GZEROサミットジャパン2023

挨拶をする岸田総理
挨拶をする岸田総理

令和5年12月5日、岸田総理は、東京都内で行われたGZEROサミットジャパン2023に出席しました。

総理は、挨拶で次のように述べました。

「皆様、おはようございます。内閣総理大臣の岸田文雄です。本日、GZEROサミットが、こうして盛大に開催されますことを、心からお慶(よろこ)び申し上げます。
世界は今、歴史の転換点に直面しています。
ロシアによるウクライナ侵略の継続、イスラエル・パレスチナ情勢の緊迫化、また、米中による技術覇権をめぐる競争。インフレは、我が国を始め世界中の市民生活に困難を与えています。そうした中で、アメリカ大統領選はもちろん、アジア、欧州において重要な選挙が予定されており、2024年は、国際政治において、今後10年の分かれ道となるでしょう。
先月、私は、サンフランシスコで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会合にて、米国・バイデン大統領や中国・習近平国家主席を始めとする各国首脳と会談を行いました。それらの機会には、世界の現実と潮流が、凝縮されていたと感じています。
国が、民間企業が、あらゆるプレイヤーが、あらゆる分野で覇権を争っている。正に、Dr.ブレマーが提唱されるGゼロの世界、私たちが直面する世界です。
分断と協調が複雑に絡み合う時代。日本ができることは何でしょうか。それを端的に示す日本のアクションの例を、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、経済安全保障の3分野を例に、お話いたします。
始めに、デジタル・トランスフォーメーション、DX。今年、私が議長を務めたG7広島サミットでは、広島AI(人工知能)プロセスを立ち上げ、10月には、高度なAIシステムの開発者向けの国際指針と国際行動規範に合意いたしました。今後も、安心、安全で、信頼できるAIのルールづくりを広げるため、G7内外のパートナーと協議を深めてまいります。
次に、グリーン・トランスフォーメーション、GX。先週のCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)では、我が国を始めとした世界で約120の国々が、世界全体で再エネ(再生可能エネルギー)容量3倍及びエネルギー効率改善率2倍という目標に賛同しました。
GXは、再エネ・省エネ(省エネルギー)に留まるものではありません。炭素排出の多い鉄鋼や化学は言うに及ばず、全ての産業に、産業革命に匹敵する大変革と産業構造の組替えを迫るものです。
日本では、こうしたGX推進のために、今後10年間で150兆円を超える官民投資を喚起していきます。国が先行して、20兆円規模の投資促進策を行います。そのために、世界初の国としてのトランジションボンドであるGX経済移行債を発行いたします。世界の成長センターであるアジアは、世界の産業センターであり、この地域におけるGXの成否が世界の将来を決めると言っても過言ではありません。2050年までの4,000兆円とも言われるアジアのGX投資に、世界の資金を集めていくきっかけとしていきます。
あわせて、我が国は、今月には初の首脳会議を東京で行うアジア・ゼロエミッション共同体、AZEC構想を進めていきます。こうした取組を通じて、GXを、アジアそして世界へと広げ、グローバルに、脱炭素、経済成長、そして地政学的なエネルギー安定供給、この3つを同時に実現してまいります。
こうしたDXやGXは、世界各国で繰り広げられる競争や協調の表の面と言えるかもしれません。実態はどうでしょう。私の、ある欧州の友人が言っていました。クリーンエネルギー・サプライチェーンをグローバルに作ることは重要だ。しかし、その供給を一つの国に過剰に依存することは望ましくない。経済的な依存関係を、いつ武器化されるかわからない時代だ。他方で、安さで太刀打ちできないときに、サプライチェーンをどう再構築できるだろうか、このように言っていました。こうして経済安全保障の問題が、交差してきます。
G7広島サミットでは、初めて経済安全保障を、本格的に議題として取り上げました。そして、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化に向けて信頼性の原則が不可欠である、ということを確認いたしました。こうした議論も踏まえながら、公正な市場・事業環境をグローバルに整備し、信頼あるサプライチェーンのレベル・プレイング・フィールドを具体的に確保すること。米国や欧州といった同志国と共に、こうした考え方を具体化するべく議論を加速させます。
グローバル・サプライチェーンの構築を議論する上で、グローバルサウスと呼ばれる国々に目を向けないわけにはいきません。これまで私自身が各国の首脳と対話する中で感じたこと。それは、彼らが、グローバル・サプライチェーンの一翼を担うことを、強く希望しているということです。それも、DX・GXを軸とした時代の最先端を行く産業、言わば未来産業においてということです。
本年3月に、私は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのための新たなプランを発表いたしました。インド太平洋流のアプローチ、すなわち、多様な価値観、文化、歴史を受け入れ、相手を尊重し、相手に寄り添い、対話を通じて協力を推進する。そして、様々な課題に、現実的・実践的に対処していく。こうした考え方で、協力を具体化していきます。
FOIPのための新たなプランの具体化に向け、私は、本日この場で、グローバルサウス未来産業フラッグシップ・プロジェクト構想を立ち上げることを表明いたします。
意欲あふれる日本の企業が、米国を始めとした同志国の企業と共に、グローバルサウスにて、最先端のビジネスモデルを生み出す。そして、世界中で課題解決に貢献し、信頼と存在感を勝ち取っていく。ひいては、国際経済秩序の安定化にもつながっていく。官民が連携したフラッグシップとなるべきプロジェクトを、幾つも作り出してまいります。
本年、我が国は、G7議長国として、DX・GX・経済安全保障の分野で、進むべき方向性を、同志国と共に、世界にお示ししました。
冒頭、私は、皆さんに問いかけました。分断と協調が複雑に絡み合う時代に、日本は何ができるか。強い意思と能力をもって、世界中の仲間と共に、秩序なき世界を切り拓(ひら)いていく信頼できるパートナー、これが我が国のあるべき姿です。先進国と途上国の橋渡しや、政府と民間企業の橋渡し。そうした役割を通じて、積極的に貢献してまいります。日本は、仲間と共に、Gゼロの世界における様々な課題に、果敢に取り組んでまいります。
最後になりますが、ここにお集まりの皆様の議論が、世界を照らす一筋の光となることを、信じてやみません。以上、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。」

これまでの総理の一日

タグ一覧

すべて見る
関連ページ
総理の一日一覧ページに戻る