NHKラジオ国際放送の中国語ニュースで8月19日、中国籍の元外部スタッフが原稿にない発言をした問題で、NHKは9月10日、担当理事の辞任を発表し、総務省は11日、NHKを行政指導した。
NHKの調査では、靖国神社で落書きが見つかり警視庁が器物損壊事件として捜査しているというニュースについて、元外部スタッフは「あいまいなものをそのまま翻訳して中国語で放送したら、個人に危険が及ぶ」と声を荒らげて、強く反発していたという。
また、2016年時点から、中国当局の反応への不安や懸念を職員に伝えることがあったとしている。
中国当局の手が海外在住の中国人に及ぶリスクが高まっているのか。
これを読み解く一つのカギは、10年に施行された中国の国防動員法である。同法は、平時の動員準備と戦時の動員実施の法的根拠となり、中国国内はもちろん海外在住の中国人も動員の対象となっている。
また、20年に施行された香港国家安全維持法は、外国勢力と結託して中国の国家安全に危害を及ぼす犯罪行為を規定しており、中国以外での域外適用もされるので、中国籍の元外部スタッフは大いに気にしただろう。
これらの中国法規のほかに、中国が世界各地に作っている「秘密警察」の存在も問題だ。スペインに本部を置く人権NGO組織「セーフガード・ディフェンダーズ」によると、中国の秘密警察は世界53カ国102カ所以上に設置され、日本にも最低2カ所存在するという。こうした中国の施設の存在そのものが各国の主権侵害になり得るので、14カ国が調査に乗り出しているという。その中には日本は含まれておらず、いまだに日本政府はその対応を明らかにしていない。