平成19年度の業務実績に係る評価(平成20年8月28日)独立行政法人日本原子力研究開発機構


独立行政法人日本原子力研究開発機構の平成19年度に係る業務の実績に関する評価
全体評価
4特記事項
平成21年度の中期目標期間終了まで、引き続き中期目標及び中期計画を達成するよう事業を着実に実施することを期待する。
1評価結果の総括
(イ)19年度の業務実績は全般的に計画どおり進んでおり、中期目標及び計画を十分に達成し得る可能性が高いと判断される。
(ロ)ITER計画を進めるに当たり国際的に先導する研究開発成果を創出したこと、量子ビーム技術開発及び先端基礎研究に
おいて革新的な成果を得たこと、核不拡散に関する新たな測定法を開発し国際原子力機関の分析法として認証されたことは
高く評価できる。(項目別評価No.7,9,10,14,17関係)
(ハ)原子力科学研究所において汚染等の不適切な事例が発生した結果責任は評価のマイナス要因であるが、汚染発覚後は速や
かに対策を講じ、職員の創意工夫で業務に対する影響を最小限に抑えたことは評価できる。(項目別評価No.37関係)
<参考>
・業務運営の効率化:A ・業務の質の向上:A ・財務内容の改善:A 等
全体-1
3評価結果を踏まえ今後の法人が進むべき方向性
(イ)再発防止策の全拠点への水平展開の徹底を図ると
ともに、全職員が国民の信頼回復に向けた意識を持
ち、同種の問題等に対して再発防止に向けた改善に
取り組むことが必要である。また、安全確保・法令
遵守の徹底・強化を図るとともに、原子力に最適な
品質管理の研究開発及び構築を行い、情報を社会に
発信すべきである。
(ロ)優れた成果を出している分野で実施しているマネ
ジメントの特色を分析し、そのグッドプラクティス
を共有する努力が必要である。
2評価結果を通じて得られた法人の今後の課題
(イ)原子力科学研究所の非管理区域における汚染等不
適切な事例が発生したことに対し、再発防止策の水
平展開等の改善策が図られているが、安全確保・法
令遵守の徹底・強化とともに、国民の信頼回復に努
めることが重要である。
(ロ)法人運営において業務管理を徹底することは、研
究者の自由な発想を尊重する研究開発マネジメント
の阻害要因として働く場合があるため、これを阻害
しないような業務管理のあり方を工夫することが重
要である。
文部科学省独立行政法人評価委員会 科学技術・学術分科会 日本原子力研究開発機構部会
【委員】
しろまる 鳥井 弘之 前国立大学法人東京工業大学原子炉工学研究所教授
【臨時委員】
岩井 善郎 国立大学法人福井大学大学院工学研究科教授
柴田 洋二 社団法人日本電機工業会原子力部長
高橋 祐治 電気事業連合会原子力部長
田中 知 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科教授
中西 友子 国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科教授
宮内 忍 公認会計士
山田 弘司 大学共同利用機関法人自然科学研究機構核融合科学研究所教授
山地 憲治 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科教授
和気 洋子 学校法人慶応義塾大学商学部教授
(しろまる印・・・部会長)
経済産業省独立行政法人評価委員会 産業技術分科会 日本原子力研究開発機構部会
【委員】
しろまる 内山 洋司 筑波大学大学院システム情報工学研究科教授
【臨時委員】
浅田 浄江 ウイメンズ・エナジー・ネットワーク(WEN)代表、消費生活アドバイザー
柴田 洋二 社団法人日本電機工業会原子力部長
高橋 祐冶 電気事業連合会原子力部長
山崎 晴雄 首都大学東京都市環境学部地理環境コース教授
(しろまる印・・・部会長)
全体-2
項目別評価総評
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
I.国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成する
ためとるべき措置 A A 6.産学官との連携の強化と社会からの要請に対応するための活動
1.エネルギーの安定供給と地球環境問題の同時解決を目指した原子力システムの
研究開発
(1)研究開発成果の普及とその活用の促進 A A A
(1)高速増殖炉サイクルの確立に向けた研究開発 (2)施設・設備の外部利用の促進 A A A
1)高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究 A S A (3)原子力分野の人材育成 A A A
2)高速増殖原型炉「もんじゅ」における研究開発 B A A (4)原子力に関する情報の収集、分析及び提供 A A A
3)プルトニウム燃料製造技術開発 A A A (5)産学官の連携による研究開発の推進 A A A
(2)高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術に関する研究開発 (6)国際協力の推進 A A A
1)地層処分研究開発 (7)立地地域の産業界等との技術協力 A A A
2)深地層の科学的研究 (8)社会や立地地域の信頼の確保に向けた取り組み A A A
(3)原子力システムの新たな可能性を切り開くための研究開発 (9)情報公開及び広聴・広報活動 A A A
1)分離・変換技術の研究開発 A A A II.業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置 A A
2)高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発 A A A 1.柔軟かつ効率的な組織運営 A A A
3)核融合エネルギーを取り出す技術システムの研究開発 A S S 2.統合による融合相乗効果の発揮 A A A
(4)民間事業者の原子力事業を支援するための研究開発 S A A 3.産業界、大学、関係機関との連携強化による効率化 A A A
2.量子ビームの利用のための研究開発 4.業務・人員の合理化・効率化 A A A
(1)多様な量子ビーム施設・設備の戦略的整備とビーム技術開発 A S S 5.評価による業務の効率的推進 A A A
(2)量子ビームを利用した先端的な測定・解析・加工技術の開発 S A S III.予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画 A A
(3)量子ビームの実用段階での本格利用を目指した研究開発 A A A 1.予算
3.原子力の研究、開発及び利用の安全の確保と核不拡散に関する政策に貢献する
ための活動
2.収支計画
(1)安全研究とその成果の活用による原子力安全規制行政に対する技術的支援 A A A 3.資金計画
(2)原子力防災等に対する技術的支援 A A A 4.財務内容の改善に関する事項 A A A
(3)核不拡散政策に関する支援活動 A A S IV.短期借入金の限度額 - - -
4.自らの原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分に係る技術開発 V.重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画 - - -
(1)原子力施設の廃止措置に必要な技術開発 VI.剰余金の使途 - - -
(2)放射性廃棄物の処理・処分に必要な技術開発 VII.その他の業務運営に関する事項 A A
5.原子力の研究、開発及び利用に係る共通的科学技術基盤の高度化 1.安全確保の徹底と信頼性の管理に関する事項 A A B
(1)原子力基礎工学 A A A 2.施設・設備に関する事項 A A A
(2)先端基礎研究 A A S 3.放射性廃棄物の処理・処分並びに原子力施設の廃止措置に関する事項 A B A
4.国際約束の誠実な履行 - - -
5.人事に関する計画 A A A
(注記)当該中期目標期間の初年度から経年変化を記載。 6.中期目標期間を超える債務負担 - - A
項目名
中期目標期間中の評価の経年変化(注記)
項目名
中期目標期間中の評価の経年変化(注記)
独立行政法人日本原子力研究開発機構の平成19年度に係る業務の実績に関する評価AAAA AA A備考(法人の業務・マネジメントに係る意見募集結果の評価への反映に対する説明等)
本法人の業務・マネジメントに係る意見募集を実施した結果、意見は寄せられなかった。A A総表-1
【参考資料1】予算、収支計画及び資金計画に対する実績の経年比較(過去5年分を記載)
区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
収入 支出
運営費交付金 76,747 161,838 163,224 一般管理費 8,262 19,076 18,300
施設整備費補助金 6,003 26,854 23,373 事業費 77,292 141,389 146,978
国際熱核融合実験炉研究費補助金 - 1,241 3,072 施設整備費補助金経費 11,533 28,149 23,197
その他国庫補助金 - - - 国際熱核融合炉研究費補助金経費 - 1,239 3,072
受託等収入 12,551 14,568 16,846 受託等経費 13,759 14,463 16,778
その他の収入 4,756 3,643 3,627 借入償還金 - - -
廃棄物処理処分負担金 - - 9,420 廃棄物処理処分負担金繰越 - - 5,052
計 100,057 208,145 219,563 計 110,845 204,316 213,377
区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
費用 収益
経常費用 84,419 158,929 166,005 運営費交付金収益 63,546 142,353 137,796
事業費 73,682 140,269 141,940 補助金収益 9,281 1,173 1,818
一般管理費 3,083 5,656 5,227 受託等収入 6,897 11,333 16,244
受託等経費 7,046 10,835 15,433 その他の収入 6,448 7,267 7,957
減価償却費 608 2,169 3,405 資産見返負債戻入 153 1,206 2,408
財務費用 62 86 60 臨時利益 64 89 242
雑損 234 949 316
臨時損失 64 89 1,957
計 84,779 160,053 168,338 計 86,390 163,421 166,464
純利益 1,610 3,369 しろさんかく1,874
法人税、住民税及び事業税 95 59 56
目的積立金取崩額 - - -
総利益 1,515 3,310 しろさんかく1,929
(単位:百万円)
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
国際熱核融合実験炉/より広範な取組を通じた活動計画の本格化により、国際熱核融合実験炉研究費補助金による収入・支出が倍増した。また、廃棄物処理処分負担金を新たに受入れたことにより、収入が大
幅に増加するとともに、廃棄物処理処分負担金繰越により後年度へ予算を持越すこととなった。
(単位:百万円)
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
19年度において、流動資産の売却に伴う売却損及び評価損等の臨時損失が大きく発生したことにより、損失金を計上したものである。
参考-1
区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
資金支出 資金収入
業務活動による支出 77,678 149,440 163,525 業務活動による収入 91,153 179,172 190,902
投資活動による支出 21,896 55,503 138,238 運営費交付金による収入 76,747 161,838 163,224
財務活動による支出 7,703 4,965 976 受託等収入 5,223 10,341 11,944
翌年度への繰越金 21,357 20,607 20,567 その他の収入 9,184 6,993 15,734
投資活動による収入 6,641 29,985 111,797
施設整備費による収入 6,003 26,854 23,373
その他の収入 638 3,130 88,423
財務活動による収入 0 0 0
前年度よりの繰越金 30,839 21,357 20,607
計 128,634 230,514 323,305 計 128,634 230,514 323,305
【参考資料2】貸借対照表の経年比較(過去5年分を記載)
区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
資産 負債
流動資産 57,043 63,656 79,341 流動負債 36,292 46,480 57,823
固定資産 775,463 726,022 696,608 固定負債 21,874 57,100 74,517
負債合計 58,167 103,580 132,340
純資産
資本金 808,594 808,594 808,594
資本剰余金 しろさんかく 35,771 しろさんかく 127,321 しろさんかく167,881
利益剰余金 1,515 4,825 2,895
(うち当期未処分利益、しろさんかく当期未処理損失) (1,515) (2,775) (しろさんかく2,351)
純資産合計 774,339 686,098 643,609
資産合計 832,506 789,678 775,949 負債・純資産合計 832,506 789,678 775,949
(単位:百万円)
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
減価償却費の計上が大きく、資産の残高が減少している。資本剰余金のマイナス計上が大きくなっているのは、主務省令の規定により特定を受けた資産(主に承継資産であり、当該資産に係る減価に係る収益
の獲得が見込めないものとされた資産)から発生する減価償却費については、独法会計基準の規定に基づき、損益計算書上の費用ではなく、損益外減価償却費として資本剰余金に減額計上していることによる
ものである。
(単位:百万円)
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
資金運用を効率的に行ったことにより、投資活動による収入及び支出が増加した。
参考-2
【参考資料3】利益(又は損失)の処分についての経年比較(過去5年分を記載) (単位:百万円)
区分 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
I 当期未処分利益(しろさんかく当期未処理損失) しろさんかく 535 しろさんかく 422 しろさんかく97
当期総利益(しろさんかく当期総損失) しろさんかく 535 113 324
前期繰越欠損金 - しろさんかく 535 しろさんかく422
II 利益処分額(しろさんかく損失処理) 2,050 3,196 しろさんかく2,254
積立金 2,050 3,196 -
積立金取崩額 しろさんかく2,254
独立行政法人通則法第44条第3項により - - -
主務大臣の承認を受けた額
【参考資料4】人員の増減の経年比較(過去5年分を記載) (単位:人)
職種 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
定年制研究系職員 1606 1,155 1111
任期制研究系職員 176 136 143
定年制事務・技術系職員 2732 3,093 3046
任期制事務・技術系職員 342 334 379
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
19年度の当期総利益は、一般勘定において受託研究収入等により発生したものであり、前期繰越欠損金の一部を相殺した。また、電源利用勘定において流動資産の評価損等により、当期総損失が発生したた
め、積立金を取崩して処理したものである。
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
定年制職員については、中期計画に基づき計画的な人員の合理化に取り組んでおり、19年度において91人を削減した。
なお、定年制職員(研究系職員、技術系職員)については、17年度は統合に伴い旧法人の職種区分(研究、技術、事務)を暫定的に継承し、新法人の職種区分並びに研究員・技術員制度の理解浸透を図るため
の補正期間を設けていたが、18年度において原子力機構として職種区分の見直しを実施した。
参考-3
【評価の基準】 No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項A1
I.1.(1).1)
高速増殖炉サイクルの
実用化研究開発
しろまる年度計画に基づき国の評価・方針に
基づく技術開発を進めたか。
しろまる国の各種方針との整合は取れている
か。
しろまる電気事業者、メーカー、大学等との
密接な連携のもとに研究開発が実施さ
れているか。
しろまる軽水炉サイクルから高速増殖炉サイ
クルへの合理的な移行の在り方の検討
がされているか。
しろまる海外の機関や国際協力計画との連携
は適切か。
しろまる年度計画に基づき、主概念(「ナトリウム(Na)冷却高速増殖炉(MOX燃料)」、「先進
湿式法再処理」、「簡素化ペレット法燃料製造」の組み合わせ)を中心とした要素技術開
発とそれらの成果を踏まえた設計研究を着実に進めた。
しろまる文部科学省の「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」及び原子力委員会の「高
速増殖炉サイクル技術の今後10年程度の間における研究開発に関する基本方針」に基づ
き、革新技術の採否判断に向け、要素技術開発とそれらの成果を踏まえた設計研究を着実
に進めた。
しろまる国や電気事業者等で構成される五者協議会の下、三菱重工業(株)を中核メーカに選定し、
機構、三菱重工業(株)、本研究開発のために新たに設立されたMFBR社の3者で基本協定を締結
する等、連携・協力体制を構築し、研究開発を実施した。
しろまる五者協議会の下に設置された「高速増殖炉サイクル実証プロセス研究会」における検討
を軸とし、高速増殖炉導入速度や電力需要量等、変動要因を考慮してサイクルの物量評価
を行うなど、移行期の核燃料サイクルを検討した。
しろまる高速増殖炉サイクル技術を世界標準技術とすべく、米国エネルギー省及び仏原子力庁と
研究協力の覚書を締結し、研究開発を効率的に進めた。A「常陽」におけるトラブルにより試料部を取
り出すことができず、照射後試験は未着手で
あることが懸念材料ではあるが、平成19年度
実施分については、中期計画通りに履行し、
中期目標の達成に向けて順調に実績を上げて
いる。また、海外の機関と積極的な連携を図
り、FBRサイクルに係る国際共同研究の実
現に向けた共同文書に同意しFBR国際標準
の一つとなる可能性を高めるなど成果を上げ
つつある。高速増殖炉サイクル実用化研究開
発が中期目標期間を超えて実施されるプロジ
クトであることを踏まえ、「2010年度に革新
技術の採否を決定する」との方針に基づき、
日本原子力研究開発機構における課題の進捗
状況の把握、進捗状況の情報開示、プロジェ
クト管理、軽水炉から高速増殖炉への移行期
の検討の結果のPDCAサイクル等が適切に実施
されることを期待する。2I.1.(1).2)
高速増殖原型炉「もん
じゅ」における研究開発しろまる年度計画に基づき、運転再開に向け
た準備は着実に行われたか。
しろまる社会や立地地域の信頼性向上に向け
た取り組みが行われているか。
しろまる国際的な高速増殖炉サイクル技術開
発の中核としての役割を果たしている
か。
しろまる年度計画に基づき、2次主冷却系ナトリウムの抜取り時間が25分以内であることなど、改
造工事後の各機器・設備の機能・性能が設計通りであることを確認し、工事確認試験を計
画通り終えた。また、1次・2次主循環ポンプ主モータの機能確認試験や蒸気発生器伝熱管
全数の健全性確認等、次のステップであるプラント確認試験を計画通り進めており、運転
再開に向けた準備を着実に行った。一方で、1次メンテナンス冷却系ナトリウム漏えい検出
器の取り付け不良を発見し、全てのナトリウム漏えい検出器等について点検・補修を進
め、計画通りの運転再開を目指して進めた。
しろまる双方向の対話活動であるさいくるミーティングを始め、説明会・報告会の開催等、広
聴・広報活動に積極的かつ継続的に取り組んだ。一方で、1次メンテナンス冷却系ナトリウ
ム漏えい警報の発報に際し地元自治体等への通報連絡遅れを生じた。これを社会や立地地
域の信頼を損ねる重大な問題と認識し、徹底した原因究明、問題点の洗い出しを行い、改
善策に取り組んだ。また、改善の実施状況については外部有識者から成る委員会において
評価を受けることとする等、継続的な改善に努めた。
しろまる第四世代原子力システムに関する国際フォーラムのナトリウム冷却高速炉システムにお
ける「もんじゅ」を利用したマイナーアクチニド含有燃料の燃焼実証試験計画に関し、機
構主導の下、日仏米三国によるプロジェクトを開始するなど、国際的な高速増殖炉サイク
ル技術開発の中核としての役割を果たした。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き、も
んじゅの本格運転開始に向けた準備、信頼性
向上に向けた着実な取組を期待する。平成20
年度以降においては、新耐震基準による、ス
ケジュールの遅れや波及効果等のリスクファ
クターの分析を適切に行い、安全及び地元の
理解を確保した上で、中期目標の達成を期待
する。また、技術者が対策に取り組む真摯な
姿勢を見せることも理解を得る重要な要素で
あるため、外部有識者による委員会などに、
地元住民の代表に参加を求めることを検討す
ることを期待する。
F:評価委員会として業務運営の改善その他の勧告を行う必要がある。
独立行政法人日本原子力研究開発機構の平成19年度に係る業務の実績に関する評価
S:特に優れた実績を上げている。
A:中期計画通り、または中期計画を上回って履行し、中期目標に向かって順調、または中期目標を上回るペースで実績を上げている。
B:中期計画通りに履行しているとは言えない面もあるが、工夫や努力によって、中期目標を達成し得ると判断される。
C:中期計画の履行が遅れており、中期目標達成のためには業務の改善が必要である。
I.国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
項目別-1
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項3I.1.(1).3)
プルトニウム燃料製造
技術開発
しろまる年度計画に基づき「常陽」の燃料供
給を行うとともに「もんじゅ」に燃料
供給するための技術の確立を進めた
か。
しろまる民間事業者への技術移転の役割を果
たしているか。
しろまる年度計画に基づき、「常陽」の燃料要素の製造を完了するともに燃料集合体部材を確保
した。また、「もんじゅ」燃料に関しては、低密度ペレットに適した製造条件を報告書に
とりまとめるとともに、燃料輸送時の設計基礎脅威対応の専用カバーの製作等、燃料供給
のための技術の確立を進めた。
しろまる民間事業者からの要請に応じた技術者の派遣、民間事業者から受け入れた運転員の教
育・訓練や実規模MOX確証試験等を通じ、機構が保有する混合酸化物(MOX)燃料製造技術に
関して民間事業者への技術移転を進めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。耐震基準の見
直しの反映、加工事業への変更など、多くの
課題を今後着実に解決していくことを期待す
る。また、新耐震基準によるスケジュールの
遅れや波及効果をリスクファクターの観点か
ら周到に分析されることを期待する。4I.1.(2)
高レベル放射性廃棄物
の処理・処分技術に関
する研究開発
しろまる年度計画に基づき、処分場の設計・
安全評価の信頼性向上のための地層処
分研究開発を行うとともに、東濃地科
学センター及び幌延深地層研究セン
ターにおける深地層の研究施設計画を
進めるなど、深地層の科学的研究を
行ったか。
しろまる理解促進のための取り組みがなされ
ているか。
しろまる地層処分事業を支援する取り組みが
なされているか。
しろまる国の安全規制を支援する取り組みが
なされているか。
しろまる関係機関との連携や研究開発成果の
体系化に向けた取り組みがなされてい
るか。
しろまる年度計画に基づき、人工バリア等の長期挙動や核種の溶解・移行等に関するモデルの高
度化、基礎データの拡充、データベースの開発等、処分場の設計・安全評価の信頼性向上
のための地層処分研究開発を行った。また、2つの深地層の研究施設計画において、坑道掘
削時の調査研究により得られた実際の地質環境データに基づき、地上からの調査技術やモ
デル化手法の妥当性評価等、深地層の科学的研究を行った。
しろまる理解促進のための取組として、研究施設への一般見学者受入れ、公開での報告会・情報
交換会、学生・一般向けのセミナー、周辺住民への広報誌の配布、ホームページやマスメ
ディアを通じた情報発信等を行い、国民との相互理解の醸成に努めた。また、幌延深地層
研究センターのPR施設「ゆめ地創館」を6月末に開館した。
しろまる原子力発電環境整備機構との協力協定に基づき、研究者の派遣を継続するとともに、技
術情報の提供や情報交換会等を通じて地層処分事業を技術的に支援した。
しろまる原子力安全委員会への技術情報の提供や委員としての参加、また原子力安全基盤機構及
び産業技術総合研究所との3機関による協力協定の締結による安全規制の技術基盤の整備を
目指した研究協力の開始等、国の安全規制に関する支援を行った。
しろまる地層処分基盤研究開発調整会議において、原子力発電環境整備機構及び規制関連機関の
動向やニーズを踏まえて策定した「高レベル放射性廃棄物の地層処分基盤研究開発に関す
る全体計画」に基づき、原子力環境整備促進・資金管理センター、電力中央研究所、産業
技術総合研究所、放射線医学総合研究所等との間で、共同研究や情報交換を進めた。ま
た、長期にわたる地層処分事業及び国の安全規制を支援していくため、研究開発の成果を
体系化し知識基盤として適切に管理・継承していくことを目的とした総合的な知識ベース
の開発を進めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。研究開発のみ
ならず理解促進のための取組においても、
国、電気事業者等とよく調整・連携し、研究
開発機関として発出すべき内容を意識したう
えで行うなど、研究開発機関である原子力機
構ならではの活動を積極的に展開することを
期待する。5I.1.(3).1)
分離・変換技術の研究
開発
しろまる年度計画に基づき高速増殖炉サイク
ル技術及び加速器駆動システムを用い
た分離変換技術の研究開発を行った
か。
しろまる統合効果を生かし、高速増殖炉サイ
クル実用化研究開発や高レベル放射性
廃棄物処分技術開発と連携のとれた研
究開発を行っているか。
しろまる海外の機関や国際機関との連携は適
切か。
しろまる年度計画に基づき、これまで調製が困難であった希釈材としてZrNを含む多元系MA含有窒
化物固溶体等の熱拡散率、比熱、熱伝導率を世界で初めて取得したほか、TRU核種の熱中性
子捕獲断面積の測定及び解析等、高速増殖炉サイクル技術及び加速器駆動システムを用い
た分離・変換技術の研究開発を行った。
しろまる分離変換技術の導入効果について、発熱性FPの分離とMA核種の核変換により処分場面積
を1/100程度まで削減できる可能性を示すなど、高速増殖炉サイクル実用化研究開発、高レ
ベル放射性廃棄物処分技術開発、地層処分研究開発と連携のとれた研究開発を行った。
しろまる欧州の核変換研究プロジェクトEUROTRANSへの参加協定を新たに締結するなど、国際的な
連携を一層強化した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。核変換技術に
よる処分場面積の大幅な縮小が期待される
が、技術の成立性、懸念される事項の分析を
進めた上で今後の研究計画に反映されること
を期待する。また、目標に向けた道筋が見え
る研究開発ではなく創造性が求められる分野
であるため、創造性を引き出すようなマネジ
メントが必要である。
項目別-2
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項6I.1.(3).2)
高温ガス炉とこれによ
る水素製造技術の研究
開発
しろまる年度計画に基づき高温ガス炉の技術
基盤の確立を目指した研究開発を行う
とともに核熱による水素製造の技術開
発を行ったか。
しろまる産業界との連携は十分とられている
か。
しろまる海外の機関や国際機関との連携は適
切か。
しろまる年度計画に基づき、HTTR燃料から放出される核分裂性生成物(FP)の濃度が海外の高温
ガス炉燃料に比較して1/10〜1/1,000低く、FP閉じ込め性能が世界最高水準であることを確
認した。また、ISシステムの金属製耐圧部材に適用するガラスライニング材等の耐食被覆
材の腐食試験、各種ガラスライニング材の熱サイクル耐久性の確認等の成果を得た。
しろまる高温ガス炉将来展開検討会に参加するとともに、高温ガス炉の商用化への道筋をつける
ため、(株)東芝、東洋炭素(株)、新日本製鉄(株)と協力するなど、産業界との連携
を図った。
しろまる第四世代原子力システムに関する国際フォーラムの超高温ガス炉に関する国際共同研究
の推進、国際原子力研究イニシアチブのZrC被覆燃料粒子の照射挙動に関する共同プロジェ
クトの推進等、海外機関や国際機関との連携を図った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。高温ガス炉の実
用化に向けた技術基盤を完成させるために実
施すべき事項を、より具体的な形で明確にす
る必要がある。7I.1.(3).3)
核融合エネルギーを取
り出す技術システムの
研究開発
しろまる年度計画に基づき国際熱核融合実験
炉(ITER)計画及び幅広いアプローチ
(BA)に取り組むとともに炉心プラズ
マ及び核融合工学の研究開発を行った
か。
しろまるITER計画やBAの実施に当たり、大
学、研究機関、産業界の意見や知識の
集約を図る取り組みは行われている
か。
しろまるITER計画やBAなどの国際協力におい
て十分な貢献が行われているか。
しろまるITER計画やBAに我が国の研究者が円
滑に参加できるような態勢に向けて、
核融合フォーラムとの連携により国の
取り組みを支援しているか。
しろまる我が国の技術基盤の向上に貢献して
いるか。
しろまる我が国が締結した原子力の研究、開
発及び利用に関する条約その他の国際
約束の履行が誠実に行われているか。
しろまる年度計画に基づき、ITER建設の共同実施やBA計画の具体化に向けた支援・協力活動を実施
するとともに、我が国が分担する超伝導コイル、遠隔保守機器、加熱装置、計測装置等の
調達に必要な研究開発においては、いずれも要求性能を満足する成果を得て調達準備を進
めた。また、炉心プラズマの研究開発では、核融合炉の経済性の指標であるベータ値につ
いて、定常高ベータの年度目標を達成するとともに、自由境界限界を超える規格化ベータ
値2.7を実現するなど、定常高ベータ化研究が進展した。特に、核融合工学分野において
は、ITERの目標性能を上回るジャイロトロン高周波加熱装置の定常発振の成功、世界に先
駆けたトロイダル磁場コイル用超伝導導体の製作技術基盤の構築等、高い技術開発成果を
輩出し、我が国の技術的な主導性を高く示すなど、我が国の技術基盤の向上に貢献すると
ともに、ITER協定参加極に対する国際的イニシアチブの確保をより強固なものにした。
しろまるITER計画及びBA活動の実施にあたり、核融合エネルギーフォーラム活動等を通じて大
学、研究機関、産業界の意見や知識を集約し、国際的な会合の議論に反映した。さらに、
広く国内の大学、研究機関の研究者を委員とする委員会を設置するなど、連携の強化に努
めた。
しろまるITER計画では、我が国の国内機関として指定され、我が国が分担した技術仕様検討等の
作業や分担機器の調達準備等の着実な実施、ITER国際チームやITER機構への上級管理職の
派遣等の国際貢献を行った。また、ITER機構の技術会合やITER理事会、運営諮問委員会
等、ITER計画の方針決定等に参画・貢献するなど、国際イニシアティブの確保を目指して
国際協力活動を積極的に展開した。一方、BA活動については、六カ所BAプロジェクトユ
ニットを設置してBA活動開始の実施体制を整えた。我が国の実施機関として指定を受け、
欧州実施機関との調整を行う他、六カ所サイトの整備を進めるなど、順調にプロジェクト
を推進した。
しろまるITER計画及びBA活動の本格着手に向け、従来からの核融合フォーラム活動に加え、核融
合フォーラムから改組し発足した核融合エネルギーフォーラム、及びその中の国からの依
頼事項を機動的に検討する「ITER・BA技術推進委員会」について、事務局として運営にあ
たり、国の取組に貢献した。
しろまるプラズマ加熱技術、超伝導導体製作技術、第一壁製作技術等において、世界を先導する
技術開発成果を上げ、我が国の技術基盤の向上に貢献した。
しろまるITER計画については、ITER協定等に基づき、ITER機構の定めたスケジュールに従ってト
ロイダル磁場コイルの超伝導導体の我が国調達分についてITER機構と調達取り決めを締結
し、超伝導導体等の製作に関する契約を国内メーカと締結するなど、国内機関としての責
務を確実に果たした。また、BA計画については、BA協定等に基づき、BA運営委員会で定め
られた事業計画に従って我が国が分担するサテライト・トカマク機器の調達を開始するな
ど、実施機関としての責務を果たしており、国際約束を誠実に履行した。SITERの目標性能を上回るジャイロトロン高周
波加熱装置の定常発振の成功、世界に先駆け
たトロイダル磁場コイル用超伝導導体の製作
技術基盤の構築等、世界を先導する成果がで
ており、機構が進める核融合炉工学の研究開
発において、特に優れた成果を上げていると
評価される。今後はITER関連設備の製作の
「もの作り」においても世界をリードすると
ともに、ITER機構職員数についても国際的な
取り決めにおいて確保した権利を十分に行使
できるよう、人材の派遣に関して国内実施機
関としての原子力機構の更なる努力を期待す
る。8I.1.(4)
民間事業者の原子力事
業を支援するための研
究開発
しろまる年度計画に基づき民間事業者の原子
力事業を支援するための研究開発を実
施したか。
しろまる民間事業者から提示された技術的課
題の解決に貢献したか。
しろまる年度計画に基づき、「ふげん」ウラン-プルトニウム混合酸化物(MOX)使用済燃料を用
いた再処理試験を通じて各種データの採取を継続するとともに、ガラス溶融炉の解体技術
開発を行うなど、民間事業者の原子力事業を支援するための研究開発を実施した。
しろまる日本原燃(株)との技術情報連絡会を通し、六ヶ所再処理工場で安全・安定運転を図る上で
今後必要となる計装・電気設備の保全等について、東海再処理施設での経験を基に技術提
案を行うなど、民間事業者から提示された技術的課題の解決に貢献した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。民間の事業者
の期待の高い高燃焼度燃料再処理試験につい
ても民間と協力して着手に向けた積極的な取
組を期待する。ガラス固化技術についても民
間と協力して継続的な技術開発を行うととも
に、その技術の維持・継承の方策についての
検討も必要である。
項目別-3
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項9I.2.(1)
多様な量子ビーム施
設・設備の戦略的整備
とビーム技術開発
しろまる年度計画に基づき量子ビーム施設の
整備及びビーム技術開発を行ったか。
しろまるJ-PARCの建設に当たり、高エネル
ギー研究所との連携は適切か。
しろまるJ-PARCの建設に当たり、立地地域の
行う研究活動・産業利用促進と連携が
とられているか。
しろまる量子ビームの利用技術の開発につい
て産業界、大学等との連携はとられて
いるか。
しろまる年度計画に基づき、リニアックの性能試験や3GeVシンクロトロンの整備、物質・生命科
学実験施設の建設工事終了等、量子ビーム施設の整備が高い成果をあげつつ順調に進めら
れ、年度目標の3GeV-4kWを超える3GeV-50kWまでのビーム出力を実現した。また、冷中性子
ビームや重イオンマイクロビーム、レーザーを用いたビーム技術開発等を行い、特にレー
ザーを用いた技術開発においては、光速飛翔鏡に係るオリジナルな理論を提唱し、その原
理を世界で初めて実証して研究論文誌や国際学会で高い評価を受けるとともに、新しい量
子ビーム発生技術の可能性を提示する成果をあげた。
しろまるJ-PARCでは大強度加速器技術として高い可能性をもつ独自の方式を採用しているが、高
エネルギー加速器研究機構と連携して作ったビーム試験チームによる多くの技術的困難の
解決により、陽子加速における世界最高の加速を早期に実現した。この成果に対して、国
際アドバイザリー委員会から極めて高い評価を受け、この加速方式の国際標準化の動きが
加速した。
しろまるJ-PARCの建設に当たり、茨城県のサイエンスフロンティア21構想に則って茨城県ビーム
ラインの整備に協力するとともに県主催の研究会やその利用促進活動に全面的に協力し
た。
しろまるレーザー駆動小型加速器の医療応用を目指して、「光医療研究連携センター」を新設
し、優秀な外国人研究員の積極的採用を図るなど、外部資金による研究開発プロジェクト
を産業界、大学等との連携体制により確実に推進する本格体制を整えた。SRCS方式による大強度加速器技術を世界に先
駆けて実用化し国際標準化への流れを作った
こと、3GeVシンクロトロンにおいて年度目標
の4kWを超える50kW相当以上のビーム出力を
実現したことなど、数多くの大きな成果があ
り高く評価される。また、新光量子ビーム発
生技術、レーザー駆動小型加速器技術につい
て、今後の実用化に期待する。10I.2.(2)
量子ビームを利用した
先端的な測定・解析・
加工技術の開発
しろまる年度計画に基づき量子ビームを利用
した先端的な測定・解析・加工技術の
開発を行ったか。
しろまるライフサイエンスやナノテクノロ
ジー等の先端的な科学技術分野の発展
のために貢献しているか。
しろまる機構内の他の部門と連携した研究開
発が行われているか。
しろまる研究の成果は広く関係者に発信され
ているか。
しろまる量子ビームの利用分野毎に産業界、
大学等との連携は行われているか。
しろまる年度計画に基づき、創薬標的蛋白質の原子構造解析や中性子偏極解析法の開発を進めた
ほか、マイナーアクチニドの化学結合特性の解明とその特異な化学結合特性を利用した新
規アクチノイド認識化合物の創製により、極めて高い分離比を実現し、次世代再処理・高
レベル廃棄物処理を簡素化させる新しいプロセスの提案に繋がる先進的な成果を取得する
など、量子ビームを利用した先端的な測定・解析・加工技術の開発を行った。
しろまる量子ビームの相補的利用(中性子解析とX線結晶解析)の結果、代表的な創薬標的蛋白
質であるHIVプロテアーゼ(エイズウィルスの生存に必須の蛋白質)の水素・水和構造
を含む全原子構造解析に世界で初めて成功した。さらに、HIVプロテアーゼの酵素機能
を抑制する阻害剤(医薬候補分子)の改良に有効な相互作用の情報も併せて取得するな
ど、医薬品の改良に繋がる大きな成果を得た。また、バイスタンダー効果がごく一部の細
胞への重イオン照射で起こることや、難治性がんの治療に重イオン照射が有効であること
などを発見し、重粒子線がん治療や放射線生物影響解明に繋がる新規で重要な成果を取得
した。
しろまる生命科学研究を効率的・効果的に進めることを目指して機構内を横断的に連携した特定
ユニットにて放射線抵抗性細菌研究の新たな展開を図るなど活発な研究活動を展開した。
しろまる研究成果をシンポジウムや研究会等を通して広く発信した。
しろまる物質・材料研究機構及び理化学研究所と研究協力協定「三機関連携」の下で放射光との
相補的利用等による研究を共同で進め、研究成果が出始めた。文部科学省の下で放射線利
用振興協会が進める「中性子利用技術移転推進プログラム」の全面的な支援や群馬大学21
世紀COEプログラムに係る共同研究等、産業界、大学等からのニーズに応える連携を行っ
た。S代表的な創薬標的蛋白質であるHIVプロテ
アーゼの全原子構造解析に世界で初めて成功
するなど、数多くの大きな成果があり高く評
価される。引き続き着実に実施することを期
待する。また、当該部門で実施しているマネ
ジメントの特色を分析し、そのグッドプラク
ティスを法人全体に広げる努力を期待する。11I.2.(3)
量子ビームの実用段階
での本格利用を目指し
た研究開発
しろまる年度計画に基づき量子ビームの実用
段階での本格利用を目指した研究開発
を行ったか。
しろまる民間事業者への技術移転等を拡充し
実用化を促進するため産業界と密接に
連携して実用化を目指した研究開発が
行われているか。
しろまる機構内の他の部門と連携した研究開
発が行われているか。
しろまる研究の成果は広く関係者に発信され
ているか。
しろまる年度計画に基づき、トランジスタの放射線誘起電流シミュレーション技術の開発やキシ
レンの無害化に最適な触媒の選定等、量子ビームの実用段階での本格利用に繋がる研究開
発を行った。
しろまる柔軟性のある生分解性ポリ乳酸を、高分子材料の開発・製造企業と密接に連携し、研究
開発を効果的・効率的に進めて世界で初めて開発するとともに、関連企業と実用化に向け
た連携協力の検討を進めるなど、産業応用に道筋をつけた。機構内、研究機関、産業界及
び地域との連携を図り、これらの連携が功を奏して産業利用に繋がった成果を多数挙げて
きていることが、機構の外部評価委員会(量子ビーム応用研究・評価委員会)でも高く評
価された。
しろまる次世代原子力システム研究開発部門及び原子力基礎工学研究部門との連携による高速炉
用フェライト鋼のナノサイズ分散粒子の形態の評価並びにその制御に関する研究を展開
し、高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCTプロジェクト)の個別課題の解決に関する
検討を進めた。
しろまる地域産業発展への貢献を目指した文部科学省連携融合事業への参画のほか、国際シンポ
ジウムの開催協力等、研究成果の発信に努めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。なお、投資対効
果等の観点から成果を定量的に示すことを期
待する。また、当該部門で実施しているマネ
ジメントの特色を分析し、そのグッドプラク
ティスを法人全体に広げる努力を期待する。
項目別-4
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項12I.3.(1)
安全研究とその成果の
活用による原子力安全
規制行政に対する技術
的支援
しろまる年度計画に基づき原子力安全委員会
の定める「原子力の重点安全研究計
画」等に沿って安全研究を着実に実施
したか。
しろまる安全研究の成果に基き、中立的な立
場から安全規制に対して技術的貢献が
行われたか。
しろまる行政に対する多面的な貢献が行われ
たか。
しろまる安全研究の実施にあたって、機構内
における連携及び機構外との連携が図
られているか。
しろまる年度計画に基づき、「原子力の重点安全研究計画」に沿って、確率論的安全評価手法の
高度化に関する研究、軽水炉燃料の高燃焼度化及び軽水炉の高度利用・高経年化に対応し
た安全評価に関する研究、核燃料サイクル施設の安全性に関する研究、放射性廃棄物処
分・廃止措置の安全性に関する研究を原子力安全・保安院等からの外部資金も獲得しつつ着
実に進め、原子炉圧力容器貫通ノズル溶接部付近におけるき裂の発生・進展に対応した確
率論的破壊力学(PFM)解析コードを開発・整備するなどの成果を得た。また、原子力安全委
員会において実施された「原子力の重点安全研究計画」の中間評価において、機構の実施
している重点安全研究のいずれも着実に進められていると評価された。
しろまる原子力安全委員会や関係する規制行政庁へ科学的データが提供され、TRU廃棄物の埋設濃
度上限値解析の算定手法と試算値が原子力安全委員会報告書に掲載されるなど技術的貢献
を行った。また、規制支援の中立性、透明性を確保するため、安全研究審議会を開催し
た。
しろまる関係行政機関等(原子力安全委員会、原子力安全・保安院及びOECD/NEA、IAEA等の国際
機関)の多数の審査会・専門部会に参画するなどの人的貢献を行った。
しろまる安全研究については、安全研究センターが中心となり、機構内において原子力基礎工学
研究部門、地層処分研究開発部門等と連携するとともに、大学等、機構外とも連携して進
めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。「原子力の重
点安全研究計画」に沿って、「安全規制の基
本的考え方、指針、安全基準等に研究成果が
反映」されるよう、また、「学協会標準等、
民間による安全基準の作成に当たり研究成果
が活かされる」ように着実に安全研究を実施
することを期待する。13I.3.(2)
原子力防災等に対する
技術的支援
しろまる年度計画に基づき原子力防災等に対
する技術的支援を行ったか。
しろまる関係行政機関及び地方公共団体の原
子力災害対策の強化に貢献している
か。
しろまる年度計画に基づき、自ら企画立案する訓練を実施するほか、国や地方公共団体の実施す
る原子力防災訓練に参加するなど、原子力災害時等における対応能力の維持向上を図っ
た。また、災害対策基本法に基づく指定公共機関としての外部要請による初めての緊急時
対応として新潟県中越沖地震に際し初動対応体制の立上げを実施するなど原子力災害時の
技術支援活動を行った。
しろまる原子力防災に関する情報管理に係る調査、より効果的な意思決定を行うための管理手法
に関する研究、国、地方公共団体及びその他防災関係機関関係者の原子力災害時における
対応能力の維持向上に貢献するための研修、訓練を行うなど、原子力災害対策の強化へ寄
与した。また、アジア諸国の原子力防災対応能力向上につなげる国際貢献に努めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。14I.3.(3)
核不拡散政策に関する
支援活動
しろまる年度計画に基づき核不拡散政策に関
する支援活動を実施したか。
しろまる関係行政機関、国際原子力機関を支
援するための技術開発を実施するとと
もに、関係行政機関の要請に応えた核
不拡散政策立案に役立つ政策研究を実
施しているか。
しろまる年度計画に基づき、先進的保障措置システムの検討、核拡散抵抗性評価研究の実施、衛
星情報を利用した保障措置の高度化の調査、日本の核不拡散対応のモデル化やアジア地域
の円滑な原子力平和利用に資する信頼性・透明性向上に係る政策研究の実施等、核不拡散
政策に関する支援活動を行った。
しろまるロシアの核兵器解体により生ずる余剰プルトニウム処分に関し、高速炉での燃焼オプ
ションへの機構のロシアに対する技術的支援が評価され、余剰兵器級プルトニウム処分に
係る米・露共同声明の中でこのオプションが採用された。また、CTBTにおいて、日本に設
置する放射性核種監視施設群の開発整備と認証取得を完遂し、本格的運用を可能とするこ
とで国の国際約束の遂行に貢献した。さらに、質量分析前に試料中のウラン濃縮度を迅速
に推定することのできる極微量核物質同位体比測定法を開発し、IAEAの分析法として認証
されるなど、核不拡散に関わる国際的な活動に対して技術的に大きな貢献を果たした。ま
た、関係行政機関からの核不拡散に関する受託調査研究、情報提供等、核不拡散政策立案
に役立つ政策研究を実施した。S核不拡散に関する政策的研究、技術開発や調
査等の支援活動、また、ロシアの核兵器解体
により生ずる余剰プルトニウム処分に関する
技術的支援やCTBTへの貢献など着実に実施し
ており、中でも、試料中のウラン濃縮度を迅
速に推定する極微量核物質同位体比測定法を
開発し、IAEAの分析法として認証されるな
ど、原子力機構が率先して支援すべき分野の
活動において、結果をもって示したことは高
く評価される。また、日本のプレゼンスの向
上につながるような世界への情報発信も期待
する。
項目別-5
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項15I.4.
自らの原子力施設の廃
止措置及び放射性廃棄
物の処理・処分に係る
技術開発
しろまる年度計画に基づき自らの原子力施設
の廃止措置に必要な技術開発及び放射
性廃棄物の処理処分に必要な技術開発
を行ったか。
しろまる機構が将来負担するコストの低減に
対して配慮されているか。
しろまる年度計画に基づき、ウラン濃縮関連施設や再処理特別研究棟等を用いた廃止措置技術開
発、また廃棄体放射能測定評価に係る技術開発、廃棄物管理システム開発、処理処分技術
開発等を行った。
しろまる合理的かつ安全な計画策定を支援する廃止措置統合エンジニアリングシステム、及び合
理的なクリアランス関連作業を支援するためのクリアランスレベル検認評価システムの開
発を行った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。コスト低減に
ついて多大の努力が行われているが、他の
ミッションへの圧迫が懸念される。原子力機
構法の改正に伴い、廃棄物処分の事業主体と
して、安全確保、コスト低減の観点から着実
に技術開発を進めて頂きたい。また、「ふげ
ん」補助建屋コンクリート強度データ調査の
影響により、廃止措置計画の認可が平成20年
2月となり、原子炉重水系のトリチウム除去
手法の信頼性確認について平成19年度に実施
できなかったことが懸念材料であるが、平成
20年度に確実に実施すべきである。また、ク
リアランス処理後材料に関するリサイクルの
あり方、リサイクルする場合の用途などの推
進方策等について検討することを期待する。
また、複数の対象施設に対して全体から見た
廃止措置技術の確立に向けて計画的かつ合理
的に進めることを期待する。16I.5.(1).
原子力基礎工学
しろまる年度計画に基づき原子力研究開発の
基盤を形成し、新たな原子力利用技術
を創出するため原子力基礎工学研究を
実施したか。
しろまる我が国の原子力の研究、開発及び利
用の基盤を形成するとの観点から産業
界、大学等との連携は十分行われてい
るか。
しろまる統合効果を生かし、機構内の他の部
門との連携が十分行われているか。
しろまる成果の活用を視野に入れ、ステーク
ホルダーを意識した研究開発活動が進
められているか。
しろまる年度計画に基づき、原子力の共通的科学技術基盤の高度化のための核工学、炉工学、材
料工学、核燃料・核化学工学、環境工学、放射線防護、放射線工学、シミュレーション工
学、高速増殖炉サイクル工学の各分野の原子力基礎工学研究を着実に実施した。
しろまる共同研究、公募事業、受託事業などを通して、産業界、大学等と緊密に連携しており、
原子力の研究、開発及び利用の基盤形成への取組を図った。
しろまる統合効果を生かし、高速炉蒸気発生器の伝熱挙動の解析を行うなど、次世代炉の分野や
再処理プロセス分野での研究協力を行うとともに、人形峠環境技術センターにおける含ウ
ラン廃液の処理への協力等、多面的な連携を図った。
しろまる放射線の人体に及ぼす影響の研究等による医療水準の向上等を通じて国民に利益を還元
するなど、国民、民間企業、各研究分野の学会、研究者等をステークホルダーとして意識
した研究開発活動を進めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。連携、融合の
件数、実をあげることによって機構の重要な
ミッションの研究開発もさらに効率的にでき
ると思われる。また、実施する研究が「研究
のための研究」とならないように、引き続
き、世の中のニーズを踏まえた活動を期待す
る。17I.5.(2).
先端基礎研究
しろまる年度計画に基づき将来の原子力科学
の萌芽となる未踏分野の開拓を進めた
か。
しろまる国際的レベルでの真の先端基礎研究
が行われているか。
しろまる成果の活用を視野に入れ、ステーク
ホルダーを意識した先端基礎研究活動
が進められているか。
しろまるインキュベータとしての研究環境の
充実と人材育成に取り組んでいるか。
しろまる年度計画に基づき、超重元素核科学、アクチノイド物質科学、極限物質制御科学、物質
生命科学の分野で8つの研究を推進した。特に、遷移金属(Co)とフラーレン(C60)から成
る複合物質(C60‐Co薄膜)に巨大なトンネル磁気抵抗効果(TMR)を発見するとともにTMR
の発現条件を特定した。この成果は、機能性発現材料としての新たな可能性を示すととも
に、新たな分子スピントロニクス分野の創生に繋がる大きな成果である。また、全く予知
されていなかったネプツニウム化合物(NpPd5Al2)に超伝導を発見し、この成果が国際学
会や研究論文誌で極めて高い評価を得た。さらに、陽電子マイクロビームによる最表面ミ
クロ超構造の観測手法を確立するなどの、原子力科学の萌芽となる未踏分野の開拓におい
て高い成果を得た。
しろまる各分野の学会長経験者を含む外部の専門家、有識者からなる先端基礎研究・評価委員会
において先端基礎研究の中間評価を実施し、明確な研究マネジメント基本方針を定めて実
践している先端基礎センター運営に関して、センター長のリーダーシップが高く評価され
るとともに、8研究テーマについて将来の大きな成果につながる芽が多く認められると高く
評価された。特に4グループについては、世界トップクラスの研究成果を挙げているとの評
価を得た。
しろまる積極的な論文投稿、国際シンポジウム、基礎科学セミナーの開催等、成果の活用を視野
に入れ、機構外より招聘したセンター長の下、各分野の著名なリーダー的研究者をグルー
プリーダーとして、国際的COEを目指した先端基礎研究を進めた。
しろまる特別研究生や学生実習生の受け入れや連携大学院教授等への派遣を行い、学生・院生の
教育や学位取得等の指導を行うとともに、研究者のフォローアップを行うなど、インキュ
ベータとしての取組を行った。S機能性発現材料としての新たな可能性を示す
とともに、新たな分子スピントロニクス分野
の創生に繋がる大きな成果が得られるなど、
数多くの大きな成果があり高く評価される。
今後も意識すべきステークホルダーからの意
見反映が十分であるか、研究者が十分認識し
て仕事をしているか等を含む自己点検評価を
継続するとともに、実施する研究が「研究の
ための研究」とならないように、世の中の
ニーズを踏まえた活動を期待する。また、当
該部門で実施しているマネジメントの特色を
分析し、そのグッドプラクティスを法人全体
に広げる努力を期待する。
項目別-6
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項18I.6.(1).
研究開発成果の普及と
その活用の促進
しろまる年度計画に基づき研究開発成果の普
及とその活用、民間事業者からの要請
に応じた支援を進めたか。
しろまる機構の研究開発成果の民間事業者に
よる利用を拡大するための取り組みが
行われているか。
しろまる年度計画に基づき、ホームページを通じて成果の一元的な発信を開始するとともに、
1114編の査読付論文の公開、ホームページによる研究開発成果情報の外部への発信、各種
成果報告会の開催等により情報発信に努めた。日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機
構の研究開発成果データベースの統合処理をさらに進めるため、旧法人時代に作成し電子
化が未対応であった公開技術資料の遡及電子化を着実に進めた。また、情報発信機能の充
実を図るためホームページの運営を継続し、研究開発成果検索の入口をトップページに設
けるなど、利用者のニーズを反映し必要な情報を提供できるようにコンテンツの充実に努
めた。高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術については、施設見学会の開催等を通じ、国
民と研究者との対話による研究開発の重要性の理解促進や成果普及に努めた。なお、幌延
地区では、PR施設が5月に竣工し、6月末より運用を開始した。民間事業者への技術移転に
ついては、要請に応じて技術者の派遣や要員の受入による養成訓練等を進めた。また、濃
縮事業・再処理事業・MOX燃料加工事業それぞれに協議、調整行い、機構の研究開発成果の
活用を促すとともに、事業進展に合わせた協定の変更等を行い、技術協力を着実かつ円滑
に進めた。
しろまる新規特許実施許諾契約を11件締結するなど、研究開発成果の利用を拡大する取組を行っ
た。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。民間核燃料サ
イクル事業への技術支援への取組が着実に行
われており、評価できる。再処理事業につい
ては、操業開始後の協力のあり方、要員協力
のあり方など、中長期的な協力・支援につい
て検討も必要である。原子力に関する社会的
受容性を向上させることは急務であり、研究
開発成果の普及にあたっては、一般の理解促
進に効果的な取組に注力することを期待す
る。19I.6.(2).
施設・設備の外部利用
の促進
しろまる年度計画に基づき外部利用の拡大・
促進及び透明性の確保に向けた施策を
実施したか。
しろまる外部利用者の意向を反映させるため
の施策を実施したか。
しろまる各施設の利用に応じて利用者のコ
ミュニティーを支援する取り組みに努
めているか。
しろまる年度計画に基づき、外部の利用に供する17施設のうち、運転停止中の2施設を除く15施設
について、利用課題の定期募集を実施するとともに、成果報告会等での成果の発表、外部の
研究会等での施設共用の紹介等、外部利用の拡大・促進に努めた。また、外部の専門家を含
む施設利用協議会各専門部会で利用課題の採否を審議するなど、透明性、公平性の確保に努
めた。
しろまる外部利用者の意向を反映させるため、施設によっては通年の利用申請を可能にするなど、
共用施設の利用に係る手続きの簡素化等を行った。
しろまる施設の実情に応じた利用者との双方向的な情報交換を行うためのホームページを通じて
様々な利用者のコミュニティーの形成を支援した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。原子力機構が
我が国の原子力開発の中核機関として機能す
るために、施設・設備の外部利用促進は重要
であり、国内外の研究者にとって使い勝手の
良い施設・設備となるよう、経営の課題とし
て引き続き努力を期待する。20I.6.(3).
原子力分野の人材育成
しろまる年度計画に基づき大学等と連携し、
原子力分野の人材育成に取り組んだ
か。
しろまる年度計画に基づき、法定資格等の取得に関する研修や放射線利用等に関する研修、海外
研修等を実施するとともに、機構外からのニーズに対応して臨時研修を実施するなど、原
子力分野の人材育成への取組を行った。また、東京大学大学院原子力専攻及び原子力国際
専攻、並びに連携大学院への協力において、学生の受け入れ、教員・講師の派遣、大学連
携ネットワークの遠隔講義共通講座の開講、さらに文部科学省及び経済産業省の「原子力
人材育成プログラム」に関する講師派遣と学生実習の受け入れ等、大学との連携による人
材育成への取組を行った。さらに、産学官が一体となって、人材育成の中長期的ロード
マップ、ビジョンの作成等の検討を行なうため発足した原子力人材育成関係者協議会(事
務局:日本原子力産業協会)に、原子力研修センター長が委員として参加するなど外部機
関との連携を図った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。学術界及び産
業界に対する人材育成の取組が着実に行われ
ている。大学に対する実務的な支援だけでな
く、今後の人材育成プログラムの策定におけ
る積極的な協力支援は高く評価される。その
確立に向けて一層の連携を期待する。21I.6.(4).
原子力に関する情報の
収集、分析及び提供
しろまる年度計画に基づき国内外の原子力に
関する情報を収集、分析し提供すると
ともに、機構が所有する科学技術情報
等を収集、整理し提供したか。
しろまる関係行政機関の要請を受け関係行政
機関の政策立案や広報活動を支援して
いるか。
しろまる機構内外の研究者への学術情報の提
供の拡大と迅速化に努めているか。
しろまる年度計画に基づき、ユーザの意見を集約・反映した資料・雑誌購入計画を作成し、それ
に基づく国内外の専門図書や学術雑誌等の原子力に関する科学技術情報や学術情報の収
集・整理、提供を行った。
しろまる原子力委員会の「地球環境保全・エネルギー安定供給のための原子力のビジョンを考え
る懇談会」での政策検討に資するため、原子力と他の電源との特性比較に関する情報を収
集・分析し同懇談会に報告したほか、経済産業省、文部科学省、茨城県等の関係行政機関
等の要請に応え、原子力開発利用に関する幅広い情報を提供することにより、それら機関
の政策検討や広報活動へ貢献した。また、シンクタンク的機能も含め、政策決定に資する
情報収集・分析・提供の在り方を検討・決定し、それに沿って業務を推進した。
しろまる原子力図書館(中央図書館)を中核とした一元体制により各拠点図書室を運営するとと
もに、イントラネットによる地区間の貸出・文献複写申請受付、電子ジャーナル利用等の
電子図書館機能の拡充を継続して、科学技術情報の拡大と迅速化に努めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。また、シンク
タンク的な機能を持ち、政策決定に資する情
報収集、分析、提供ができる体制がさらに充
実されるよう検討することを期待する。
項目別-7
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項22I.6.(5).
産学官の連携による研
究開発の推進
しろまる年度計画に基づき産業界、大学等と
の連携を進めたか。
しろまる産業界、大学等との連携は強化され
ているか。
しろまる年度計画に基づき、原子力エネルギー基盤連携センターでの産業界との連携や先行基礎
工学研究協力制度及び連携重点研究制度を通じた大学等との連携を進めた。
しろまる産業界等の協力の下に運営している「原子力エネルギー基盤連携センター」や機構と大
学の委員で構成する「大学との研究協力実施委員会」等により、産業界、大学等との連携
強化を図った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。また、産学連携
の目的により知的財産権の扱いや成果発表の
あり方等が違うため、それぞれの目的に応じ
た取組が重要である。23I.6.(6).
国際協力の推進
しろまる年度計画に基づき国際機関の活動を
支援するとともに自ら機構の国際協力
を推進したか。
しろまる国際協力により目指すものが明確に
なっているか。
しろまる日本の技術が世界標準になるような
努力を行っているか。
しろまる年度計画に基づき、IAEA、OECD/NEA、ITER等の国際機関の活動を支援するとともに、国
際協力審査委員会の設置により自らの研究開発の効率的な推進を図り、二国間、多国間協
定等の締結・延長が行われた。
しろまる研究開発の効率的な推進、核不拡散等への国際貢献、アジア諸国の人材育成・技術支援
等の目的を明確にし、国際協力を行った。
しろまる国際機関への職員の長期派遣、国際機関の諮問委員会・専門家会合への専門家の派遣を
通じ、国際基準の作成貢献・開発技術の国際標準化を目指すとともに、日仏米高速炉実証
炉/プロトタイプ炉協力覚書に基づく高速炉設計概念検討や核融合のITER計画/BA活動にお
ける日本(機構)の技術の適用等で我が国の技術の国際標準化に向けて努力した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。原子力を巡る世
界情勢は大きく変化していることから、国際
協力と国際競争を戦略的に行っていくことを
期待する。また、国際協力の成果について単
に件数といった結果ではなく、それによりど
のような変化を生じたかといったアウトカム
を明確に示す工夫を期待する。24I.6.(7).
立地地域の産業界等と
の技術協力
しろまる年度計画に基づき立地地域の産業
界、大学等との間での連携協力活動を
展開したか。
しろまる年度計画に基づき、福井県のエネルギー研究開発拠点化計画、茨城県のサイエンスフロ
ンティア構想、東濃研究学園都市、北海道内研究開発機関等との連携協力活動を展開し
た。敦賀地区においては、関西・中京圏の大学・研究機関との懇談会への支援を行った。ま
た、地域企業との連携を促進する取組を各地域において行った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。連携協力活動
の展開は行われた。今後は、機構の本来的
ミッションが産業界、大学にどのように貢献
できるのかの視点での展開を期待する。25I.6.(8).
社会や立地地域の信頼
の確保に向けた取り組みしろまる年度計画に基づき社会・立地地域の
信頼の確保に向けて取り組んだか。
しろまる地域の住民等とリスクに関する情報
を共有し相互理解を深める活動への取
り組みを行っているか。
しろまる年度計画に基づき、対話集会、モニタ制度等の広聴・広報活動を実施するなど、社会・
地域の信頼確保に向けた取組を行った。また、人事研修における講義や法務能力向上を目
的とした集合研修の実施等のコンプライアンス活動を行った。これらの活動を通じて、従
業員のコンプライアンスに対する意識の喚起・向上を図り、社会や立地地域の信頼の確保
に努めた。
しろまる地域住民等に対し、事業に伴う事故・トラブル等のリスク情報を提供し、対話を通じて
相互理解を深めるための取組を行った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。コンプライア
ンスに係る各種規程が制定されるとともに理
事長を委員長とし第三者を委員に含むコンプ
ライアンス委員会が運営されていることは評
価できる。地域社会からの信頼を得るために
はリスクコミュニケーションの手法を高度化
する必要がある。各拠点の取組を相互に分
析・評価し、経営層の指揮の下、組織として
体系的な取組を進めることを期待する。コン
プライアンス研修については、受講率の向上
や受講後のフォローアップに努めることを期
待する。コンプライアンスとして求められる
内容は多岐にわたるため、社会で問題になっ
ているものを常に注意し、それを機構におい
てチェックする体制を作る必要がある。
項目別-8
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項26I.6.(9).
情報公開及び広聴・広
報活動
しろまる年度計画に基づき国民の科学技術へ
の理解増進を図り、機構の研究成果を
積極的に発信したか。
しろまる国民等へのサービスのニーズを的確
に捉える取り組みを行っているか。
しろまる国民の研究活動・科学技術への興味
や関心を高めるための双方向コミュニ
ケーション活動であるアウトリーチ活
動の推進のための取り組みが行われて
いるか。
しろまる年度計画に基づき、機構報告会の開催、ホームページ、メールマガジンや広報誌の発行
等により、機構の研究開発成果の積極的な発信を行った。
しろまる利用者のニーズを反映して必要な情報を提供する観点から、機構のホームページについ
て、研究開発成果検索の入口や安全確保への取組等についての入口をトップページに設け
るとともに、機構のトピックスや拠点、部門における研究開発活動の紹介、最新の研究開
発成果発表等を即時に掲載するなど内容の拡充を図った。
しろまるサイエンスカフェの主催や他機関が開催する講演会等に研究開発部門から講師を派遣す
るなどの活動を行った。本活動に組織的計画的に取り組むため、広報担当理事を部会長と
したアウトリーチ活動推進会議を立ち上げ、個々の活動の良好事例を抽出し情報共有を図
ることで活動の活性化を目指した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施するとともに、核物質を扱う研究機関
であることを踏まえ、海外に向けて情報を積
極的に発信することで、原子力の平和利用や
透明性確保に努める姿勢を引き続き発信する
ことを期待する。また、活動件数データを元
に活動を自己点検することを期待する。A27
II.1.
柔軟かつ効率的な組織
運営
しろまる年度計画に基づき柔軟且つ効率的な
組織運営に取り組んでいるか。
しろまる理事長のリーダーシップにより効率
的な業務運営に取り組んでいるか。
しろまる事業の選択と経営資源の集中に取り
組んでいるか。
しろまるむつ事業所と青森事務所を統合した青森研究開発センターや、効率的な産官学との共同
を進めるための光医療研究連携センター、JMTR利用推進のための照射試験炉センター、原
子力発電所における廃止措置事業の先駆的役割を果たすための原子炉廃止措置研究開発セ
ンターを設置し、効率的な運営を行うとともに、外部の有識者等で構成する経営顧問会議
や研究開発顧問会を活用し、柔軟且つ効率的な組織運営に取り組んだ。
しろまる経営管理サイクル(PDCA)による経営管理制度を継続し、課題把握や対応方針の指示を
行うなど、理事長のリーダーシップを発揮した業務運営に取り組んだ。
しろまる主要な事業としてJ-PARC、もんじゅ、ITER計画、高レベル処分研究に経営資源の集中を
図るとともに、理事長調整財源を設け、経営課題や研究開発促進に配分するなど事業の選
択と経営資源の集中に取り組んだ。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。統合により情
報収集の幅広さと容易さが改善されている。
原子力機構は多面的な研究開発と柔軟な事業
経営を行うために、その特色に応じた運営が
各部門においてなされている。引き続き理事
長をはじめとする経営層できちんとPDCAを回
す努力を行うこと、グッドプラクティスの部
門間での共有を図ること、経営層においても
不具合情報も含めて情報が素早く共有され対
外的にも統一した対応が可能なマネジメント
体制を構築することを期待する。また、経営
資源の集中に対する成果の評価指標では、多
面的かつ時間的な視点を取り入れることを期
待する。さらに、業務管理は、研究者の自由
な発想を尊重する研究開発マネジメントの阻
害要因として働く場合があるため、これらを
阻害しないような業務管理のあり方を工夫す
ることが重要である。28II.2.
統合による融合相乗効
果の発揮
しろまる年度計画に基づき基礎・基盤研究と
プロジェクト研究開発の間の連携・融
合・統合等が効果的に進められている
か。
しろまる管理部門の削減は、計画に基づき現
実的に行われているか。
しろまる統合の効果を生かす体制整備が行わ
れているか。
しろまるインフラを効果的・効率的に利用で
きる仕組みの構築に取り組んでいる
か。
しろまる年度計画に基づき、統合による融合相乗効果の発揮については、協議体によって部門間
連携の促進を図ったほか、基礎・基盤研究部門とプロジェクト研究開発部門が連携して文
部科学省による原子力システム研究開発事業等の研究を行うなど、連携・融合等を効果的
に行った。
しろまる管理部門については、業務量や人員配置等を精査しつつ、21人の人員削減を行った。
しろまる部門・拠点を横断した協議体を設けて基礎基盤研究とプロジェクト研究開発との連携強
化等、統合の効果を生かす体制整備を進めた。
しろまる利用に供することができる分析機器のリストを精査・更新するとともに、原子炉廃止研
究センターと青森研究開発センターの情報も含めてイントラネットを活用したインフラリ
ストの周知を図り、効果的・効率的に利用できる仕組みの構築に取り組んだ。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。研究開発現場
での統合の努力は進んできており、統合効果
も出ている。今後、更に統合効果を引き出す
ためには、研究、プロジェクト事業、設備管
理という異なる価値尺度での業務が混在して
いる組織での人材評価のあり方にも踏み込ん
だ施策の実行を期待する。部門間の連携に
よっていい成果が出ている例もあり、今後も
積極的に部門間連携を進めることを期待す
る。
II.業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置
項目別-9
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項29II.3.
産業界、大学等、関係
機関との連携強化によ
る効率化
しろまる年度計画に基づき研究開発課題の設
定や研究内容に関して産業界、大学や
関係行政機関との連携はとられている
か。
しろまる年度計画に基づき、原子力基盤連携センターの運営や先行基礎工学研究協力制度及び連
携重点研究制度等を通じ、研究開発課題の設定や研究内容に関して産業界、大学等との連
携を図った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。産官学の連携
強化に伴い、原子力機構の研究開発が効率化
したことについて、具体的な事例と尺度で示
す工夫を期待する。また、産学連携について
は、産業界の技術力の向上、産業界のニーズ
に対応、保有する研究施設の共用など様々な
目的を想定することができ、その目的によっ
て知的財産権の扱いや成果発表のあり方など
が違ってくると思われるため、産学連携につ
いて再度原点に戻り、その目的を明確にして
取り組む必要がある。30II.4.
業務・人員の合理化・
効率化
しろまる年度計画に基づき業務・人員の合理
化・効率化が行われているか。
しろまる業務の効率化は計画に基づき現実的
に行われているか。
しろまる人員の合理化は計画に基づき現実的
に行われているか。
しろまる研究者・技術者の確保や技術等の伝
承が適切に行われる運用が図られてい
るか。
しろまる任期付職員と任期付以外の職員のバ
ランスや女性職員の比率に配慮した運
用が図られているか。
しろまる各種事務手続きの簡素化・迅速化が
図られているか。
しろまる年度計画に基づき、一般管理費の削減、事業費の効率化、人員の削減、基幹業務システ
ムの機能拡張等、業務・人員の合理化・効率化を行った。
しろまる業務の効率化に当たっては、平成18年度に策定した機構の業務効率化計画に則り、各種
の事務的業務に係る効率化を行った。また、中間評価を実施して計画の進捗を確認すると
ともに良好事例や要検討項目の抽出を行い、情報の共有化を図った。
しろまる人員の合理化に当たっては、中期計画の達成に向け年度計画で具体的な目標人数を示す
とともにこれを満足すべく実施した。
しろまる定年後職員に係わる再雇用制度の活用、研究員・技術員制度等を活用した人材育成等を
行って研究者・技術者の確保、技術等の伝承が適切に行われるよう努めた。
しろまる任期付任用制度の積極的活用の観点から、本部と各部門、拠点等が連携しながら任期付
職員の計画的な採用を行った。また、女性職員を対象とした採用説明会開催や女子大学等
への採用活動対象範囲の拡大、男女共同参画推進目標の策定等、男女共同参画の推進に努
めた。
しろまる紙消費量・コピー使用料金の削減、ITを活用した業務処理の効率化等、平成19年度業務
効率化推進計画に則り事務に係る業務効率化を総合的に推進した。また、政府の行政効率
化推進計画への対応も実施し、公共調達の効率化、公用車の効率化等において目標を達成
し、効率化を図った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。一般管理業務
を合理化し、一般管理費を計画的に削減する
努力は今後も確実に進めることを期待する。
なお、事業費を計画を上回るペースで削減す
ることは注意が必要であり、本来、取り組む
べき研究開発や安全管理が十分に行われてい
るのか、よく点検することが必要である。機
構における男女共同参画の実現については大
いに期待する。男女ともに共同参画を実感し
ているかどうかのデータを計るなど確実に実
績を上げていくことを望む。また、若手任期
付き研究者について、任期終了後にテニュア
((注記))に採用する道を用意するなどの努力が
行われているが、今後はさらに任期付職員の
キャリアパスについて工夫することを期待す
る。「行政改革の重要方針」に基づき、着実
に総人件費が削減されている。また、役職員
の給与水準の適正化の観点から、人事院勧告
に基づく期末手当の引上げの抑制等を行った
ことにより、機構の給与水準の指数は着実に
低下しており、今後とも適切な取組が行われ
ることを期待する。J-PARCに係る経費の圧縮
等運営の効率化の方向性や展示施設の利用効
率等の向上のためのアクションプランを取り
まとめたことは評価できる。今後、その効果
的・効率的な推進を期待する。また、機構自
らが実施する事業は、原子炉等規制法等の極
めて厳格な法規制の下許認可を受け実施する
ものであること等の理由から官民競争入札の
導入は困難であると判断されるが、その理由
を一般にわかりやすく説明する努力が必要で
ある。
((注記))テニュア:定年までの在職権を有する
職員
項目別-10
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項31II.5.
評価による業務の効率
的推進
しろまる年度計画に基づき評価による業務の
効率的推進が実施されているか。
しろまる年度計画に基づき、研究開発課題の外部評価計画で予定した2つの課題について中間評価
を行うとともに、前年度に行った2つの課題の中間評価の結果を公表した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。監事による監
査が計画的に実施されている。分野毎に着実
に取り組むべきもの、革新的に成果を創出す
べきものなど、目標設定の意味合いが異なる
ことを踏まえ、どの分野においても活性化に
つながる評価を期待する。国等において成果
を出す時期が定められている事業について、
期限までに成果を出せるように研究開発の
PDCAが廻されているのか評価が必要である。A32
III.1.2.3.
予算、資金計画、収支
計画
しろまる予算は適正かつ効率的に執行されて
いるか。
しろまる業務毎に財務内容の実績評価ができ
るデータが出せるよう検討している
か。
しろまる予算は、「予算実施計画」に基づき、一般勘定及び電源利用勘定ともに適正かつ効率的
に執行された。
しろまる主要な業務毎に財務内容の実績評価ができるデータが出せるよう検討し、新たに人件費
が読み取れる工夫をした。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。支出削減策と
して各種の努力を払っている。業務毎の財務
内容の把握に努め、開示情報としても作成さ
れており、業務毎の人件費やその他の経費
等、および資産状況などを勘案した実績評価
ができるように工夫されている。旧法人から
承継した流動資産の費用化等に伴い、電源利
用勘定において当期の損失金が生じている
が、平成18年度まで再処理施設収入による利
益剰余金があったため、当期の繰越欠損金は
生じていない。一般勘定においては、前期繰
越欠損金があり、当期利益が生じているが、
電源利用勘定のような大きな利益ではないた
め、繰越欠損金が生じている。研究開発独立
行政法人においては、欠損金は、承継した流
動資産の費用化により生じる仕組みとなって
いることに起因するものである。33III.4.
財務内容の改善に関す
る事項
しろまる年度計画に基づき多様な外部機関か
らの資金の導入が図られているか。
しろまる年度計画に基づき固定的経費の削減
が行われているか。
しろまる年度計画に基づき競争契約の拡大な
ど調達コストの削減が行われている
か。
しろまる自己収入増加のために適切な方策が
講じられているか。
しろまる固定的経費の削減は計画に基づき現
実的に行われているか。
しろまる年度計画に基づき、受託研究や共同研究を積極的に展開するとともに、研修事業での第3
種放射線取扱主任者免状に係る講習が研修センター外で行える許認可変更手続きの完了、
特許収入増加のためのオープンセミナーの開催等、外部資金の確保に努めた。
しろまる年度計画に基づき、施設の維持管理に係る固定的経費の削減を行った。
しろまる年度計画に基づき、競争契約の拡大に努め、随意契約による契約金額の割合が目標の
50%以下に対し39%を達成するなど、調達コストの削減に努めた。
しろまる競争的資金への応募の奨励、研修事業における第3種放射線取扱主任者免状登録講習の外
部での講習実施のための認可変更、核燃料取扱主任者等の試験に係る資格試験受験講座の
外部受講者への開放、保安検査官研修の実施、展示館入館者数の増加を目的としたホーム
ページの充実や巡回展示の実施等、自己収入増加に努めた。
しろまる固定的経費の削減に当たっては、中期計画を達成するための現実的な計画により進め
た。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。多様な努力を
されており、受託研究や共同研究の展開によ
る収入の増加が全ての努力にまさって財政構
造に良い結果をもたらしている。保有資産に
関して、宿舎・宿舎跡地等の売却等方針を平
成19年度末に決定するなど、売却に向けた準
備が進められている。随意契約に関して、平
成19年12月に策定した随意契約見直し計画に
基づき各種規程の改正を行うなど、着実に見
直しが進められているが、今後も一層の改善
努力が求められる。関連法人に対して適切に
業務委託が行われており、今後とも、適切な
運営が行われることを期待する。
III.予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
項目別-11
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項-34IV.短期借入金の限度額
- - - --35V.重要な財産を譲渡し、
又は担保に供しようと
するときは、その計画
- - - --36VI.剰余金の使途
しろまる目的積立金を取り崩している場合、
その使途は中期計画に定めた方針に
則った適切なものであるか。
- - -A37
VII.1.
安全確保の徹底と信頼
性の管理に関する事項
しろまる年度計画に基づき安全確保の徹底と
核物質管理が行われているか。
(注記)平成19年8月31日に文部科学省に報告した
原子力科学研究所の非管理区域におけ
る汚染の問題に係わる対応・対策が適
切に行われているか。
しろまる年度計画に基づき、「平成19年度安全衛生基本方針」に基づく安全活動や、核物質管理
を行った。安全に係る品質保証活動については19年度のマネジメントレビューを20年度品
質方針に反映するなど、継続的改善を行った。
しろまる原子力科学研究所の非管理区域において、告発書受領後の調査によって核燃料物質によ
る汚染を確認し、直ちに関係機関に通報し処置を講じるとともに、文部科学省から調査指
示を受けた核燃料物質使用施設だけでなく、原子炉等規制法及び放射線障害防止法に係る
機構の全ての施設を対象に調査を行うこととし、外部委員で構成される有識者委員会等を
設置するなどにより幅広い助言を得つつ、安全確認点検調査を行った。安全確認点検調査
の結果、安全性や設備の健全性が損なわれているものはなかったが、法令報告を要すると
考えられる汚染7件、文部科学大臣から使用を一時停止する措置命令を受けた2件等、許認
可手続きに関する事例、その他報告手続きや記録等の不備など不適切な事例を合わせ、合
計49件(文部科学省安全監報告46件、茨城県知事報告21件:重複を含む)が確認された。
本調査以前に確認していた非管理区域の汚染2件を含め、調査結果、原因、対策について、
関係機関(文部科学省、茨城県等)に報告を行うとともに措置を講じ、また、再発防止対
策について水平展開を図った。B年度計画に基づく安全活動や核物質管理、ま
た、安全に係る品質保証活動も継続的改善が
行われているが、原子力科学研究所の非管理
区域において汚染が生じていたこと及びその
事実を長期間発見できなかったこと、原子力
施設に係る許認可手続きの不備等の不適切な
事例が発生していた事実を踏まえると、一層
の安全確保・法令遵守の徹底・強化を図るこ
とが必要である。この汚染の問題について、
「告発書」の受理までその問題を自ら認識で
きていなかった点について責任を深く認識す
る必要がある。これについては、厳しく自己
評価を行うなど反省が見られる。一方、「隠
さない体質」を構築することが安全確保の上
で重要であり、今回は原子力科学研究所をは
じめ各拠点が過去の汚染等まで遡って問題の
洗い出しを適切に行い、その結果について
は、自ら進んで公表した点、及び業務計画へ
の影響を最小限にとどめるための努力が行わ
れた点は評価できる。また、再発防止策等に
ついても適切であるが、国民の信頼の回復に
向けては、再発防止対策の全組織への水平展
開の徹底に努めるとともに、一般国民の不信
に対峙した意識を全職員が持って、同種のト
ラブルに対する再発防止に向けた改善に取り
組むとことが不可欠である。コンプライアン
スの対象範囲が法令遵守だけでなく、公序良
俗の範囲まで広がり厳しくなってきているこ
と、「自ら違反しないこと」と併せて「他人
の違反を見過ごさないこと」も求められてい
るので、コンプライアンス意識の徹底は講習
会だけでなく、各人の意識の変革を伴う取組
が必要である。経営幹部を先頭に、地道な取
組を展開することを期待する。コンプライア
ンス研修の徹底に関して、今後もキャリアパ
スの要件とする等の推奨策を検討することを
期待する。また、今回の取組を風化させるこ
となく、中期目標、中期計画の達成に向け、
今後の原子力機構の業務に活かしていくこと
を期待する。
VII.その他の業務運営に関する事項
IV.短期借入金の限度額
V.重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画
VI.剰余金の使途
項目別-12
No. 評価項目 評価の視点 平成19年度実績 評価 留意事項38VII.2.
施設・設備に関する事項しろまる年度計画に基づき施設・設備の機能
の重点化、集約化を進め、業務の遂行
に必要な施設・設備に重点化して施
設・設備の更新・整備が行われている
か。
しろまる年度計画に基づき、施設・設備の重点化・集約化を進めるとともに、業務の遂行に必要
な施設の整備等を進めた。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。39VII.3.
放射性廃棄物の処理・
処分並びに原子力施設
の廃止措置に関する事項しろまる年度計画に基づき放射性廃棄物の処
理処分及び原子力施設の廃止措置が行
われているか。
しろまる放射性廃棄物の処理・処分並びに原
子力施設の廃止措置は計画的、安全か
つ合理的に実施されているか。
しろまる原子力施設の廃止時期及び廃止方法
の検討を行うにあたり、当該施設の利
用者の意見等も考慮されているか。
しろまる年度計画に基づき、放射性廃棄物については処理、保管管理を進めるとともに、施設の
廃止措置については、計画に掲げる各施設について廃止措置、整理・合理化のために必要な
措置を行った。また、廃棄物処分について浅地中処分相当廃棄物に係る事業計画の検討等
を進めるとともに、廃棄物処分事業に係る国の検討等に対しての支援活動を行った。
しろまる今後の廃棄物発生動向等を踏まえた廃棄物処理施設の試験運転や検討整備、処分事業の
検討、またクリアランスの適用検討など、廃棄物処理処分・廃止措置のために必要な措置
が計画的、安全かつ合理的に実施できるための取組を行った。
しろまる大型非定常試験装置(LSTF)の廃止措置について、外部利用者等のニーズを確認し
た上で、廃止後の機構の研究機能の在り方や当該施設の利用者の意見等を踏まえて、中期
計画を変更し中期目標期間中に廃止措置の着手時期、事業計画の検討に着手するなどの取
組を行った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。廃止措置に
伴って、様々な課題が新たに現れてくること
も考えられるため、全体として、安全かつ合
理的に進むように対応する必要がある。40VII.4.
国際約束の誠実な履行
(評価項目7「核融合エネルギーを取
り出す技術システムの研究開発」にお
いて評価する。) - - -41VII.5.
人事に関する計画
しろまる年度計画に基づき組織横断的且つ弾
力的な人材配置を促進したか。
しろまる職員の能力と実績により、適材適所
の人事配置が行われているか。
しろまる人材育成を体系的かつ計画的に推進
しているか。
しろまる年度計画に基づき、部門・拠点からのヒアリングを実施し、人的資源や業務の状況を勘
案し人員の再配置を実施した。また、旧法人間の更なる融合に向けた再配置や、機構内外
を対象とした研究グループリーダーの公募、機構内公募制度の活用など、組織横断的かつ
弾力的な人材配置を促進した。
しろまる職員の業績と能力の適切な評価とその反映を考慮した、新たな人事評価制度を構築し、
管理職を対象として運用を開始した。また、職員の能力、業績を評価し、昇任・昇格へ反
映させるための研究業績審査等の昇任審査制度の運用を図るともに、機構内公募制度を活
用するなど、職員の能力と実績を踏まえた適材適所の人事配置に係る取組を行った。
しろまる人事部主催による階層別研修(新入職員に対する採用時研修、フォローアップ研修や、
中堅職員、管理職層を対象とする研修、コンプライアンスに関する研修等)や国外の大学
や研究機関への留学により、体系的かつ計画的に人材育成を推進した。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。部門間交流も
進んでいる。研究者だけでなく、研究のマネ
ジメントが出来る人材の育成について、今後
一層の取組を期待する。42VII.6.
中期目標期間を超える
債務負担
しろまる中期目標期間を超える債務負担は、
施設・設備の整備等が中期目標期間を
超える場合で、合理的と判断されるも
のについて行われているか。
しろまる合理的と判断されるものについて、中期目標期間を超える契約期間を有した債務負担行
為を行った。A中期計画通りに履行し、中期目標の達成に向
けて順調に実績を上げている。引き続き着実
に実施することを期待する。
項目別-13

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