平成24年12月11日
日本原子力発電株式会社
敦賀発電所敷地内の破砕帯調査に関する
原子力規制委員会への質問状の提出について
当社は、昨日の原子力規制委員会の敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する
有識者会合の第 1 回評価会合の結果について、
本日、
原子力規制委員会に対し、
添付の質問状を提出しましたので、お知らせいたします。
・添付資料:公開質問状
以 上
平成 24 年 12 月 11 日
原子力規制委員会
田中 俊一委員長殿
日本原子力発電株式会社
取締役社長 濱田 康男
「公開質問状」
当社は、去る 10 日貴委員会の敦賀発電所敷地内の破砕帯調査に関する有識者会合第一回
評価会合において、大規模なトレンチ調査等により拡充した客観的データに基づき、これ
まで旧原子力安全・保安院意見聴取会等から指摘のあった D-1 破砕帯につき、これが少な
くとも約 9.5 万年前の上載地層を変位させていないこと等を確認したことを説明しました。
それにより、
当社のこれまでの主張
(参考 1)
である敷地内の破砕帯は
「活断層でないこと」
および「浦底断層の活動に伴い同時に活動しないこと」をこれまでの根拠に加え、改めて
科学的に立証できたと考えております。
しかしながら、上記会合においては、D-1 破砕帯の近傍に確認されたせん断面について、
これまで代表的とされてきた D-1 破砕帯の実証データおよびそれに基づく当社の主張(参
考 2)
を何ら考慮することなく、
主として変動地形学的見地からの可能性のみの立論により、
活断層として活動し、また浦底断層と同時に活動すると結論付けられましたが、それには
科学的根拠を含めた十分な説明がなされたとは言えず、誠に理解に苦しむところでありま
す。
当社としては、貴委員会の上記会合における判断の立論につき、科学的見地から様々な
疑問を抱いておりますので、以下の通り質問をさせて頂きます。また、昨日の会合に関す
る新聞報道等により当社を取り巻く環境は極めて厳しいものとなっておりますので、出来
る限り早急に文書による回答を頂きたく、お願い申し上げます。
なお、当社としては、
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」に基づき、変動地
形学的調査、地表地質調査、地球物理学的調査等を適切に組み合わせて十分な調査を実施
した上で総合的に評価していく必要があると考えており、客観的データの収集に万全を期
するために、D-5、D-6 試掘坑調査や年代分析等を継続中であり、また、今後せん断面の詳
細調査や D-1 破砕帯の近傍の調査
(参考 3)
を行うこととしており、
そうしたデータの蓄積、
各種分析、数値解析等の結果に基づき、科学的見地からの総合的な評価を貴委員会におい
て提示し、判断を仰ぎたいと考えておりますことを申し添えます。
評価のポイント1破砕帯の活動性評価 ・・・・・・ 耐震設計上
耐震設計上、
、考慮すべき断層ではない。
考慮すべき断層ではない。
だいやまーく破砕帯は、浦底断層とは過去に同時活動していない(浦底断層は後期更新世以降に繰り返し活動)。
だいやまーく破砕帯は、浦底断層と将来も同時に活動しない(数値解析により確認)。
評価のポイント2浦底断層の活動に伴う破砕帯の活動性評価 ・・・・・・ 破砕帯は浦底断層
破砕帯は浦底断層と同時に活動するものではない。
と同時に活動するものではない。
敷地内破砕帯の活動性に係る当社の評価
だいやまーく現在の地盤に加わる力から想定される破砕帯のずれの方向と、
実際に破砕帯がずれた方向(痕跡)は一致していない。
だいやまーく変動地形が認められない。
だいやまーく破砕帯を覆う地層(後期更新世以降)に変位・変形
を与えていない。
だいやまーくドレライト岩脈(約2,100万年前に貫入)に変位を与えて
いない。
(注記)ドレライト:玄武岩の一種
平成24年6月からの追加調査により、データ補強 (参考2 参照)
参考1
A:盛土
B:礫・砂混じりシルト・粘土:橙色(7.5YR6/6)。シルト・粘土主体。
礫は径5cm以下主体。基底付近では径10〜80cmの巨礫を含む。
C:砂礫:橙色(7.5YR7/6)。礫率30〜60%。礫は径20cm以下の角〜亜角礫主体。
淘汰きわめて悪い。基質は細〜粗砂主体。上部はシルト混じり。
D:花崗斑岩:浅黄橙色(7.5YR8/3)。全体に風化を受けている。
とくに上端は風化が著しい。割目は比較的多い。
E:花崗斑岩質カタクレーサイト:おおむね角礫状〜シルト混じり細礫状。
断層周辺では細礫混じりシルト状。
1 f:N21°E63°W
2 j:N7°E53°W
3 f:N2°E76°W 断層ガウジ(灰白色粘土:幅1mm)
4 f:N12°E64°W 下部に断層ガウジ(黄灰色粘土:幅15mm以下)
5 f:N6°E73°W 断層ガウジ(黄橙色粘土:幅8mm)
6 f:N30°E54°NW
7 f:N16°E72°W 断層ガウジ(粘土:幅10mm)
8 f:N27°E54°NW 断層ガウジ(赤褐色粘土:幅1〜5mm)
9 f:N8°E67°W 断層ガウジ(黄橙色粘土:幅10〜50mm)
10 f:N30°E76°SE
11 f:N50°E76°NW (シルト〜砂状破砕部:幅30〜60mm)
12 f:NS50°W
13 f:N36°W78°SE
D-1破砕帯は少なくともK-Tz(約9.5万年前)以前に堆積し
た地層に変位・変形を与えていない。
K-Tz(約9.5万年前)以前に
堆積した地層
K-Tz(約9.5万年前)以前に
堆積した地層
← D-1破砕帯
D-1破砕帯の活動性に係る当社の評価
参考2
せん断面の地下深部への連続性について、現
状では十分な調査データは得られていない。
D-1破砕帯
せん断面
D-1トレンチ平面図 模式断面図(A-A’)
だいやまーく追加調査
せん断面の成因を明らかにするため、特に「せん断面と岩盤の関係に着目した調査」を追加実施し、審議に有用な
情報を速やかに取得していく。AA’
+ + + + + + + + + + + + + + +
+ + + + + + + + + + + + + + +?道路
北側ピット
擁壁
D-1トレンチの第四系中のせん断面に関する追加調査
参考3
<質 問>
1. せん断面と D-1 破砕帯との関連について
(1) せん断面については、特段の地質学的根拠を示すことなく、D-1 破砕帯と連続し
ていると結論付けておりますが、
せん断面は逆断層成分を有しているのに対して、
D-1 既往露頭における最も新期の断層変位は正断層成分を有しております。この
ように変位センスの異なるものを一連の活断層とした判断根拠をお教え頂きた
い。
(別添資料1、2)
(2) せん断面の南部(NW 走向となる範囲)については、広域的な応力場とせん断面の
幾何学的形状の関係からは、左横ずれ成分を有するものと判断されます。一方、
施設西方に判読されたD-1破砕帯に関連する可能性があるとされた地形について
は右横ずれを示唆する地形であります。
このように変位センスが異なる状況にも
拘らず、せん断面と D-1 破砕帯が一連の破砕帯であり、かつ活断層であると判断
された根拠をお教え頂きたい。
(別添資料3)
(3) せん断面は D-1 トレンチ内でせん滅し、
地形には現れていないのは明らかであり
ますが、
せん断面とトレンチ西方の変動地形の可能性があるとされた地形とを関
連付けた根拠をお教え頂きたい。
(別添資料4)
2. せん断面の活動履歴について
(1) 東傾斜の浦底断層と西傾斜のD-1破砕帯が同時に活動したとの判断が示されまし
たが、そのように判断された根拠をお教え頂きたい。
(別添資料5-1、5-2)
(2) D-1 破砕帯は、D-1 トレンチ近傍において浦底断層の活動に伴い何回かに1回活
動し、
この動きは2号機原子炉建屋まで及んだ可能性があると結論付けられまし
たが、
この動きが原子炉建屋まで影響が及ぶものであると判断された科学的根拠
をお教え頂きたい。
3. せん断面の地下深部への連続性について
(1) せん断面の地下深部への連続性については、
せん断面の成因を考える上で非常に
重要な情報でありますが、現状では十分な調査データは得られておりません。そ
のような中で、せん断面が岩盤から生じている、すなわち断層であると結論付け
た地質学的な判断根拠をお教え頂きたい。
(別添資料6)
(2) せん断面は擁壁に延長する可能性があるとの指摘がありましたが、
せん断面下方
で実施した傾斜ボーリング
(B6-1 孔)
に見られる割れ目等に連続すると結論付け
た根拠をお教え頂きたい。
(別添資料7)
4. 浦底断層と D-1 破砕帯の連動モデル
D-1 破砕帯は浦底断層に関連して活動したものとされていますが、どのような連動モ
デルを想定し、またどのような地質調査結果との整合性や力学的な検討に基づき、その
ような結論付けとなったのかお教え頂きたい。
5. B トレンチの C 層について
B トレンチに見られる C 層については、海成の砂層の可能性を想定した上で、浦底断
層の活動性を議論されておりますが、
河成砂層ではなく海成砂層と判断した地質学的根
拠をお教え頂きたい。
(別添資料8)
6. 当社としては、上記の諸点については、現状でも調査可能な場所は存在するので、
さらなる追加調査を行うことによってより客観的なデータが得られるものと考えてい
ます。評価会合では、当社からもその点を指摘させて頂きましたが、追加調査の結果を
待たずして結論付けが可能であるとされた科学的理由についてお教え頂きたい。
以 上
D-1トレンチ(西側ピットスケッチ)
1 f:N38°W50°SW
2 f:N12°W54°W
3 f:N1°W82°W(非常にシャープ)
4 f:N17°W80°W(凹凸に富む)
5 f:N3°E80°W(褐色粘土:幅 1〜2mm,3条)
6 f:N2°W70°W
7 f:N48°W56°SW
8 f:N42°W60°SW
9 j:N35°W66°SW(Mn濃集層)62逆断層成分が認められる
箇所の例
別添資料1
当社資料に加筆
D-1既往露頭(破砕帯の変位センス)薄片観察結果251・カタクレーサイト1
灰白色を呈する細粒の基質及び径0.1mm〜2mmの亜角礫状の花崗斑岩岩片,石英,長石,カタクレーサイトのフラグメントからなる。
粘土鉱物は少ない。
・断層ガウジ
褐灰色を呈する細粒の基質及び径0.1mm〜1mmの亜角礫〜亜円礫状の石英,長石,カタクレーサイトのフラグメントからなる。
粘土鉱物を多く含む。R1面から正断層の変位センスが判読される。
・カタクレーサイト2
灰白色を呈する細粒の基質及び径0.1mm〜2mmの亜角礫状の花崗斑岩岩片,石英,長石のフラグメントからなる。
粘土鉱物は少ない。
当社資料に加筆
別添資料2
H24年12月10日 原子力規制委員会 敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 評価会合
鈴木康弘委員提供「敦賀原発の破砕帯調査結果」に加筆
D-1南西延長部は右横ず
れを示唆する地形を指摘
別添資料3
D-1トレンチ平面図(スケッチ)53・トレンチ調査にあたって実施したボーリング調査結果に
基づき,トレンチ形状及びピット掘削位置を決定。
・北側ピットでD-1の活動性について検討。
・また,D-1近傍の小規模な破砕部についても活動性を
検討するためのピットも併せて掘削。
・なお,トレンチ法面の一部で見られた第四紀層中に見ら
れた小規模なせん断面についても併せて調査した。
せん断面がせん滅し、
対応する地形は認め
られない
当社資料に加筆
別添資料4
浦底断層(B地点トレンチ)
・浦底断層は江若花崗岩(アプライト)と第四系を境する北東側隆起の断層であり,トレンチ調査
の結果等から後期更新世以降に繰り返し活動したものと判断されるとしている。
Bトレンチ南側法面スケッチ32南側法面
当社資料に加筆
別添資料5-1
Bトレンチでは約3万年前以降の地層に
繰り返し変位を与えており、最新活
動時期は約4,000年前以降
D-1トレンチ平面図(スケッチ)53・トレンチ調査にあたって実施したボーリング調査結果に
基づき,トレンチ形状及びピット掘削位置を決定。
・北側ピットでD-1の活動性について検討。
・また,D-1近傍の小規模な破砕部についても活動性を
検討するためのピットも併せて掘削。
・なお,トレンチ法面の一部で見られた第四紀層中に見ら
れた小規模なせん断面についても併せて調査した。
K-Tz(約9.5万年前)に変位
を与えていない
当社資料に加筆
別添資料5-2
D-1トレンチ(西側ピットスケッチ)
1 f:N38°W50°SW
2 f:N12°W54°W
3 f:N1°W82°W(非常にシャープ)
4 f:N17°W80°W(凹凸に富む)
5 f:N3°E80°W(褐色粘土:幅 1〜2mm,3条)
6 f:N2°W70°W
7 f:N48°W56°SW
8 f:N42°W60°SW
9 j:N35°W66°SW(Mn濃集層)62せん断面のごく一部区間で花崗斑岩と堆積物が接する
が、その他の区間における岩盤との関係は現状不明
当社資料に加筆
別添資料6
別添資料7B6B6--11断面図
断面図B6-1傾斜45°
N2W70W
せん断面
D-1トレンチ
北側ピットD-1破砕部4
N17E72W
割れ目3
N13E69W
割れ目2
N5E81W
割れ目1
N1W70W
14.9m10m5m23222120
T.P 19m
道路
ボーリングコアにせん断面に対応→
する破砕部は未確認
海成層は2号機炉心付近までしか到達していない。
浦底断層沿いの谷は下流に向かって一様に傾斜する。この谷の傾斜に調
和的に本流性の堆積物(陸成層)が覆う。
C層はこの一連の堆積物に含まれる堆積物と判断しても矛盾はない。 C層
当社資料に加筆
別添資料8

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