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22-D-0126
2022 年 5 月 13 日
サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価
by Japan Credit Rating Agency, Ltd.
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおりサステナビリティファイナンス・フレームワーク評価の結果を公表
します。
株式会社ゼンショーホールディングスの
サステナビリティファイナンス・フレームワークに
SU 1(F)を付与
発 行 体 / 借 入 人 : 株式会社ゼンショーホールディングス(証券コード:7550)
評 価 対 象 : 株式会社ゼンショーホールディングス
サステナビリティファイナンス・フレームワーク
<サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価結果>
総合評価 SU 1(F)
グリーン性・ソーシャル性評価
(資金使途)
gs1(F)
管理・運営・透明性評価 m1(F)
第 1 章:評価の概要
1. 株式会社ゼンショーホールディングスの概要
株式会社ゼンショーホールディングス(ゼンショー)は、1982 年に設立された外食最大手グループであ
る。2011 年 10 月 1 日付で持株会社体制に移行するとともに、株式会社ゼンショーから株式会社ゼンショー
ホールディングスへ商号変更した。ゼンショーの事業分野は、牛丼の「すき家」
、100 円寿司の「はま寿
司」などの外食事業、スーパーマーケットチェーンを展開する小売り事業、
「すき家」のグローバル展開を
中心とする海外外食事業、高齢者住宅・有料老人ホーム運営などの介護事業の 4 事業で構成されている。
21/3 期の売上高構成比は、牛丼カテゴリー(
「すき家」、「なか卯」
)36%、レストランカテゴリー(
「ココ
ス」、「ジョリーパスタ」など)16%、ファストフードカテゴリー(
「はま寿司」など)23%、小売事業 15%
となっている。ゼンショーの 2021 年 12 月末時点におけるグループ店舗数は 10,051 店舗に上っている。ゼ
ンショーは、自社グループで原材料の調達から製造・加工、物流、販売までを一貫して手掛ける MMD(マ
ス・マーチャンダイジング・システム)を構築しており、業界屈指の食材調達力と全国各地への出店を可
能にする配送網に強みを有している。
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2. ゼンショーホールディングスのサステナビリティ戦略
ゼンショーは、創立当初より「世界から飢餓と貧困を撲滅する」ことを企業理念に掲げており、世界の
食事情を変えることのできるシステムと資本力を持った「フード業界世界一」企業となり、世界から飢餓
と貧困を撲滅することを目指している。ゼンショーは、
「食のインフラ」として独自の MMD 体制の構築・
拡大を進めることにより、持続的・安定的な食材の安定調達に向け、1環境保全、2食品ロスの削減、3
生産者・地域の社会的発展を実現していくことを同社のサステナビリティ戦略上の重要な課題として特定
している。そのうえで、環境保全に関しては、店舗や工場の電気使用量の削減、再生可能エネルギー設備
の導入、水産資源保護活動に取り組んでいる。食品ロスの削減については、オペレーションの改善、情報
通信技術を駆使したタイムリーな在庫・発注管理等の合理化により無駄を省く取り組みを続けている。生
産者・地域の社会的発展への貢献の観点からは、2007 年より現在に至るまでに、計 18 カ国 25 団体との間
で、コーヒー、紅茶、カカオなどのフェアトレード体制を構築し、同取り組みを通じて対象地域の農業技
術支援や教育・水道・医療設備の設置、女性生産者支援を行っている。
3. 本フレームワークについて
今般の評価対象は、ゼンショーが債券または借入金の手段により調達する資金の使途を環境・社会改善
効果の大きいプロジェクトに限定するために作成した、サステナビリティファイナンス・フレームワーク
(本フレームワーク)である。本フレームワークに基づく調達資金は、ゼンショーがサステナビリティ戦
略において重視する環境保全、食品ロスの削減及び生産者・地域の社会的発展への貢献に資する事業に係
る新規投資または既存投資のリファイナンスへ全額充当される予定である。
JCR は、本フレームワークの資金使途には大きな環境・社会改善効果があると評価している。当該資金
使途は、
「ソーシャルボンド原則」および「ソーシャルボンドガイドライン」におけるプロジェクト分類の
うち、
「食糧の安全保障と持続可能な食糧システム(フードロスと廃棄物の削減・小規模生産者の生産性向上)」および「社会経済的向上とエンパワーメント(働き方改革・所得格差の縮小を含む、市場と社会への
公平な参加と統合)
」に該当し、社会改善効果をもたらす対象となる人々は、同社商品の消費者、同社の従
業員及びコーヒー・紅茶・カカオ生産国の女性・農業従事者である。また、
「グリーンボンド原則」におけ
るプロジェクト分類のうち、
「再生可能エネルギー」、「エネルギー効率」および「持続可能な水資源及び廃
水管理」
、ならびに「グリーンボンドガイドライン」におけるプロジェクト分類のうち、
「再生可能エネル
ギーに関する事業」、「省エネルギーに関する事業」および「持続可能な水資源管理に関する事業」に該当
する。なお、当該資金使途に係る環境・社会へのネガティブな影響については、適切な配慮がなされてい
る。
JCR は、本フレームワークの資金使途が、ゼンショーの企業理念である「世界から飢餓と貧困を撲滅す
ること」およびサステナビリティ戦略における重要課題解決に資する事業に特定されている事を確認し
た。プロジェクトの選定プロセスは、グループ財務部が社内関係各部との協議を経てグループ財務本部長
が最終決定し、代表取締役の承認を得る。また、その結果を取締役会に報告するといったように、経営層
によって最終的に決定・承認されることから適切である。なお、上記の目標、選定基準およびプロセスに
ついては、それらを明示した本フレームワークがゼンショーのウェブサイト等で開示されるほか、本評価
レポートを通しても開示されることから、投資家に対する透明性が確保されている。資金管理について
は、調達資金の充当計画が適切に策定され、その下で当該資金が確実にグリーンプロジェクトおよびソー
シャルプロジェクトへ充当されること、未充当資金が発生した場合には適切に管理・運用されること、そ
して資金充当状況の追跡管理とその内部統制が適切に図られていることから、妥当であり透明性も高い。
また、レポーティングについては、資金の充当状況と環境・社会改善効果のどちらも、投資家に対して適
切に開示される計画である。さらに、サステナビリティ戦略の統括・推進を担当する専門部署を 2022 年 3
月に設置し、今後、組織のサステナビリティ体制を強化する方針であることから、同社のサステナビリテ
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ィ経営体制は整備の途上にあるものの、経営層がサステナビリティ課題を優先度の高い重要課題と捉えて
いると JCR は評価している。以上より、JCR は本フレームワークに基づく資金調達について、管理・運営
体制が適切であり、透明性も確保されていると評価している。
これらの結果、JCR は本フレームワークについて、JCR サステナビリティファイナンス評価手法に基づ
き、
「グリーン性・ソーシャル性評価(資金使途)
」を"gs1(F)
"、「管理・運営・透明性評価」を"m1
(F)"とし、
「JCR サステナビリティボンド・フレームワーク評価」を"SU 1(F)
"とした。本フレームワー
クは、
「グリーンボンド原則1」、
「ソーシャルボンド原則2」、
「サステナビリティボンド・ガイドライン3」、
「グリーンローン原則4」、
「ソーシャルローン原則5」、
「グリーンボンドガイドライン6」、 「グリーンロー
ン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン7
」および「ソーシャルボンドガイドライン8
」にお
いて求められる項目について基準を満たしていると考えられる9。1
ICMA (International Capital Market Association) Green Bond Principles 2021
https://www.icmagroup.org/assets/documents/Sustainable-finance/2021-updates/Green-Bond-Principles-June-2021-140621.pdf2ICMA Social Bond Principles 2021
https://www.icmagroup.org/assets/documents/Sustainable-finance/2021-updates/Social-Bond-Principles-June-2021-140621.pdf3ICMA Sustainability Bond Guidelines 2021
https://www.icmagroup.org/assets/documents/Sustainable-finance/2021-updates/Sustainability-Bond-Guidelines-June-2021-140621.pdf4LMA, APLMA, LSTA Green Loan Principles 2021 https://www.lsta.org/content/green-loan-principles/5LMA, APLMA, LSTA Social Loan Principles 2021 https://www.lsta.org/content/social-loan-principles-slp/6環境省 グリーンボンドガイドライン 2020 年版 https://www.env.go.jp/press/files/jp/113511.pdf)7環境省 グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン 2020 年版
https://www.env.go.jp/press/files/jp/113511.pdf (pp.48-89)8金融庁 ソーシャルボンドガイドライン https://www.fsa.go.jp/news/r3/singi/20211026-2/01.pdf9これらは、国際資本市場協会(ICMA)
、環境省および金融庁がそれぞれ自主的に公表している原則・ガイドラインであって規制では
ないため、いかなる拘束力も持つものではない。しかし、現時点において国内外で広く参照されている基準であることから、当該原
則・ガイドラインへの適合性を確認している。
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第 2 章:各評価項目における対象事業の現状と JCR の評価
評価フェーズ1:グリーン性・ソーシャル性評価
JCR は評価対象について、以下に詳述する現状およびそれに対する JCR の評価を踏まえ、本フレ
ームワークの資金使途の 100%がグリーンプロジェクトまたはソーシャルプロジェクトであると評価し、
評価フェーズ1:グリーン性・ソーシャル性評価は、最上位である 『gs1(F)』 とした。
(1) 評価の視点
本項では最初に、調達資金が明確な環境・社会改善効果をもたらすプロジェクトに充当されるかを確
認する。次に、資金使途において環境・社会へのネガティブな影響が想定される場合に、その影響が組
織内の専門部署または外部の第三者機関によって十分に検討され、必要な回避策・緩和策が取られるか
を確認する。最後に、資金使途の SDGs との整合性を確認する。
(2) 評価対象の現状と JCR の評価
<資金使途に係る本フレームワーク>
<資金使途分類と適格クライテリア>
グリーンプロジェクト 1:
適格クライテリア:
工 場 ・店 舗 の省 エネ化 ・創 エネ化
(従 来 比 、設 備 単 体 で30%以 上 のエネルギー効 率 の改 善 が見 込 まれるもの)
適 格 プロジェクト例 :
工 場 ・外 食 チェーン店 舗 の空 調 設 備 更 新 ・新 規 店 舗 への導 入
工 場 ・外 食 チェーン店 舗 における駐 車 場 照 明 のLED化
グリーンプロジェクト 2:
適格クライテリア:
再 生 可 能 エネルギー発 電 設 備 の導 入
適 格 プロジェクト例 :
はま寿 司 の店 舗 及 び工 場 の屋 根 における太 陽 光 発 電 設 備 の導 入
サステナビリティプロジェクト:
適格クライテリア:
チラー水洗浄機等のコールドチェーン設備の導入
(グリーン性)水資源の有効活用に資すること
(ソーシャル性)労働時間の削減につながること
適格プロジェクト例:
食材を低温洗浄・殺菌し、品質を高く保持しながら配送することで、その後の店舗にお
ける野菜洗浄工程の集約に資するチラー水洗浄機等のコールドチェーン設備の導入
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ソーシャルプロジェクト 1:
適格クライテリア:
食品廃棄物削減に向けた設備導入
適格プロジェクト例:
はま寿司の店舗へのストレートレーン導入
ソーシャルプロジェクト 2:
適格クライテリア:
フェアトレードによる調達
適格プロジェクト例:
フェアトレードによるコーヒー・紅茶・カカオの調達資金
<本フレームワークで適格と定めるソーシャルプロジェクトで認識する社会的課題と対象となる人々>
適格クライテリア 社会的課題 対象となる人々
チラー水洗浄機等
のコールドチェー
ン設備の導入
働き方改革(業務効率化) ゼンショーの従業員
食品廃棄物削減に
向けた設備導入
持続可能な食糧システムの維持
食 糧 生 産 者 ・ 漁 業 従 事 者 ( 生
産 ・ 流 通 過 程 に お け る 手 間 削
減 に 資 す る )
貧 困 に よ り 食 糧 が 満 足 に 得 ら
れ な い 人 々
フェアトレードに
よる調達
持続可能な食糧システムの維持
教育・水道・医療・女性生産者支援
開発途上国における小規模農家
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<本フレームワークに対する JCR の評価>
a. プロジェクトの環境・社会改善効果について
i. 資金使途の 100%が、大きな環境・社会改善効果の期待される新規投資である。
グリーンプロジェクト1:工場・店舗の省エネ化
グリーンプロジェクト分類 1 は、ゼンショーが保有する工場・店舗の省エネ化・創エネ化の取り組みのうち、従
来比設備単体で 30%以上のエネルギー効率の改善が見込まれる設備投資に係る費用である。本資金使途
は、グリーンボンド原則における「省エネルギー」および「再生可能エネルギー」、環境省のグリーンボンドガイ
ドラインに例示されている資金使途のうち、「省エネルギーに関する事業」および「再生可能エネルギーに関
する事業」に該当する。
ゼンショーは、省エネ仕様の外食店舗フォーマットを 2017 年より採用し、既存店舗の空調設備や照
明などを積極的に省エネ性能の高い機器に更新することで、電力使用量の削減に努めている。また、店
舗・工場の屋根に太陽光発電設備を導入し、売電を行っている。これらの取り組みにより、自社および
地域の温室効果ガス削減に努めることを目指している。
本フレームワークで対象とする設備機器は、工場・外食チェーン店舗の空調設備更新・新規店舗へ
の導入、工場・店舗駐車場照明の LED である。ゼンショーは、空調機の入れ替えは、原則経年 10 年以
上の空調機を最新型に順次入れ替えを行っているほか、LED の入れ替えについては、2021 年度に全て
更新が完了している。JCR は、ゼンショーの 2019 年度から 2025 年度までの空調機の投資計画および
2019 年度から 2021 年度までに投資した LED の詳細について開示を受けている。本投資計画内容に従
い、過去 3 年以内に発生した設備投資のリファイナンス資金も本フレームワークでは対象としている。
環境改善効果については、サンプル店舗の空調機について更新時の電気消費量の前後比較を実測し
ており、この結果、いずれも 30%以上の電力消費量の削減効果があることが確認されている。ゼンショ
ーでは、この調査結果をもとに、実際の各店舗で導入する機種、上記実測の対象機器それぞれの仕様書
上の性能表示(COP 値または APF 値)を比較し、その差を実測値に対し補正することで、機種更新に
よる電力消費量削減効果を計算し、本フレームワークで定めた適格クライテリアを満たすことを確認す
る予定である。
グリーンプロジェクト 2:再生可能エネルギー発電設備の導入
グリーンプロジェクト分類 2 は、屋根置き太陽光発電設備投資に係る費用である。本資金使途は、グリーンボ
ンド原則におけるおよび「再生可能エネルギー」、環境省のグリーンボンドガイドラインに例示されている資金
使途のうち、「再生可能エネルギーに関する事業」に該当する。
ゼンショーは、はま寿司の店舗の屋根に太陽光発電設備を導入した。本資金使途については、当初
計画分の投資を完了しており、過去 3 年以内に投資した太陽光パネルの費用を本フレームワークでは資
金使途とする予定である。過去 3 年分の太陽光発電設備による年間発電能力は総計で約 8,285 千 kwh/年
となっている。
以上より、本フレームワークで資金使途とするグリーンプロジェクトは、同社および同社が再生可
能エネルギーを提供する地域の CO2 の削減に資する取り組みとして環境改善効果が高いこと、環境改善
効果については発行体によって測定されていることを JCR は確認した。
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サステナビリティプロジェクト:チラー水洗浄機等のコールドチェーン設備の導入
サステナビリティプロジェクト分類は、チラー水洗浄機等のコールドチェーン設備の導入に係る費用である。
本資金使途は、グリーンボンド原則における「持続可能な水資源及び廃水管理」、環境省のグリーンボンドガ
イドラインに例示されている資金使途のうち、「持続可能な水資源管理に関する事業」、ソーシャルボンド原則
における「社会経済的向上とエンパワーメント(働き方改革)」に該当する。
コールドチェーンとは、生産地から小売まで所定の温度(冷蔵・冷凍)に保ったまま流通させる手法を
いう。食品などの品質やおいしさを保つため、流通全般(生産地・卸売市場・小売とそれらを結ぶ物流)
にわたって管理の鎖(チェーン)が切れないようにすることであり、このため低温ロジスティクス、生鮮
SCM(サプライチェーンマネジメント)とも呼ばれている。
ゼンショーは、工場のコールドチェーン化のため、以下の設備を導入する予定である。
工事内容 内容
チラー機器設備工事 サラダをチラー水で水洗いするタンク等の設備
冷蔵機器設備工事 工場内を 4°Cに保つ設備
電気工事他 上記に関わる電気工事、撤去・産廃処分費用など諸経費
コールドチェーンを実施することによる環境改善効果としては、工場でのチラー水による洗浄によ
って、高品質を維持した状態で店舗まで流通可能となることから、店舗での水洗いが不要になるため、
水の使用量が全 1,131 店舗で年間約 29 百万lの削減が見込まれる。
社会的便益としては、店舗でのサラダの水洗いが不要となったため、オペレーションの負担軽減効
果が期待できる。ゼンショーの試算によれば年間で延べ約 9 万時間がコールドチェーン化によって削減
されている。
ソーシャルプロジェクト 1:食品廃棄物削減に向けた設備導入
ソーシャルプロジェクト分類 1 は、ソーシャルボンド原則における「食糧の安全保障と持続可能な食糧システ
ム(フードロスと廃棄物の削減)」、「社会経済的向上とエンパワーメント(働き方改革)」に該当する。
ゼンショーでは、世界中から飢餓と貧困を撲滅するため、MMD によって原料の調達から食品提供に
至るまでを一括管理することで、安全な食をムダなく提供することを目指している。本フレームワーク
で資金使途とするのは一連の食品廃棄物削減取組の一環としてゼンショーが現在注力する、全国に 533
店舗持つ「はま寿司」の回転レーンのストレートレーンへの切り替えである。回転すしでは、回ったま
ま食べられずに残される食品残渣の削減が課題とされていた。ゼンショーの試算によれば、回転レーン
をストレートレーンに切り替えた 271 店舗において、年間約 992 トンの食品ロス削減につながっている。
農林水産省によれば、令和元年の総食品ロス量は、570 万トン、うち外食産業は 103 万トンを占めて
おり、外食産業における食品ロスの取り組みは日本全体の食品廃棄物削減の観点からも重要である。
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図 1:食品ロス量の推移
(出所:農林水産省 食品ロス量の推移(平成 24〜30 年度)10)ソーシャルプロジェクト 2:フェアトレードによる調達
ソーシャルプロジェクト分類 2 は、ソーシャルボンド原則における「食糧の安全保障と持続可能な食糧システ
ム(フードロスと廃棄物の削減)」、「社会経済的向上とエンパワーメント(働き方改革)」に該当する。
ゼンショーが企業理念とする「世界から飢餓と貧困を撲滅する」目的に資する取り組みとして、同
社は 15 年前より主にコーヒーについて、フェアトレードによる調達を実施しており、2022 年 4 月現在
ではコーヒーを提供する全てのレストランのコーヒーがフェアトレードにより調達したコーヒー豆を使
用している。その他、紅茶・カカオについても徐々にフェアトレードに切り替えを行っているところあ
る。ゼンショーでは、フェアトレードに関して独立した部署を持っており、新型コロナウイルス感染症
が拡大する前は、調達先の各国にゼンショーの職員が毎年出向いていた。
フェアトレードとは、国際的な貿易をより平等にするために行われる、対話と透明性、経緯に基づ
く貿易のパートナーシップである(World Fair Trade Organizations の定義)
。国際貿易において立場の弱
い特に「南」の生産者と労働者へ、よりよい貿易の条件を提供しその権利を守ることによって、持続可
能な発展を目指す活動全般のことをいう一般的名称である。フェアトレードはチャリティ(慈善事業)
ではなく、貧困格差を生まない経済システムである。
ゼンショーによれば、フェアトレードには認証型と直接提携(産消提携)型の2つのモデルがある
が、ゼンショーは、直接提携(産消提携)型(すなわち、仲介人や商社を通さず、現地の生産者と直接
関係を結び、産地からカップまでの責任を果たす、いわばもっとも生産者に近しいところでの取引)を
採用している。10農林水産省食品ロス量の推移(平成 24〜30 年度)https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/attach/pdf/210427-4.pdf
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図 2:フェアトレードの木モデル
(出所:ゼンショーホールディングス提供資料)
以下は、ゼンショーがフェアトレード及び社会開発支援の取り組みを行っている先の一覧である。
図 3:ゼンショーフェアトレード社会開発支援取組一覧
(出所:ゼンショーホールディングス提供資料)
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ゼンショーの行うフェアトレードの形態は、直接支援先の農家の様子をゼンショーの社員が確認する形式
をとっていること、また、買取価格は国際相場に則った公正な価格設定となっていることを JCR はフェアト
レード部に対するヒアリングで確認した。また、ゼンショーは、フェアトレードを現在 18 カ国 25 団体と実
施しているが、学校建設、母子保健プログラム、クリニック開設、女性生産者支援などを必要に応じフェア
トレードと併せて実施している。
以上より、ソーシャルプロジェクト 2 は、食の安全およびフェアトレードを実施している生産農家や周辺
住民の社会経済的向上及びエンパワーメントに資する取り組みとして社会的便益の大きい取り組みであると
JCR は評価している。
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b. 環境・社会に対する負の影響について
本フレームワークに基づく資金使途は、基本的に大規模工事を伴うものではないことから、深刻な
環境・社会への負の影響は想定されない。ゼンショーは本フレームワークにおいて、潜在的にネガティ
ブな環境面・社会面の影響に配慮し、以下の想定されうるリスクについて対応していることを確認して
いる。
[工事に伴う騒音・振動]
設置国・地域・自治体で求められる設備認定・許認可等の取得
必要に応じた環境アセスメントの手続
地域住民への十分な説明
[環境汚染、持続可能な調達]
ゼンショーグループの地球環境保全活動に対する基本理念・基本方針に沿った資材調達、環境汚
染の防止、労働環境・人権への配慮の実施
JCR は、環境・社会に対するネガティブな影響について、適切な配慮がなされていることを確認した。
c. SDGs との整合性について
JCR は、国際資本市場協会(ICMA)の SDGs マッピングを参考にしつつ、本フレームワークの資金
使途が以下の SDGs の目標およびターゲットに貢献すると評価している。
【グリーンプロジェクト 1, 2】
目標 7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
ターゲット 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネ
ルギーの割合を大幅に拡大させる。
ターゲット 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させ
る。
目標 9:産業と技術革新の基礎をつくろう
ターゲット 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配
慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、
持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
目標 11:住み続けられる街づくりを
ターゲット 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理
に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響
を軽減する。
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【サステナビリティプロジェクト:コールドチェーン化】
目標 6:安全な水とトイレを世界中に
ターゲット 6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善
し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足
に悩む人々の数を大幅に減少させる。
目標 8:働きがいも経済成長も
ターゲット 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労
働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
【ソーシャルプロジェクト 1:食品廃棄物削減に資する設備の導入】
目標 12:つくる責任、つかう責任
ターゲット 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たり
の食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食
品ロスを減少させる。
目標 14:海の豊かさを守ろう
ターゲット 14.1 2020 年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を
回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を
行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のため
の取組を行う。
【ソーシャルプロジェクト 2:フェアトレードによる調達】
目標 1:貧困をなくそう
ターゲット 1.4 2030 年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性
が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権
と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む
金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるよう
に確保する。
目標 2:飢餓をゼロに
ターゲット 2.3 2030 年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融
サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセ
スの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめと
する小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
目標 4:質の高い教育をみんなに
ターゲット 4.1 2030 年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な
学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了でき
るようにする。
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ターゲット 4.3 2030 年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い
技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるよう
にする。
目標 5:ジェンダー平等を実現しよう
ターゲット 5.1 あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態
の差別を撤廃する。
目標 6:安全な水とトイレを世界中に
ターゲット 6.1 2030 年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ
衡平なアクセスを達成する。
ターゲット 6.2 2030 年までに、全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施
設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、並びに脆弱な
立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
目標 8:働きがいも経済成長も
ターゲット 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労
働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
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評価フェーズ2:管理・運営・透明性評価
JCR は評価対象について、以下に詳述する現状およびそれに対する JCR の評価を踏まえ、管理・
運営体制が整備され、透明性も高く、計画どおりの事業の実施、調達資金の充当が十分に期待で
きると評価し、評価フェーズ2:管理・運営・透明性評価は、最上位である 『m1 (F)』 とした。
1. 資金使途の選定基準とそのプロセスに係る妥当性および透明性
(1) 評価の視点
本項では、本フレームワークに基づく資金調達を通じて実現しようとする目標、プロジェクトの選定
基準およびそのプロセスの妥当性、並びに一連のプロセスが適切に投資家等へ開示されているか否かに
ついて確認する。
(2) 評価対象の現状と JCR の評価
a. 目標
<目標に係る本フレームワーク>
ゼンショーは、
「世界から飢餓と貧困を撲滅する」を企業理念としています。
ゼンショーの食事情を変えることのできるシステムと資本力を持った「フード業界世界一」企
業となり、世界から飢餓と貧困を撲滅することを目指しています。
ゼンショーは、
「世界中の人々に安全でおいしい食を手ごろな価格で提供する」を使命とし、そ
の実現のために、消費者の立場に立ち、安全性と品質にすべての責任を負い、食に関わる全プロ
セスを自ら企画・設計し、全地球規模の卓越した MMD を世界に拡大してまいります。
<本フレームワークに対する JCR の評価>
JCR は、本フレームワークで定めた資金使途が、ゼンショーの定める目標と整合的であることを確
認した。
b. 選定基準
評価フェーズ 1 で資金使途として示された適格クライテリアは、前述の通り、全て環境または社会
改善効果が期待できることから、上記目標に照らして適切であると JCR は評価している。
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c. プロセス
<選定プロセスに係る本フレームワーク>
本フレームワークに基づくサステナビリティボンドの資金使途とする適格クライテリア及び
適格プロジェクトは、グループ財務部が候補を選定し、社内関係各部との協議を経て、グルー
プ財務本部長が最終決定し代表取締役の承認を得ます。また、その結果を取締役会に報告しま
す。
<本フレームワークに対する JCR の評価>
JCR は、プロジェクトの評価選定プロセスにグループ財務部が主となって候補を選定した後に、各
プロジェクトに専門的知見を有した社内関係各部と協議を行っていること、経営層によって最終決定
されることから、選定プロセスは適切であると評価している。
なお、上記の目標、選定基準およびプロセスについては、それらを明示した本フレームワークがゼン
ショーのウェブサイト等で開示されるほか、本評価レポートを通しても開示されることから、投資家に
対する透明性が確保されていると JCR は評価している。
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2. 資金管理の妥当性および透明性
(1) 評価の視点
調達資金の管理方法は、発行体によって多種多様であることが通常想定される。本項では、本フレー
ムワークに基づき調達された資金が確実にグリーンプロジェクトおよびソーシャルプロジェクトに充当
されること、また、その充当状況が容易に追跡管理できるような仕組みと内部体制が整備されているか
否かを確認する。
なお、本フレームワークに基づき調達した資金が、早期にグリーンプロジェクトおよびソーシャルプ
ロジェクトに充当される予定となっているか、また、未充当資金の管理・運用方法についても重視して
いる。
(2) 評価対象の現状と JCR の評価
<資金管理に係る本フレームワーク>
ゼンショーグループ財務部が、本フレームワークに基づいて調達した資金について、適格
プロジェクトへの充当や管理を、内部管理システムを用いて行います。調達資金について
は、その同額が適格プロジェクトまたは適格プロジェクトの実施において調達した借入金等
の返済資金に充当されるため、原則として未充当金は発生しない予定であるものの、適格プ
ロジェクトへの充当時期の遅れ等により調達資金の未充当期間が発生する場合、未充当金は
現金及び現金同等物にて管理されます。
また、適格プロジェクトへの充当時期の遅れ以外の理由により未充当金が発生することが
明らかになった場合は、プロジェクトの評価及び選定のプロセスに従い、適格クライテリア
を満たす他のプロジェクトを選定し、資金を充当します。資金充当完了後も、資金使途の対
象となるプロジェクトに当初の想定と異なる事象の発生や売却が生じた場合、当該事象及び
未充当資金の発生状況に関し、ゼンショーウェブサイト等で速やかに開示を行います。
<本フレームワークに対する JCR の評価>
ゼンショーは、本フレームワークに基づく調達資金の充当時期について、債券発行の都度投資家へ
示す予定である。また、未充当資金の運用方法についても、ゼンショーのウェブサイト等で開示され
る本フレームワークや本評価レポートを通して、投資家に示される。
JCR は、調達資金の充当計画が適切に策定され、その下で当該資金が確実にグリーンプロジェクト
およびソーシャルプロジェクトへ充当されること、未充当資金が発生した場合には適切に管理・運用
されること、そして資金充当状況の追跡管理とその内部統制が適切に図られていることから、資金管
理は妥当であり透明性も高いと評価している。
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3. レポーティング体制
(1) 評価の視点
本項では、本フレームワークに基づく資金調達前後での投資家等への開示体制が、詳細かつ実効性の
ある形で計画されているか否かを評価する。
(2) 評価対象の現状と JCR の評価
<レポーティングに係る本フレームワーク>
ゼンショーは、資金充当状況レポーティング及びインパクト・レポーティングを、ゼンショー
ウェブサイト等にて年次で開示します。初回の開示は、サステナビリティボンド発行から 1 年以
内に行う予定です。なお、調達資金の充当計画に大きな変更が生じた場合や、調達資金の充当後
に計画に大きな影響を及ぼす状況の変化が生じた場合は、適時に開示する予定です。
(1)資金の充当状況に係るレポーティング
ゼンショーはサステナビリティボンド発行から、サステナビリティボンドにて調達された資
金が全額適格プロジェクトに充当されるまでの間、調達資金の充当状況に関する以下の項目に
ついて開示する予定です。
1 調達金額
2 充当金額
3 未充当金の残高及び運用方法
(2)インパクト・レポーティング
ゼンショーはサステナビリティボンド発行から償還されるまでの間、適格プロジェクトによ
る環境及び社会改善効果に関する以下の項目について実務上可能な範囲において開示する予定
です。
適格クライテリア(適格プロジェクト分類) レポーティング項目
[グリーンプロジェクト]
工場・店舗の省エネ化・創エネ化
(従来比、設備単体で 30%以上のエネルギー
効率の改善が見込まれるもの)
新 規 導 入 ・ 入 替 し た 空 調 設 備 ・ LED
照 明 数
導入・入替した設備の省エネ性能
[グリーンプロジェクト]
再生可能エネルギー発電設備の導入
導入設備の発電容量(kw)
温室効果ガス削減量(t-CO2)
[サステナビリティプロジェクト]
チラー水洗浄機等のコールドチェーン設備の
導入
【アウトプット】
チ ラ ー 水 洗 浄 機 等 の コ ー ル ド チ ェ
ー ン 設 備 の 概 要
【アウトカム】
( グ リ ー ン ) 使 用 水 道 水 削 減 量 (t)
( ソ ー シ ャ ル ) 冷 水 作 業 時 間 の 短
縮 効 果 (時 間 )
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【インパクト】
職 場 環 境 の 改 善 を 通 じ た 、 持 続 可
能 な 水 資 源 利 用 の 実 現
[ソーシャルプロジェクト]
食品廃棄物削減に向けた設備導入
【アウトプット】
導入設備(ストレートレーン)の概要
【アウトカム】
食品廃棄物削減量(t)
【インパクト】
食品廃棄物削減を通じた、持続的な食糧
供給システムの維持
[ソーシャルプロジェクト]
フェアトレードによる調達
【アウトプット】
フ ェ ア ト レ ー ド に よ る 調 達 状 況
【アウトカム】
フ ェ ア ト レ ー ド を 通 じ て 支 援 す る
小 規 模 農 家 の 数
【インパクト】
開 発 途 上 国 に お け る 小 規 模 農 家 の
支 援 を 通 じ た 、 持 続 的 な 食 糧 供 給
シ ス テ ム の 維 持
<本フレームワークに対する JCR の評価>
ゼンショーは、本フレームワークに基づいてサステナビリティボンドを発行する際、資金使途につ
いて投資家向け説明資料に記載のうえ説明していく予定である。
上記のソーシャルプロジェクトに係る開示内容は、アウトプット・アウトカム・インパクトの三段
階に分けられ、年に1回開示される。JCR は、資金の充当状況および環境・社会改善効果のレポーテ
ィングについて、投資家に対して適切に開示される計画であると評価している。
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4. 組織の社会的課題への取り組み
(1) 評価の視点
本項では、発行体の経営陣がサステナビリティに係る課題について、経営の優先度の高い重要課題と
位置づけているか、サステナビリティ分野を専門的に扱う部署の設置または外部機関との連携によって、
サステナビリティファイナンス調達方針・プロセス、プロジェクトの選定基準等が明確に位置づけられ
ているか等を評価する。
(2) 評価対象の現状と JCR の評価
ゼンショーは、自身を取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響、少子高齢化の進展、
地球温暖化や廃棄物処理を始めとした環境問題など、様々な社会課題に直面していると認識している。
これらの社会課題解決とビジネスモデルの成長の両面からの成長を目指している。特にゼンショーは
「食のインフラ」として、独自の MMD 体制を構築している。MMD においては、下図に示す通り、4つ
のプロセスがある。
図 4:ゼンショーグループ MMD の仕組み
(出所:ゼンショーホールディングス ウェブサイト)
まず、安全で品質の良い食材を調達するため、実際に生産地を訪れて技術協力や設備投資も含めてト
レーサビリティを確立している。次に、製造段階においては食品ロスを最小限に抑えるため、日々の販
売予測を過去のデータから構築し、必要な量を必要な時に生産、店舗に配送することでムダな在庫を抑
制している。3 つ目のプロセスである物流では、全国 26 か所の物流センターから、安全で新鮮な食を店
舗に配送するため、冷凍、冷蔵、常温の 3 温度帯での配送・品質管理の実施、コールドチェーンの活用
による鮮度の維持に留意している。最後に、お客様へのサービスを行う店舗では、多くの店舗のオペレ
ーションを極力単純化し作業負荷を抑える取り組みを種々行うことで、従業員一人一人の働きやすさと
お客様への質の高いサービス提供を行うよう心掛けている。
MMD を通じてゼンショーが目指す持続的・安定的な食材の安定調達に加え、ゼンショーでは以下 3 点
をサステナビリティ戦略上の重要課題と認識し、以下の活動に取り組んできた。
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1 環境保全
【電力使用量の削減、再生エネルギー設備の導入】
省エネ仕様の外食店舗フォーマットを 2017 年より採用し、既存店舗の空調設備や照明などを積極的
に省エネ性能の高い機器に更新することで電力使用量削減を図ってきたほか、太陽光発電設備を導
入するなど、店舗や工場の電力使用量削減を通じた温室効果ガス削減に対応してきた。
【水産資源保護】
鰻の食文化を将来に継承するため、2019 年 4 月に一般財団法人「鰻の食文化と鰻資源を守る会」
(通称うなぎ財団)を設立し、お客様に提供したうなぎの代金の一部をこの財団に寄付し、鰻が棲
める川への環境改善や完全養殖に向けた研究支援など鰻資源の保全に取り組んでいる。
2 食品ロスの削減
「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念において、食品の加工・提供過程におけるロス
の削減は基本的かつ最も重要な課題の一つであり、これまでも食品ロス削減に向けてオペレーショ
ンの改善に継続して取り組んでまいる。特に外食店舗においては情報通信技術を駆使したタイムリ
ーな在庫・発注管理の仕組みを導入し食材ロスを極小化しているほか、近年では、はま寿司におけ
る回転レーンでの商品提供を、注文に基づくストレートレーンに変更することで無駄をなくし成果
を上げている。
3 生産者・地域の社会的発展への貢献
【フェアトレードによる発展途上国生産者の社会的発展支援】
ゼンショーでは、発展途上国生産者の社会的発展を目指し、2007 年 東ティモールの生産者団体との
取引を皮切りに、これまでに 18 か国 25 団体との間で、コーヒー、紅茶、カカオなどのフェアトレー
ド関係を築き、農業技術支援や教育・水道・医療設備の設置、女性生産者支援など、農業従事者や
地域における社会経済の向上とエンパワーメントに向け貢献してきた。
【教育・進学支援】
日本でも一定数の子どもたちが相対的貧困の状態にあるといわれている。ゼンショーでは一般財団
法人ゼンショーかがやき子ども財団を設立し、社会的養護のもとで暮らす子どもたちが健全な環境
で教育を受け、将来自立して社会で活躍できるよう、進学支援や様々な体験事業を提供する活動を
行っている。
また、2022 年 3 月にはゼンショーグループにおけるサステナビリティ戦略を統括・推進する部署とし
て地球環境室を設置しており、地球環境室によって上述のようなサステナビリティ活動に関する方針・
戦略を策定していく予定である。また、従来取り組んできたフェアトレードや省エネ、食品廃棄物への
対応などに継続して取組むことで、フード業ならではの価値創出とゼンショーグループの持続的な成長
を目指している。
JCR は、ゼンショーの経営層がサステナビリティ課題を優先度の高い重要課題と捉えていると評価し
ている。また、対象プロジェクトについて、それぞれ専門的知見を有する部署を有していることを確認
した。一方で、サステナビリティに係るリスク分析・重要課題の特定、方針の策定等については、今年
度実施の予定である。今後、経営上の重要課題特定に際しては、ゼンショーのリスクや課題の洗い出し
が十分になされたうえで、中長期的な目標設定がなされることが期待される。
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しかく評価結果
JCR は本フレームワークについて、JCR サステナビリティファイナンス評価手法に基づき、
「グリーン
性・ソーシャル性評価(資金使途)
」を"gs1(F)
"、「管理・運営・透明性評価」を"m1 (F)"とした結果、
「JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価」を"SU 1(F)
"とした。本フレームワーク
は、
「グリーンボンド原則」、「ソーシャルボンド原則」、「サステナビリティボンド・ガイドライン」、「グリ
ーンローン原則」、「ソーシャルローン原則」、「グリーンボンドガイドライン」、「グリーンローン及びサス
テナビリティ・リンク・ローンガイドライン」および「ソーシャルボンドガイドライン」において求めら
れる項目について、基準を満たしていると考えられる 。
【JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価マトリックス】
管理・運営・透明性評価
m1(F) m2(F) m3(F) m4(F) m5(F)グリーン性・ソーシャル性評価
gs1(F) SU 1(F) SU 2(F) SU 3(F) SU 4(F) SU 5(F)
gs2(F) SU 2(F) SU 2(F) SU 3(F) SU 4(F) SU 5(F)
gs3(F) SU 3(F) SU 3(F) SU 4(F) SU 5(F) 評価対象外
gs4(F) SU 4(F) SU 4(F) SU 5(F) 評価対象外 評価対象外
gs5(F) SU 5(F) SU 5(F) 評価対象外 評価対象外 評価対象外
(担当)梶原 敦子・後藤 遥菜
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本評価に関する重要な説明
1. JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が付与し提供する JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価は、評価対象
であるサステナビリティファイナンスの実行により調達される資金が JCR の定義するグリーンプロジェクトおよびソ
ーシャルプロジェクトに充当される程度ならびに当該サステナビリティファイナンスの資金使途等にかかる管理、運
営および透明性確保の取り組みの程度に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該サステナビリテ
ィファイナンスで調達される資金の充当ならびに資金使途等にかかる管理、運営および透明性確保の取り組みの程度
を完全に表示しているものではありません。
JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価は、サステナビリティファイナンスの調達計画時点また
は実行時点における資金の充当等の計画または状況を評価するものであり、将来における資金の充当等の状況を保証
するものではありません。また、JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価は、サステナビリティフ
ァイナンスが環境、社会的課題に及ぼす効果を証明するものではなく、環境、社会的課題に及ぼす効果について責任
を負うものではありません。サステナビリティファイナンスの実行により調達される資金が環境、社会的課題に及ぼ
す効果について、JCR は発行体または発行体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認
しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本評価を実施するうえで使用した手法
本評価を実施するうえで使用した手法は、JCR のホームページ(https://www.jcr.co.jp/)の「サステナブルファイナン
ス・ESG」に、
「JCR サステナビリティファイナンス評価手法」として掲載しています。
3. 信用格付業にかかる行為との関係
JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価を付与し提供する行為は、JCR が関連業務として行うも
のであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束
するものではありません。
5. JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価上の第三者性
本評価対象者と JCR の間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
しかく留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、または
その他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的
確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当
該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭
的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいか
んを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。JCR サステナビリティファイナンス・フレー
ムワーク評価は、評価の対象であるサステナビリティファイナンス・フレームワークの下で起債される個別債券にかかる各種のリスク(信用リスク、
価格変動リスク、市場流動性リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、JCR サステナビリティファイナンス・フレームワ
ーク評価は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャル・ペーパー等の購入、売
却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価は、情報の変更、情報
の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価のデータを含め、
本文書にかかる一切の権利は、JCR が保有しています。JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価のデータを含め、本文書の一部また
は全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
しかく用語解説
JCR サステナビリティファイナンス・フレームワーク評価:サステナビリティファイナンスにより調達される資金が JCR の定義するグリーンプロジ
ェクトまたはソーシャルプロジェクトに充当される程度ならびに当該サステナビリティファイナンスの資金使途等にかかる管理、運営および透明性確
保の取り組みの程度を評価したものです。評価は 5 段階で、上位のものから順に、SU 1(F)、SU 2(F)、SU 3(F)、SU 4(F)、SU 5(F)の評価記号を用いて表
示されます。
しかくサステナブルファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・ 環境省 グリーンボンド発行支援者登録
・ ICMA (国際資本市場協会オブザーバー登録)
・ UNEP FI ポジティブインパクト金融原則 作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
しかくその他、信用格付業者としての登録状況等
・ 信用格付業者 金融庁長官(格付)第 1 号
・ EU Certified Credit Rating Agency
・ NRSRO:JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の
4 クラスに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則
17g-7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページ(https://www.jcr.co.jp/en/)に掲載されるニュースリリースに添付してい
ます。
しかく本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026

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