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資料シリーズ No.113
留学生の就職活動―現状と課題―

平成25年3月29日

概要

研究の目的

今後のわが国社会のためには、多様な価値観、経験、ノウハウなどを持った高度外国人材の就業促進が重要である。留学生は高度外国人材の「卵」であり、日本企業への就職を積極的推進する必要がある。留学生の日本企業への就職状況を見ると、日本企業への就職を希望する留学生のうち、ほぼ半数程度しか就職できていない。そのため、留学生の就職活動の現状を明らかにし、日本企業への就職促進を阻害している要因を、主として受入側の企業と送り出す側の大学の両面から、明らかにする。

研究の方法

  1. 公表統計の観察

  2. 文献サーベイ

  3. 企業ヒアリング調査、大学ヒアリング調査

主な事実発見

(1)公表統計の整理から、以下のようなことが観察される。
  1. 入国目的が留学の新規入国者数は、2010年までの5年間で6万人、国籍(出身地)で多いのは、中国、韓国等である。2010年末の留学の在留資格の外国人登録者数は20万人を超えており、国籍(出身地)では、中国が約3分の2、韓国・朝鮮が約7分の1を占める。
  2. 外国人留学生の6割程度が日本での就職を希望している。仕事内容では、「海外業務」「翻訳・通訳」「販売・営業」「貿易業務」を希望する留学生が多い。さらに、外国人留学生が希望する就職支援の内容としては、「留学生を対象とした就職に関する情報の充実」「企業においてもっと留学生を対象にした就職説明会を開催してほしい」などが挙げられている。
  3. 2010年に日本の大学や大学院を卒業(修了)した外国人留学生のうち、3分の2が日本に留まり、そのうち3割弱が日本で就職している。就職に伴う在留資格の変更の状況を見ると、「人文知識・国際業務」の構成比が7割、「技術」が続いている。国籍は、中国(台湾、香港及びマカオを除く)、韓国、中国(台湾)、ベトナム、ネパール等などである。
  4. 留学生の就職先企業の業種別構成は、非製造業が7割以上を占めている。その内訳は、商業・貿易、コンピュータ関連、教育などが多い。製造業の内訳を見ると、電機、機械、食品などが多い。外国人留学生の就職先企業の従業員規模構成は、従業員数50人未満が半数近くで、これを含め300人未満の企業等に就職したが3分の2を占める。留学生の就職先での職務内容別構成は、翻訳・通訳が3割、販売・営業が2割強、情報処理が1割弱などとなっている。
  5. 外国人留学生の日本企業への就職に関する先行調査研究は、大学における留学生の受入れ環境と教育、留学生の生活実態と意識(留学の目的、キャリア展望、生活)、留学生の採用及び雇用管理、帰国後の状況・キャリアの4つに整理できる。そして、大学における留学生に対する就職前指導体制が未確立であること、企業において外国人留学生が日本人学生と同様に採用・評価されており、日本語運用能力と専門性の両方を育成する必要があること、また、日本企業の新卒採用試験が将来の日本企業の管理職候補者となる資質等が課題であり、これらが外国人留学生の日本企業に就職・勤務する上での大きな違和感につながっているとの指摘がある。

図表 2005年度(上)と2010年度(下)の外国人留学生・就学生の進路
日本国内での就職した留学生は減少している。

[画像:図表 2005年度の外国人留学生・就学生の進路]

[画像:図表 2010年度の外国人留学生・就学生の進路]

図表拡大表示

(注記)リンク先で拡大しない場合はもう一度クリックしてください。

資料出所:独立行政法人日本学生支援機構「外国人留学生進路状況」より作成。

注:2005年度と2010年度とでは集計項目が異なっている。また、真ん中の列のボックス( )内の構成比は「総数」に占める各項目の比率、右の列のボックス( )の構成比は「日本国内」の人数に占める各項目の比率である。

(2)企業および大学からのヒアリング調査から、
  1. 留学生就職に対する本格的な取り組みは、企業・大学双方とも、始まったばかりであり、両者とも摺り合わせ段階にあると考えられる。
  2. 企業側に求められることとしては、留学生採用情報として「望ましい人物像を、より具体的に明確にすること」である。その上で、採用後は、なるべく早い段階で、将来の具体的なキャリアプランについて、企業側・従業員側の双方で検討の上、納得性を高める工夫をすることが望ましい。企業側の希望どおり、これまでにはない「異質な人材」として採用する限り、そうした資質を活かせる社内の仕組み、特に、現場では中間管理職の指揮命令下に入る訳であり、実際に仕事の指導をする管理職に対する指導・支援も、非常に重要である。
  3. 大学に求められることとしては、今後、もし留学生の就職が増えてくるとすれば、大学内部で日常生活を支援する部署(国際センターなど)と就職の支援をする部署(キャリアセンターなど)とが、より密接な連携をとることが必要となろう。また、ハローワークなど、外部行政機関との連携を深めていくことによって、よりスムースな就職支援に結びつく可能性がある。
  4. 企業、大学が双方で、就職をよりスムースに運ぶ工夫を重ねることで、今後、わが国企業への留学生受け入れは増加していくであろう。留学生本人も含めて、皆が徐々に経験を積んで慣れていくことが重要である。その上で、異質だった人材が一定数・一定比率に達したとき、企業側の人事管理体系、そして、元・留学生の家族を社会で受け入れる体制なども、非常に重要な検討課題となる。

政策的インプリケーション

一つは、就活時期の設定の問題で、就活時期・期間の弾力化により、留学生が多くの企業に出会えるチャンスを増やすためにも、期間の設定は工夫の余地があると思われるが、これらは、企業と業界団体が検討すべき課題であろう。

いま一つは、国によるさらなる支援の要望である。今後、留学生倍増を目指すことが国家としての方針であるのなら、留学生の就職に関しても、基本的な枠組みや指針の提示、サポートなども必要であろう。この点は、関係省庁の連携を含め、今後の検討課題であろう。

また、ハローワークとの連携も重要であろう。聞き取り対象のある大学では、連携を強化しており、ハローワークの利用の仕方を学生に伝え、外国人雇用サービスセンターの見学なども行っている。キャリアセンターもスタッフが限られて、日本人学生への対応もあるので、留学生たちに対するケアで足りない部分を、こうした連携で補完することが求められよう。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「我が国を取り巻く経済・社会環境の変化に応じた雇用・労働のあり方についての調査研究」

サブテーマ「我が国の経済社会の変化と外国人労働者に関する調査研究」

研究期間

平成24年1月〜11月

執筆担当者

中村 良二
労働政策研究・研修機構 主任研究員
渡邊 博顕
労働政策研究・研修機構 副統括研究員

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