総合経済対策等についての会見

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【高市総理冒頭発言】

皆様、こんにちは。高市内閣発足以来、国民の皆様が直面する物価高への対策を最優先に掲げてまいりました。国民の皆様に迅速に対策の効果をお届けするため、与野党の皆様と協議を重ね、日本と日本人の底力で不安を希望に変えるべく、強い経済を実現する総合経済対策を先ほど政府与党で決定いたしました。
今回の経済対策では、国民の皆様に迅速に物価高対策をお届けすることを第一としつつ、危機管理投資・成長投資の戦略分野への頭出しとなる予算を措置します。国民の皆様の暮らしを守り、強い経済を作るために戦略的な財政出動を行います。

大きく3つの柱からなります。こちら(モニター)でございます。予算、財政投融資、税制、規制制度改革などあらゆる政策手段を総動員した結果、今回の経済対策全体の規模は一般会計で17.7兆円程度。減税・特別会計を合わせた国費等、いわゆる真水は21.3兆円程度を見込んでいます。内訳につきましては、モニターをご覧くださいませ。

これら真水21.3兆円程度に財政投融資を加えた、国の財政措置等は25.5兆円程度となります。その財源について、税収の上振れや税外収入などを活用してもなお足りない分は、国債発行により賄うことと考えておりますけれども、当初予算と補正予算を合わせた補正後の国債発行額は、昨年度の補正後42.1兆円を下回る見込みであります。財政の持続可能性にも十分配慮した姿となっています。
「責任ある積極財政」はプロアクティブな先を見据えた財政政策ということであり、決していたずらに拡張的に、規模を追求するものではありません。ワイズスペンディングの考え方を徹底し、国民の皆様の暮らしを守り、強い経済をつくるために戦略的な財政出動を行います。日本がいま行うべきことは、行き過ぎた緊縮財政により国力を衰退させることではなく、積極財政により国力を強くすることでございます。IMF(国際通貨基金)が指摘しているように、成長を損なうような拙速な財政再建は、かえって財政の持続可能性を損なうということを踏まえる必要がございます。成長なくして財政の持続可能性は維持できません。次の世代のためにも成長する経済により、企業収益の改善と賃金上昇に伴う個人所得の増加という経済の好循環による税収増を通じて、財政の持続可能性を実現しなくてはなりません。強い経済を構築し、成長率を高めていくことと相まって、政府債務残高の対GDP(国内総生産)比を引き下げ、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保してまいります。

第1の柱でございますが、これは生活の安全保障・物価高への対応です。物価高から暮らしと職場を守るため、各種施策を組み合わせて対策の効果を迅速に国民の皆様にお届けすることを最優先に、きめ細かく対応します。また、エネルギーコストの負担を軽減いたします。いわゆる暫定税率につきましては、政党間の合意を踏まえ、ガソリン税は12月31日、軽油引取税は4月1日に廃止します。これらの廃止に伴い必要となる国及び地方自治体の安定財源を確保しつつ、廃止までの間も補助金を活用することで価格引き下げに対応します。ガソリン暫定税率廃止による減税額は1.0兆円。1世帯平均で年間約1万2,000円程度の負担軽減を見込んでおります。また、物価高により厳しい状況にある生活者を支援するため、来年1月から3月の電気・ガス代を支援します。3か月で1世帯7,000円程度の負担軽減になります。いわゆる103万円の壁については、令和7年度税制改正法により約1.2兆円。納税者1人当たり2万円から4万円程度の所得減税を行います。これは、今年の年末調整に反映されます。また、基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置について、令和8年度税制改正で検討し結論を得ていきます。地域のニーズに応じたきめ細かい物価高対応として重点支援地方交付金を拡充し、2兆円を措置します。これは1世帯当たり平均1万円程度の支援に相当する一般枠に加えて、食料価格高騰を踏まえ、1人3,000円、4人家族でしたら1万2,000円相当を別枠で、特例加算分として措置します。加えて、灯油や水道代の支援、中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備、各種低所得者支援、事業者支援など、推奨メニューの事業を強化します。地方自治体の迅速・効果的な事業実施を促す取組も強化します。公明党の幅広い所得層を対象とした迅速な支援を実施すべきとの御提言や、立憲民主党の物価高・食卓緊急支援金(注1)の御提言も踏まえまして重点支援地方交付金による支援のほかに、こども1人2万円の物価高対応子育て応援手当0.4兆円を盛り込みました。

国民の皆様の命と暮らしを守るため、赤字の医療機関・介護施設を中心に、報酬改定の時期を待たず、前倒しで補助金を医療・介護等支援パッケージにて緊急措置します。処遇改善につきましては、賃上げに取り組む医療機関で働く従事者に対して、プラス3パーセントの半年分の賃上げ、介護従事者全般には月1万円の半年分の賃上げを措置します。加えて診療材料費、病院建て替え、病床数適正化等の経営改善支援を行います。また、官公需の価格転嫁を徹底するということと共に、中小・小規模事業者対策については、政府全体で1兆円規模の支援を行うことといたします。基金も活用し、賃上げに取り組む「100億宣言企業」などによる成長投資支援を抜本的に強化します。加えて、クマ被害対策支援施策パッケージの着実かつ迅速な実施、治安テロ対策強化、外国人問題への対応の強化、公教育再生、教育無償化など、安心できる地域社会の基盤整備にも取り組んで参ります。さらに、国民民主党の経済対策案を踏まえ、長年の懸案であった旧自賠責特会への繰り戻しについても盛り込んでおります。

第2の柱は、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現です。複数年度にわたる事業について、予見可能性を持って取り組んでいただけるように推進いたします。その際、これまでのGX(グリーン・トランスフォーメーション)、 AI(人工知能)・半導体の複数年度の財源フレームに基づく対応に続き、経済安全保障上の重要分野の危機管理投資に関して新たな枠組みの検討に着手します。戦略17分野については、その頭出しとなる予算を措置します。まず半導体、造船、量子、宇宙、情報通信、重要鉱物、サイバーセキュリティ等の戦略分野の官民連携投資、重要物資のサプライチェーン強化等の取組により、経済安全保障の強化を図ります。食料安全保障の確立につきましては、農水産業の構造転換、完全閉鎖型植物工場等の最先端技術の支援、農林水産物・食品の輸出を通じた生産能力向上の支援を行います。エネルギー・資源安全保障の強化については、GX推進戦略に基づく成長志向型カーボンプライシング構想の具体化を通じた計画的支援を行います。また、国土強靱(きょうじん)化実施中期計画に基づく対応等を進め、防災・減災国土強靱化を推進します。そして未来に向けた投資の拡大として、先端科学技術の支援、スタートアップ支援強化、コンテンツ分野等の振興、さらに「攻めの予防医療」を含む健康・医療安全保障の構築、その他の研究開発支援を進めます。

第3の柱として、防衛力と外交力の強化を図り、国民の皆様の安全と国の繁栄を支えます。厳しさを増す国際情勢を踏まえ、防衛力の抜本的強化を進めます。人的基盤の強化等を図り、わが国を守る方々が誇りを持って任務を果たせる環境を整えます。これにより国家安全保障戦略に定める、対GDP比2パーセント水準につきましては、当初予算と合わせて2025年度中に11兆円程度を前倒しして措置します。つまり、追加的に1.1兆円を措置するということになります。米国関税措置への対応については、日米戦略的投資イニシアティブに必要な措置を講ずるとともに、中小企業向けの資金繰り支援や、事業環境整備等により国内経済・産業への影響緩和に万全を期します。
最後にリスクへの備えとして、今後仮に自然災害の発生、更なる物価高、クマ被害の拡大等といった事態が生じた場合の予期せぬ財政需要に迅速に対応し、暮らしの安全・安心等を確保するため、予備費を追加的に確保することといたします。本日決定した経済対策につきましては、国民の皆様にその効果を迅速にお届けすることを第一に、その裏付けとなる補正予算案を編成し、臨時国会に提出し、早期に成立させていきます。これらの取組によりまして、今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。そして日本列島を強く豊かにしてまいります。私からは、以上でございます。ありがとうございます。

(記者)
TBSの光安です。政府は先ほど経済対策を閣議決定しました。物価高対策や、総理が意欲を示す危機管理投資について、改めて狙いを伺います。また一般会計と特別会計、減税分を合わせた予算規模はおよそ21.3兆円となり、一般会計の歳出は前年度を上回ります。高市政権は「責任ある積極財政」を掲げていますが、市場からの信認をどのように得ていきたいお考えでしょうか。さらに、今日で政権発足から1か月となりますが、これまでの政権運営を総理御自身はどのように受けとめられているのか、あわせて今後の抱負についても教えてください。

(高市総理)
ありがとうございます。今回の経済対策は責任ある積極財政の考え方の下、生活の安全保障、特に物価高の問題に早急に対応するとともに、危機管理投資・成長投資により強い経済を実現するために、戦略的な財政出動ということで、必要な施策を積み上げて取りまとめたものでございます。その財源につきましては先ほども申し上げましたが、税収の上振れなどを活用してもなお足りない分は、国債の発行により賄うことになりますが、当初予算と補正予算を合わせた補正後の国債発行額は、昨年度の補正後が42.1兆円でございましたが、これを下回る見込みでございます。財政の持続可能性にも十分配慮したものとなっております。いずれにしましても強い経済を構築し、成長率を高めていくということと相まって、政府債務残高対GDP比を引き下げ、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保してまいります。内閣発足から1か月が経ちました。この間、国民の皆様が直面する物価高への対応、また危機管理投資を肝とする強い経済の実現に向けた取組、そして、ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議(注2)、日米首脳会談、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議(注3)などを通じた外交など、国家・国民のために懸命に働いてまいりました。本日こうして経済対策を取りまとめたことで、当初から最優先課題としてきました物価高対応や、強い経済、強い外交・安全保障の実現に対し、高市政権として一定の方向性を出すことができました。今後は補正予算という形で、この対策を更に具体化させて国会に提出します。これは与野党の皆様と真摯に、丁寧に議論することで、何としても補正予算を成立させ、暮らしの安心を国民の皆様にお届けしたいと思っております。まずはそのことに最優先で取り組ませていただきます。

(記者)
(TBS・光安記者)ありがとうございます。外遊についてもお伺いします。総理はこれから南アフリカで開催されるG20サミットへ出発されますが、日本として何を発信されるのか。ASEAN、APECに続く今回の外遊で、どんな成果を得たいとお考えでしょうか。またG20には中国の李強首相も出席予定ですが、日中関係についてどのような協議を行いたいと考えか。李強氏との会談の調整状況もあわせて伺います。日中関係については「台湾有事が存立危機事態になり得る」とした総理の国会答弁に中国側の反発が出ていますが、このことの受け止めと、答弁を撤回するお考えがないか、改めて伺います。

(高市総理)
これから南アフリカを訪問しまして、G20ヨハネスブルグ・サミットに出席をいたします。G20は、世界のGDPの8割以上を占める主要先進国・新興国が参加する枠組みでございます。今回の会合では、国際経済に加えまして、防災、それから債務持続可能性、エネルギー移行、そして重要鉱物といった国際社会が直面する諸課題について、首脳間で議論をする予定でございます。私からは、我が国の立場と取組をしっかり発信していきます。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして責任あるグローバル・ガバナンスの再構築に向けて、全てのG20メンバーが責任を共有した形で課題解決を進めていくことを呼びかけたいと考えています。加えてこの機会に、参加国の首脳との信頼・協力関係も構築していく考えでございますが、バイ会談につきましては、現在参加国からのオファーを踏まえて調整中でございます。その上で、中国につきましては、先月末、私と習主席との間で、「戦略的互恵関係」の包括的推進と「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性を確認しました。こうした考えに一切変わりはございません。また、御質問にありましたことですが、いかなる事態が存立危機事態に該当するかということにつきましては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合的に判断するということになります。こうした説明は、平和安全法制成立当時の安倍総理以来、政府としては繰り返し述べてきたとおりでございます。私自身もこの答弁を繰り返して申し上げております。政府の立場は一貫しております。以上です。

(注1)「給付金」と発言しましたが、正しくは「支援金」です。
(注2及び注3)「会談」と発言しましたが、正しくは「会議」です。

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