Microsoft Word - 02-01-01_FS181

1WHO ファクトシート 181
1998 年 5 月改訂
電磁界と公衆衛生
国際電磁界プロジェクト
近年、個人用あるいは産業用および商業用の目的で用いられる電界および磁界(EMF)の発生源
の数および多様性は前例のない増加を示しています。
そのような発生源には、
テレビ、
ラジオ、
コンピュータ、携帯電話、電子レンジ、レーダ、産業・医療・商業で用いられる機器がありま
す。
これらの技術は人々の生活をより豊かに、より便利にしています。現代社会はコンピュータ、
テレビ、ラジオなしでは考えられません。携帯電話は、都市および地方の両方において、個人
間の通信能力を大きく高め、医療および警察の緊急救援の派遣を容易にしました。レーダは飛
行機の運行を大変安全なものにしています。
一方、これらの技術は、その使用に伴う健康リスクへの懸念をもたらしています。そのような
懸念は、携帯電話、電力線、警察の速度規制用レーダガンなどの安全性について提起されてい
ます。これらの機器から放射される電磁界へのばく露が、がん、不妊、記憶喪失、行動異常、
小児の発育と行動における有害な変化など、健康への有害な影響をもたらす可能性があると科
学的報告は示唆しています。しかしながら健康リスクの本当の大きさは不明であり、ある種の
電磁界に関しては、環境中で見られるレベルでは健康リスクは非常に低いか、または存在しな
いかも知れません。
さらには、非電離放射線(ラジオ波やマイクロ波など)と電離放射線(エックス線やガンマ線
など)の生物学的影響について混同もあります。
電磁界ばく露による健康影響の可能性への懸念と電力供給および無線通信設備の発展との利害
対立は少なからぬ経済的影響に至ります。例えば、多くの国の電力会社は高圧送電線の敷設に
おいて、
人口過密地域を迂回するよう変更するか、
建設を中止しなければならなくなりました。
基地局からの RF(訳者注:無線周波)放射が小児がんを引き起こすかも知れないという懸念の
ために、携帯電話基地の設置は遅れが出るか、または住民の反対にあっています。例えば米国
では必要とされる基地局総数の 85%をこれから建設しなければなりません。
環境中の電界および磁界を、現状で一般に受け容れられている低いレベルにまで大幅に低減す
る対策には費用がかかります。
電磁界と健康に関する懸念のために、
米国一国の経済だけでも、
年間数 10 億ドルを費やしていると見積もられます。
しかし、
もし許容できない健康リスクが本
当に起きるならば、高額な防護対策が必要になるでしょう。
多くの加盟国において、数と多様性の増加が続いている電磁界発生源へのばく露による健康影
響の可能性について公衆衛生上の関心が大きくなっていることを受けて、1996 年 5 月、世界保
健機関(WHO)は電界および磁界へのばく露の健康および環境への影響を評価する国際的プロ
ジェクトとして、国際電磁界プロジェクトを発足させました。
国際電磁界プロジェクトは、0 から 300 ギガヘルツの周波数範囲の静的および時間変化する電
界および磁界へのばく露の健康リスク評価に関する科学的に適切な勧告を行うために、主要な
国際組織および各国の当局および研究組織が有する現時点での知識と利用可能な資源を集め、 2結びつけます。この周波数範囲には、静的(0Hz)、超低周波(ELF, 0Hz-300Hz)、中間周波(IF,
300Hz-10MHz)
、無線周波(RF, 10MHz-300GHz)の電磁界が含まれます。
国際電磁界プロジェクトは、信頼できる、独立性を保った文献レビューを提供すること、互換
性と比較可能性のある方法論を用いた研究実施プロトコル確立と電磁界分野の健康リスク評価
の向上につながるような重点研究の推進により科学的知識が欠落している部分を確認し、補充
することを託されています。国際電磁界プロジェクトは以下のことを行います。
 電磁界ばく露の生物学的影響に関する科学文献のレビュー
 健康リスク評価を改善するために研究が求められている知識の欠落部分の同定
 質の高い電磁界研究の重点課題の推進
 必要とされた研究が完了した後に、電磁界ばく露の健康リスクの正式な評価
 国際的に許容され得る、統一した基準の推進
 リスク認知、リスクコミュニケーション、リスク管理に関する情報の提供
 各国の行動計画や非政府組織への助言
国際電磁界プロジェクトを支援している国際組織、独立的研究組織、各国政府の代表で構成さ
れている国際諮問委員会(IAC)が監視を行います。
全ての活動は WHO 事務局によって調整され、
促進されています。
国際電磁界プロジェクトに参加し、支援している国際組織(アルファベット順)は、欧州委員
会(EC)、国際がん研究機関(IARC)、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)、国際電気技術委員会
(IEC)、国際労働機関(ILO)、国際電気通信連合(ITU)、北大西洋条約機構(NATO)、国連環境計画
(UNEP)です。
科学的作業は、ICNIRP と以下に挙げる独立的な WHO の科学協力機関によって運営されていま
す:国立放射線防護委員会(英国)
、連邦放射線防護庁(ドイツ)
、カロリンスカ研究所(スウ
ェーデン)
、食品医薬品局(米国)
、国立環境健康科学研究所(米国)
、国立労働安全衛生研究所
(米国)
、国立環境研究所(日本)。40 ヶ国以上の政府が、国際電磁界プロジェクトの活動に貢献もしくは関心を示しています。
国際電磁界プロジェクトの科学的活動には、各種の電磁界とその応用に関する健康リスク評価
を目指したレビュー会議があります。独立的な専門家グループが、承認された評価基準に基づ
いて、電磁界の生物学的影響に関する研究論文をレビューします。このようなレビューは、必
要な研究が完了し、その研究結果が WHO の健康リスク評価報告書に反映されるように予定を
組み、実施されています。
国際電磁界プロジェクトは、ますます疑いを深める公衆や職場を含め、この問題に関心を持つ
人々の間のコミュニケーションを改善するために、リスク認知、リスクコミュニケーション、
リスク管理に関する文書を発行する予定です。詳細は国際電磁界プロジェクトのウェブサイト
を参照して下さい:http://www.who.int/emf 3最終的に国際電磁界プロジェクトは、WHO の環境保健クライテリアシリーズとして数冊のモ
ノグラフを出版する予定です。RF、ELF および静的な電磁界へのばく露の健康影響、リスク認
知、リスクコミュニケーションとリスク管理、そして公衆および労働衛生政策を取り扱う予定
です。
国際電磁界プロジェクトは、
全世界的に受け容れられる電磁界の人体ばく露制限に関する基準、
各種機器から発生する電磁界の計測とコンプライアンスに関する基準の作成を促進し、また電
磁界ばく露によるリスクの可能性に関して、公衆および労働者への情報伝達を最も適切に行う
方法について理解を深めることを促進する予定です。
(本文終わり)
(翻訳について)
Fact Sheet の日本語訳は、WHO から正式の承認を得て、電磁界情報センターの大久保千代次が原文
にできるだけ忠実に作成いたしました。文意は原文が優先されますので、日本語訳における不明な
箇所等につきましては原文でご確認下さい。
(2011 年 5 月)

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