令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
「統合型放射線イメージングによる放射能汚染可視化の実証研究」
業 績
福島第一原子力発電所(1F)の廃止措置や帰還困難区域の環境回復において、飛散・沈着した
放射性物質に起因する放射能汚染の分布を把握することは、作業者の被ばく低減および除染計画
の立案のために必須である。これを踏まえて、放射性セシウムを主とする汚染分布を遠隔かつ迅
速に把握できる手法の開発が強く望まれていた。
そこで受賞者は、放射能汚染の2次元画像を取得するコンプトンカメラに、レーザ測域センサ
や写真立体復元による3次元環境モデリングを統合することで、放射能汚染の分布を3次元的に
可視化できるとの着想に基づき、さらにこれらをロボットや自己位置推定と環境地図作成の同時
実行
(SLAM)
と組み合わせた統合型放射線イメージングシステム
(iRIS:integratedRadiation
ImagingSystem)を開発した。加えて1F や帰還困難区域において実証試験を推し進めるととも
に、放射能汚染が高濃度に蓄積したホットスポットの遠隔検知に成功してきた。さらには、それ
らを可視化した作業環境の3次元マップを描画できることを実証し、放射能汚染可視化ツールと
しての有用性を示した。
本成果は、高線量率環境や広範囲エリアにおける放射能汚染分布の3次元可視化を達成するた
めに、遠隔制御や環境認識といった異分野技術を積極的に導入し、放射線計測・原子力の枠にと
らわれない発想を持って新しいシステムの開発、および 1F や帰還困難区域における現場実証を
成功させたものである。その新規性および現場実証の成果が認められ、これまでに学会、財団法
人、省庁主催プログラム等から多数受賞している。
今後、
1F 廃止措置を含む環境回復に向けた作業現場において、
作業者の被ばく低減や作業計画
の立案に資するとともに、世界の原子力施設の廃止措置現場に適用できると期待される。さらに
は異分野融合の観点から、本成果は放射線計測の新しい分野を開拓するものとして大きな学術的
意義が見出せるものである。

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