目 次
編集 国土地理院
益田南部
浜田南部
令和5年9月
後藤 秀昭
(広島大学)
「益田南部」解説書
1:25,000 活断層図
弥栄断層とその周辺
国土地理院技術資料 D1-No.1088 11:25,000 活断層図 弥栄
や さ か
断層とその周辺「益田
ま す だ
南部」解説書
1.弥栄
やさか
断層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.戸村川
とむらがわ
断層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3.益田
ま す だ
市和又
わまた
から同市内
うち
石上
いしがみ
に至る断層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
4.益田
ま す だ
市匹見
ひ き み
町紙し祖そ付近の断層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
5.益田
ま す だ
市中村
なかむら
付近の断層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
使用空中写真,使用航空レーザ測量データ及び検討委員会等・・・・・・・・・・・・・14
付図(断層索引図)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
令和4 年調査図郭 令和3 年以前の調査図郭
1:25,000 活断層図「益田南部」作成位置図
浜田南部
弥栄断層とその周辺
令和4 年調査
令和4 年調査
弥栄断層とその周辺
益田南部
広島第2版
(平成7-8 年調査)
(平成18 年修正)
岩国
(平成19 年調査)
下松
(平成19 年調査)
長門峡
(令和2 年調査)
山口
(令和2 年調査)
宇部東部
(令和2 年調査)
宇部
(平成27 年調査)
下関北部
(平成27 年調査)
小倉第2 版
(平成7-8 年調査)
(平成18 年修正) 21:25,000 活断層図 弥栄断層とその周辺「益田南部」解説書
弥栄断層は,
島根県鹿足
かのあし
郡津和野町から益田市,
浜田市金城
か な ぎ
町にかけて分布する活断層である.
弥栄断層の長さは約 53km で,
概ね北東-南西方向に延びる.
弥栄断層は右横ずれを主体とする
断層である(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2016).本図には,弥栄断層を構成する弥栄断層と,戸村川
とむらがわ
断層ならびにその他の推定活断層が記載さ
れている.活断層研究会編(1991)では,本図郭における4.
「益田市
ま す だ し
匹見
ひきみ
町紙し祖そ付近の断層」
のみ,断層の可能性があるリニアメントとして記載されていたが,それ以外の断層は記載がなさ
れていなかった.
その後,
中田・今泉編
(2002)
で弥栄断層が活断層として記載された.
以下に,
各断層の概要と判読した根拠を記載する(下記の断層ごとの番号及び記号は,巻末の付図(断層
索引図)に記載した番号及び記号に対応).1.弥栄
や さ か
断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 26 km
・断層種別 : 活断層(右横ずれが主体)
,一部推定活断層を含む
((注記)上記の各諸元については,本図内における計測及び確認結果である)
(1)概要
弥栄断層は,
本図では益田市都茂上
つ も が み
(図郭東端)
から鹿足
かのあし
郡津和野町木頃
このころ
までの長さ約 26
km が記載されており,
隣接する
「浜田南部」
(熊原ほか,
2023)
(以下,
「浜田南部」
という)
図郭に連続し,さらに南側の図郭外へ連続する,北東-南西方向に延びる活断層である.右
横ずれの変位を伴う活断層であり,主断層に並行する数条の推定活断層を含む.
(2)判読根拠
弥栄断層の主な地点ごとの判読根拠は,次のとおりである.
1a: 益田市都つ茂も郷
ごう
には,
幅約 400m,
長さ約 1400mの北東―南西方向の細長い小盆地が発
達する.益田川,都茂川,笹利川によって埋積され,沖積低地が広がる小盆地である.
この盆地の北西および南東縁は直線状の山麓線からなる
(写真 1).活断層は,
この両縁
の直線状の山麓線に沿って分布する.南東縁の活断層は「浜田南部」図郭からの延長で
あり
(写真 2),断層線はこの盆地で右にステップするように分布する.
断層の配列と地
形から,
この小盆地はプルアパートベーズンの可能性も考えられるが,
後述する弥栄断
層で確認できる最大変位量よりも盆地が 2〜3 倍程度,長いことなどを考えると,単純
なプルアパートベーズンとは考えにくい.
北西および南東縁のいずれの断層に沿っても,盆地に流れ込む河川の河谷に右屈曲が
確認できる.
盆地の北西縁では谷を塞ぐ丘が認められる.
盆地の南東縁の中央付近では,
谷口に形成された段丘化した複数の沖積錘が河谷の屈曲によって右ずれしているよう
に見える.
(写真 3 および 4)なお,これらの断層を挟んで丘陵背面の高さは,北西側と 3南東側で大きな高度差がないこと(写真 1)から,この付近では断層変位は横ずれが卓
越するか,累積変位量が小さいか,そのどちらかまたは両方と考えられる.
写真 1 両縁を活断層に限られる都茂郷の小盆地(北東方向を臨む)
白色の矢印は断層の位置を示す.盆地を挟んで丘陵背面の高さに大きな違いはない.2022 年
12 月 11 日,筆者がドローンにより撮影した.
写真 2 都茂郷の小盆地の北東部の地形(盆地の南東縁を撮影)
白色の矢印は断層の位置を示し,空色の矢印は河谷の屈曲を示す.
「浜田南部」図郭から連続
するリニアメントに沿って活断層が通る.
2022 年 12 月 11 日,
筆者がドローンにより撮影した. 4
写真 3 都茂郷の小盆地の中央部の地形(盆地の南東縁を撮影)
白色の矢印は断層の位置を示し,空色の矢印は河谷の屈曲を示す.直線状の山麓線と谷を塞
ぐように分布する段丘面が観察できる.2022 年 12 月 11 日,筆者がドローンにより撮影した.写真 4 都茂郷の小盆地の中央部の地形(写真 3 の南西を撮影)
白色の矢印は断層の位置を示し,空色の矢印は河谷の屈曲を示す.谷口の小扇状地を開析す
る河谷が河川の下流とは逆の右に屈曲する.
2022 年 12 月 11 日,
筆者がドローンにより撮影
した. 51b
: 1a の南西延長の清水川は断層を挟んで,
上流,
下流ともに北北西方向に流下する一方,
断層部で大きく屈曲する.
この屈曲を全て断層変位によるものとすれば,
弥栄断層の変
位量は 500m程度となる.
藤が峠を越えて,
波田川水系に入ると,
開けた地形が広がり,
変位地形はやや不明瞭となる
(写真 5).北東縁の原付近では,
盆地の北西と南東山麓に
活断層が認識でき,
断層線は南西方向に分岐するように分布する.
南東山麓に沿っては
藤が峠からの南西延長部に鞍部の連続と断続的に複数の河谷の屈曲が認められ
(図 1),上長沢の峠まで追跡できる.
写真 5 波田川上流の盆地の地形(南西方向を臨む)
白色の矢印は断層の位置を示す.
峠の奥に見える青野山は弥栄断層の南西端に位置する.2022年 12 月 12 日,筆者がドローンにより撮影した. 61c: 波田川水系上流の盆地北西縁の益田市上
かみ
波田
は だ
の波田川左岸では,北東―南西方向で直
線状に延びる山麓線が認められる(図 1)
.この山麓線の北西延長には北に開いた風隙
地形がある
(図1の W).また,
この山麓線の北東延長の波田川右岸には溝状の地形(図1 の G)が認められる.また,その溝状の地形の北西側には巨礫層から構成される段丘
面が認められる.これらの状況から,断層変位地形の可能性があると考えられ,推定活
断層を認定した.山麓線の北西にある北に開いた風隙地形(図 1 の W および X’)は,
益田市東長沢付近を北流する河川(図 1 の X)のかつての流路とすれば,右ずれしたこ
ととなる(図 1)
.また,益田市下波田の上流にある現在の波田川が流れる狭窄部(図 1
の Y’)と,益田市迫溢
さこえき
から上波田の西の河谷(図 1 の Y)とを同一の河谷とみれば,同
程度の 400〜500m程度の右ずれとなる.これらの地形から推定される変位量は上述の
清水川(1b)の変位量とほぼ同じであり,弥栄断層の総変位量を示している可能性が
ある.
1d: 平野山の南では,
山麓に沿って系統的な河谷の屈曲が認められる.
1970 年代撮影の空
中写真では集落が存在し,
水田耕作がなされていたことが解るが,
現在は山林に覆われ,
近年撮影された写真からかつての生活の様子や地形を判読することは容易ではない.航図 1 波田川上流付近の地形アナグリフ(A)と傾斜量図(B)
基盤地図情報数値標高モデル(10mメッシュ)および航空レーザ測量による 1m間隔の地形
データに基づく.画像中の黒矢印は活断層,白矢印は推定活断層の位置を示し,W は風隙地
形,G は溝状の地形を示す.風隙を通っていた河谷を X,狭窄部を抜ける波田川の上流を Y
とすれば,直線状の流路が復元できる. 7空レーザ測量データを用いた地形画像からは,
河谷の屈曲とともに水田の跡を確認できる(図 2).これら河川屈曲の南西延長上にあたる匹見川の右岸では,
山腹に南東低下の
直線状の崖があり,
北西に流下する浅い谷が閉ざされている様子から断層崖と考えられ
る(図 2).1e: 赤石山の南東には,山腹に鞍部が連続し,北東―南西方向の直線的なリニアメントが
認められる(図 3)
.また,その東に隣接する北東―南西方向に延びる山の山頂近くに
も,同様に,鞍部が連続し,リニアメントとして認識できる.一部には,鞍部の規模が
大きく,
堆積物で埋積されて平坦化された溝状の地形も認められる.
横ずれを示す明確
な地形は確認できないが,いずれも 1dで認められた活断層の南西延長にあること,同
じ走向であることから,弥栄断層の断層地形と考えられる.なお,この付近の匹見川は
穿入蛇行が著しく,匹見川の流路に横ずれ変位を認めることは困難である.
1f: 鹿足郡津和野町相撲ヶ原
す も う が は ら
のやや開けた小盆地の北東端付近には,リニアメントの存在と,それに沿って系統的に右屈曲する河谷が認められる
(写真 6).河谷の屈曲量は断層
周辺の引きずりも含めれば,多くが 100〜200m程度である(図 3).相撲ヶ原の小盆地を流れる滝谷川は,現在は北東流して匹見川と合流するが,盆地中
央から南東に抜ける笹ヶ峠は風隙地形(図 3 の W)が見られ,過去に相撲ヶ原から南東
に流れ出していたことが推定される.また,門松峠の南には南西に開いた風隙(図 3 の
W′)があり,鹿足郡津和野町小倉谷を通る倉谷川水系の谷頭が滝谷川に河川争奪され
ているように見える.相撲ヶ原の小盆地の南東縁が北東―南西方向に直線性があること
も踏まえると,この縁に沿って活断層が分布し,盆地側を低下させている可能性がある
と考えられ,推定活断層を認定した.
図 2 平野山南付近の地形アナグリフ(A)と傾斜量図(B)
航空レーザ測量による 1m間隔の地形データに基づく.画像中の矢印は活断層の位置を示す. 8図 3 赤石山〜相撲ヶ原の地形アナグリフ(A)と傾斜量図(B)
航空レーザ測量による 1m間隔の地形データに基づく.画像中の黒矢印は活断層,白矢印は
推定活断層の位置を示し,W,W′は風隙地形,G は溝状の地形を示す.
写真 6 相撲ヶ原北東部の地形(北東方向を臨む)
白色の矢印は断層の位置を示し,
青色の矢印は河谷の屈曲を示す.
2022 年 12 月 12 日,
筆者
がドローンにより撮影した.
′ ′ 91g: 門松峠から鹿足郡津和野町須川付近はリニアメントが認められるに過ぎないが,桐長
峠の北東および南西には複数の系統的に右屈曲した河谷が見られる.
特に,
桐長峠付近
には山腹斜面に北東―南西方向のリニアメントや小規模な鞍部が認められ,
その延長で
河谷に右屈曲が確認できる.
航空レーザ測量によって森林下の地形が露わになったこと
から判読が可能となったもので,
最近の地質時代に右横ずれしたことを示す変位地形で
ある.
(図 4)
1h: 高津川の谷底平野では変位地形を確認できない.一方,高津川は断層より南東側で
は狭い谷を流れているのに対し,北西側の鹿足郡津和野町日原の集落のある谷底平野
は幅が広く,特に断層と高津川が交差する地点付近では右岸の谷底平野が広い特徴が
ある.
(図4)これは,断層より上流では,高津川は,ほぼ同じ場所を下刻していたの
に対し,断層より北西側は断層運動によって地塊が北東に移動させられたことを示唆
している.高津川右岸の谷幅を全て断層運動によるものとすれば,弥栄断層の変位量
は 450m程度となる.この変位量は,清水川(1b)や波田川の流路の復元(1c)で検
討した総変位量と同程度である.
弥栄断層は,鹿足郡津和野町土井敷
ど い し き
付近にある北東―南西方向の直線状谷および鞍
部を通過する.その南西延長は,青野山まで津和野川の直線状の谷底平野に沿って延
びているものと思われる
(写真 7)が,谷底周辺では断層露頭が見いだされておらず,
沖積面に変位地形は確認できない.ただし,津和野川右岸には,山腹斜面に鞍部など
によって複数のリニアメントが認識できること,一部にはそれに沿って河谷に右屈曲
図 4 桐長峠〜日原の高津川谷底平野の地形アナグリフ(A)と傾斜量図(B)
航空レーザ測量による 1m間隔の地形データに基づく.画像中の矢印は活断層の位置を示す. 10が認められる
(図5).また,
右岸には離水した段丘面が谷底に沿って細長く分布して
いるのが確認できる
(図5).これらのことを踏まえると,
津和野川の右岸の山麓近く
に弥栄断層が通っている可能性があると考える.
写真 7 津和野川の直線状の谷底平野(南東方向を臨む)
奥の青野山は弥栄断層の南西端に位置する.
2022 年 12 月 12 日,
筆者がドローンにより撮影した.
図 5 津和野川下流部周辺の地形アナグリフ(A)と傾斜量図(B)
航空レーザ測量による 1m間隔の地形データに基づく。画像中の黒矢印は活断層,白矢印は
推定活断層の位置を示す. 111i: 弥栄断層の周辺には,同断層とほぼ同走向の北東-南西のリニアメントが多数発達
している.そのうち,韮草山の南東のリニアメントは約 2 km と短いが,それに沿っ
て 3 本の河谷の屈曲が確認できることから,推定活断層を認定した.屈曲した河谷と
して記載した北東のものは,現在は笹田原を流れる流域にあるが,屈曲した先は南西
の峠に向かっており,通常の河川水系網としては異常な形態をなす.この屈曲を流れ
る小河川は,地形的特徴から,韮草山の東斜面を流れ下る水系と同じ流域であったも
のが,河川争奪によって笹田原を流れる流域になったものと思われる.争奪河川と被
争奪河川ともに南の匹見川に直接流れ込む支流であり,浸食力に大きな差が認められ
ない.したがって,断層が右横ずれした結果,上流が争奪されたとみるのが合理的と
考えられる。
1j: 益田市能登の集落のある能登川の中流部が流れる谷は弥栄断層とほぼ同じ走向で直
線状をなす.能登の集落の南西の山から北流して能登川に合流する小河川のうち,合
流直前で上流方向である右に屈曲しているものがあり,断層変位の可能性がある.ま
た,能登の集落の北東には,能登川の流路を阻むように伸びる丘の背後(北東)に鞍
部が認められる.さらに,野々峠の風隙から北に流れる河川とその北東の谷を流れる
河川は,能登川の中流部の直線状谷の北東延長で谷が塞がれるように右屈曲している.
これらの地形的特徴から推定活断層を認定した.
2.戸村川
とむらがわ
断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 6 km
・断層種別 : 活断層(右横ずれが主体)
((注記)上記の各諸元については,本図内における計測及び確認結果である)
(1)概要
戸村川断層は,本図では図郭東端から益田市匹見町のハビ山付近までの長さ約 6 km が記
載されており,さらに図郭外に連続する,北東-南西方向に延びる活断層である.
本断層は今回の調査で新たに確認された活断層であり,付近を流れる戸村川より命名した.
(2)判読根拠
この図郭内には,北東―南西走向のリニアメントが多数,認められ,多くが断層によって
規定された断層線谷または断層谷である.そのうち,戸村川断層に沿って鞍部と河谷の屈曲
が連続しており,
活断層と判断した.
断層の南西端付近にある松尾
(796.7mの三角点のある
山)の東から北東の小原川流域付近では,直線状谷とともに,小規模な鞍部が連続し,明瞭
なリニアメントをなす.また,それらの間にある河谷は系統的に右屈曲しており,谷口を閉
塞する丘も認められる.一方,戸村川流域では,川の右岸にリニアメントが認められ,それ
に沿って複数の河谷が右に屈曲している.下流方向への屈曲とはいえ,匹見川に合流する近 12く(図幅の東端付近)の 556mの標高点のある丘の南西に記した 2 本の河谷のうち,東の河
谷の上流は短いが,その西隣の河谷を流れる河川が河川争奪した可能性がある.
なお,この断層沿いは,今回の調査で使用した航空レーザ測量データの範囲外のため,当
該データを活用した判読をおこなっておらず,今後,さらなる検討が必要である.
その他の推定活断層としては,
益田
ま す だ
市和又
わ ま た
から同市内石上
うついしかみ
に至る断層,
益田
ま す だ
市匹見
ひ き み
町紙祖
し そ
付近
の断層,益田
ま す だ
市中村
なかむら
付近の断層が記載されている.
3.益田市和又
わ ま た
から同市内石上
うついしかみ
に至る断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 6 km
・断層種別 : 推定活断層
((注記)上記の各諸元については,本図内における計測及び確認結果である)
(1)概要
益田市和又から同市内石上まで,北東-南西方向に延びる,長さ約 6 km の 2 条の推定活
断層である.
(2)判読根拠
この図郭内には,北東―南西走向のリニアメントが多数,認められ,多くが断層線谷であ
る.そのうち,この断層が匹見川を横断する付近で右に屈曲する河谷が多数,確認できる.
ただし,河谷の屈曲,リニアメントとも明瞭でない.河谷の屈曲は匹見川が大きく蛇行する
付近で確認でき,河谷の複雑な発達のなかで形成された地形を含んでいる可能性があると判
断し,推定活断層とした.なお,今泉ほか編(2018)でもほぼ同様の位置に推定活断層を記
載している.
4.益田市匹見町紙し祖そ付近の断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 1 km
・断層種別 : 推定活断層
(1)概要
益田市匹見町紙祖付近に位置し,北東-南西方向に延びる,長さ約 1 km の推定活断層で
ある.
(2)判読根拠
直線状谷と鞍部の連続が見られ,明瞭なリニアメントとして認識できる.ただし,河谷の
屈曲が認めにくいことから,地質断層が最近の地質時代に再活動したことを明確に示した地 13形が認められないと判断し,推定活断層とした.なお,この断層の南西延長には燕岳南東に
ある中国自然歩道の通る直線状の谷が峠をなしており,連続している可能性があるが,その
間には断層変位を示す地形は認められない.この断層に沿っては,今回の調査で使用した航
空レーザ測量データの範囲外のため,詳しい地形が読み取れていない.
5.益田市中村
なかむら
付近の断層
・走向 : 北東-南西
・長さ : 約 3 km
・断層種別 : 推定活断層
(1)概要
益田市中村付近に位置し,北東-南西方向に延びる,長さ約 3 km の推定活断層である.
(2)判読根拠
この断層の北東半部では,鞍部の連続と複数の河谷の屈曲が認められるが,屈曲の程度が
弱いこと,南西半部には直線状の峠が認められるに過ぎないことから,地質断層の再活動を
明確に示した地形が認められないと判断し,推定活断層とした.この断層に沿っては,今回
の調査で使用した航空レーザ測量データの範囲外のため,詳しい地形が読み取れていない.
なお,今泉ほか編(2018)でもほぼ同様の位置に推定活断層を記載している.
(広島大学大学院准教授 後藤 秀昭)
引用文献
今泉俊文・宮内崇裕・堤 浩之・中田 高編(2018):「活断層詳細デジタルマップ[新編]」.
東京大学出版会,154p+USB メモリ.
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2016):弥栄断層・地福断層の長期評価.42p.
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/16jul_chi_chugoku/chu_15.pdf
(2023 年 2 月 1 日閲覧)
活断層研究会編(1991):「新編日本の活断層―分布図と資料―」
.東京大学出版会,437p.
熊原康博・後藤秀昭・千田 昇・中田 高・星野賢史(2023)
:1:25,000 活断層図「浜田南
部」
.国土地理院.
中田 高・今泉俊文編(2002):「活断層詳細デジタルマップ」
.東京大学出版会,
68p+DVD. 14使用空中写真,使用航空レーザ測量データ及び検討委員会等
1)使用空中写真
2) 使用航空レーザ測量データ
国土地理院が管理する航空レーザ測量データから 1mDEM を作成して使用.
3)全国活断層帯情報整備検討委員会
a.委員会等の開催
第 1 回委員会 令和 4 年 8 月 22 日(月) Web 会議
第 1 回全体部会(クロスチェック) 令和 4 年 9 月 12 日(月) イオンコンパス
東京八重洲会議室
地域部会(クロスチェック) 令和 4 年 11 月 7 日(月) TKP ガーデンシティ
PREMIUM 広島駅北口
撮影計画機関(種別) 撮影縮尺 地区番号又はコース番号
米軍(モノクロ) 1/40,000
M363,M419,M490,M496,M813,M822-1米軍(モノクロ) 1/10,000 R507-3,R514-5,RM3-1
国土地理院(カラー) 1/10,000 CCG769,CCG7610,CCG7611
国土地理院(モノクロ) 1/20,000 CG643X,MCG6413X,MCG653X
林野庁(モノクロ) 1/20,000 山 257
図1 航空レーザ測量データ使用範囲(黒線包囲部分).なお,黒線包囲部分以外は「基盤地図情報数値標高モデル(5mDEM ないし 10mDEM)」を使用した.
浜田南部
益田南部 15第 2 回委員会 令和 4 年 12 月 19 日(月) Web 会議
第2回全体部会(クロスチェック) 令和 4 年 12 月 20 日(火) TKP ガーデンシティ
PREMIUM 広島駅北口
b.弥栄断層とその周辺「益田南部」の作成委員(令和 4 年度)
図 名 氏 名 所 属
益田南部
〇 後藤 秀昭 広島大学大学院准教授
楮原 京子 山口大学准教授
熊原 康博 広島大学大学院准教授
中田 高 広島大学名誉教授
〇印は,全体のとりまとめを担当した委員,その他の委員は五十音順
4)連絡先
国土地理院応用地理部地理情報処理課
〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
電話:029(864)1111(代表)
5)引用する場合の記載例
a.図を引用する場合
後藤秀昭・楮原京子・熊原康博・中田 高(2023)
:1:25,000 活断層図「益田南部」
.国土
地理院.
b.解説書を引用する場合
後藤秀昭(2023)
:1:25,000 活断層図 弥栄断層とその周辺「益田南部」解説書.国土地理
院,16p. 1a1e1c2
<戸村川断層>
とむらがわ
(新たに確認された活断層)
1 <弥栄断層>
やさか1b1d1f1g1h1i1j3<益田市和又から同市内石上に至る断層>
わまた うついしかみ
5<益田市中村付近の断層>
なかむら 4<益田市匹見町紙祖付近の断層>
しそ
【 付図(断層索引図)】
- 16 -

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