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2024 年 6 月 7 日
食肉各社の 24/3 期決算の注目点
大手食肉メーカー各社(プリマハム、日本ハム、丸大食品、伊藤ハム米久ホールディングス(伊藤ハム米久HD)、スターゼン)の 24/3 期決算および 25/3 期業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(JCR)の現況
に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
食肉は食生活における重要性の高さから、国内需要は安定して推移している。一方、消費における畜種構成
には変化がみられる。昨今は物価高が続く中で消費者の節約志向が高まっていることから、牛肉から、相対的
に安価な豚肉や鶏肉に需要がシフトする動きが増している。
生産地での人手不足や飼料高、天候要因による供給量の減少などを背景に、食肉価格は近年高止まりしてい
る。特に輸入食肉でそうした傾向が強く、円安の進行も調達コスト高に拍車をかけている。各社は一時、不安
定な市況やそれによる需要変化に対応した在庫管理が遅れ、利益が下押しされたが、その後は在庫管理の強化
に取り組み、収益性を改善させている。ただし、新興国の経済発展などを踏まえれば、今後も世界的な食肉需
給はひっ迫する方向にあり、調達価格は高値での推移が続くと考えられる。
各社は食肉のみならず、ハム・ソーセージからピザ、中華、乳製品、デザートなど、幅広い加工食品を扱っ
ている。ハム・ソーセージ分野を筆頭に、加工食品は業界内での販売競争が厳しく、従前から採算性の確保が
課題となっていた。当分野に対する消費者の低価格志向の強さが、各社がコストの価格転嫁に保守的な姿勢を
見せてきた背景にある。しかし、ここ数年の原材料価格や物流費の高騰は、業務合理化など内部改善のみでは
吸収しきれないとして、大手各社は 22/3 期以降複数回の値上げを実施している。キャンペーンなどの販促施
策といった需要喚起策にも取り組んでいるが、元来消費者の価格感応度が高い商品群であることや、インフレ
の長期化によって消費者の生活防衛意識も高まっていることから、消費者の需要はより安価な商品へシフトす
る動きもある。
2. 決算動向
24/3 期の売上高は 5 社合計で 3 兆 3,468 億円(前期比 2.7%増)
、営業利益(日本ハムは事業利益ベース)は
912 億円(同 40.1%増)となった。個社別にみると、プリマハム、日本ハム、丸大食品の 3 社が増収増益(丸
大食品は黒字転換)
、スターゼンは減収増益、伊藤ハム米久 HD は増収減益となった。伊藤ハム米久 HD は、前
期利益をけん引した海外事業の反動減の影響を受けたが、総じて加工食品事業での価格改定や食肉事業での在
庫管理の精緻化の効果が発現し、業績の改善が進んだ。
財務構成は各社とも健全である。中でも、日本ハム、伊藤ハム米久 HD、丸大食品はかねてより良好な財務
構成を維持している。
過去、
スターゼンとプリマハムの自己資本比率は他 3 社と比較するとやや見劣りしたが、
好調な業績を背景に利益蓄積が進み、直近では 50%弱の水準まで改善している。ただし、足元では輸入食肉な
どの市況高によって運転資金が膨らみ、有利子負債が高水準にある。需要に即した在庫管理を徹底し、財務リ
スクをコントロールすることが重要となる。また、今後商品展開力の強化や海外での事業基盤の拡大などに際
し、相応の投資負担をかける局面も想定される。資金負担の程度や中長期的な利益貢献の状況をフォローして
いく。
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3. 業績予想における格付上の注目点
25/3 期は、全 5 社が増収増益を計画している。コストは依然として増加が見込まれるが、価格改定や内部改
善を着実に実行することで収益基盤の強化に取り組む。格付上の注目点は以下の通りである。
加工食品事業では、引き続きコスト動向と各社の対応施策に注目している。新興国の経済成長や人口増加と
いった構造的な要因を踏まえると、食材価格や人件費をはじめとした諸コストは中長期的に上昇が続くと考え
られる。
足元では円安もさらに進んでおり、
為替変動による調達コストの高騰にも引き続き留意が必要である。
価格戦略や販促施策のみならず、抜本的な生産効率化のための生産拠点の統廃合や商品アイテム数の集約、省
人化投資など内部改善に継続的に取り組むことが重要である。また、インフレが長期化する中で、商品に対す
る消費者の目は厳しくなっているとみられ、値ごろ感のある商品や高付加価値商品など他社商品との差別化を
図ることも求められている。
食肉事業では、食肉調達基盤の強化を重視している。新興国をはじめ世界的な食肉需要は増加する方向にあ
る一方、
人手不足や異常気象を背景に食肉の生産頭数は弱含む動きもあるなど、
調達競争の激化が見込まれる。
事態が悪化すれば、買い負けによって十分な供給量を確保できず機会損失を招く、もしくは調達コスト上昇分
を販売価格に転嫁しきれず利益を圧迫するなど、各社の収益力に悪影響を及ぼす可能性がある。既存調達先と
の関係性を強化するだけでなく、リスク分散のために新規調達エリアを開拓するなど、調達基盤拡充に向けた
取り組みが欠かせない。今後の各社の取り組みとその成果をフォローしていく。
(担当)井上 肇・石﨑 美瑳
(図表)食肉 5 社の連結業績・財務 (単位:億円、%)
会計基準 売上高 営業利益 営業利益率
親会社株主に
規則する
当期純利益
自己資本 自己資本比率
プリマハム 23/3 期 日本基準 4,307 97 2.3 45 1,132 49.2
(2281) 24/3 期 日本基準 4,484 118 2.6 75 1,193 48.7
25/3 期予 日本基準 4,700 160 3.4 100
日本ハム 23/3 期 IFRS 12,598 256 2.0 166 4,929 52.6
(2282) 24/3 期 IFRS 13,034 449 3.4 281 5,275 55.0
25/3 期予 IFRS 13,400 480 3.6 270
丸大食品 23/3 期 日本基準 2,220 さんかく14 さんかく0.6 さんかく50 683 54.1
(2288) 24/3 期 日本基準 2,288 31 1.4 さんかく94 620 50.9
25/3 期予 日本基準 2,350 40 1.7 40
伊藤ハム米久 HD
(2296)
23/3 期 日本基準 9,227 230 2.5 170 2,686 61.5
24/3 期 日本基準 9,556 223 2.3 156 2,846 61.5
25/3 期予 日本基準 9,700 250 2.6 160
スターゼン
(8043)
23/3 期 日本基準 4,252 82 1.9 75 704 48.1
24/3 期 日本基準 4,105 90 2.2 75 780 48.4
25/3 期予 日本基準 4,120 94 2.3 110
23/3 期 32,604 651 2.0 406 10,134
5 社合計 24/3 期 33,468 912 2.7 492 10,714
25/3 期予 34,270 1,024 3.0 680
(注) 日本ハムの営業利益は事業利益、営業利益率は事業利益率、親会社株主に帰属する当期純利益は親会社の所有者に
帰属する当期利益、自己資本は親会社の所有者に帰属する持分、自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率にそれ
ぞれ読み替える。
(出所)各社 IR 資料より JCR 作成
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【参考】
発行体:日本ハム株式会社
長期発行体格付:A+ 見通し:安定的
発行体:丸大食品株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:スターゼン株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:ポジティブ
しかく留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、または
その他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的
確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当
該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭
的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいか
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