ソーシャルドライバーを活用してソフトウェアエンジニアリングチームのパフォーマンスを向上させる

作者:

• Ben Linders

翻訳者

• Takashi Kawase

原文リンク(2025年05月08日)

Lizzie Matusov氏が、技術的なドライバー(例えば、速度)はチームのパフォーマンスの不完全な視点しか提供しないと発表した。信頼、自律性、目的、心理的安全性といった「ソーシャルドライバー」(社会的要因)はより完全な視点を提供し、改善のための重要な機会を明らかにする。彼女はQCon San Franciscoで高パフォーマンスのエンジニアリングチームの背後にあるソーシャルドライバーについて話した。

高パフォーマンスのソフトウェアチームは、エンドユーザーに対して高い価値を安定して一貫して提供できるとMatusov氏は述べた。彼らは技術的な卓越性、効率的なワークフロー、協力、ウェルビーイング、継続的な改善に焦点を当てたサポートチーム文化をバランスよく維持している。

チームが高いレベルでパフォーマンスを維持するために何が必要かを理解するには、技術的、および社会的なドライバー(要因)を見てみるべきだとMatusov氏は提案した。技術的な指標(速度や品質など)はアウトプットの効率と品質に焦点を当て、ソーシャルドライバー(心理的安全性や自律性など)はアウトプットを促進または阻害する環境と文化を反映していると彼女は付け加えた。

高いレベルでパフォーマンスを維持するためには、効率的な技術プロセスと、チームが高い基準で継続的に成果を出すことを動機付ける強力なソーシャル環境の組み合わせが必要だ。ソーシャルドライバーは多くの場合、技術的ドライバーと同等かそれ以上に重要だが、組織はしばしば技術的ドライバーにのみ焦点を当てるとMatusov氏は説明した。

チームがソーシャルドライバーを初めて考える際には、「TAPPs」というフレームワークを推奨しています。これは信頼 (Trust)、自律性 (Autonomy)、目的 (Purpose)、心理的安全性 (Psychological Safety) を意味します。この4つのドライバーはチームのソーシャルダイナミクスの非常に包括的な視点を提供し、それが全体のパフォーマンスをどのように駆動するかを示しています。

チームに高い信頼がある場合、つまりチームメイトが共有目標に対して信頼性のある貢献とサポートをすると信じている場合、彼らは著しく生産的になるとMatusov氏は述べた。600人以上のエンジニアを対象とした開発者の生産性予測に関する研究では、生産性を高める要因のトップ10のうち40%が信頼に関連していた。信頼はエンジニアリングチームに大きな影響を与え、チーム、製品、組織レベルでのパフォーマンスを向上させると彼女は述べた。

自律性を促進するために、マネージャーはビジネス成果に一致する明確な目標と目的を設定し、チームにそれを達成するための最良のアプローチを決定する自由を与える。これにより、チームは自分の仕事に対する所有権を持ち、独立した決定をし、共有目標へのコミットメントを強化できるとMatusov氏は述べた。

目的はチームをビジネス目標と価値に一致させる。チームが自分たちの仕事の影響を理解すると、その影響を達成することに強く駆り立てられるとMatusov氏は説明した。

2024年のDevOps Research Assessment (DORA) Reportは、仕事に対する高い一致を持つエンジニアリングチームが、スループットに関係なく一貫して高い製品パフォーマンスを達成することを発見しました。

心理的安全性は、チームメイトが対人リスクを恐れることなく取れるという共有された信念だ。それはリスクを取り、率直さを示すことであり、慎重さや用心深さではないとMatusov氏は述べた。心理的安全性が高いチームはもっともリスクを取り、破壊的で革新的なチームだ。彼らは失敗を恐れず、それが通常ユーザーに最適な解決策を見つけることにつながる。

Matusov氏はソーシャルドライバーを測定することを提案した。エンジニアリングの生産性を解放し、パフォーマンスを向上させたいチームは、まず何が障害となっているかを理解する必要がある。言い換えれば、測定しないものは改善できないと彼女は述べた。

ソーシャルドライバーを測定するために、Matusov氏は「Build、Review、Drive」戦略を推奨している。

1. プロセスを構築する:意味のある改善を行うためには、チームは単一のデータポイント以上のものが必要です。月次(理想的)または四半期ごとの測定計画を作成し、トレンドを理解し、行動の影響を分析可能にします。
2. 好奇心を持ってレビューする:チームのベースラインとトレンドを確立する際には、データに対して好奇心を持ってアプローチすることを忘れないでください。単一のデータポイントに過度に依存する誘惑に抵抗し、代わりに時間の経過による変化を優先してください。常に「なぜ」を問いかけ、ソーシャルドライバーがチームにどのように影響しているかの根本原因に到達してください。
3. 行動と改善を推進する:好奇心を持ってデータをレビューすることで、改善の機会が明らかになるはずです。チームと話し合い、チームのパフォーマンスを向上させる行動にコミットします。

このフィードバックループを作成することで、改善の反復プロセスが構築され、チームの全体的なパフォーマンスに大きな改善がもたらされるとMatusov氏は結論付けた。

InfoQはLizzie Matusov氏にソーシャルドライバーの測定と分析についてインタビューした。

InfoQ:ソフトウェアチームのパフォーマンスに影響を与えるソーシャルドライバーをどのように測定できますか?

Lizzie Matusov氏:ソーシャルドライバーを測定するもっとも効果的な方法は、匿名化され、チーム単位で集約されたアンケートを通じて行うことです。アンケートは一度に一つのことだけを尋ねる一連のシングルバレル質問で構成され、1から5のリッカート尺度の回答を使用します。

例えば、心理的安全性を測定する一つの方法は、次の質問をすることです。「私がミスをした場合、それは私に対して不利になりません。」

定期的なペース(月次または四半期ごと)で質問することで、チームはもっとも重要なソーシャルドライバーに対する感情が時間とともにどう変化するかを定量的に測定可能です。

InfoQ:データをレビューし、行動を起こすにはどうすればよいですか?

Matusov氏:チームが最初に確認すべきことは、チームで何が起こっているかを完全に把握しているかどうかであり、それにはソーシャルドライバーと技術的ドライバーの両方が含まれるべきです。

例えば、チームのシステム指標が非常に遅いコードレビューサイクルに一貫して苦しんでいることを示している場合、ソーシャルドライバーを含めないと、問題の根本原因を解決しない行動を選択する可能性があります。

ソーシャルドライバーを測定することで、チームが自律性に苦しんでいることが示されるかもしれない。これは、チームがコードレビューを「所有」してプロセスを前進させると感じていないことを意味し、レビュープロセスでのアイドルタイムが増える原因となります。自律性を解決することで、コードレビューサイクルタイムが改善され、チームが顧客に機能をより速く提供可能です。

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