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2024 年 7 月 10 日
食品スーパー各社の 23 年度決算の注目点
食品スーパー(SM)各社の 23 年度決算及び 24 年度業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(JCR)の
現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。対象企業は 2 月決算のライフコーポレーション、ユナイテッ
ド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)
、アークス、ヨークベニマル、マックスバリュ東海、
ベルク、オークワ、リテールパートナーズ、3 月決算のバローホールディングス、ヤオコー、アクシアル リテ
イリング、いなげやの計 12 社である。
1. 業界動向
23 年度のチェーンストア既存店における食料品の売上高(日本チェーンストア協会)は、前年度比 5.0%増
となった。買上点数は前年割れとなっているが、商品単価の上昇が食料品の販売金額の伸びにつながった。人
流の回復は進んだが、生活防衛意識が強くなっていると考えられる。なお、既存店ベースでの内訳をみると、
農産品が同 4.3%増、畜産品が同 2.5%増、水産品が同 0.3%増、惣菜が同 6.0%増となった。行楽や即食ニーズ
の回復などから惣菜の伸び率が高まった。
同業他社のみならず、異業態との競争は依然激しい。ドラッグストア(DgS)やディスカウントストア(DS)
では、食料品の品揃えを拡充する動きが続いている他、コンビニエンスストアもプライベートブランド(PB)
商品の開発・拡販を進めている。このような動きに対して、SM では新規出店や既存店改装を継続的に行って
いる他、生鮮品の鮮度の向上や惣菜の品揃え拡充、PB 商品の開発などを進めている。
原材料価格の高騰が続いており、
各社とも影響を受けている。
食品メーカーが商品値上げを進めており、SM
でも販売価格の値上げが続いている一方、実質賃金の低下から節約志向が高まっており、商品の買い控えが生
じている。このような状況下で、SM 各社は相対的に収益性が高く、且つ価格競争力のある PB 商品の開発・拡
販を進めているほか、一部の商品価格を据え置き、販売数量の増加を目指したメリハリのある価格戦略などを
展開している。
SM は青果・鮮魚・精肉・惣菜の管理や加工、日配食品などの毎日の品出し、レジ打ちなど人手を多く必要
とする業態である。新規出店による店舗数の増加に加え、パートやアルバイトの時給の上昇を受け、人件費は
増加傾向にある。今後も人件費をはじめとするコストの増加は避けられないと予想される。このような中、各
社では経費コントロール策として、セルフレジや電子棚札の導入拡大といった省力化・省人化などに取り組む
他、プロセスセンターを活用した店内作業の効率化を進めている。省エネ設備の導入によるエネルギーコスト
抑制に取り組んでいる企業もみられる。
2. 決算動向
23 年度の主要 12 社合計の営業収益は 5 兆 7,766 億円
(前年度比 5.4%増)
と増収であった。
新規出店や M&A、
既存店売上高の伸長などがその背景にある。既存店客数は人流の回復を受けて前年度を上回った企業が多くみ
られ、客単価も 1 品単価の伸びにより上昇が続いた。営業利益は 1,710 億円(同 14.4%増)と 3 期ぶりの増益
となった。増収に加え PB 商品の拡販などによる粗利益率の改善、電力使用量削減への取り組みなどによる水
道光熱費の減少もあり利益を伸ばした。
12 社合計の 23 年度末自己資本をみると 1 兆 4,676 億円
(前期末比 6.8%増)
と増加し、
自己資本比率は 54.2%
(前期末は 53.5%)と改善した。非開示のヨークベニマルを除くフリーキャッシュフローをみると、11 社のう
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ち 10 社がプラスとなった(22 年度は 8 社がプラスで 3 社がマイナス)
。新規出店や店舗改装、セルフレジの導
入など業務効率化に向けたシステム投資などを進めているが、概ね営業キャッシュフローの範囲内に収まって
おり、財務構成の健全性は保たれている。
3. 業績予想における格付上の注目点
24 年度の主要 11 社合計の営業収益は 5 兆 8,194 億円(前年度比 5.5%増)
、営業利益は 1,782 億円(同 6.0%増)、全社で増収増益を計画している。いなげやは、24 年 11 月に U.S.M.H との経営統合を予定していることか
ら、24 年度通期業績予想を公表しておらず、同社を除いて算出している。新規出店に加え、既存店活性化、PB
商品や付加価値商品の拡販、コストコントロール策の推進などにより増益を確保する計画となっている。コス
ト面においては、人件費の上昇に加え、物流の 2024 年問題を背景に物流費の上昇も続いていくことも予想さ
れる。これを受け、複数の企業が共同で配送ルートや納品期限の見直しを行い、物流の効率化に取り組んでい
る。今後もコストコントロールの強化を図っていくことが収益力の向上に重要とみられる。
前述の通り、同業のみならず、DgS や DS など異業態を含めた競争は一層激しさを増している。そのため、
他社との差別化を図るために、SM の強みを活かした生鮮品や惣菜の品揃え強化によって独自色を出すなど、
固定客を増やしていくための取り組みが必要である。また、今後もメーカーからの仕入コストの上昇は避けら
れないとみられる中、
相対的に収益性の高い PB 商品の開発・拡販を進めることで、
粗利益額の維持拡大を図っ
ていくことが重要と考える。
事業環境が厳しい中でも、既存店の競争力が強く、かつ、継続的に新規出店を行っている企業は生き残りが
可能と考えている。また、近年、都市部を中心にネットスーパーの需要が増加しており、その対応を強化して
いく必要がある。
今後、
既存店売上高対前年比や出店状況、
ネットスーパー事業の収益動向などが注目される。
事業基盤の拡大には M&A が有力な選択肢の一つとなっている。
競争環境の激化から M&A が一層活発化する可
能性があり、機動的に対応するためにも、財務基盤の強化は欠かせないとみている。
(担当)大塚 浩芳・金井 舞
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(図表 1)SM12 社の業績の推移 (単位:百万円、%)
23 年度 24 年度(会社計画)
会社名 決算月 営業収益 営業利益 営業収益 営業利益
前年度比 前年度比 前年度比 前年度比
ライフコーポレーション
(8194)
2 809,709 5.8 24,118 26.0 853,400 5.4 24,700 2.4
バローホールディングス
(9956)
3 807,795 6.3 22,844 13.9 840,000 4.0 23,500 2.9
U.S.M.H(3222) 2 706,657 -0.3 6,907 8.2 745,100 5.4 8,500 23.1
ヤオコー(8279) 3 619,587 9.8 29,328 11.8 707,000 14.1 31,400 7.1
アークス(9948) 2 591,557 4.5 16,831 13.5 613,000 3.6 17,300 2.8
ヨークベニマル(-)2 491,515 4.6 18,701 3.8 506,400 3.0 18,900 1.1
マックスバリュ東海
(8198)
2 366,742 4.5 13,482 30.9 377,000 2.8 13,700 1.6
ベルク(9974) 2 351,856 13.2 14,495 3.4 376,724 7.1 17,509 20.8
アクシアル リテイリング
(8255)
3 270,224 6.0 11,779 12.8 280,000 3.6 12,100 2.7
いなげや(8182) 3 261,486 5.2 2,931 54.3 - - - -
リテールパートナーズ
(8167)
2 252,161 7.4 6,740 27.6 261,800 3.8 7,100 5.3
オークワ(8217) 2 247,378 0.2 2,888 -1.3 259,000 4.7 3,500 21.2
2 月決算先合計 3,817,575 4.5 104,162 14.6 3,992,424 4.6 111,209 6.8
3 月決算先合計 1,959,092 7.2 66,882 14.1 1,827,000 - 67,000 -
12 社合計 5,776,667 5.4 171,044 14.4 - - - -
11 社合計(いなげや除く) 5,515,181 5.4 168,113 13.9 5,819,424 5.5 178,209 6.0
(注) いなげやは 24 年 11 月に U.S.M.H との経営統合を予定していることから 24 年度通期業績予想を公表していない。
(出所)各社決算資料より JCR 作成
(図表 2)格付先の業績推移 (単位:百万円、%)
営業収益 営業利益 営業利益率
親会社株主
に帰属する
当期純利益
EBITDA 自己資本 有利子負債 自己資本比率
リテールパートナーズ
(8167)
23/2 期 234,793 5,283 2.3 2,917 9,488 75,158 15,690 64.1
24/2 期 252,161 6,740 2.7 4,717 11,125 80,978 15,908 64.2
25/2 期予 261,800 7,100 2.7 5,200 - - - -
ライフコーポレーション
(8194)
23/2 期 765,426 19,148 2.5 13,327 34,417 122,002 74,170 43.4
24/2 期 809,709 24,118 3.0 16,938 40,334 136,855 53,094 47.7
25/2 期予 853,400 24,700 2.9 17,000 - - - -
バローホールディングス
(9956)
23/3 期 759,977 20,062 2.6 7,603 41,780 152,733 118,780 36.6
24/3 期 807,795 22,844 2.8 11,945 45,678 164,049 123,049 36.9
25/3 期予 840,000 23,500 2.8 12,300 - - - -
(出所)各社決算資料より JCR 作成
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【参考】
発行体:株式会社リテールパートナーズ
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:株式会社ライフコーポレーション
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:株式会社バローホールディングス
長期発行体格付:A- 見通し:安定的
しかく留意事項
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