平成26年6月13日
日本原子力発電株式会社
当社における「原子力の自主的かつ継続的な
安全性向上への取り組み」について
当社は、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、このような事故を二度と起こさない
という強い決意の下、発電所の更なる安全性向上に取り組んでいます。
先般発表された「原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けた提言」(注記)1
を踏まえ
た当社の今後の取り組みについて、取りまとめましたのでお知らせします。
当社は、原子力のリスクマネジメントを経営の最優先課題と位置付け、経営トップ
のコミットメントの下、継続的にその強化に取り組んでいきます。主な項目は以下の
とおり。
1.可視化による安全文化の不断の改善
安全文化を継続的に改善していくため、新たに「安全特性」(注記)2
及び「行動規範」
(注記)3
を設定するとともに、その実践状況を評価するため、定性的・定量的な指標を
導入することにより、
改善状況を
「可視化」
し、
安全文化の不断の改善につなげる。
2.パフォーマンス改善モデルの導入
原子力の自主的かつ継続的な安全性向上のため、海外の事業者の良好事例や
国際標準を参考に、新たに「パフォーマンス改善モデル」(注記)4
を導入し、継続的な
改善のPDCAサイクルを確実に回していく。
3.PRA(確率論的リスク評価)を含めたリスク情報の活用の強化
国内外のトラブル情報、新知見やPRAから得られたリスク情報を、経営判断
に活用する仕組みを拡充する。さらに、外的事象等のPRAについては「原子力リ
スク研究センター」
の成果を速やかに取り込むなど整備を進め、
低頻度事象を含め
活用範囲を拡大していく。
4.第三者的な原子力安全監視機能の強化
当社の原子力安全への取り組みに対し、外部の視点からも監視し、改善の確実な
実行につなげるため、
社外有識者による原子力安全監視のための会議体を設置する。
5.緊急時対応の強靭化によるレジリエンスの向上
事故発生後の適切な対応を行うための体制整備として、緊急時対応の長期化を
想定した発電所及び本店の「緊急時対応チーム」の2交代シフト化を図る。
(注記)1
「原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けた提言」
:経済産業省総合資源エネルギー調査会による
提言(平成26年5月30日公表)
(注記)2
「安全特性」
:安全文化の醸成に必須の事項(リーダーシップ、問いかける姿勢、コミュニケーション
等)を原子力安全文化に係る国際標準も参考に設定したもの
(注記)3
「行動規範」
:安全特性を社員各層の業務プロセスの各段階で展開させたもの
(注記)4
「パフォーマンス改善モデル」
:安全性向上の取り組み状況を定量的に監視する項目(パフォーマンス)
を、PRA結果に基づく設備重要度等を反映して設定、指標化し、その評価結果と管理目標値との比
較から改善の実施につなげるモデル
しろまる添付資料:
「原子力の自主的かつ継続的な安全性向上への取り組み」
<参考>原子力の自主的かつ継続的安全性向上への取り組みについて 12014年6月13日
日本原子力発電株式会社
原子力の自主的かつ継続的な安全性向上への取り組み
当社は、福島第一原子力発電所事故の教訓をしっかりと学び、このような事故を二度と起こ
さないという強い決意のもと、これまでのハード・ソフトの安全性向上策に加え、すべての業務
において「安全最優先」を徹底し、より高いレベルの安全性向上に取り組んでいる。
総合資源エネルギー調査会ワーキンググループの提言を受け、当社は、経営トップのコミット
メントのもと、リスク情報の活用をはじめとする、実効的な原子力の安全性向上策のロードマップ
を策定し、全社員共通の取り組みとして、最高水準の原子力安全を追求する不断の努力を継
続していく。具体的には、経営層の適切なリスクガバナンスにより、広範なリスク情報の収集、評
価、判断及びリスク低減策の実行という、リスクマネジメントのサイクルを確立し、継続的に強化
し続けることとする。
1.経営トップのコミットメントによるリスクマネジメントの強化
(1)可視化による安全文化の不断の改善
健全な安全文化を組織文化として根付かせ、それを不断に改善していくことは、原子力の安
全性向上を継続的に実施していくための基本的な要件である。安全文化を継続的に改善し
ていくため、これまでの取り組みに加え、新たに以下のプロセスを実行する。
 健全な安全文化の醸成に必須の事項(リーダーシップ、問いかける姿勢、コミュニケー
ション、継続的学習等)を、原子力安全文化に係る国際標準も参照しつつ、新たに「安
全特性」として設定する。
 「安全特性」を社員各層の業務プロセスの各段階における具体的な「行動規範」として
展開させ、日々の活動に反映させる。
 「行動規範」の実践状況を評価するための定性的・定量的指標を設定するとともに、定
期的にそれを監視することにより、指標の変化を可視化して、安全文化の継続的な改善
に繋げる。
(2)原子力の自主的かつ継続的な安全性向上体制の再構築
1原子力の自主的かつ継続的な安全性向上を実現するため、日々の発電所の原子力安全活
動の中に、海外の事業者の良好事例や WANO ガイドライン等の国際標準を参考とした「パ
フォーマンス改善モデル」を取り入れる。具体的には、以下のプロセスを実行することにより、
添付資料 2継続的な改善の PDCA サイクルを確実に回していく。
・ 安全性向上に向けた広範な取り組み状況を定量的に監視する項目(パフォーマンス)を
設定し、指標化する。
・ 指標化にあたっては、炉心損傷頻度、格納容器機能喪失頻度、PRA結果に基づく設
備重要度等が反映できるものとする。また、現場作業の観察結果、他発電所での良好
事例の調査結果、安全評価やリスク低減に着目した現場の設備の管理状況の調査結
果等についても考慮する。
・ パフォーマンスの評価結果と管理目標値との比較分析により、改善事項を特定し、改善
策を検討し、これを実施する。
2発電所の日々のリスク情報の収集やパフォーマンスの監視及び安全性向上活動を支援する
ため、担当役員の参加する定例会議(原則毎日・両発電所長参加)を実施する。
31の取り組み状況を各種指標により監視し、確認するため、パフォーマンスレビュー会議、教
育・訓練レビュー会議等を定期的に実施する。
(3)PRAを含めたリスク情報の活用の強化
1 国内外のトラブル情報、新知見やPRAから得られたリスク情報等を経営資源の配分等に係
る意思決定に活用する仕組みを拡充する。
2 設備設計、工事計画、手順書変更等の各検討段階において、設計思想、PRA結果への
影響(リスク低減)、新知見の取り込み等多角的な視点でレビューできる仕組みを構築す
る。
3 すでに保有している内的事象等のPRA結果及び停止時リスクモニターによる評価結果の
経営判断への活用については、上記の仕組みが整い次第開始する。さらに、レベル2/3
PRAや外的事象等のPRAについては、「原子力リスク研究センター」の成果を速やかに取
り込む等、順次整備を進め、低頻度事象をも網羅したリスク評価に活用範囲を拡大してい
く。
(4)第三者的な原子力安全監視機能の強化
1 社内における客観的な監視機能として、原子炉主任技術者とともに、発電所における原子
力の安全性向上活動等について、第三者的な立場で監視し、指導・助言する安全監視員
を発電所に置く。
2 本店/発電所で行う原子力の安全性向上活動等に対し、外部の視点で監視し、改善の確
実な実行につなげるため、社外有識者による原子力安全監視のための会議体を設置す
る。 3(5)外部ステークホルダーとの双方向コミュニケーション
1 これまで実施してきた、自治体、議会、有識者、各種団体、地域住民等の外部ステークホ
ルダーとの双方向のコミュニケーション活動を一層多様化することなどにより、当社からの情
報発信の拡充を図るとともに、ステークホルダーの意見等を汲み上げる仕組みを充実させ
る。
2 上記により把握された意見等については、これを有益な情報として捉え、その改善策の検
討の状況や対応等の結果をステークホルダーにフィードバックする仕組みを構築する。
3 自治体に対しては、残余のリスクの存在を前提とした避難計画の策定に資するリスク情報の
提供や意思決定者への支援を積極的に実施する。
4 双方向のコミュニケーション活動を継続的に実施していく中で、他産業や諸外国の事例を
調査し、新たなコミュニケーション活動の実施方法や人材育成について検討を進め、順次
実行に移していく。
2.緊急時対応の強靭化によるレジリエンスの向上
1 緊急時の役割に応じた対応要員の専門的能力の向上を図るとともに、事象が長期化する
場合に備え、発電所及び本店の「緊急時対応チーム」の2交代シフト化を図る。
2 緊急時には、限られた情報の中で迅速かつ適切な判断を行えるよう、判断者を支援するた
めのマニュアルを整備する。また、発電所の災害対策本部長がその行うべき重要な判断に
専念できるよう、社内での権限の再配分を行う。
3 緊急時対応において、プラントの基本設計、安全評価、PRA、設備の保修といった技術力
に長けたプラントメーカ等の支援が適切なタイミングで受けられるよう、協力体制を強化す
る。
4 ブラインド訓練、夜間訓練、協力会社等との連携をとった総合訓練等、より実践的な訓練計
画を立案し、実施する。また、自治体の訓練に積極的に協力し、参画する。
5 設計基準を超える外的事象、テロ、大規模火災等への適切な対応のため、大規模損壊対
応手順書(仮称)を策定し、本手順書に基づいた訓練を繰り返し実施することにより、残余
のリスクへの対応能力を強化し、レジリエンスの向上を図る。
3.教育訓練の充実
1 原子力の安全性向上の仕組みを自主的かつ継続的に実践していくため、「安全特性」や 4「パフォーマンス改善モデル」の運用、指標の意義等の理解促進を図るとともに、リーダー
シップ、監督、コーチング等の管理者能力の向上を目的として、計画的な教育訓練を実施
する。
2 双方向コミュニケーションに係る人材育成の推進及び緊急時対応要員の専門的能力、対
応能力の向上を目的として、計画的な教育訓練を実施する。
3 PRAのシステム解析を行う関係会社と連携し、PRA要員を継続的に育成していく。
4 原子力の安全性向上のため、日々の業務プロセスの各段階における教育訓練に加え、技
術伝承を意識した教育訓練や有効性評価を踏まえた教育訓練の改善に係るプロセスを定
着化する仕組みを作る。仕組み作りにあたっては、国内外の「体系的教育訓練アプローチ」
を調査し、参考とする。
以上
別図 原子力の自主的かつ継続的な安全性向上への取り組み
別図 原子力の自主的かつ継続的な安全性向上への取り組み 2014年6月13日
日本原子力発電株式会社
計画
年度
2014(H26) 2015(H27) 2016(H28) 2017(H29)以降1.(1) 可視化による安全文化の不断の改善
(2) 原子力の自主的かつ継続的な安全性向上体制
の再構築5(3) PRAを含めたリスク情報の活用の強化
(4) 第三者的な原子力安全監視機能の強化
(5) 外部ステークホルダーとの双方向コミュニケー
ション2.3.
原電の取り組み
経営トップのコミットメントによるリスクマネジメントの
強化
緊急時対応の強靭化によるレジリエンスの向上
教育訓練の充実
PRA結果、リスクモニターの活用
・「安全特性」を設定し「行動規範」に展開、指標化し
監視する
・指標の変化を可視化して安全文化の継続的な改
善につなげる
・定量的な監視項目の設定と指標化
・パフォーマンスの評価結果と管理目標値の比較に
よる改善策の検討・実施
・リスク情報を経営資源の配分等の意思決定に活用・「原子力リスク研究センター」の成果の速やかな取
り込み
・原子力の安全性向上に対する第三者的立場から
の監視
・外部からの意見等を汲み上げる仕組みの充実
・意見等の対応状況をフィードバックする仕組みの
構築
・緊急時対応能力の強化
・実践的な緊急時対応訓練の充実
・教育・訓練による管理能力の向上、双方向コミュニ
ケーションに係る人材育成の推進
・教育訓練の改善に係るプロセスの定着化
「行動規範」の実践を評価する指標の設定/監視/改善
社内監視機能による監視
外部ステークホルダーとの双方向コミュニケーションの継続的改善
教育・訓練による管理能力の向上、双方向コミュニケーションに係る人材育成の推進
「原子力研究センター」成果の取込等による外的事象等PRAモデルの整備、PRAの実施、モデルの更新
緊急時対応能力の強化、実践的な緊急時対応訓練の充実
「安全特性」の設定と「行動規範」への展開
強化内容の検討
第三者監視機能の検討
仕組みの拡充
仕組みの構築
管理目標の設定
プロセス定着化の仕組みの作成
経営トップのコミットメント、パフォーマンスレビュー会議等による監視/リスク情報の経営判断への活用
社外監視機能による監視
定量的な監視項目の設定と指標化/監視/改善
フィードバックの仕組みの構築「パフォーマンス改善モデル」の取り入れ

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