1:25,000 活断層図 解説
平成 30 年 7 月11:25,000 活断層図 濃尾断層帯とその周辺
「冠山」 解説濃のう尾び
断層帯は, 両
りょう白はく
山地から濃尾平野北方にかけて概ね北西-南東方向に延びる断層
帯で,温
ぬく見み
断層,濃尾断層帯主部,揖い斐び川
がわ
断層帯および武む儀ぎ川
がわ
断層から構成される(地震
調査研究推進本部地震調査委員会,2005)
.本図には,濃尾断層帯を構成する温見断層,
濃尾断層帯主部に包括される根ね尾お谷
だに
断層,揖斐川断層帯に包括される揖斐川断層および冠かんむり山やま
断層(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2005)のほか,金
かな草くさ岳だけ
断層,笹
ささヶが峰みね
断層,大
おお
草履
ぞ う り
断層などが記載されている.
温見断層は,
福井県今立
いまだて
郡池田町から同県大野市南部を経て岐阜県本巣市北部に至る断
層である(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2005)
.本図においては,岐阜県大野
市を流れる温見川に沿って北西-南東方向に延びる長さ約 7 km の中央部区間が記載され
る.段丘面を変位させる低断層崖が複数箇所で認められるとともに,河谷の左屈曲も確認
できることから左横ずれを主体とし南西側隆起(北東落ち)の上下変位を伴う確実な活断
層とした.本図内の温見断層沿いには濃尾地震(1891)時に地震断層が出現したことが報
告されている
(松田,
1974).また,
温見川右岸
(北岸)
の段丘面上では,
吉岡ほか
(2001,
2002a)によってトレンチ調査が行われ,本断層が完新世に繰り返し活動していることが
確認されている.
根尾谷断層は,福井県大野市南部から岐阜市北西部に至る断層である(地震調査研究推
進本部地震調査委員会,2005)
.本図においては,福井県大野市と岐阜県揖斐川町の境界
にある若丸山
わかまるやま
の北東部から南東方向に延びる長さ約 5 km の北西端部区間が記載される.
山地斜面を変位させる低断層崖が複数箇所で認められるとともに,
河谷の左屈曲も確認で
きることから左横ずれを主体とし,南西側隆起(北東落ち)の上下変位を伴う確実な活断
層とした.
揖斐川断層は,岐阜県揖斐郡揖斐川町から本巣市に至る断層である(地震調査研究推進
本部地震調査委員会,2005)
.本図においては,岐阜県揖斐川町の釈迦
し ゃ か嶺みね
北方から徳山
とくやま湖こ
に沿って南東方向に延びる長さ約 16 km の主要部区間が記載される.
段丘面を変位させる
低断層崖が一部に認められるとともに,
多数の河谷に左屈曲が確認できることから左横ず
れを主体とする確実な活断層とした.本図内の揖斐川断層中央部付近では,吉岡ほか
(2002b,2003)によってトレンチ調査が行われ,本断層が完新世に繰り返し活動してい
ることが確認されている.
冠山断層は,冠山の南西に位置し揖斐川断層と並走する長さ約 5 km の断層である.第
1:25,000 活断層図 解説
平成 30 年 7 月2四紀後期の地形面を確実に変位・変形させている箇所は確認できないが,河谷の左屈曲や
鞍部列などの地形的特徴に基づき,推定活断層とした.
本図の西部から南部には,北東-南西方向の走向をもつ金草岳断層,笹ヶ峰断層および
大草履断層が分布する.金草岳断層は,福井県池田町河内
こ う ち
付近から金草岳の北西部を経て
天草山
あまくさやま
北西に延びる長さ約 13 km の断層である.
さまざまな大きさの河谷に明瞭かつ系統
的な右屈曲が認められるとともに,
一部には山地斜面を変位させる低断層崖も確認できる
ことから右横ずれを主体とする確実な活断層とした.
笹ヶ峰断層は,岐阜県揖斐川町の釈迦嶺の北西から笹ヶ峰の北西を経て,福井県南越前
町の鈴
すず谷たに川がわ
付近まで延びる長さ約 8 km の断層である.
第四紀後期の地形面を確実に変位・
変形させている箇所は確認できないが,
直線的な傾斜変換線や鞍部列などの地形的特徴お
よび第四紀後期の堆積物を変位させる活断層露頭が報告されている(小松原,2006)こと
から南東側隆起(北西落ち)の上下変位を伴う確実な活断層とした.
大草履断層は,揖斐川町の徳山湖西域から西南西方向に本図の外側(南側)まで延びる
断層として記載される.本図内の長さは約 5 km である.一部に山地斜面を変位させる低
断層崖が認められるとともに,
小河谷の右屈曲や断層の右横ずれに起因すると考えられる
河川争奪跡(風
ふう隙げき
)が確認できることから右横ずれと主体とする確実な活断層とした.
(千葉大学准教授 金田平太郎)
引用文献
小松原 琢(2006)
:中部地方・両白山地西部の右横ずれ活断層.地震調査研究報告,57,
229‒237.
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2005)
:濃尾断層帯の長期評価について.
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/60_nobi.pdf(2018 年 3 月 12 日閲覧).松田時彦(1974)
:1891 年濃尾地震の地震断層.地震研究所研究速報,13,85‒126.
吉岡敏和・栗田泰夫・下川浩一・石本裕己・吉村実義・松浦一樹(2001)
:濃尾地震断層系・
温見断層の活動履歴調査.活断層・古地震研究報告,1,97‒105.
吉岡敏和・栗田泰夫・下川浩一・石本裕己・吉村実義・松浦一樹(2002a)
:トレンチ調査に
基づく 1891 年濃尾地震断層系・温見断層の活動履歴.地震 第 2 輯,55,301‒309.
吉岡敏和・栗田泰夫・佐々木俊法・田中竹延・柳田誠(2002b)
:揖斐川断層の活動履歴調
査.活断層・古地震研究報告,2,81‒89.
吉岡敏和・栗田泰夫・佐々木俊法・田中竹延・柳田誠(2003)
:揖斐川断層の完新世における
活動履歴―岐阜県藤橋村におけるトレンチ調査結果.活断層研究,23,63‒68.

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