目的外使用・複製・開示等禁止 2023.9 日本原子力発電株式会社
2023年9月4日
日本原子力発電株式会社
資料1-1
東海低レベル放射性廃棄物埋設事業所
第二種廃棄物埋設施設の位置、構造及び設備の
基準に関する規則への適合性について
廃棄物埋設地の設計
目的外使用・複製・開示等禁止 2023.9 日本原子力発電株式会社 1
No. 審査日 資料指摘箇所 指摘事項
指摘事項
対応箇所
回答内容
1 2022年12月22日 資料1-1 P22
米国のEPAでは覆土に関するガイドを示し
ているがそれと比較すると原電が今示してい
る設計ではかなり異なる材料,それから層ご
との特性・役割が異なるものを用いていると
考えられる。原電の今の設計において考慮
された事象がどのように回避されているのか
が十分に論証される必要があるため,次回
以降の廃棄物埋設地の状態設定の中で説
明すること。
資料1-2
P1〜12
P26〜29P42添付資料1
添付資料2
参考資料1
EPAの記載内容を考慮した廃棄物埋設地の設計につい
て記載しました。また,設計において考慮された事象とし
て,侵食及び浸透水による土壌への影響について評価を
記載しました。
審査会合における指摘事項一覧
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Solid Waste Disposal Facility Criteria, Technical Manualの概要
 Solid Waste Disposal Facility Criteria, Technical Manual, Environmental Protection Agency(以下「EPA(1993)」と
いう。)2 1993年11月に,40 CFR Part 258 Criteria for Municipal Solid Waste Landfills (以下「MSWLF Criteria」という。)
(1991年10月9日公布)の添付として発行。
 EPA(1993)そのものは規制文書ではないため,強制的な技術指針を提供するものではない。
 MSWLF Criteriaの技術的側面を遵守するための支援を提供するもの。
 MSWLF Criteria 及びEPA(1993)が対象とする埋設施設(以下「埋設施設」という。)の受入対象廃棄物は,一般
廃棄物,汚泥,焼却灰。
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MSWLF Criteria 及びEPA(1993)の規制要求
 MSWLF Criteria 及びEPA(1993)では, Composite liner(低透水土層とFlexible membrane linerで構成)及び集水
システムを設置することが記載されており,廃棄物よりも下部で浸出水を制御する設計である。これに対して,東
海低レベル放射性廃棄物埋設事業所廃棄物埋設施設の廃棄物埋設地(以下「廃棄物埋設地」という。)の設計方
針は,可能な限り埋設トレンチへの浸透水を抑えることにより漏出低減機能を達成するというものであり,漏出低
減の方針が異なる。
 一方で,可能な限り廃棄物埋設施設からの水の漏出を低減するという点においては,EPA(1993)の記載内容と廃
棄物埋設地の設計方針は共通する。このため,廃棄物埋設地の最終覆土の設計は,MSWLF Criteria 及びEPA
(1993)の記載内容と整合するものとなっている。
 最終覆土設計の規制要求(40 CFR Part 258.60(a))と廃棄物埋設地の設計の適合を第1表に示す。3最終覆土設計の規制要求(40 CFR Part 258.60(a)) 廃棄物埋設地の設計
層名称 規制要求 備考 層名称(注記) 仕様
Infiltration
layer
×ばつ10-7 m/s以下
 厚さ約46 cm以上
Infiltration layer の要求を満た
せば,最終覆土に代替の材料
や厚さが適用できる。
低透水性土層
×ばつ10-10 m/s以下
 厚さ100 cm以上
側部低透水性覆土
×ばつ10-10 m/s以下
 厚さ60 cm以上
Erosion
layer
 厚さ約15 cm以上
 野生植物の育成を維持できる
Erosion layerの代替として,礫
や岩石を用いた保護表面を用
いることができる。
保護工(じゃかご等)
 割栗石(粒径5 cm〜15 cm,厚さ30 cmを想
定)を使用
保護土層
 基礎層,低透水性土層及び掘削抵抗性層
をあわせて厚さ250 cm以上
第1表 最終覆土設計の規制要求(40 CFR Part 258.60(a))と廃棄物埋設地の設計の適合
(注記)1 第1図及び第2図参照
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EPA(1993)の記載内容と廃棄物埋設地の設計方針(1/4)4 EPA(1993), Chapter 6, subpart F, closure and post-closure では,最終覆土設計の規制要求(40 CFR Part
258.60(a))に加えて,最終覆土の設計に関連する事項を記載。
 EPA(1993) (要旨)とそれらを考慮した廃棄物埋設地の設計を第2表に示す。
EPA(1993)(要旨) 廃棄物埋設地の設計
6.2 最終覆土設計(40 CFR 258.60(a))
6.2.1 規制文
(a)浸透と侵食を最小限に抑える最終覆土を設置すること。最終覆土は以
下の設計で建設すること。
(1) 透水係数は,埋設施設のBottom liner syste×ばつ10-7 m/s以下とする。
(2) 厚さ約46 cm以上のInfiltration layer を用いて,施設への浸透を最
小化する。
(3) 野生植物の発育を維持できる厚さ約15 cm以上の Erosion layer を
用いて,最終覆土の侵食を最小化する。
以下のとおり,廃棄物埋設地は40 CFR 258.60(a)(1)及び(a)(2)を満足する。
 Infiltration layerとして低透水性土層(×ばつ10-10 m/s)及び側部低
透水性覆土(×ばつ10-10 m/s)を設置
 低透水性土層の厚さは100 cm以上,側部低透水性覆土の厚さは60 cm以上
40 CFR 258.60(a)(3)については,40 CFR 258.60(b)の代替最終覆土としての規
制要求を満足する保護工(じゃかご等)及び保護土層を設置している。
6.3 代替最終覆土設計(40 CFR 258.60(b))
6.3.1 規制文
(b)代替最終覆土設計は以下を満足すること。
(1)Infiltration layerは,40 CFR 258.60(a)(1)及び(a)(2)に示す
Infiltration layer と同程度に浸透低減ができる。
(2) Erosion layerは,40 CFR 258.60(a)(3)に示すErosion layer と同程
度に風と水による侵食からの防護ができる。
40 CFR 258.60(b)(1)について,低透水性土層及び側部低透水性覆土は40 CFR
258.60(a)(1)及び(a)(2)の要求を満足しており,Infiltration layerの代替はない。
40 CFR 258.60(b)(2)について,廃棄物埋設地には,Erosion layerの代替として保
護工(じゃかご等)及び保護土層を設置している。以下のとおり,保護工(じゃかご
等)及び保護土層は40 CFR 258.60(b)(2)を満足する。
 風(台風)による保護工(じゃかご等)への影響はないことを確認 (P18参照)
 低透水性土層及び側部低透水性覆土の低透水性に影響を及ぼすような保護
土層の侵食は発生しないことを確認 (P20〜34参照)
第2表 EPA(1993) (要旨)とそれらを考慮した廃棄物埋設地の設計(1/4)
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EPA(1993)の記載内容と廃棄物埋設地の設計方針(2/4)5EPA(1993)(要旨) 廃棄物埋設地の設計
6.3.2 適用性
40 CFR 258.60(a)で規定される要求を最小限の設計として,それと同程度の能力
を達成できる代替最終覆土とすることができる。これにより,覆土設計に多様な技術
の導入や改善を加え,サイト固有の条件に対応する余地を与える。
「6.3.2 適用性」の記載内容について,Erosion layerの代替に相当するも
のとして保護工(じゃかご等)及び保護土層を設置している。保護工(じゃ
かご等)及び保護土層が40 CFR 258.60(b)(2)の記載内容を満足するた
め,廃棄物埋設地は40 CFR 258.60(a)の規制要求を満足する。長期的に
維持管理が行われない廃止措置の開始後1,000年の状態設定を行うとい
う廃棄物埋設地に固有の条件に鑑み,植生工ではなく保護工(じゃかご
等)を用いる(P43〜44参照)。
6.3.3 技術的考慮事項
40 CFR 258.60(a)(1)及び(a)(2)に示すInfiltration layer の要求を満たせば,代
替の材料や厚さが適用できる。
例えば,厚さ約15 cmのErosion layerの代替として,保護表面(礫や風化した岩片
が十分に混じった土で構成されるもの)を用いることができる。
保護表面(硬質キャップ)は,土壌損失や流出により植生の実施や維持管理が阻
害されるような乾燥地域や急傾斜では一般的に用いられる。
保護表面に用いられる材料は次のようなものであること。
 降雨や風などの極端な気象において,下部のInfiltration layerを保護できる。
 覆土の構成要素を犠牲にすることなく,下部の物質の沈下の影響を許容できる。
 下部の土壌と同様の表面勾配(最低2%)で設計する。
 土壌侵食割合をコントロールできる。
風,強雨,気温などが植生カバーの劣化要因となるような地域では,覆土上に砕石
が敷設される。
「6.3.3 技術的考慮事項」の記載内容について,以下のとおり,保護工
(じゃかご等)及び保護土層 がErosion layerの代替に相当する。
 40 CFR 258.60(a)(1)及び(a)(2)に示すInfiltration layer の要求を満
たす場合, Erosion layerの代替を用いることができる。
 長期的に維持管理が行われない廃止措置の開始後1,000年の状態設
定を行うという廃棄物埋設地に固有の条件に鑑み,植生工ではなく保
護工(じゃかご等)を用いる(P43〜44参照)。
 保護工(じゃかご等)は,保護土層,低透水性土層及び側部低透水性
覆土を保護する。また,沈下の影響を踏まえて,低透水性土層及び側
部低透水性覆土の透水係数を設定している。保護工(じゃかご等)の
表面勾配は5%である。保護工(じゃかご等)を考慮した侵食評価を行
い,低透水性土層及び側部低透水性覆土の低透水性に影響を及ぼ
すような保護土層の侵食は発生しないことを確認している (P20〜34参
照)。
 保護工(じゃかご等)の材料は,割栗石(粒径5 cm〜15 cm,厚さ30 cm
を想定)を用いる。
第2表 EPA(1993) (要旨)とそれらを考慮した廃棄物埋設地の設計(2/4)
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EPA(1993)の記載内容と廃棄物埋設地の設計方針(3/4)6EPA(1993)(要旨) 廃棄物埋設地の設計
6.3.3 技術的考慮事項
しろまる その他の考慮事項
・ カバーシステムの追加要素
施設閉鎖後の浸出水の発生を可能な限り減らすために,ジオメンブレンと低
透水性を有する土壌から成るComposite coverを設置することができる。これ
ら要素の透水特性については,Chapter 4を参照。
最終覆土システムで使用される他の構成要素には,Drainage layer, Gas vent
layer, Biotic layerが含まれる。
「6.3.3 技術的考慮事項 その他の考慮事項 カバーシステムの追加要素」
の記載内容について,廃棄物埋設地においては,Composite coverに相当す
る低透水性土層及び側部低透水性覆土を設置している。これらは,
Composite coverと同程度以上の低透水性及び厚さを有する。また,廃棄物
埋設地には,Drainage layer及びBiotic layerに相当する掘削抵抗性層を設置
している。なお,Gas vent layerについては,ガスの発生は考えられないため
設置しない。
(P40〜42参照)
6.3.3 技術的考慮事項
しろまる その他の考慮事項
・ Drainage layer
Erosion layerと下部のInfiltration layerとの間にDrainage layerを設けることが
できる。Drainage layerは,Erosion layerを通った浸透水を除去する。低透水性
層に接触する水を除去することで,浸出水の発生を防ぐ。
Drainage layerを使用する際は,根や土粒子によるDrainage layerの目詰まり
を最小限に抑える方法を検討する必要がある。目詰まりを最小限に抑えるた
めに,Drainage layerと覆土の間にFilter layerを設けることができる。粒状の排
水材料を使用する場合は,Filter layerは少なくとも厚さ約30 c×ばつ10-4 m/s×ばつ10-5 m/sとし,層の底部は少なくとも勾配3%とする。
粒状の排水材料は,現地で入手可能で経済的な事情により,サイトごとに異
なる。一般的には,粒径は約 0.95 cm以下の粗さで,ユニバーサル土壌分類
規格(USCS)のタイプSPに分類され,滑らかで丸みを帯びており,下層のジ
オメンブレンに損傷を与えるような破片がないものとする。
「6.3.3 技術的考慮事項 その他の考慮事項 Drainage layer」の記載内容に
ついて,以下のとおり,掘削抵抗性層より排水される (P35〜39参照)。
 降雨時の雨水の大部分は保護土層表面を流れるが,一部は保護土層に
浸透し,浸透水の大部分は掘削抵抗性層から排水される。
 保護土層の土粒子が掘削抵抗性層に流出し,保護土層の下部が削れる
パイピング(流体浸食)が発生するのを防止するために,掘削抵抗性層内
の上部には粒調砕石等を施工する構造である(P45〜48参照)。
 粒調砕石等が流出し,粒調砕石等の下部が削れるパイピング(流体浸
食)が発生するのを防止するために,掘削抵抗性層の砕石又は石(栗石
等の粒径が大きなもの)の粒径は粒調砕石等が流出しない大きさとする。
加えて,粒調砕石等のパイピング(流体浸食)を防止するため,掘削抵抗
性層に砂又は砂質土を詰める構造である。
 保護土層及び粒調砕石等のパイピング(流体浸食)を防止することにより,
掘削抵抗性層の目詰まりは防止される。
 掘削抵抗性層は厚さ30 cm以上,勾配5%とする。
×ばつ10-3 m/sと設定する。
第2表 EPA(1993) (要旨)とそれらを考慮した廃棄物埋設地の設計(3/4)
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EPA(1993)の記載内容と廃棄物埋設地の設計方針(4/4)7EPA(1993)(要旨) 廃棄物埋設地の設計
6.3.3 技術的考慮事項
しろまる その他の考慮事項
・ Biotic layer
深い植物の根や穴を掘った動物は,Drainage layerや低透水
性層を破壊し,排水能力に影響する可能性がある。Erosion
layerの直下の厚さ約30 cmの玉石のBiotic barrierは,植物と動
物の侵入を阻止することができる。
「6.3.3 技術的考慮事項 その他の考慮事項 Biotic layer」の記載内容について,掘削抵抗
性層により樹木の根による低透水性土層の損傷を防止される。
6.3.3 技術的考慮事項
しろまる すべり不安定性
境界面に沿って上昇する土壌水の間隙水圧は,安定性を劇
的に低下させる可能性がある。
「6.3.3 技術的考慮事項 すべり不安定性」の記載内容について,以下とおり掘削抵抗性層を
設計している。
 掘削抵抗性層から排水することで,保護土層及び低透水性土層の境界面での,土壌水
の間隙水圧の上昇を抑制する。
 掘削抵抗性層内の上部の粒調砕石等の施工,掘削抵抗性層の砕石又は石の粒径の設
定,掘削抵抗性層への砂又は砂質土の充塡により,掘削抵抗性層の目詰まりは防止さ
れ,掘削抵抗性層からの排水が維持される (P35〜39参照)。
6.6 閉鎖後の管理要求(40 CFR 258.61)
6.6.1 規制文
(a)埋設施設の閉鎖後30年間は管理を行う必要がある。
(1)必要に応じて侵食等の影響を修復することで,最終覆土の
健全性と機能を維持する。
「40 CFR 258.61」では,埋設施設の閉鎖後30年間(人間及び環境の保護の状態に応じて,
期間は増減する),最終覆土の植生等を維持管理することによって,侵食による影響を解消
することを求めている。廃棄物埋設地では,廃止措置の開始まで(埋設の終了後50年程度)
は維持管理を行うため,40 CFR 258.61を満足する。
なお,長期的に維持管理が行われない廃止措置の開始後1,000年の状態設定を行うという
廃棄物埋設地に固有の条件に鑑み,植生工ではなく保護工(じゃかご等)を用いる(P43〜44
参照)。
第2表 EPA(1993) (要旨)とそれらを考慮した廃棄物埋設地の設計(4/4)
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(1)構成及び安全機能
覆土は,充塡砂,中間覆土,側部低透水性覆土及び最終覆土により構成し,最終覆土は,保護土層,掘削抵抗性層,低透水性土層
及び基礎層により構成する。
側部低透水性覆土及び低透水性土層の低透水性により放射性物質の漏出を低減し,中間覆土の遮蔽性により放射線の遮蔽を行う。
(2)要求性能
安全機能を確保するために必要な要求性能を整理する。覆土の部位ごとに設定した要求性能及び設計要件を第3表に示す。8廃棄物埋設地の設計【覆土】(1/8)
a.技術要件及び設計項目
覆土の主な設計項目については,安全機能に係る技術要件及びそれに必要な特性を踏まえ,次のとおり整理する。
(a) 漏出低減機能
覆土の漏出低減機能は,埋設トレンチ内を通過する雨水等に伴う浸透水量を低減することである。
埋設トレンチを通過する浸透水量(通過流量)は,低透水性土層及び側部低透水性覆土の透水特性によって影響を受けること
から,低透水性土層及び側部低透水性覆土に対する技術要件は透水特性(低透水性)であり,その設計項目は,透水係数及び
厚さである。
また,漏出低減機能については,長期にわたり機能を維持する必要があるため,透水係数,厚さの変化に影響を及ぼす要因
について抽出する。長期状態において低透水性土層及び側部低透水性覆土の透水特性に影響を及ぼす要因とその機構を第4
表に示す。抽出した要因は,廃棄物埋設地に埋設した放射性廃棄物の容器内に残存する空隙に起因する陥没に伴う,有効粘土
密度の変化及び間隙の変化並びにコンクリート類の廃棄物からの高アルカリ性の間隙水によるベントナイト材料の溶解に伴う,
有効密度低下である。低透水性土層及び側部低透水性覆土の技術要件は,これらの要因に対する機能維持特性(変形追従性
及び化学的安定性)であり,その設計項目は透水係数及び厚さである。
(b) 遮蔽機能
覆土の遮蔽機能は,放射線を遮蔽する機能であるため,技術要件は遮蔽性であり,その設計項目は密度及び厚さである。
b.設計要件
設計項目である透水係数,厚さ及び密度については,各部位が要求性能を満足するための設計要件を設定する。
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第3表 覆土の要求性能及び設計要件
廃棄物埋設地の設計【覆土】(2/8)
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第4表 低透水性土層及び側部低透水性覆土の透水特性に影響を及ぼす要因とその機構
廃棄物埋設地の設計【覆土】(3/8)
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(3)構造及び仕様
充塡砂は,埋設トレンチの放射性廃棄物間及び放射性廃棄物と仕切板の空隙(側部低透水性覆土を設置しない箇所)に充塡する。
中間覆土は,放射性廃棄物の上部に設置する。側部低透水性覆土は,埋設トレンチの放射性廃棄物と仕切板の間に設置する。最終
覆土は,最上段の中間覆土の上部に設置する。
漏出低減機能を確保する観点から,覆土の低透水性は,力学的影響による長期的な性能低下に配慮した設計とする。
覆土の断面図(西側)を第1図に,保護工(じゃかご等)・最終覆土断面詳細図を第2図に示す。覆土の主要な部位と主要な仕様を第5
表に示す。11廃棄物埋設地の設計【覆土】(4/8)
第1図 覆土の断面図(西側) 第2図 保護工(じゃかご等)・最終覆土断面詳細図
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第5表 覆土の主要な部位及び主な仕様
廃棄物埋設地の設計【覆土】(5/8)
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a.最終覆土
(a) 概要
最終覆土は,保護土層,掘削抵抗性層,低透水性土層及び基礎層により構成し,最上段の中間覆土の上部に設置する(第1図及
び第2図参照)。
なお,保護土層の表面は侵食を抑制する観点から,最終覆土の上部に割栗石等を主材料とした保護工(じゃかご等)を設置する。
また,廃棄物埋設地直上において掘削作業が計画された場合,表面に保護工(じゃかご等)が設置されていることにより,その下部に
埋設物が存在していることを察し,計画変更に至ることを期待する。各層の役割等については以下のとおり。13廃棄物埋設地の設計【覆土】(6/8)
i.保護土層
保護土層は,低透水性土層(ベントナイト混合土)の乾燥を軽減するとともに侵食を防護することを目的として,砂又は砂質土(現地発生土を含
む)により構成した層を掘削抵抗性層の上部に設置する。
ii.掘削抵抗性層
掘削抵抗性層は,下層の低透水性土層(ベントナイト混合土)上面の勾配により浸透した雨水が横方向に排水される働きを阻害しないように,主
材料として砕石又は石(栗石等の粒径が大きなもの)及び砂又は砂質土により構成した層を低透水性土層の上部に設置する。
なお,掘削抵抗性層は,保護土層の土粒子が掘削抵抗性層に流出し,保護土層の下部が削れるパイピング(流体浸食)及び掘削抵抗性層の目
詰まりを防止するために,掘削抵抗性層内の上部に粒調砕石等を用いて構成する。また,掘削抵抗性層は,廃棄物埋設地直上における掘削作業
が進められた場合,その途中で他の材料物性と異なる掘削抵抗性層を認知し,その後の作業の継続を抑制させることを期待する。
iii.低透水性土層
低透水性土層は,埋設トレンチへの雨水等の浸透水量を低減することにより,廃棄物埋設地の外への放射性物質の漏出を低減することを目的
として,基礎層の上部に設置する。
なお,低透水性土層は,埋設する放射性廃棄物のうち金属類を収納する容器等である鉄箱(鉄箱に収納する廃棄物の隙間には砂を充塡して陥
没防止を図っている。)が,万が一陥没して低透水性土層の漏出低減機能が喪失することのないように,長期的な状態維持を考慮し,長期的に性
質が安定し,自己修復性(地盤追従性)を持った天然材料であるベントナイトと砂を母材としたベントナイト混合土で構成する。
iv.基礎層
基礎層は,低透水性土層等の設置時の反力確保等を目的として,砕石により構成した層を最上段の中間覆土の上部に設置する。
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(b) 設計方針
最終覆土には,最終覆土完了後から廃止措置の開始までの間の漏出低減機能を求める。
漏出低減機能に対しては,透水特性を確保し,埋設トレンチへの雨水等の浸透水量を低減するために低透水性を考慮した
設計とする。
漏出低減機能を維持するための変形追従性は,廃止措置の開始後の評価において考慮する性能を満たす見通しがあるも
のとする。
(c) 仕様
i×ばつ10-10 m/s以下の透水係数を施工時点で確保する。また,埋設した放射性廃棄物の空隙に起因する沈下に伴い
鉛直方向に変形した場合でも低透水性を維持できるよう,低透水性土層の厚さは,1 m以上とする。
最終覆土のうち掘削抵抗性層の厚さは,0.3 m以上とする。
最終覆土のうち保護土層は,施工時点において周辺の土壌と同程度の透水係数を目安に確保する。また,保護土層の厚さは,基礎層,
低透水性土層及び掘削抵抗性層をあわせて2.5 m以上とする。
ii.機能維持特性
1 変形追従性
力学的影響により低透水性土層が変形した場合においても,その変形に追従し,覆土全体として埋設トレンチへの雨水等の浸透水量
の増加を抑制する設計とする。14廃棄物埋設地の設計【覆土】(7/8)
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b.側部低透水性覆土
(a) 概要
側部低透水性覆土は,廃棄物埋設地の横方向から埋設トレンチへの雨水等の浸透水量を低減することにより,廃棄物埋設
地の外への放射性物質の漏出を低減することを目的として,埋設トレンチの放射性廃棄物と仕切板の間に設置する(第1図参
照)。
なお,側部低透水性覆土は,長期的な状態維持を考慮し,長期的に性質が安定し,自己修復性(地盤追従性)を持った天然
材料であるベントナイトと砂を母材としたベントナイト混合土で構成する。
(b) 設計方針
側部低透水性覆土には,埋設する放射性廃棄物の受入れ開始から廃止措置の開始までの間の漏出低減機能を求める。
漏出低減機能に対しては,透水特性を確保し,埋設トレンチへの雨水等の浸透水量を低減するために低透水性を考慮した
設計とする。
漏出低減機能を維持するための変形追従性及び化学的安定性は,廃止措置の開始後の評価において考慮する性能を満た
す見通しがあるものとする。
(c) 仕様
i×ばつ10-10 m/s以下の透水係数を施工時点で確保する。また,側部低透水性覆土の厚さは,0.6 m以上とする。
ii.機能維持特性
1 変形追従性
力学的影響により側部低透水性覆土が変形した場合においても,その変形に追従し,覆土全体として埋設トレンチへの雨水等の浸透
水量の増加を抑制する設計とする。
2 化学的安定性
化学的影響により側部低透水性覆土が変質した場合においても,長期的に低透水性を維持でき,化学的安定性の高いと考えられる天
然の土質材料を使用する。15廃棄物埋設地の設計【覆土】(8/8)
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(1) 構成
保護工(じゃかご等)は,割栗石を主材料として構成する。
(2) 構造及び仕様
保護工(じゃかご等)は,最終覆土の上部に設置する。保護工(じゃかご等)の設置例を第1図及び第2図に示す。
a.概要
保護土層の侵食を防止するため,保護工(じゃかご等)を設置する。保護工(じゃかご等)は,割栗石等を主材料として構成し,
最終覆土の上部に設置する(第1図及び第2図参照)。また,廃棄物埋設地直上において掘削作業が計画された場合,表面に
保護工(じゃかご等)が設置されていることにより,その下部に埋設物が存在していることを察し,計画変更に至ることを期待す
る。
b.設計方針
保護土層の侵食を防止するために,降雨時の雨滴が直接保護土層に落下しない設計とする。
c.仕様
保護工(じゃかご等)は,割栗石を用いる。16廃棄物埋設地の設計【保護工(じゃかご等)】
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侵食評価(1/18)
 侵食による廃棄物埋設地の低透水性土層及び側部低透水性覆土の低透水性への影響の確認
 侵食により,低透水性土層及び側部低透水性覆土の上部の保護土層の土砂が流出する可能性があるため,
保護土層の侵食評価を行う。
 保護土層の侵食評価では,保護工(じゃかご等)の効果を考慮するため,保護工(じゃかご等)に影響を及ぼ
す可能性のある自然現象として,風(台風)及び風化による影響を評価する。
 廃棄物埋設地の構成について,第3図の廃棄物埋設地断面図に示す。
保護工(じゃかご等) :割栗石(粒径0.05 mから0.15 mを想定)
保護土層
掘削抵抗性層
基礎層
側部低透水性覆土
(ベントナイト混合土)
第3図 廃棄物埋設地断面図
低透水性土層
(ベントナイト混合土)
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侵食評価(2/18)
第7表 風(台風)の影響評価に係る係数
記号 値 単位 備考
�� 1.205 kg/m3 空気密度
�� 1 - 空気力係数 コンパクトな物体では平均的な空気力係数に近くなり�� の値は1に近づく。
�� 2,640 kg/m3 割栗石密度l0.05 m 割栗石の最小粒径
0.15 m 割栗石の最大粒径
�� 9.8 m/s2 重力加速度
�� 1 - 固定強度のパラメータ 置かれているだけの「ルーズ」な物体では1である。
1 風(台風)及び風化による保護工(じゃかご等)への影響評価
1.1 風(台風)
風(台風)による影響として,保護工(じゃかご等)の割栗石の飛散が考えられる。西村他(注記)1による飛散条件の式を用
いて,風(台風)により割栗石が動き出す風速��を算出し,廃棄物埋設地周辺における日最大瞬間風速(注記)2(36.3 m/s)
と比較した結果,割栗石が動き出すことはない。影響評価結果及び影響評価に係る係数は第6表及び第7表のとおり。12
�� �� �� �� l����
��
2�� l����
�� ��m s⁄
割栗石の粒径l 割栗石が動き出す風速��
0.05 m 46.4 m/s
0.15 m 80.3 m/s
第6表 風(台風)による影響評価結果
(注記)1 西村宏昭・谷口徹郎・丸山敬(2009):飛散物の軌跡の解析と建材の耐衝撃試験
(注記)2 廃棄物埋設地周辺における日最大瞬間風速として想定される水戸地方気象台における,平年値を算出する期間である1991年から2020年までの30年間の日最大瞬間風速である1996年9月22日の記録
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1.2 風化
風化による保護工(じゃかご等)の割栗石への影響が考えられる。
松倉(注記)によると,割栗石の原料として想定する花崗岩の風化速度は2.9から15(mm/1,000年)とされており,割
栗石(最小粒径は50 mm)の風化が想定されるものの,1,000年間の最も保守的な条件では,割栗石の最小粒径
は35 mmとなるため,保護工(じゃかご等)全体への影響はない。
(注記) 松倉公憲(1997):斜面を構成する岩石・岩盤の風化速度
侵食評価(3/18)
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2 侵食による保護土層への影響
2.1 保護土層で想定される侵食
 降雨による侵食(注記)1
1 一般的には最初に雨滴衝撃による侵食が発生するが,侵食量はごく僅かである。廃棄物埋設地では,雨滴は
保護工(じゃかご等)表面に落下するため,雨滴衝撃による侵食は発生しないと考えられる。
2 降雨が続き,土壌中に浸透できなくなった雨滴は表流水となって流下し始める。流速が増してもそれだけでは
土粒子は剥離されにくく,表流水による侵食の侵食量は小さい。
3 一般的には表流水に雨滴が当たったもの(雨水流)によって,表流水中に半球状のくぼみ(水中ドーム)を形成
し,これが解消される際に,表流水の水底の土粒子が水中ドームの底から巻き上げられ,表流水によって運
搬されることで,斜面全体で雨水流による侵食が発生する。廃棄物埋設地では,保護工(じゃかご等)により表
流水に雨滴が当たることはないため,雨水流による侵食は発生しないと考えられる。
上記2の表流水による侵食については,侵食量は小さいものの,割栗石によって保護土層表面の流路が制限され
ることにより表流水の流速が増し,侵食が発生する可能性がある。また,表流水による侵食で形成された微小なくぼ
みに水が集まり,水の掃流力により洗堀されることでリル侵食に発展する可能性がある。
以上より,表流水による侵食及び表流水による侵食が発展したリル侵食の発生を想定して,保護土層の侵食量を
算出する。
侵食評価(4/18)
(注記)1 北原曜(2002):植生の表面侵食防止機能,砂防学会誌 vol.54 No.5
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2.2 保護土層の侵食量の算出
EPA(1993)の方針に基づき,AH703 (注記)1及びUG2008 (注記)2を参照して,RUSLEを用いて侵食量を算出する。
 EPA(1993)
 USLE(注)を用いて侵食量を算出することで設計を最適化すべき。
 最終覆土の浸透層(低透水性層)の設計要件を満たしていれば,植生を施す侵食層の代わりに礫や石の表面
保護材を使用し,厚さも変えることができる。
 RUSLE
 長期間の年平均土壌損失量を予測するものである。RUSLEでは,リル侵食及びリルとリルとの間におけるイン
ターリル侵食(保護土層においては表流水による侵食)を対象とした傾斜モデルを用いて,リル侵食及びイン
ターリル侵食による土壌損失量を算出する。
 土壌損失量の算出においては,評価対象の土地利用状況,気象条件,保護管理手法等を反映して固有の係
数を設定する。
 侵食面の保護として,植生,落葉,コケ,礫,石,岩片等が例示されており,特に岩石カバーについては,植生と
同様に侵食を抑制するとされている。
 Ground coverは,地表面に直接置かれた物質であり,地表面の流水の速度を落とし,雨滴や水滴を阻止する。
岩片はGround coverの一例である。その効果はGround cover subfactorの式で表されるとされている。
以上より,表流水による侵食及び表流水による侵食が発展したリル侵食の発生を想定した保護土層の侵食評価と
して,RUSLEを適用し,廃棄物埋設地の設計を考慮した固有のパラメータ(降雨侵食係数(��),土壌侵食係数(��),
傾斜長及び勾配係数(����),保護管理係数(��) )を設定して侵食量を算出する。
評価対象は,保護土層の勾配と面積を考慮して,勾配5%面及び勾配56%面(第4図参照)。
(注)USLEはRUSLEの改訂前のバージョン。EPA発行時点では,USLEが記載されたAH No.537のみが発行されており,RUSLEが記載されたAH No.703及びRUSLE2が記載されたUG2008は未発行。
(注記)1 Predicting Soil Erosion by Water: A Guide to Conservation Planning With the Revised Universal Soil Loss Equation (RUSLE), Agriculture Handbook Number 703, United States Department of Agriculture (1997)
(注記)2 User’s Reference Guide, Revised Universal Soil Loss Equation Version 2 (RUSLE2) (2008)
侵食評価(5/18)
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1,416 m2 417 m2
第4図 廃棄物埋設地 平面図
侵食評価(6/18)
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��=��・��・��・��・��・��
項目 勾配5%面 勾配56%面
年間侵食重量(��) 0.34 t/ha/y 1.45 t/ha/y
第8表 保護土層の侵食量 第9表 侵食量の評価パラメータ
項目 勾配5%面 勾配56%面
降雨侵食係数(��) 4,698 MJ・mm/ha/h/y
土壌侵食係数(��) 0.0027 t・ha・h/ha/MJ/mm
傾斜長及び勾配係数(����) 0.53 2.24
保護管理係数(��) 0.050
補助手法係数(��) -
保護土層の面積(第4図参照) 1,416 m2 417 m2
傾斜長 18.45 m 3.69 m
保護土層の勾配 2.86° 29.05°
保護土層の密度 2.68 g/cm3
AH703より,
第8表のとおり,年間侵食重量(A)は,0.34 t/ha/y(勾配5%面)及び1.45 t/ha/y(勾配56%面)である。
侵食量の係数は第9表のとおり。(係数の設定の詳細は次ページ以降参照)
2.2.1 評価結果
侵食評価(7/18)
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1 降雨侵食係数(��)
�� �� �� �� /100)
�� �� ��
�� 210 89 ������ �� (注記)
降雨の開始から終了までの一連続降雨における�� �� を計算し,一年間の全ての一連続降雨の�� �� を合算するこ
とにより求める。なお,AH703では6時間以上の降雨がない場合を降雨終了としているため,本評価においては,気象庁
の記録より降水量が0の場合が6時間以上継続する場合を降雨終了とする。
降雨記録は,平年値を算出する期間である1991年から2020年までの30年間の水戸地方気象台の観測記録から,保守的
に最も降水量が多かった1991年を用いる。
�� : 60分間の1 cmあたり降雨エネルギー(m・t/ha/cm)
�� : 60分間降雨強度(cm/h)
なお,記録の入手が可能な60分間の降水量を用いる。
��: 60分間の降雨エネルギー(m・t/ha)
��: 60分間の降水量(cm)
�� :年間の一連続降雨中を合計した降雨侵食係数
�� : 一連続降雨中の最大30分間降雨強度(cm/h)
なお,記録の入手が可能な一連続降雨中の最大60分間降雨強度(cm/h)を用いる。
��と土壌侵食係数(��) と単位を合わせるため,1(m2・t) = 9.80665(MJ・mm) を用いて単位を(MJ・mm/ha / h/y)に変換
2.2.2 侵食量の算出に用いる係数
(注記) 「細山田健三・藤原輝男(1984):侵食流亡土量の予測に関するUSLEの適用について(I)」に基づきメートル単位の式に換算
侵食評価(8/18)
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2 土壌侵食係数(��)
侵食評価(9/18)
 土壌は,土壌固有の特性により侵食に対して固有の侵食性をもつ。土壌侵食係数(��)は,長期間における平均的
な土壌固有の侵食性を表すパラメータ。
 土壌侵食係数(��)の測定は,除草や土壌のクラスト防止のための耕耘を定期的に行い,長期間の連続休耕状態
を維持している単位区画において行われる。このため,雨滴の衝突,表流水による土粒子の剥離,土粒子の運搬,
地形や粗度による局所的な堆積,浸透といった,侵食や水理的影響への土壌固有の侵食性は,土壌侵食係数
(��)に統合され,年平均値として表される。
 土壌侵食係数(��)の測定が困難な場合に,土壌特性に基づき土壌侵食係数(��)を算出する手法としては,Soil
Erodibility Nomograph が広く用いられる。これは,土壌固有の特性として,Percent organic matter (%), silt &
very fine sand (%), silt & sand (%), Class for structure, Permeability の5つのパラメータを用いて,土壌侵食係
数(��)を得るものである。土壌のシルト率が70%を超えない場合は,Soil Erodibility Nomographの近似式(AH703
の「3-1式」)が提案されている。
以上より,保護土層の土壌侵食係数(��)の算出においては,保護土層の土壌特性を反映して,AH703の「3-1式」
に基づき,以下のとおり��を求める。
�� 2.1 10 12 ���� �� . 3.25 �� 2 2.5 �� 3 100
⁄ 7.59⁄土壌侵食係数(��)の算出に係る係数は第10表のとおり。
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係数 値 単位 備考
���� 0 %
Percent organic matter (%)(有機物含有率)
 ����が小さいほど土壌侵食係数(��)が大きくなり,厳しい評価となるため,保守的に0と設定
�� 475 -
Product of the primary particle size fraction (主要な粒子サイズの土粒子含有率の積)
 silt & very fine sand×ばつsilt & sandより算出
silt & very
fine sand5 % 保護土層の粒径0.1 mm以下の土粒子の含有率。粒径0.1 mm以下の土粒子は数%だが,値が大きいほど土壌侵食係数(��)
が大きくなり,厳しい評価となるため,保守的に5%と設定(第5図参照)
silt & sand 95 %
 保護土層の粒径2 mm以下の土粒子の含有率。粒径2 mm以下の土粒子は約90%だが,値が大きいほど土壌侵食係数(��)が
大きくなり,厳しい評価となるため,保守的に95%と設定(第5図参照)
�� 1 -
Class for structure(構造クラス)
 保護土層の粒径1 mm以下の土粒子がvery fine granularに該当。保護土層は90%が粒径1 mm以下なのでvery fine
granularと判断(第5図参照)。AH703より,very fine granular に該当する1と設定
�� 4 -
Permeability(透水性)
 保護土層の透水係数を考慮して,AH703より4と設定
×ばつ10-4 m/sであり,Soil Survey Manual 2017の「table 3-22」にて「Very high」に該当するた
め,AH703の「Figure 3-1」では permeability「1」に相当する。この場合,土壌侵食係数(K)はマイナスとなり侵食は発生しない
評価となる。しかしながら,保護工(じゃかご等)の設置を想定した場合,保護工(じゃかご等)により保護土層表面の流路が制
限されるため,単位面積あたりの表流水の流量が増加し,流速が速くなる可能性がある。この場合,保護土層表面の土粒子が
剥離されやすくなり,表流水による侵食の影響が大きくなると考えられる。
 RUSLEには表流水の流速を直接入力するパラメータはないため,表流水の流量が多くなるという観点で関連するパラメータ
である Permeabilityを保守的に設定することで,表流水による侵食の影響を考慮する。
 表面流出が発生する状態を想定して,土壌侵食係数(K)がマイナスにならない設定として,Permeability「4」とする。
 Permeability「4」の設定は,Soil Survey Manual 2017の「table 3-22」にて「Moderately l×ばつ10-7
m/s ×ばつ10-6 m/s×ばつ10-4 m/sであることを踏まえれば,単位面積あたりの表
流水の流量が増加し,流速が速くなることを考慮しても,Permeability「4」の設定は保守的と考えられる。
第10表 土壌侵食係数(��)の係数
2 土壌侵食係数(��)
侵食評価(10/18)
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2 土壌侵食係数(��)
侵食評価(11/18)
第5図 保護土層の土粒子の粒径
(注) 保護土層には砂又は砂質土(現地発生土を含む)を用いる。
試料番号
現地発生土1現地発生土2現地発生土3石分
(75 mm以上)%
0.0 0.0 0.0
礫分
(2〜75 mm)%
5.5 7.1 7.3
砂分
(0.075〜2 mm)%
92.0 91.5 91.4
細粒分
(0.075 mm未満)%
2.5 1.4 1.3
最大粒径 mm 19 9.5 9.5
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�� �� 72.6⁄�� ��/ 1 ��
�� sin �� /0.0896 / 3.0 sin �� . 0.56
��(傾斜長係数)
第11表 �� (傾斜長係数)の計算結果及び係数
係数値備考
勾配
5%面
勾配
56%面
�� 0.93 1.00
傾斜長が侵食に及ぼす影響を表すパラメータ
 (C)式より計算する。(C)式は,72.6 ftの単位プロットにおいて得られたプロットデータに基づき得られた式であり,
傾斜長の水平投影長さ �� 及び �� で表されるリル侵食の影響が反映される。
 ��が大きいほど �� が大きくなり,厳しい評価となる。
 ��については,勾配56%面を例にとると, �� が大きいほど �� が大きくなり,それに伴い �� が大きくなり,その結
果 �� が大きくなるため,厳しい評価となる。これは,勾配56%面のように, �� が単位プロット(72.6 ft)よりも長くな
るような傾斜においては,勾配が急になるほどリル侵食の影響が大きくなり,侵食量が増えることを表している。
�� (ft) 60.53 72.64
傾斜長の水平投影長さ
 第4図にて1(ft) = 0.3048(m) として単位をftに換算して設定する。なお,傾斜の起点は表流水の開始地点であ
る最終覆土頂点とし,勾配56%面については,勾配5%面の傾斜長も考慮する。
�� 0.40 0.71
斜面長指数
 (B)式より計算する。
�� 0.67 2.42
インターリル侵食に対するリル侵食の比率
 (A)式より計算する。
�� (°) 2.86 29.05 勾配5%面及び勾配56%面の角度
・・・(A)
・・・(B)
・・・(C)
侵食評価(12/18)
�� (傾斜長係数)の計算結果及び係数は第11表のとおり。
3 傾斜長及び勾配係数(����)
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��(勾配係数)
�� 10.8 sin �� 0.03
�� 3.0 sin �� .0.56勾配5%面の場合
勾配56%面の場合
第12表 ��(勾配係数)の計算結果及び係数
係数値備考
勾配
5%面
勾配
56%面
�� 0.57 2.24
勾配が侵食に及ぼす影響を表すパラメータ
(D)式(勾配5%面)及び(E)式(勾配
56%面)より計算する。
�� (°) 2.86 29.05
勾配5%面及び勾配56%面の角度
��が大きいほど �� が大きくなり,厳しい評
価となる。
・・・(D)
・・・(E)
侵食評価(13/18)
3 傾斜長及び勾配係数(����)
��(勾配係数)の計算結果及び係数は第12表のとおり。
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4 保護管理係数(��)
�� �� ・�� ・�� ・�� ・�� ・�� ・�� ・��
係数 名称 設定の考え方 設定値
�� Canopy cover
植物のうち地表に接している部分はGround coverとして扱うとされているため,保護工
(じゃかご等)の侵食低減効果は,�� (Ground cover) により考慮し,�� については考慮
しない。-�� Ground cover P31参照 0.063
�� Soil surface roughness P32参照 0.79
�� Ridge heigh
耕作で作られる畝と畝間による侵食への影響を表す係数であるが,畝は存在しないた
め考慮しない。-�� Soil biomass subfactor
植物の根,作物残留物耕作等による侵食への影響を表す係数であるが,これらが存在
しないため考慮しない。-�� Soil consolidation
耕作地等で年数が経過するにしたがって,乾湿影響や生物影響による土粒子の凝結が
起こり,侵食抑制効果が高まることを表す係数であるが,締固め施工を行う保護土層で
は期待できないため考慮しない。-�� Ponding effect 平地で降雨強度の強い降雨により水面ができ,侵食抑制効果が高まることを表す係数
であるが,勾配を設ける保護土層では期待できないため,考慮しない。-�� Antecedent soil moisture
降雨が少なく土壌が乾燥しやすい米国の作物栽培地域において適用される係数であり,
保護土層には該当しないため考慮しない。-第13表 保護管理係数(��)の係数
侵食評価(14/18)
保護管理係数(��)の係数は第13表のとおり。
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第14表 �� の係数
係数 値 単位 備考
�� 0.046 -
Empirical coefficient(経験的定数)
 インターリル侵食における0.025からリル侵食における0.06までの値をとる。インターリル侵食はリルとリル
との間における表流水による侵食が想定される。表流水による侵食量は少ないが,表流水による侵食が発
展してリル侵食が発生する場合,リル侵食が支配的と推定される。リル侵食が支配的な場合の,��=0.046
(UG2008),��=0.050(AH703)より,保守的に評価が厳しくなる0.046を設定
�� 60 %
Percentage of land area covered by ground cover(Ground coverにより覆われる地表面割合)
 Ground coverである保護工(じゃかご等)の割栗石が保護土層に接地している割合。割栗石は保護土層
の大部分に接地しているため�� は高い値となることが推定されるが,UG2008より保守的に60%と設定
�� (Ground cover)
地表面に接する物質(Ground cover)が降雨の雨滴を防ぎ掃流力を抑制することによる侵食の軽減を表す係数。
Ground coverは,地表面に接する全ての物質を対象とし,岩片,植生,落葉,コケ,作物残留物等がある。保護工
(じゃかご等)がGround coverとなるため,�� を設定する。�� の係数は第14表のとおり。
�� exp �� ��
4 保護管理係数(��)
侵食評価(15/18)
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係数 値 単位 備考
�� 0.6 -
Adjusted roughness value(補正粗さ値)
 長期的な値が提示されているUG2008より,0.6と設定
第15表 �� の係数
�� (Soil surface roughness)
かく乱によって生じた地表面のランダムな粗さによる侵食への影響を表す係数。長期において自然現象により地表面
の粗さが形成されることを想定し,�� を設定する。�� の係数は第15表のとおり。
�� exp 0.66 �� 0.24
4 保護管理係数(��)
侵食評価(16/18)
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5 補助手法係数(��)
植生や残留物による侵食抑制手法に加えて,補助的な効果をもたらす手法に適用される係数であり,土地の輪郭
部分の形成,フィルター,密集した植物の間引き,段丘,分水路,貯水池などが含まれる。廃棄物埋設地においてこ
れらは存在しないことから考慮しない。
侵食評価(17/18)
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 保護土層において,雨滴衝撃による侵食及び雨水流による侵食は発生しないと考えられる。
 表流水による侵食が発生し,表流水による侵食が発展したリル侵食が発生する可能性がある。
 RUSLEを用いて,表流水による侵食及び表流水による侵食が発展したリル侵食の発生を想定した保護土層の
侵食量の算出を行った結果,侵食量が多い勾配56%面において,年間侵食量は1.45 t/ha/yとなった。廃棄物
処分場の最終カバー(注記)において,土壌侵食の速さの許容水準である4.5 t/ha/y以下に抑えることが求められ
ており,保護土層の年間侵食量は許容水準以下である。
以上より,廃棄物埋設地において,低透水性土層及び側部低透水性覆土の低透水性に影響を及ぼすような保護
土層の侵食は発生しないと考えられるため,侵食は影響事象として考慮しない。
なお,保護工(じゃかご等)は,最終覆土の外周部にも設置され,設置箇所には,部分的に勾配が56%となる斜面
が存在する。この斜面は廃棄物埋設地の外側であり,斜面の下部には低透水性土層及び側部低透水性覆土は存
在しないため,侵食による影響はないと考えられる。
2.3 侵食による影響
侵食評価(18/18)
(注記) Robert M. Koerner and David E. Daniel(2004):廃棄物処分場の最終カバー,技報堂出版
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浸透水による土壌への影響評価(1/5)
 保護土層中の浸透水は,保護土層の下端から掘削抵抗性層に浸透する。この際,保護土層の土粒子よ
りも粒径の大きな掘削抵抗性層に浸透するため,保護土層の土粒子が掘削抵抗性層に流出し,保護土
層の下部が削れるパイピング(流体浸食)が発生する可能性がある。
 保護土層のパイピング(流体浸食)を防止するために,掘削抵抗性層内の上部には粒調砕石等を施工す
る構造とする。粒調砕石等により,保護土層のパイピング(流体浸食)を防止するために,保護土層の粒
度分布に基づき粒調砕石等の粒径を検討する(P45〜48参照)。
 保護土層のパイピング(流体浸食)を防止することにより,掘削抵抗性層の目詰まりは防止される。
 保護土層のパイピング(流体浸食)への対策を踏まえた掘削抵抗性層の構造を第6図に示す。
(1)保護土層35 廃棄物埋設地では,降雨時の雨水の大部分は保護土層表面を流れるが,一部は保護土層に浸透し,浸透水
の大部分は掘削抵抗性層から排水される。この過程で,浸透水が,保護土層,掘削抵抗性層及び低透水性土
層に影響を及ぼす可能性がある。
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浸透水による土壌への影響評価(2/5)
 掘削抵抗性層内の上部に施工した粒調砕石等が流出し,粒調砕石等の下部が削れるパイピング(流体浸食)
が発生する可能性がある。
 粒調砕石等のパイピング(流体浸食)を防止するために,砕石又は石(割栗石等の粒径が大きなもの)の粒径
は粒調砕石等が流出しない大きさとする。砕石又は石の粒径は,保護土層の粒径の検討内容と同様の方法
で,粒調砕石等の粒度分布に基づき検討する。
 粒調砕石等のパイピング(流体浸食)を防止するため,掘削抵抗性層に砂又は砂質土を詰める構造とする。
 粒調砕石等のパイピング(流体浸食)を防止することにより,掘削抵抗性層の目詰まりは防止される。
 粒調砕石等のパイピング(流体浸食)への対策を踏まえた掘削抵抗性層の構造を第6図に示す。
(2)掘削抵抗性層36 目的外使用・複製・開示等禁止 2023.9 日本原子力発電株式会社
浸透水による土壌への影響評価(3/5)37第6図 掘削抵抗性層の構造
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浸透水による土壌への影響評価(4/5)38 掘削抵抗性層で排水される浸透水の一部は低透水性土層に至り,低透水性土層の上面を流れることが想定され
る。この際,浸透水により低透水性土層のベントナイト混合土が流出する可能性がある。
×ばつ10-5 m/s(0.003 cm/s)未満ではベントナイト混合土の流出は生じにくい
結果となった (第8図参照)。
(3)低透水性土層
第7図 流出試験装置の概略図 第8図 流出試験の結果(濁度と実流速の関係)
流出口
採水
脈動緩衝
タンク
定流量
ポンプ
ガラスビーズ
濾紙
不織布
下部通水孔
(試験実施時は蓋を閉める)
ベントナイト混合土
W30 cm ×ばつ H5 cm ×ばつ D5 cm10実流速(cm/s)10.10.010.0010100200300400500600700800濁度(mg/L)
不飽和・不織布無し
不飽和・不織布有り
飽和・不織布無し
飽和・不織布有り
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浸透水による土壌への影響評価(5/5)39 ×ばつ10-5 m/s未満に抑える構造とする。
 ベントナイト中のモンモリロナイトがコロイド化し,表流水によって流出することが懸念される。モンモリロナイト
の流出が顕著に生じるためには,ベントナイト中のモンモリロナイトがゾル化(コロイド化)する必要があり,外
部溶液のイオン強度が低い場合に生じることが知られている。流出試験では,実環境での不確実性を考慮し
て,降雨による浸透水に比べてイオン強度が低い純水を用いている。このため,実環境に比べて,ベントナイ
ト中のモンモリロナイトがゾル形成(コロイド化)×ばつ10-5 m/s×ばつ10-5 m/s未満に
抑える構造とすることで,ベントナイト中のモンモリロナイトがコロイド化し,流出することは抑制されると考えら
れる。
(3)低透水性土層
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(参考資料)EPA(1993)における代替最終覆土の例と廃棄物埋設地との比較(1/3)
 EPA(1993)においては代替最終覆土設計の追加要素の例が示されている(参図1参照) 。
 追加要素の例は,最低限のEPA(1993)の要求に加えて,廃棄物埋設施設の固有の条件を考慮して検討され
るべきものである。
 EPA(1993)における代替最終覆土設計の追加要素の例と廃棄物埋設地の設計とを比較すると,参表1に示す
通り,EPA(1993)と廃棄物埋設地とはおおむね整合する。40参図1 EPA(1993)における代替最終覆土設計の追加要素の例
60 cm
30 cm
30 cm
60 cm
20-mil FMLor60-mil HDPE
Vegetation /
Soil Top Layer
Filter Layer
Biotic Barrier Layer
Drainage Layer
Low - Permeability
FML / Soil Layer
Gas Venting Layer
Waste
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EPA(1993)における代替最終覆土設計の追加要素の例 廃棄物埋設地の設計
名称 仕様 名称 仕様
Vegetation/
Soil top layer
 厚さ60 cm
保護工(じゃかご等)
 割栗石(粒径5 cm〜15 cm,厚さ30 cmを
想定)を使用
保護土層
 基礎層,低透水性土層及び掘削抵抗性
層をあわせて厚さ250 cm以上
Filter layer
粒子状のDrainage layerを用いる場合,
 厚さ30 cm
×ばつ10-4 m/s×ばつ10-5 m/s
 勾配3%以上
掘削抵抗性層
 厚さ30 cm以上
×ばつ10-3 m/s(透水試験の結
果に基づく想定値)
 勾配5%
(注記)浸透水の大部分は,掘削抵抗性層から排
水される。掘削抵抗性層内には,保護土
層のパイピング(流体浸食)防止のための
粒調砕石等を施工する。また,掘削抵抗性
層により,樹木の根による低透水性土層
の損傷を防止する。
Biotic barrier
layer
 厚さ30 cm
Drainage layer  厚さ30 cm
参表1 EPA(1993)における代替最終覆土設計の追加要素の例と廃棄物埋設地の設計との比較(1/2)
(参考資料)EPA(1993)における代替最終覆土の例と廃棄物埋設地との比較(2/3)
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EPA(1993)における代替最終覆土設計の追加要素の例 廃棄物埋設地の設計
名称 仕様 名称 仕様
FML or HDPE
 厚さ0.5 mm以上(HDPEを用いる場合は1.5 mm
(60 mils)以上)
低透水性土層/
側部低透水性覆土
低透水性土層
×ばつ10-10 m/s以下
 厚さ100 cm以上
側部低透水性覆土
×ばつ10-10 m/s以下
 厚さ60 cm以上LowpermeabilityFML/Soil layer
Low permeability FML
 厚さ0.75 mm(30 mils)以上(HDPEを用いる場合
は1.5 mm(60 mils)以上)
Soil layer(締固め土)
 厚さ約60 cm
×ばつ10-9 m/s以下
Gas venting
layer
 厚さ30 cm
(注記)金属類及びコンクリート類の廃棄物を対象としており,一般廃棄
物で想定されるメタンガス及び硫化水素ガス等の発生は考えら
れないため,Gas venting layerは不要。
参表1 EPA(1993)における代替最終覆土設計の追加要素の例と廃棄物埋設地の設計との比較(2/2)
(参考資料)EPA(1993)における代替最終覆土の例と廃棄物埋設地との比較(3/3)
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(参考資料)植生工と保護工(じゃかご等)との比較(1/2)43 EPA(1993)では,野生植物の育成を維持できるErosion layerの設置を要求しており,Erosion layerの植生によって,
侵食を抑制することを期待している。また,礫や岩石を用いた保護表面を,Erosion layerの代替として用いることがで
きるとしている。
 廃棄物埋設地においては,Erosion layerの植生の代替として,保護工(じゃかご等)を設置する計画である。
 EPA(1993)で期待される植生(以下「植生工」という。)と廃棄物埋設地における保護工(じゃかご等)の比較を参表2
に示す。
 侵食抑制の観点では,植生工及び保護工(じゃかご等)ともに優れている。保護工(じゃかご等)については,保護
工(じゃかご等)による侵食抑制効果を適切に反映した侵食量の評価を行う必要がある。
 蒸発散による廃棄物埋設施設内への浸透水量の低減の観点では,保護工(じゃかご等)は水分の蒸発が促進さ
れないため,蒸発散を促進する植生工が優位である。このため,保護工(じゃかご等)の場合は,浸透流解析にお
いて,蒸発散量を見込まない条件で浸透水量(通過流量)を評価する必要がある。
 長期の状態設定の観点では,植生工は,地域の気候条件等を考慮した植物を選択することで状態が維持される
と考えられる。また,割栗石を用いる保護工(じゃかご等)は,長期においても状態が維持されると考えられる。
 実用例の観点では,植生土が最も一般的に用いられるが,植生被覆を維持することが難しい乾燥立地では,保
護工(じゃかご等)のような粗石が用いられる。
 上記を踏まえて,特に長期的に維持管理が行われない廃止措置の開始後1,000年の長期の状態設定を行うという廃
棄物埋設地に固有の条件に鑑み,保護工(じゃかご等)を用いる。
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比較項目 植生工 保護工(じゃかご等)
侵食抑制
 表土上に群葉カバーを生成して土壌
表面に与える降雨の影響を減じ,風
速を弱める働きがあり,侵食を最小
化する。
 雨滴が保護土層に直接落下するのを防ぐため,雨滴衝撃による
侵食及び雨水流による侵食が発生しないと考えられる。
 表流水による侵食が発生する可能性があるため,保護工(じゃ
かご等)による侵食抑制効果を適切に反映した侵食量の評価を
行う必要がある。
蒸発散
 浸透した水を貯留し,蒸発散を促進
する。
 降水は保護工(じゃかご等)を通過して下方に浸透するが,保護
土層から水分を除去して大気中に蒸発還元させる植物が存在し
ないため,水分の蒸発が促進されない。
長期の
状態設定
 植生工に影響する可能性がある気温
及び降水量は,長期的に大きく変化
しないことから,地域の気候条件等を
考慮した植物を選択することで,植生
工の状態が維持されると考えられる。
 長期の状態設定において,割栗石を用いる保護工(じゃかご等)
への自然現象による影響はない。
実用例
 植生土が最も一般的に用いられる。  植生被覆を維持することが難しい乾燥立地では粗石が用いられ
てきた。
参表2 廃棄物埋設地における植生工と保護工(じゃかご等)の比較
(参考資料)植生工と保護工(じゃかご等)との比較(2/2)
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(参考資料)掘削抵抗性層内の粒調砕石等の粒径の検討方針(1/4)
 廃棄物処分場の最終カバー(注記)では,以下のとおりパイピング則が定められている。
(1)パイピング則に基づく粒径の検討45 保護土層のパイピング(流体浸食)を防止するために,掘削抵抗性層内の上部には粒調砕石等を施工する構
造である。粒調砕石等により,保護土層のパイピング(流体浸食)を防止するためには,保護土層の粒度分布
に基づき粒調砕石等の粒径を決定する必要がある。
• 「�� (フィルター)」は,乾燥重量で15%だけがふるいを通過する粒径(通過質量百分率15%における粒
径)であり,廃棄物埋設地では粒調砕石等がフィルターに相当するため「�� (粒調砕石等)」となる。
• 「�� (表土層)」は,乾燥重量で85%だけがふるいを通過する粒径(通過質量百分率85%における粒
径)であり,廃棄物埋設地では保護土層が表土層に相当するため「�� (保護土層)」となる。
�� (フィルター) /�� (表層土) 4~5
(注記) Robert M. Koerner and David E. Daniel(2004):廃棄物処分場の最終カバー,技報堂出版
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(参考資料)掘削抵抗性層内の粒調砕石等の粒径の検討方針(2/4)
 保護土層の粒度分布と�� (保護土層)を参図2に示す。
 パイピング則に基づき,以下の式により�� (粒調砕石等)を算出する。
ここで,参図2より,�� (保護土層) 1.0 ����とすると,
�� (粒調砕石等) 4~5 1.0 ���� 4.0 ����~5.0 ����
�� (粒調砕石等) /�� (保護土層) 4~5
参図2 保護土層の粒度分布と�� (保護土層)及び�� (保護土層)
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(参考資料)掘削抵抗性層内の粒調砕石等の粒径の検討方針(3/4)
 廃棄物処分場の最終カバーでは,以下のとおり透水則が定められている。
(2)透水則に基づく粒径の検討47• 「�� (表土層)」は,乾燥重量で15%だけがふるいを通過する粒径(通過質量百分率15%における粒径)
であり,廃棄物埋設地では保護土層が表土層に相当するため「�� (保護土層)」となる。
 保護土層の粒度分布と�� (保護土層)を参図2に示す。
 以下の式で�� (粒調砕石等)を算出する。
ここで,参図2より,�� (保護土層) 0.2 ����とすると,
�� (粒調砕石等) 4~5 0.2 ���� 0.8 ����~1.0 ����
�� (粒調砕石等) /�� (保護土層) 4~5
�� (フィルター) /�� (表層土) 4~5
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粒径(mm)
1 10 1000.10.01
現地発生土1
現地発生土2
現地発生土3020406080100
通過質量百分率(%)15%D15(粒調砕石等)
4.0〜5.0 mm
以下
0.8〜1.0 mm
以上
(3)粒調砕石等の粒径の例48(参考資料)掘削抵抗性層内の粒調砕石等の粒径の検討方針(4/4)
 パイピング則及び透水則に基づき粒調砕石等の粒径を検討すると,粒調砕石等の通過質量百分率15%におけ
る粒径は0.8 mm〜1.0 mm以上,4.0 mm〜5.0 mm以下となる。粒調砕石等の粒度分布範囲の例を参図3に示す。
 施工時に保護土層のサンプリングを十分に行い,粒度分布を確認した上で,その結果に基づき粒調砕石等の粒
径を決定する。
 掘削抵抗性層内の砕石又は石においても,パイピング則及び透水則に基づき粒調砕石等と同様に粒径の検討
を行う。
参図3 粒調砕石等の粒度分布範囲の例

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