国土地理院技術資料 D1-No.753「綾瀬川断層とその周辺 解説書」


国土地理院技術資料 D1-No.753
1:25,000 都市圏活断層図
綾瀬川断層とその周辺
「鴻巣」
解説書
熊原康博
平成 28 年 11 月
鴻 巣
編集 国土地理院 1目 次
1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.綾瀬川断層の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3.地形の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
1)中位段丘面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2)沖積低地・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
4.本図幅で認定した綾瀬川断層の変位地形(図3・図4)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
5.本図幅で認定した推定活断層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
6.引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
7.使用空中写真および作成委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
都市圏活断層図作成地域図
調査図郭
鴻 巣 21.はじめに
国土地理院は,平成7年(1995 年)1月 17 日
に発生した兵庫県南部地震
(阪神・淡路大震災)
を契機に,活断層に関する詳細な位置情報を記
載した「1:25,000 都市圏活断層図」の調査を開
始した.
本調査は,各機関の活断層研究者で構成する
全国活断層帯情報整備検討委員会において,主
に空中写真(縮尺約1万分の1〜4万分の1)
を用いた地形判読により活断層を抽出し,併せ
て既存の各種調査結果も参考にして,詳細な位
置を 1:25,000 地形図(平成 26 年以降は電子地
形図 25000)上にまとめたものである.
平成 16 年度までに三大都市圏,政令指定都
市 , 県 庁 所 在 都 市 及 び そ の 周 辺 を 中 心 と し て
124 面が作成され,平成 17 年度以降は,地方主
要都市域周辺部(山間地域を含む)の主要な活
断層について,新たに図示項目を追加し作成さ
れてきた.平成 28 年 11 月現在, 181 面を公表
している.
(下図参照)
本図では、最近数十万年間に約千年から数万
年の間隔で繰り返し活動してきた痕跡が地形に
表れているもので,今後も活動を繰り返すと考
えられる断層を「活断層」として図示している.
このうち,地形的な証拠から明確な活断層と考
えられるものを赤線,活断層の存在が推定され
るが現時点では明確に特定できないものを黒線
で図示している.加えて,河川や風雨による侵
食や堆積・人工的な要因による地形の改変のた
め,活断層の位置を明確に図示できない区間は
破線とした.また,活動の跡が土砂の下に埋も
れてしまっている区間は点線で図示している.
活断層の位置のほか,活断層に関連する段丘
地形・沖積低地・地すべり地形など第四紀後半
(数十万年前から現在)に形成された主な地形
も図示している.これにより活断層周辺の地盤
状況や,活断層の活動によって地すべりが再活
動する可能性のある地域など防災に役立つ情報
を読みとることができる.本図1枚に図示され
ている範囲は,国土地理院刊行の縮尺2万5千
分1地形図4面分に相当する.
なお,
図の記載内容,
詳しい整備範囲などは,
国土地理院のウェブサイトに掲載されている.
・赤枠が図郭.ピンクで塗った枠が綾瀬川断層の図「鴻巣」.
・都市圏活断層のウェブサイト
(http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/active_fault.html)
Coverage of the Active Fault Map series (as of November 2016) 32.綾瀬川断層の概要
ここでは,地震調査研究推進本部地震調査委
員会(2015)の記述を整理して,綾瀬川断層の
概要について述べる.
綾瀬川断層(図1)は,清水・堀口(1981)
が地形面やその高度分布に基づいて定義した元
荒川構造帯に含まれる.地震調査研究推進本部
地震調査委員会(2000)では,綾瀬川断層とほ
ぼ重複する元荒川断層帯の北部で第四紀層の累
積変位に基づき活断層であると評価した上で,
同部分はその北西延長に存在する深谷断層等を
一連の活断層帯として評価すべきであると指摘
した.それを受けて,地震調査研究推進本部地
震調査委員会(2005)による関東平野北西縁断
層帯の評価では,綾瀬川断層北部と深谷断層に
挟まれる区間のほぼ中央付近 2 地点において反
射法弾性波探査及びボーリング調査により断層
の存在が確認されたことから
(山口ほか,
1997;
井川ほか,1998 など)
,それらは一連の断層帯
をなすとした.
しかし,
その後に得られた反射断面や解釈(山口ほか, 2007b; 石山ほか,2005; Ishiyama
et al., 2013 など)を検討した結果,深谷断
層と綾瀬川断層は近接するものの,前者は幅広
い撓曲変形を伴う逆断層,後者は中新世に形成
された正断層の再活動した逆断層 (Ishiyama
et al., 2013)であり,両者の幾何学的形状や
形成過程が大きく異なることが分かった.これ
らを受け,地震調査研究推進本部地震調査委員
会(2015)は,深谷断層と綾瀬川断層が別々に
活動する断層とみなして評価している.また,
後藤(2015)は,綾瀬川断層について河谷や段
丘崖に左屈曲が認められることや,上下変位が
北西部で北東低下,南東部で南西低下と異なる
ことから,左横ずれ変位をもつ可能性を指摘し
ている.
地震調査研究推進本部地震調査委員会
(2015)
の綾瀬川断層の評価は以下のとおりである.
「綾瀬川断層の長さと一般走向は,北西端と南
東端を直線で結ぶと,約 38 km,N45°W となる
可能性がある.鴻巣-伊奈区間(主に今回の図
幅の範囲)の長さと一般走向は,北西端と南東
端を直線で結ぶと,約 19km,N50°W と推定され
る.北本市内で実施された反射法弾性波探査に
図1 綾瀬川断層の位置と本図幅の範囲.
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2015)の図に加筆. 4より,堆積層の東側への累積的な撓み下がりが
確認され,南西傾斜の高角逆断層によって形成
されると解釈された(石山ほか,2005)
.ここでは,鴻巣-伊奈区間は高角南西傾斜と判断する.
伊奈-川口区間
(図1)
の長さと一般走向は,
北 西 端 と 南 東 端 を 直 線 で 結 ぶ と , 約 19km ,
N39°W となる可能性がある.同区間では,反射
法弾性波探査では逆断層の存在が示されていな
いが,横ずれの特徴を持つ変動地形が見られる
推定断層の区間である.
したがって,
ここでは,
伊奈-川口区間は地表付近で高角と判断する.
鴻巣-伊奈区間の綾瀬川断層について,平均
的な上下方向のずれの速度は 0.1m/千年程度,
最新活動時期は約 1 万 5 千年前以後,約 9 千年
前以前の可能性がある.1 回前の活動時期は 8
万年前程度以後,6 万年前程度以前の可能性が
ある.1 回の活動に伴う上下変位量は 3-4m 程
度の可能性がある.平均活動間隔は 4 万 5 千年
-7 万 1 千年程度の可能性がある.伊奈-川口
区間(今回の図幅の範囲外)については,過去
の活動は不明である.しかし,断層の長さに比
べて 1 回の活動に伴う変位量が大きいことから,
鴻巣-伊奈区間と伊奈-川口区間を合わせた 2
区間が同時に活動した可能性もある.」3.地形の概要
ここでは,活断層や推定活断層が分布する図
幅南西部を中心に地形の概要を述べる(図2,
図3)
.南西部に広がる地形は,主に河川や水田
として利用されている沖積低地と,主に市街地
として利用されている中位段丘面からなる.活
断層の認定は,これらの地形面の変形を指標に
おこなっており,地形の年代や特徴は,活断層
の活動性を検討する上で重要な情報となる.
1)中位段丘面
本図幅周辺の中位段丘面の分布形状や高度は,
綾瀬川断層を境に大きく異なる.断層より南西
側の中位段丘面は大宮台地(図3)と呼ばれており,荒川の沖積低地との段丘崖まで広く分布し,
段丘崖の比高は 10〜16m,標高は 20〜32m であ
る.大宮台地は,北西-南東方向に延びるなま
こ状の形状を呈している(貝塚,1977)
.一方,
断層より北東側の中位段丘面は,北西-南東方
向に細長く,沖積低地に浮き島のように分布す
図2 綾瀬川断層周辺の標高図
国土地理院 5m メッシュ標高データより著者作成 5る.段丘面の標高は 12〜14m であり,沖積低地
との比高は 1〜2m 程度である.断層を挟んで,
分布形状や高度が違う理由は,綾瀬川断層の活
動によるものと考えられている.
中位段丘面は,高度や段丘面下の堆積層の違
いにより,二つの面に区分されており(渡辺,
2007;石山ほか,2005;須貝ほか,2007;納谷・
安原,2014)
,本図幅内でも部分的ではあるが中
位段丘面1と中位段丘面2として区分した.
中位段丘面1は,鴻巣市箕田から北本市・上
尾市にかけて広く分布する.中位段丘面1を構
成する地層上部から,約 10 万年前に降下した
と考えられる御岳第一テフラ
(町田・新井,
2003)
が認められていることから(貝塚ほか,1977),約 10 万年前に段丘化したと考えられていた(渡辺,2007;石山ほか,2005;須貝ほか,2007)
が,納谷・安原(2014)によると,約 9.5 万年
前に降下した鬼界葛原テフラ
(町田・新井,
2003)
が同じく地層上部中で認められており,段丘化
した年代はさらに新しくなる可能性が高い.中
位段丘面1を構成する地層は礫,砂,泥からな
る河川性堆積物である(納谷・安原,2014).中位段丘面2は,綾瀬川沿いにのみ幅狭く分
布(本図幅では鴻巣市宮地から宮内にかけてと
北本市向付近)し,中位段丘面1との比高は約
5m である.納谷・安原(2014)で示された断面
図をみると,中位段丘面2は,中位段丘面1の
堆積物(大宮層)を浸食して,礫・砂・泥から
なる新しい河川性堆積物が堆積していることか
ら,中位段丘面2は中位段丘面1を綾瀬川が浸
食して形成した段丘面といえる.本段丘堆積物
を覆うローム層の最下部には,6〜6.5 万年前
に降下堆積した箱根東京テフラ(町田・新井,
2003)が含まれるため, 中位段丘面2は,箱根
東京テフラが堆積する直前に段丘化したと考え
られる(納谷・安原,2014).2)沖積低地
沖積低地は,綾瀬川断層より北東側および,
大宮台地の南西に広く分布し,主に綾瀬川や元
荒川,荒川によって運ばれた完新世の河川性堆
積物によって構成されている.また,大宮台地
の中には,台地を浸食する細長い谷があり,こ
の谷底にも沖積低地が広がっている.4.本図幅で認定した綾瀬川断層の変位地
形(図3・図 4)
綾瀬川断層の変位地形を北から南に向かって
述べる.綾瀬川断層を地形的に認定した根拠の
図3 インデックスマップ綾瀬川断層大宮台地 6ほとんどは,中位段丘面の異常な変形である.
中位段丘面の形成過程を考えると,まず,段丘
化する以前の地形環境は,北西から南東に向か
って緩やかな下り勾配をもつ氾濫原が広がり.
その後,氾濫原は段丘化するが,形成過程から
段丘面は緩やかに傾斜する平坦な地形であった
と考えられる.しかし,綾瀬川断層周辺の中位
段丘面の高度分布は,不規則で背斜状の高まり
や高度の不連続を示すことから,段丘化後に綾
瀬川断層の断層運動に伴い複雑に変形を受けて
きたことがわかる.
なお,図4は,航空レーザ測量により作成さ
れた国土地理院基盤地図情報
(数値地形モデル)
5m メッシュ(標高)から作成したものである.
2000 年以降に計測された地形に基づいており,
人工的に改変された場所も少なくないため,盛
り土をした部分は沖積低地であっても高く表示
されるなど,不調和な部分も見られる.この図
では,変形の様子を理解しやすくするため,高
さ方向を水平方向に比べて 25 倍に強調している.本図に記載した断層地形のほとんどは,
清水・
図4 綾瀬川断層及び推定活断層を横切る地形断面図
国土地理院基盤地図情報(数値地形モデル)5m メッシュ(標高)より著者作成 7堀口
(1981)
や杉山ほか
(1997),石山ほか
(2005),渡辺(2007)
,後藤(2015)などで指摘されてき
たものである.以下に,綾瀬川断層の断層地形
を簡潔に記載する.
図3の A 地点から B 地点にかけては,中位段
丘面が北東方向に傾斜して撓み下がる幅広い撓
曲変形が認められる(断面1,2,3)
.綾瀬川
断層の地表トレースの位置は撓曲変形の基部に
あると考えられるものの,地形面の境界となっ
ている場所が多く,土地の改変もあり,地表ト
レースの位置を厳密に認定することは難しい.
また撓曲変形の幅は非常に広く 500m〜1km に及
んでいる.図4断面2では,中位段丘面2が断
層を挟んで両側に分布していることから,中位
段丘面2を基準に変位量を計測することができ,
断層の南西側隆起で変位量は約5m であるとい
える.
C 地点から,幅広い撓曲変形をもつトレース
とは別の断層トレースが南東に向かって分岐し,
図幅の南端である G 地点まで,位置やや不明確
ながら連続的に認められる.このトレースに沿
っては,中位段丘面が撓曲変形しており,その
変形の幅は,北の北本市宮内周辺では 100m,南
の伊奈町大針周辺では 500m に達する.D 地点で
は,中位段丘面が南西へ傾く傾動が認められ,
綾瀬川断層の活動に伴う変形と考えられる.
E 地点から南東に向かって中位段丘面上にリ
ッジ状の高まりが認められ,背斜構造と考えら
れる.この高まりは幅 200〜400m で長さ約 3km
にわたり連続し,E 地点から G 地点までは断層
トレースの南西側に平行にする.高まりの中央
にあたる断面4をみると,
幅 200m で背斜構造の
中心部が2m 程度高くなっていることがわかる.
地点 F には中位段丘面を浸食する谷があるが,
この谷の谷底も,同様に背斜変形を受けている
と見られる.谷の源頭部から高まりの頂部まで
の谷底よりも,頂部から下流にかけての谷底の
ほうが急な勾配になっており,背斜構造の頂部
で隆起した結果と見られる.
なお,
後藤
(2015)
は,地点 E から地点 G の断層トレース上で河谷
の多くが左に屈曲していることから,綾瀬川断
層が左横ずれ変位をもつ可能性を指摘している.
今回の判読では,河谷の屈曲は認められるもの
の,明瞭ではないことから,河谷の屈曲を断層
の横ずれ変位とは判断しなかった.
G 地点から H 地点にかけては,中位段丘面上
における撓曲変形が顕著である.ただし,中位
段丘を浸食する谷の中には,撓曲変形を示す痕
跡は認められない.
以上,綾瀬川断層の変位地形を記載した。こ
の図幅内の綾瀬川断層は,南西側が隆起し,北
東側が低下する断層である可能性が高く,地震
調査研究推進本部地震調査委員会(2015)の結
論と同様,綾瀬川断層は南西傾斜の断層面をも
つ逆断層と見なせる.ただし,地震調査研究推
進本部地震調査委員会(2015)は,綾瀬川断層
の断層面は高角であるとみなしているが,幅広
い撓曲変形が見られることから断層が地表まで
達せず,地下浅部でとまっているか,浅部で低
角化している可能性がある.
5.本図幅で認定した推定活断層
本図幅では,9本の位置不明確な推定活断層
(図3,I〜VIIの推定活断層)を認定した.いず
れの推定活断層も,活断層としての明確な根拠
は認められないものの,浸食以外の形成要因と
して断層運動を否定できないので推定活断層と
した.
以下に推定活断層とした根拠を述べる(図3,図4).トレース I:中位段丘面東北縁にある北西―
南東走向のトレースで、断面5を見ると、断面
起点から見て、北東に向かって上方へ凸形をな
す高低差があり,凸部東側基部の傾斜変換線を
トレース I とした.緩い傾斜を伴う凸型の形状
から段丘面が撓曲変形している可能性がある.
しかし、トレース I が,河川の側方浸食による
浸食崖起源であり,崖をロームが覆うことで上
方へ凸形をなしている可能性もあるため,推定
活断層とした.
トレース II:中位段丘面1上で北西―南東走
向の2列の直線的な崖が認められ,北東側(南
西側低下)の崖をトレース IIa,南西側(北東側
低下)の崖をトレース IIb とした.崖に挟まれ
た部分は凹地となり(断面1)
,北西へ向かって
流れる谷となっている.段丘面を浸食する谷に
よって形成された可能性もあるが,広域の地形
環境における上流方向に(北西)に向かって流
下する形状であるから,活断層である可能性が
ある.現状では推定活断層とした.
トレース III:中位段丘面1上で北西―南東
走向の2列の直線的な崖が認められ,
北東側(南西側低下)の崖をトレース IIIa,南西側(北東
側低下)の崖をトレース IIIb とした.崖に挟ま
れた部分は凹地となり(断面2)
,北西へ向かっ
て流れる谷となっている.段丘面を浸食する谷
によって形成された可能性もあるが,トレース
II の場合と同様に上流(北西)に向かって流れ
る異常な形状であることから,活断層である可 8能性がある.現状では推定活断層とした.
トレース IV(断面3)
:中位段丘面1上の北
西―南東走向のトレースで、断面3との交差を
挟んで凸形をなす高低差があり,南西側凸部東
側基部の傾斜変換線をトレース IV とした.緩
い傾斜を伴う凸型の形状から段丘面が撓曲変形
している可能性がある.
しかし、
トレース IV が,
河川の側方浸食による浸食崖起源であり,崖を
ロームが覆うことでこのような形状をなす可能
性もあるため,推定活断層とした.
トレース V(断面3)
:中位段丘面1上の北西
―南東走向(南部で湾曲)トレースで、断面3
ではトレース南西側に崖を伴って一段高くなる.
北東側に向かう段丘面は上方へ凸形をなす高低
差があり,この傾斜変換線をトレース V とした.
緩い傾斜の凸型の形状から段丘面が撓曲変形し
ている可能性がある.なお,杉山ほか(1997)
ではこのあたりに活背斜を認定している.杉山
ほか(1997)は縮尺 50 万分の1の小縮尺の地図
であるため,位置がはっきりしないが,活背斜
の東翼が本研究の推定活断層の位置にあたると
考えられる.ただし現状ではこれ以上の情報は
なく活断層として認定することは難しい.
なお,上記のトレース II〜V の推定活断層の
位置は,綾瀬川断層の隆起側にあたるため,綾
瀬川断層が活動した際に生じた上盤の副次的な
断層である可能性もある.
トレース VI, VII:どちらのトレースも,中
位段丘面上で,断面図起点から見て北東に向か
って上方へ凸形をなす高低差があり(断面6,7),凸部東側基部の傾斜変換線をトレース VI,
VII とした.緩い傾斜を伴う凸型の形状から段
丘面が撓曲変形している可能性がある.河川の
側方浸食による浸食崖起源であり,崖をローム
が覆うことでこのような形状をなす可能性もあ
るため,推定活断層とした.
6.引用文献
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諸島中部周辺を事例に.広島大学大学院文学研究科論集. 特輯号,87p.
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大上隆史(2007)
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渡辺満久(2007)
:綾瀬川断層の地形学的認定とその活動性.地学雑誌,116,3/4,387-393.
7.使用空中写真および検討委員会
1)使用空中写真
米軍 4 万:M635,M626,M28
国土地理院 2 万:KT-64-4X
国土地理院 1 万(カラー)
:CKT-74-18
2)全国活断層帯情報整備検討委員会
a.委員会の開催
第 1 回委員会 平成 27 年 8 月 26 日(水) ダイヤ八重洲口ビル あすか会議室
地域部会 平成 27 年 12 月 6 日(水) ダイヤ八重洲口ビル あすか会議室
第 2 回委員会 平成 28 年 2 月 22 日(月) ダイヤ八重洲口ビル あすか会議室b.「綾瀬川断層とその周辺」の作成委員(平成 27 年度)
c.国土地理院
防災地理課長 山本 洋一
課長補佐 吉武 勝宏
技術専門員 石川 弘美
専門職 菊池 修
係長 三谷 麻衣
連絡先
国土地理院応用地理部防災地理課
〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
電話:029(864)1111(代表)
この解説書を引用する場合の記載例
熊原康博(2016)
:1:25,000 都市圏活断層図綾瀬川断層とその周辺「鴻巣」解説書.国土地理院技術資料 D1
-No.753,1-10p.
図 名 氏 名 所 属
鴻巣 しろまる熊原 康博 広島大学准教授
後藤 秀昭 広島大学准教授
澤 祥 鶴岡工業高等専門学校教授
平川 一臣 北海道大学名誉教授
宮内 崇裕 千葉大学教授
しろまる全体のとりまとめを担当した委員

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