鼻・副鼻腔センター
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鼻・副鼻腔センターとは
鼻・副鼻腔センターは、平成29年7月から開設された鼻疾患および副鼻腔疾患の治療に特化した外来です。 具体的には、花粉症や蓄膿症(慢性副鼻腔炎)、鼻中隔湾曲症、嗅覚障害、鼻外傷、鼻奇形など幅広い鼻疾患に対して専門的な検査や手術治療を行っております。年間約500人が受診しており、約150〜200件の鼻科手術実績があります。
外来診療は電子スコープを用いて鼻腔内を鮮明に観察しており、患者様ご自身もリアルタイムにモニターで所見を見ることが出来るように工夫しています。専門的な検査としては、鼻の通りを調べる鼻腔通気度検査、臭いの障害を調べる嗅覚検査、血液で調べるアレルギーの原因検査などがあります。副鼻腔CTやMRIは受診当日に行うこともできますので、構造の問題点や炎症の有無などを即日確認することができ、迅速な治療のご提案を可能にしています。
最近では新型コロナ(COVID-19)の後遺症診断や嗅覚障害の治療相談にも応じております。治療方針は各種検査結果を総合的に評価して検討し、内服薬や外用薬での保存的治療から、外科的な手術治療までご提案しています。手術治療の場合は、局所麻酔下での短期治療や全身麻酔での入院治療を疾患に応じてご提案しています。
鼻の症状でお悩みの方は決して放置せずに、お気軽にご相談下さい。
鼻・副鼻腔センター スタッフ集合写真
内視鏡下副鼻腔手術の様子
受診方法
毎週月曜日の午前中に行っています。近隣の耳鼻咽喉科クリニックで紹介状を書いていただき、当院地域医療連携室を通してセンター外来を予約することが出来ます。当日受付は、外来の予約状況によってはお受けできない場合もありますので、事前にご確認をお願いいたします。
代表的疾患と治療法
アレルギー性鼻炎
I型アレルギーとされており、通年性と季節性、混合性があります。通年性アレルギーの原因として最も多いのはハウスダスト(HD)、次いでダニで、季節性アレルギーの原因で最も多いのはスギ花粉といわれています。血液検査で診断することができます。症状は、水溶性鼻汁(鼻水)、鼻閉(鼻づまり)、くしゃみ、目のかゆみが代表的です。
治療は重症度によって分類されていますが、初めは抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の内服やステロイド点鼻薬が中心になります。副作用として眠気がおきる場合がありますが個人差があるため薬剤選択は慎重に行っています。根本的な治療法になり得るとされる免疫療法の1つに舌下免疫療法があり、当科ではスギ花粉とダニに対する治療を行っております。ただし治療期間が3年と長期間で根気が必要です。手術治療は症状や重症度によって選択しており、軽症例には短期入院手術もしくは日帰り手術として局所麻酔での下鼻甲介レーザー蒸散術を行います。中等症以上には全身麻酔で下鼻甲介骨切除手術や下鼻甲介粘膜下切除術を行っており、術後の痂皮付着が少なく早く治る手術です。鼻水(水溶性鼻汁)が多くて困っている症例には神経切断術も行っております。短期入院の場合は、手術時間は30分程度で、費用は通常3割自己負担で1~2万円程度です。
  | 抗ヒスタミン剤内服 | ステロイド点鼻 | 舌下免疫療法 | 下鼻甲介レーザー手術 | 下鼻甲介粘膜下切除手術 | 翼口蓋窩神経切断手術 |
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軽症 | ○しろまる |   | ○しろまる | ○しろまる |   |   |
中等症 | ○しろまる | ○しろまる | ○しろまる |   | ○しろまる |   |
重症 | ○しろまる | ○しろまる | ○しろまる |   | ○しろまる | ○しろまる |
当院における重症度に対する治療選択
慢性副鼻腔炎
一般的にいう『蓄膿症』です。症状は、膿汁、鼻閉、後鼻漏、頭痛、頬部や前額部痛など様々です。鼻腔内に鼻茸(ポリープ)を生じる場合もあり、増大すると鼻の変形を来してしまう場合もあります。単純レントゲン検査やCT検査で、鼻腔と副鼻腔に炎症所見を認めれば診断できます。治療は、保存的にはマクロライド系抗菌薬の少量長期投与とネブライザー療法が有効とされています。保存的治療で改善しない場合は手術治療を行います。近年は全身麻酔下に内視鏡を用いた鼻内副鼻腔手術が一般的で、口腔内の歯齦部を切開する手術はほぼ行われていません。ポリープや病的粘膜、膿汁を除去し、鼻腔構造を正常化させ鼻の換気を改善させて炎症を鎮めます。当センターでは術後の鼻腔ガーゼを工夫することで、従来言われていたガーゼ抜去時の痛みを軽減させています。通常の慢性副鼻腔炎であれば再発することは比較的稀です。通常、入院期間は約1週間です。
好酸球性副鼻腔炎
比較的最近定義された疾患概念で、アレルギーの原因となる血中の好酸球が関与した副鼻腔炎です。前述した通常の副鼻腔炎と違い、ポリープ(鼻茸)が鼻腔内に限局して発育し、粘稠な鼻汁が多く出ることで鼻閉や嗅覚障害を来しやすいとされます。気管支喘息との合併が非常に多い点も特徴の1つです。保存的な治療は抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン拮抗薬、ステロイドホルモン薬などが用いられますが、治りにくく手術治療を必要とする場合が多いです。更に、通常の慢性副鼻腔炎と比較するとポリープの再発が多く、再手術が必要になる場合もありますので適切な術後管理を行う必要があります。最近は再発する難治症例にたいして注射で改善させる方法が開発されており当院でも採用していますが、かなり高額な治療になります。本疾患は、重症度が中等症以上の症例は国の難病指定の対象疾患となります。
副鼻腔真菌症
真菌(カビ)が 原因で発症した慢性副鼻腔炎を指します。症状は通常の副鼻腔炎と同様ですが、一般的な抗生物質は効果が低く抗真菌薬も無効なことが多いとされており、手術治療が必要になります。放置した場合は稀ですが周囲の骨を破壊して広がり、視神経を障害して失明してしまうこともあります。更に、免疫が低下した状態だと体中に真菌がめぐり菌血症を引き起こして生命を危険にさらす場合があります。暫定的な診断はCT検査とMRI検査で行うことができますが、最終的には手術で摘出された組織で真菌を証明することが重要となります。
歯性上顎洞炎
齲歯や歯根炎が原因となって発症する副鼻腔炎を指します。治療は、歯科的治療と耳鼻科的治療が必要になります。保存的に改善する場合もありますが、抜歯が必要になることや、耳鼻咽喉科として上顎洞手術が必要になることもあります。必要に応じて近隣の歯科医にご紹介させていただき、共同で治療をおこなう場合があります。
鼻中隔湾曲症
鼻の中の左右を隔てている壁を鼻中隔といいますが、その壁が湾曲している状態を指します。日本人の8割は先天的に湾曲していると言われています。症状は、左右が交互に詰まる左右交代性鼻閉です。治療は手術による矯正しかありません。通常は鼻腔内操作で行いますが、鼻の入り口から湾曲している重症例は矯正術が困難と言われています。当センターでは鼻の先端から切開する方法を導入しており、従来では矯正不能とされていた症例でも十分な矯正が得られております。下記に示すように湾曲が矯正されることで左右の鼻腔が同程度に拡大して鼻呼吸が楽になります。普段から鼻づまりが酷く口呼吸になっている場合や、夜間のいびきなどが気になる場合は診察を受けることをお勧めします。手術は全身麻酔で行っており入院期間は約5日間です(他の操作と組み合わせた場合は7日程度)。鼻中隔彎曲症の術前、術後
鼻骨骨折
スポーツや交通事故などで鼻の付け根にある鼻骨を骨折し、顔貌が変化してしまうことがあります。症状は、鼻出血や鼻閉、嗅覚障害など様々です。受傷から2週間以内であれば鼻内から整復することが可能ですが、それ以上経過すると皮膚を切開して骨切除が必要になる場合があります。当センターでは鼻内からの整復を行う際にエコーを用いて確認しながら行いますので、より正確な整復が行えます。入院は1泊〜数日です。受傷した際には早めに診察を受けて整復の適応を判断することが重要です。
難治性鼻出血症
通常の鼻出血であれば、一般外来で十分対応可能です。脳梗塞や不整脈の治療として抗凝固薬を内服している場合は、なかなか血が止まりにくくなり出血を繰り返す場合があります。適切に粘膜焼灼術を行うことで出血しにくくすることができます。また、Osler病による大量出血に対しては、全身麻酔下の止血術を行う場合があります。Osler病では粘膜皮膚置換術や広範囲鼻粘膜焼灼術などの特殊な手術を行っています。当センターはOsler病の相談施設として登録されています。
鼻涙管閉塞症
鼻涙管は目と鼻をつなぐ管で涙を鼻に通す役割をしています。これが何かしらの理由で閉塞すると、常に眼から涙が流れている状態(流涙)になってしまいます。これまでは眼科的な治療が主でしたが、近年は耳鼻咽喉科が鼻内視鏡下で閉塞部を鼻腔に開放する鼻涙管形成術や涙嚢形成術が行われています。自覚症状がある患者様は当センターもしくは眼科を窓口として受診していただき、両診療科が連携を計り診断させていただきます。鼻内視鏡手術の適応と判断される場合は当センターにて対応させていただきます。かかり付けの眼科を受診し精査目的にご紹介いただいても結構です。
鼻副鼻腔乳頭腫
鼻副鼻腔に発生する良性腫瘍で最も多く、稀に悪性転化して癌になる症例もあり注意が必要です。症状は、初めは慢性副鼻腔炎に似て鼻閉や鼻汁ですが、増大すると鼻出血や鼻の変形などをきたすことがあり、多くは一側性です。鼻の内視鏡検査で腫瘍性病変を確認し、各種画像検査を必要としますが、確定診断は腫瘍からの組織検査となります。内服治療で改善することは無く、通常は手術治療での完全摘出になります。手術は腫瘍の大きさや範囲によって異なり、初期は鼻腔内から内視鏡で摘出しますが、中等症では歯齦部もしくは顔面皮膚を切開して摘出する場合があります。重症となり頭蓋底(脳の方向)まで進展してしまうと開頭手術が必要になる場合もあります。当センターでは中等症までは手術治療を行っていますが、重症の場合は適切な施設にご紹介させていただきます。中等症までの入院期間は1週間〜2週間です。乳頭腫は再発しやすいとされており、退院後も定期的な外来通院が必要になります。
上顎癌
鼻副鼻腔のなかでも上顎洞に発生する癌で、病理組織学的には扁平上皮癌が最も多いとされています。症状は、鼻閉、鼻出血、頬部痛、頬部腫脹、悪臭のある鼻汁と様々です。腫瘍が眼窩や頭蓋内に浸潤すると眼球突出や視力障害を来たし、脳に進展すると髄膜炎などの合併症を引き起こします。治療は、抗がん剤、放射線治療、手術の三者併用療法が一般的です。治療期間は数ヵ月に及ぶこともあります。早期発見・早期治療が重要です。当センターで診断が可能であり、病期の進行度にあわせた治療提案をさせていただくほか、ご希望に応じて適切な施設にご紹介させていただきます。
嗅覚異常
嗅覚障害の原因には中枢性と末梢性があり、その見極めが重要となります。そのために、嗅覚検査やMRIなどの画像検査を行います。中枢性は脳に原因があって障害が起きている状態であり当センターでは対応困難ですので適切な診療科に紹介させていただきます。末梢性は鼻腔の変形や鼻ポリープ(鼻茸)で鼻腔が閉塞することが原因でおきる障害であり、当センターでの治療が可能です。通常は内服薬とステロイド点鼻薬を併用して治療を行います。効果が低い場合には鼻の空間を整える手術をご提案する場合もあります。
新型コロナウイルス感染症の後遺症の場合も当センターにて治療相談を承っております。
睡眠時無呼吸症
寝ているときのひどいイビキと呼吸停止が特徴の疾患です。子供の場合は扁桃肥大が原因となることが多いですが、成人の場合は鼻閉が原因となる場合があります。鼻の通りを改善させることで、いびきが小さくなり無呼吸が減る可能性があります。また、既にCPAP(陽圧呼吸器)をご利用中の患者様であっても、鼻閉によって上手く使用できていない場合には、鼻閉改善手術が有効である場合がありますので、是非一度当センターを受診してご相談ください。