基準の設定方法の詳細
提出された提案書の評価は、可能な限り具体的、客観的、定量的な基準により設定された応札
条件及び評価項目・基準により実施される必要がある。具体的な項目は以下の通り。
(a)応札の最低条件
1上限価格 - 入札実施会社が設定した上限価格(4.
(8)を参照)を下回る(上
限価格を含む。)。
2供給可能期間 - 15年間を原則とする。
3技術的信頼性 - 応札者が発電実績を有すること又は発電実績を有する者の技術的支
援等により電力供給を継続的に行う上での技術的信頼性が確保され
ていること。
4利用率変動許容性- 年間利用率が基準利用率から±10%まで調整可能であること。
5遵守すべき基準 - 設置される発電設備は、電気事業法、計量法、環境関係諸法令(大
気汚染防止法、環境影響評価法 2
等)等、発電事業に関連する諸法令
(政令、省令、技術基準等を含む。)を遵守していること。
6系統連系技術要件- 電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドラインに適合している
こと。
(b)評価項目
評価項目については、価格要素の他に非価格要素による評価を可能とし、非価格要素につ
いてもポイント制等により客観化し、価格要素と併せて自己判定し得るシステムとすべきで2特に、CO2に係る環境影響評価においては、
「環境影響が、実行可能な範囲内で回避又は低減されている
か」、「京都議定書目標達成計画との整合が図られているか」について検討されている。前者に関し、新た
に設置される設備についてはBAT(適用可能な最善の技術)の適用が条件となることから、そのような
設備を導入する必要があることについては、入札実施会社が入札要綱において明らかにする必要がある。
また、後者については、今後策定される予定の当該計画の後継計画等との整合が図られているかについて
検討されることになる。 12ある。この際、価格要素と非価格要素の評価に当たっての重み付けの割合は、効率的電源の
確保という観点から価格要素がより反映(価格要素が概ね8割以上)されるものとすること
が必要である。
(i) 価格要素は、原則として以下のとおり。
1電源の入札価格(減価償却費を考慮した契約期間の平均価格とする)
2系統アクセスコスト
(注記)現行制度上発電事業者のコストとして取り扱われる電源線の敷設費用等(特定負担分)
については、「1電源の入札価格」として応札価格に含めることとし、発電事業者の特
定負担とする。一般電気事業者は、事前に行う接続検討により算定した電源線の敷設費
用等を、発電事業者に提示するものとする。なお、応札締切後に状況変化が生じた場合
には、中立的機関に対してその理由を明らかにした上で、事前に行う接続検討により算
定された電源線の敷設費用等の額と異なる額を算定し、これを「1電源の入札価格」に
反映することも可能とする。この場合、入札実施会社は、あらかじめ入札要綱にその旨
を明記するとともに、価格への反映方法についても記載するものとする。3
(注記)発電事業者のコストとして取り扱われない系統増強費用(一般負担分)については、応
札価格には反映されないものの、託送料金の一部として最終的な需要家負担につながる
ことから、落札者の決定時において考慮されることが望ましく、評価の際に、事前に行
う接続検討により算定された系統増強費用により調整することが適当である。なお、応
札締切後の状況変化が生じた場合には、中立的機関に対してその理由を明らかにした上
で、事前に行う接続検討により算定された系統増強費用の額と異なる額により調整する
ことも可能とする。この場合、入札実施会社は、あらかじめ入札要綱にその旨を明記す
るものとする。4
3需要地近接性 - 託送供給約款における取扱いに準じる。
4振替供給に必要な料金(入札実施会社の供給区域外に電源を設置する場合)
5環境特性 - 次の(イ)、(ロ)のいずれかのうち応札者が選択する手法により評価
することとする。
(イ)入札実施会社が自社の最終的な排出係数の調整を行うことを前提に、
入札実施会社の全電源CO2排出原単位への影響を、あらかじめ入
札実施会社が算定した基準(現在のCO2クレジットの市場価格や
国際的指標の見通しを元に算定)により価格評価(評価過程のみに
適用)。
(ロ)発電事業者側でCO2クレジット調達すること等により、排出係数
を調整した上で応札し、そのための費用は「電源の入札価格」に算
入。
3 発電事業者は、事前に行う接続検討により算定された敷設費用等の額と異なる額により調整することがあ
り得る旨明記された入札要綱に基づく入札に応札した場合、これを承諾した上で応札したものとみなす。
4 同上。 13(ii) 非価格要素については、入札実施会社ごとの事情により様々なものが考えられるが、
一例を示すと以下のとおり。評価基準及び調整単価については、入札要綱において事前
に公表することが必要である(評価過程のみに適用)。
1運開時期の調整 - 調整を行う場合の優先順位に関するルールの事前開示及びそ
の調整に伴う費用の補償を前提に3年以内まで調整可能であ
る者を加点評価。
2需給運用の弾力性 - ELD運転、AFC運転、ガバナフリー運転や起動停止(DSS)等が可能な電源を、
それぞれ需給運用への貢献の度合い
に応じて、複数段階で加点評価。
3通告変更期限の弾力性- 前日又は当日の通告変更に対応できる電源については加点評
価。
4利用率変動許容性 - 入札実施会社と落札者の協議により±10%を超える年間利
用率の変動を受け入れられるものを評価する等。
5用地確保等の確実性 - 用地を既に取得している者又はリース契約を締結している者
を加点評価。また、温排水対策の確実性についても評価。
6燃料調達の確実性 - 燃料調達に関する具体的計画を有している者を加点評価。
7事業継続の確実性 - 発電事業者の事業継続の確実性(信用力等)について評価。
(2)応札価格の考え方について
応札価格は、受給期間平均発電単価とし、入札要綱の記載に沿って資本費 5
、燃料費、運転維持
費別に提示することとする。応札価格の設定については、前制度における入札の結果参入した発
電事業者の中には、固定費・可変費比率を調整して応札価格を設定したために燃料価格や為替レ
ートの変動に対応できず逆ざやが発生しているものもあるため、可能な限り実際のコストに基づ
いた応札価格を設定することが推奨される。また、こうした適切な価格設定を行うことにより、
将来的に再生可能エネルギーの導入拡大によって発電事業者の電源が抑制される状況が生じた場
合にも、抑制に伴う機会損失は中立化される。
なお、上限価格との比較を容易にするためには、必要な範囲で上限価格と同様の前提条件(エ
スカレーション率や割引率等)で算定することが必要となる。特に、燃料費については、為替レ
ートや世界規模での需給状況等に大きく左右され、予測が難しいことから、上昇率については入
札実施会社と同様の諸元を用いることを原則とする。
(3)落札者の決定の方法及び容量別の応札価格の設定について
(a)落札者の決定方法について
落札者の決定方法については、電源の入札価格に6.(1)における価格要素及び非価格
要素を反映したものを評価額として、評価額の安いものから順位付けをし、募集枠に到達す
る電源までを落札者とすることを原則とする。ただし、当落線上の電源の扱いについては、5耐震、浸水防止(津波対策)
、防火等の災害に対し、適切な技術的対策を講じるための費用が織り込まれて
いることが前提となる。 14入札実施会社の中長期の電源計画の状況や募集規模を超過する度合い等により左右され得る
ことから、例えば、以下の手法1〜3のうち、入札実施会社が選択する手法により決定する
こととする。また、選択する手法は、入札要綱において明確化することが適切である。
手法1:電源Aの容量を落札対象に含めると落札電源の総容量は募集枠を超えることになるが、
電源Aの評価額は上限価格を下回るものであり、
電源Aのうち募集枠を超過する部分も
中長期的には必要な電源であると考えられることから、電源Aを落札者とする。
手法2:電源Aの容量(X)のうち、募集規模を下回る部分のみを必要な容量(Y)と考える
と、電源Aの実質単価(資本費、運転維持費にY分のXを乗じたものに燃料費を加える
等して算出)
は評価額を上回ることになると考えられるため、
電源Aの次に評価額の低
い電源Bの評価額(あるいは実質単価)と電源Aの実質単価との比較により、より安い
電源と判断されたほうを落札電源とする
(イメージ図では電源Bが落札者となるが、電源Aの実質単価が電源Bの応札価格(あるいは実質単価)を下回る場合は、電源Aが落
札者となる)。
手法3: 電源A、
電源Bいずれも募集規模の枠にも収まらないため、
いずれも落札者としない。
【イメージ図:落札者の決定方法】
(b)容量別の応札価格の設定について
前項の通り、
当落線上の電源の扱いについては入札実施会社の判断による部分が大きいが、
その判断においての透明性を高めるため、各応札者が希望する場合に、容量別に複数の応札
価格を設定することを認めることとする。これにより、例えば、同一敷地内に2基以上の電
源を設置することにより応札する場合、全ての電源が落札される場合と1基しか落札されな
い場合とで応札価格に差を設けるといった対応が可能になる(本規定は、入札実施会社が自
社応札する場合の単価にも適用することとする)。 15(4)評価報告書の作成・提出・再評価
原則として入札実施会社が入札要綱に基づき応募案件を評価し、落札者を決定するが、入札実
施会社は評価報告書案を落札者の公表前に中立的機関に提出し、
中立的機関が入札要綱に基づいて
評価が行われていないと認めるときは、入札実施会社は再評価を実施するものとする。
(5)契約料金
契約料金については、落札者ごとに、原則として応札価格と同一の価格とする。ただし、事前
に行う接続検討により算定された電源線の敷設費用等の額と異なる額により調整することがあり
得る旨明記された入札要綱に基づく入札を実施した場合には、この限りではない。
7.入札結果の公表
入札制度を通じた競争を促進するためには、その過程の透明性を高めるとともに、潜在的な応札
者に対し適切な情報提供を行うことによって、入札への参入の円滑化とその拡大を図ることが必要
である。また、電気事業の効率化の観点から、入札を通じた電源の調達によってどの程度の電力供
給コストの低減効果が見込まれるかを可能な限り国民に対し明らかにすることにより、一般電気事
業者の原価低減のための努力及び積極的な入札の実施を促進することが重要であると考えられる。
以上を考慮し、入札情報の公開については、以下のとおり行うのが適当である。
(1)応札結果
応札結果は、入札を通じた卸供給への将来における参入可能性を示すものとして重要なものと
考えられる。
このため、
入札実施会社は募集を締め切った後、
応札のあった卸供給全体の件数と規模に加え、
業種ごと、運転条件ごと、燃料種ごとの件数と規模の分布等を公表することが望まれる。
(2)落札結果
落札者に係る情報としては、卸供給契約締結後、落札者の機器調達等に支障を来すことのない
適切な時期に、入札案件ごとに入札実施会社が、以下の内容について公表することとする。
1卸供給を行う落札者名、当該落札者の行う卸供給の規模、運転条件、利用率及び燃料種
2上限価格を事前に公表する場合においては、卸供給の契約価格の平均額と、当該平均額と上限
価格のかい離率(ただし、落札者が1社のみの場合は、この限りではない)
3上限価格を事前に公表しない場合においては、卸供給の契約価格の平均額又は卸供給の契約価
格と上限価格のかい離率(入札実施会社が選択できるものとし、また、落札者が1社のみの場
合は、この限りではない)
(注記)火力入札の実施状況等を踏まえ、必要に応じて見直すこととする。 16III.入札実施フロー
以上を踏まえ、新たな火力入札実施の手順を概観すれば次のとおり。
電気事業法第29条の規定に基づき経済産業大臣に提出される電力供給
計画において、入札実施会社が、将来の電源開発計画、その内訳としての
入札対象量(枠)、募集時期、調達期間を可能な限り明らかにした上で、
該当部分を各社のホームページに掲載する等、広く一般に公表。
入札実施会社は以下の内容を含む入札要綱案を策定する。
1 入札対象規模、供給を開始する時期
2 応札する案件が充たすべき最低条件
3 評価項目
4 標準契約書
5 系統の連系制約に関する情報
入札仕様・評価方法について、入札前に提案募集(RFC:Request for
Comments)を実施することとし、入札実施会社は提案内容についての回答
を公表し、提案内容を踏まえ反映できるものは反映することで、あらかじ
め競争阻害的な要件を排除することとする。
入札要綱案を中立的機関(火力電源入札WG)に提出。中立的機関(火
力電源入札WG)が、入札要綱案が本指針に合致していないと認めるとき
は、入札実施会社に修正を求める。また、入札実施会社自らが応札しない
場合であって、上限価格を事前に公表しない場合は、入札実施会社が講じ
る入札実施部門と火力部門との間の情報遮断等の措置の実効性・適切性を、
中立的機関(火力電源入札WG)において厳格に審査する。
1 応札者は上記の入札要綱に従って入札実施会社に資料を提出する。
2 入札実施会社自らが応札する場合は、応札締切日の一営業日前日まで
に中立的機関(火力電源入札WG)に資料を提出。
3 入札実施会社自らが応札しない場合であって、上限価格を事前に公表
しない場合は、応札締切日の一営業日前日までに中立的機関(火力電源
入札WG)に上限価格及びその算定根拠となる資料を提出する。
電源開発計画の
策定・公表
入札要綱案の策定中立的機関
(火力
電源入札WG)への提出1
入札要綱の公表
(募集の開始)
入札要綱に対す
る提案募集
応 札概ね6ヶ月程度(目安) 17
(注記)応札締切日から落札者の決定までの間は、入札実施会社が、応札した発
電事業者の電源の系統アクセスコストを算定する作業を行うため、応札
した発電事業者以外の者からの接続検討の依頼や系統アクセス申込みに
対して、これを優先させることとする。
落札候補者を内定した入札実施会社は、評価報告書案を中立的機関(火
力電源入札WG)に提出。中立的機関(火力電源入札WG)が入札要綱に
基づいて評価が行われていないと認めるときは、入札実施会社は再評価を
実施。
IV.本指針の見直し
本指針は、策定時点(平成24年9月)における電力システムを前提に検討されたものである。
一方、電力システムの在り方については、従来のシステムがベストであるとの前提には立たず、
白紙から見直していくこととされ、平成24年2月から総合資源エネルギー調査会総合部会電力シ
ステム改革専門委員会(平成25年7月、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム
改革小委員会に改組)において専門的な検討がなされてきた。同委員会の議論も踏まえ、政府は、
1広域系統運用の拡大、2小売及び発電の全面自由化、3法的分離による送配電部門の中立性の一
層の確保を柱とする「電力システムに関する改革方針」を平成25年4月2日に閣議決定し、電力
システム改革の全体像・方向性を明らかにした。今後はこの改革方針に基づいて、我が国の電力シ
ステムの抜本的な改革が実施されることとなる。
本指針については、上記のような電力システム改革の動向や、火力入札の実施状況等を踏まえ、
不断の見直しを行うことが適当である。
以上
落札候補者の決定中立的機関
(火力
電源入札WG)への提出2
落札者の決定
契 約

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