交通事故ゼロを目指して。ドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車
[画像:先進安全装置によって、交差点に飛び出してきた自転車を感知し、警報音を発してドライバーに危険を知らせる先進安全自動車]
POINT
自動車の運転中に警報音が鳴って、車線のはみ出しを知らされたことはないでしょうか。あるいは障害物への接近を知らせる警報によりブレーキを踏んだことはありませんか。
交通事故を未然に防いだり、交通事故の危険性を低減させたりする先進安全装置を搭載した自動車の開発・普及が進んでいます。車が警報音などによりドライバーに危険を知らせるなどのような最新技術を利用してドライバーの皆さんの安全運転をサポートするのが、先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)です。
1先進安全自動車(ASV)とは? 自動車に搭載された先進安全装置(ASV技術)の代表例
先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)とは、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置など、ドライバーや周囲の状況を把握して事故を未然に防ぎ、安全運転を支援するシステムを搭載した自動車をいいます。近年、自動車に搭載された先進安全装置(以下「ASV技術」といいます。)の開発によって、自動車の安全性能は飛躍的に向上しました。ここでは、実用化された主なASV技術をご紹介します。
衝突被害軽減ブレーキ
[画像:衝突被害軽減ブレーキのイメージ。交差点でこどもが飛び出してきたことを察知してドライバーに警報で危険を知らせる。]
走行速度や前方の障害物との距離から、そのまま走行すれば衝突するかもしれないときにドライバーへ警報により危険を知らせ、それでも衝突が避けられないとシステムが判断した場合には自動的にブレーキを作動させる機能です。
ペダル踏み間違い時加速抑制装置
ドライバーがブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた場合などに、そのまま加速すると衝突のおそれがある場合に、エンジン出力制御やブレーキ制御などによって急発進、急加速を抑制する機能です。
車線逸脱警報装置
[画像:車線逸脱警報装置のシステムありの場合とシステムなしの場合の違いのイメージ]
システムが自動車の走行車線を認識し、車線から外れたり、外れそうになったりしたときに、ドライバーに対して警報を鳴らす機能です。
レーンキープアシスト(車線維持支援制御装置)
走行車線の中央付近を維持するようにハンドル操作を支援し、ドライバーの負担を軽減します。また、何らかの理由で車線から外れそうになったときには、ドライバーに対して警報を鳴らすのに加え、車線中央付近に戻すようにハンドル操作の支援を行う機能です。
ほかにも、走行中に後側方車両を検知し、ドアミラーなどに警告ランプを点灯させる後側方接近車両注意喚起装置や、後退時に車両後方の様子をカメラで撮影し、車内のモニターに映し出すバックカメラ(後退時後方視界情報提供装置)など多くの機能が実用化されています。また、二輪車(オートバイ)向けには、車体姿勢の安定性確保のために路面の摩擦係数に見合った以上の制動操作をした場合でも車輪がロックしないように制動力を制御する車輪ロック防止制動制御装置(アンチロックブレーキシステム:ABS)などもあります。
2先進安全自動車が広く普及すれば事故低減につながる
ASV技術により自動車の安全性能は年々向上していますが、交通事故を減らすためには、それぞれの車の性能だけでなく、先進安全自動車の普及台数も重要です。国は、研究機関や自動車メーカーなどとともに、先進安全自動車の性能向上と普及拡大に取り組んでいます。
例えば、障害物との衝突を予測し、ぶつかる前に警報を鳴らしたり自動でブレーキをかけたりする衝突被害軽減ブレーキは、近年普及が広がっており、大型車などでは搭載が義務化されています。下のグラフのように、令和4年(2022年)にはほとんどの新車乗用車に衝突被害軽減ブレーキが搭載されるようになりました。このような交通事故を防止する取組により、追突事故件数は減少傾向にあり、平成26年(2014年)と比較して、令和4年(2022年)では約55%追突事故件数が減少しています。
人間がいつでも完璧な運転をすることは難しいものです。一瞬の気のゆるみや判断ミス、眠気、あるいは体調不良が重大な事故につながることもあります。このため、先進安全自動車が、皆さんの安全運転を支援するのです。
3「自動車アセスメント」をより安全な車選びの参考に
自動車の様々なASV技術が実用化されていますが、車を選ぶときにはどのような機能に着目すればよいのでしょうか。その参考になるのが「自動車アセスメント」です。自動車アセスメントとは、独立行政法人自動車事故対策機構(ナスバ)が国土交通省の指定を受けて実施をしているもので、市販されている自動車を対象に以下の3つの観点から安全性能を評価して点数を公表しています。
衝突時の乗員や歩行者の安全性を評価する「衝突安全性能評価」
試験車を壁(バリヤ)に衝突させたり、人の頭部を模擬したダミーを試験車のボンネットなどに衝突させたりするなど、事故時に自動車の乗員や歩行者を守る技術(衝突に耐え得る車体構造や歩行者への傷害を少なくする車体構造を採用しているかなど)について評価しています。
「側面衝突」と「歩行者頭部保護」の衝突安全性能評価試験
側面衝突の衝突安全性能評価試験
側面衝突の衝突安全性能評価試験の様子。自動車の側面に台車を衝突させている。歩行者頭部保護の衝突安全性能評価試験
歩行者頭部保護の衝突安全性能評価試験の様子。歩行者の頭部に見立てたダミーを自動車のボンネットなどに発射・衝突させ、ダミーの受けた衝撃を測定している。(写真提供:独立行政法人自動車事故対策機構)
※(注記)歩行者頭部保護試験では、歩行者の頭部に見立てたダミーを自動車のボンネットなどに発射・衝突させ、ダミーの受けた衝撃を測定している。
(写真提供:独立行政法人自動車事故対策機構)
事故を未然に防ぐ技術を評価する「予防安全性能評価」
衝突しそうな場合に自動車が警報を鳴らしたり自動でブレーキをかけたりするといったドライバーを支援する様々な予防安全技術(衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制など)について評価しています。
衝突軽減ブレーキの予防安全性能評価試験
(写真提供:独立行政法人自動車事故対策機構)
(写真提供:独立行政法人自動車事故対策機構)
事故が起こった際に備える「事故自動緊急通報」
エアバッグが展開するような大きな交通事故が発生した際、自動車から事故が発生した地点などをコールセンターへ自動的に通報するシステムについて評価しています。
[画像:事故自動緊急通報の流れ。自動車のエアバッグの展開情報などをコールセンターに位置情報とともに自動通報する。通報を受けたコールセンターでは消防署に連絡し、救急車の出動を要請する。]独立行政法人自動車事故対策機構のホームページ「守る(JNCAP)」では、衝突試験やブレーキ試験などの試験映像も公開しています。また、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構では、それぞれの車種についてアセスメント結果を公表しており、衝突安全性能と予防安全性能が最高ランクで、事故自動緊急通報装置を搭載している車種には「ファイブスター賞」が、その年度のファイブスター賞を獲得した車種の中で、最高得点を獲得した車種には「ファイブスター大賞」が与えられます。
是非いつも乗っている車や、購入を検討している車の安全性を確認してみてください。
メーカー、車種、車種区分、キーワード、評価年度から、自動車アセスメントの評価結果を検索できます。
ファイブスター賞のロゴマーク
ファイブスター大賞のロゴマーク
コラム:高齢運転者の事故を防ぐ「サポカー」
「サポカー」とは、「セーフティ・サポートカー」の略称で、高齢運転者による事故防止に資するASV技術を搭載した車のことを指します。衝突被害軽減ブレーキが搭載された「サポカー」のほか、衝突被害軽減ブレーキに加えて、ペダル踏み間違い急発進抑制装置などの技術が搭載された「サポカーS」があります。
衝突被害軽減ブレーキ及びペダル踏み間違い急発進抑制装置については、装置の性能を確認する認定制度を国土交通省にて設けており、認定を受けた車種・装置は、国土交通省「衝突被害軽減ブレーキの性能評価認定結果公表」で公表しています。
また、高齢運転者や運転に不安を感じるかたに対して、運転できる自動車の範囲をサポートカーに限定できる「サポートカー限定免許」制度もあります。高齢運転者の交通事故を防ぐため、サポカーの普及啓発に政府と自動車メーカーなどが連携して取り組んでいます。
サポカーSロゴマーク
衝突被害軽減ブレーキに加えて、ペダル踏み間違い急発進抑制装置などの技術が搭載された先進安全自動車を表すロゴマークで、企業の広報活動に使用されています。衝突被害軽減ブレーキが搭載された先進安全自動車は単に「サポカー」と表記されます。
先進安全技術の性能評価認定ロゴマーク
ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能が国土交通省にて認定されたことを示すロゴマークで、企業の広報活動に使用されています。このほか、衝突被害軽減ブレーキ、後付けペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定ロゴマークもあります。
[画像:ペダル踏み間違い急発進抑制装置の国土交通省認定ロゴマーク]
まとめ
自分や家族を守るために、また自分や家族が交通事故の加害者にならないために、自動車を選ぶときはASV技術に着目するとともに、自動車アセスメントを参考にしましょう。なお、先進安全自動車によっては、任意自動車保険の保険料割引(ASV割引)を受けられる場合もあります。
最後に、先進安全自動車を運転する際は技術を過信せずに、交通ルールを守り安全運転を心掛けることが重要です。私たち一人ひとりの心掛けが、社会全体での交通事故防止につながります。
(取材協力:国土交通省 文責:政府広報オンライン)