VOL.197 OCTOBER 2024
JAPAN’S HEALING FORESTS (PART 2)
Autumn Forests with Colorful Leaves
紅葉が織りなす普賢岳一帯の雄大な秋景色
国の天然記念物に指定されている普賢岳紅葉樹林。急斜面にぎっしりと詰まったようなコントラストある紅葉が特徴。
Photo:雲仙観光局
日本列島の南西に位置する九州の西北部の長崎県。長崎県には、普賢岳(標高 1,359m)と多くの山々が連なっている、総称で雲仙岳と呼ぶ火山がある。特に普賢岳*一帯は紅葉の名所として知られており、その秋の景色の魅力を、雲仙地域の観光PRなどを行う担当者に話を聴いた。
長崎県南部の島原半島の中央部に位置する普賢岳は、半島という地形のために三方を海に囲まれていて、山頂からは海と山が一望できる風光明媚な山だ。
雲仙観光局のPR担当をしている白濵 えりかさんはこう話す。「現在も火山活動が続く普賢岳は、その一帯が有明海、天草諸島を始め、はるか遠くまで一望できる雄大で起伏に富んだ景色が特徴です。11月初旬にシーズンを迎える紅葉を目的に、多くの観光客が毎年訪れます」と話す。
普賢岳一帯は、1928年に「普賢岳紅葉樹林」として、国の天然記念物に指定されている。ここは、自然のまま維持されている落葉広葉樹の森林に覆われており、樹木が70種から80種、それ以外の植物が約50種と、多種多様な草木が紅葉するのが特徴だ。なかでも、紅葉するコハウチワカエデ、ツリバナ、ウリハダカエデ(写真参照)などが広い面積を占めている。
「標高1,040mにある仁田峠**の展望台から、普賢岳の西南に位置する妙見岳(標高1,333m)までを結ぶ雲仙ロープウェイのゴンドラから眺める、山頂到着直前の圧倒的な紅葉の景色が見どころです。360度ぐるりと、すばらしい紅葉の景色を楽しむことができます。また、途中の妙見岳中腹の標高850mから1,300mの急傾斜地は、岩肌と緑の常緑樹と、この群生する紅葉樹林の植生が混ざり合い、見事なコントラストが生まれます。その姿は、まるでサンゴ礁のようだと例えられることもあります」と白濱さんは言う。仁田峠までは道路が整備されていて、アクセスのよさも観光客が集まる理由でもある。
「妙見岳の山頂近くの展望台からは、紅葉とともに普賢岳と、それに連なる平成新山(標高1,486m)の景色を楽しめます」と白濵さん。
年間通して約20万人が訪れる普賢岳一帯は、海外からの観光客も増加傾向にあり、主に登山を楽しみに訪れているそうだ。仁田峠へ向かう登山口付近には、「雲仙お山の情報館」というインフォメーションセンターが設けられていて、英語のリーフレットや音声ガイドも用意されている。秋、普賢岳一帯の紅葉が生み出す雄大な景観は迫力満点だ。日本を訪れた際は、ぜひその極上の自然美を楽しんでみてはいかがだろうか。
* 島原半島中央に位置する火山群の中の最も高い山。その火山群を総称して雲仙岳という。普賢岳は1990年に噴火。この火山活動により普賢岳の東方約500mに現れた溶岩ドーム(1,468m)は平成新山と名づけられた。
** 雲仙岳一帯の観光の中心。峠へは道路も通じ、ロープウェイで妙見岳へ登ることもできる。
普賢岳一帯で見られる植物
ツリバナ
本州、四国、九州の山間部に自生している日本固有の樹木。実が吊られたようにつくため名付けられた。ニシキギ科の落葉低木。
By TANAKA Nozomi
Photos: UNZEN Destination Service; PIXTA