プルサーマル
「プルサーマル」
ってなに?
なぜプルサーマルを進めるの?
プルサーマルはいままでと燃料がどう違うの?
プルサーマルのリスクと安全対策は? いままでと違うの?
プルサーマルについて、
もっと知りたい!
2023.3
この印刷物は環境配慮型印刷システムを採用しています。
2023.3Q A& 1 2原子力発電所で使い終わったウラン燃料
(使用済燃料)
には、
再利用できるプル
トニウムとウランが95〜97%も残っています。そこで、
使用済燃料を使えるも
のと使えないものに分別
(再処理)
して取り出したプルトニウムを利用し、
新しい
燃料(Mモックス
OX燃料)
をつくります。
このリサイクルしてつくったM
モックス
OX燃料を、
現在の原子力発電所で再び使うことを「プルサーマル」
と呼びます。
私たち原子力事業者は、
2030年度までに少なくとも12基の原子炉でプルサーマ
ルの実施を目指し、
最終的には16〜18基の原子炉でプルサーマルの導入を図り
ます。
使用済燃料をリサイクルして原子力発電所で再び使うことです。
しかくM
モックス
OX燃料の形と成分
しかくM
モックス
OX燃料製造の流れ
プルトニウム
4〜9%
プルトニウム1%再利用可能
95〜97% 93〜95% 91〜96%
核分裂
しにくい
ウラン238
核分裂
しにくい
ウラン238
核分裂
しやすい
ウラン2351%核分裂しやすい
ウラン235
3〜5%
核分裂生成物
(核分裂によりできた物質)
3〜5%
核分裂
しにくい
ウランなど
発電前の
ウラン燃料
発電後の
ウラン燃料 MOX燃料
モックス
リサイクル
プルサーマルの基礎・進める理由
プルトニウム
天然には存在しない人工の放射性元素。原子力発電所では運転中
に、
ウラン燃料の中の一部が中性子を吸収して生まれる。ウラン同
様に核分裂するため、
原子力発電所の燃料として使える。
プルサーマル
プルトニウムとサーマルリアク
ター
(現在の原子力発電所)
の二
つの言葉を合わせた造語。
プルサーマルを導入した高浜発電所3,4号機
写真提供:関西電力株式会社
原子力発電所で使い終わったウラン燃料
(使用済燃料)は再処理工場に送り、
再利用できるプルトニウム
とウラン、
再利用できない高レベル放射性廃棄物に分
別します。
次に、
取り出したプルトニウムなどを使って、Mモックス
OX燃
料工場でM
モックス
OX燃料をつくります。
当面はフランスに製造を委託しますが、
現在、
日本原燃(株)でMモックス
OX燃料工場を建設中であり、
日本国内でもMモックス
OX燃料をつくる予定です。
使用済燃料を
リサイクルしてMモックス
OX燃料を製造
原子力発電所
(軽水炉)
使い終わった
ウラン燃料**回収ウランと混合
高レベル放射性廃棄物
プルトニウム
再処理工場
ウラン燃料
MOX燃料
モックス
MOX燃料工場
モックス
ウラン
ウランMモックス
OX燃料ペレット
(例)
(直径約1c×ばつ高さ約1cm)
沸騰水型の原子炉
(BWR)
で使われるタイプMモックス
OX燃料は現在使っているウラン燃料と比べて、
含ま
れるプルトニウムとウランの濃度は異なりますが、
ペレットや燃料集合体の大きさ・形は同じです。
エネルギー基本計画では、
「資源の有効利用」
「高レベル放
射性廃棄物の減容化
・有害度の低減」
の観点から、
使用済
燃料を再処理し、
回収されるプルトニウムなどを有効利用
する原子燃料サイクルの推進を基本方針としています。
石油
・天然ガス・ウランなどのエネルギー資源には限りが
あります。資源に乏しい日本は、
そのほとんどを海外から
の輸入に頼り、
自給率はわずか13.4%
(2021年度)
。先進
国38カ国中2番目に低い水準であり、
エネルギー供給構造
は極めてぜい弱な状況です。日本にとって使い終わった
ウラン燃料をリサイクルしてプルサーマルを進めること
は、
長期的なエネルギー資源の確保のために取り組む必
要があると考えています。
石 油
2019年末
石 炭
2019年末
ウラン
2019年1月
天然ガス
2019年末
132年
1兆696億トン
115年
615万トン
50年
199兆m3
50年
1兆7,339億バーレル
しかく世界のエネルギー資源の確認可採埋蔵量と可採年数
しかく原子燃料サイクルのメリット
しかくOECD諸国の一次エネルギー自給率
(原子力を含む/2020年、
日本は2021年度)
資源に乏しい日本では、
原子燃料サイクルの推進を基本方針としています。
使用済燃料を再処理しない場合、
そのまますべてが
高レベル放射性廃棄物となります。一方プルサー
マルなど、
資源を有効に使うために使用済燃料を再
処理する場合は、
再利用できるプルトニウムとウラ
ン、
再利用できない高レベル放射性廃棄物に分別
します。高レベル放射性廃棄物をガラス固化体に
することで、
直接処分する場合に比べて体積が約4
分の1になります。これにより処分施設の面積を約
2分の1から3分の1に縮小することができます。ま
た、
ガラス固化体からはウランやプルトニウムが除
かれているため、
天然ウラン並の有害度になるまで
の期間が約12分の1に低減されます。
使用済燃料を再処理することで、
高レベル放射性廃棄物を
半分以下に減らすことができます。
確認可採埋蔵量は、
存在が確認され経済的にも生産され得ると推定されるもの。
出典:
「BP Statistical Review of World Energy 2020」, 「Uranium 2020:Resources, Production and Demand」
より作成
出典: IEA
「Energy Balance of OECD Countries 2022」、 日本は資源エネルギー庁
「令和3年度
(2021年度)
エネルギー需給実績
(速報)」を基に作成
参照元:放射性廃棄物小委員会
(2013年度第1回)
参考資料
なぜプルサーマルを進めるの?Q100500
(%) 1位ルクセンブルク日本ドイツフランスイギリスアメリカノルウェー759.3%5位106.0%
10位
76.0%
19位
54.9%
26位
34.7%
13.4%8.8%再処理することで、
ウラン・プルトニウムを
資源として再利用できる。
天然ウラン並みの有害度*になるまでの
期間が約12分の1に低減する。
再処理した場合
オーバーパックに入った
ガラス固化体:0.91m3
直接処分した場合
【直接処分】約10万年
【再処理】約8千年
直接処分に比べ処分施設の面積が
約1/2〜1/3になる。
メリット1
メリット2
メリット3
直接処分に比べ高レベル放射性
廃棄物の体積が約4分の1になる。
*人が体内に放射性物質を直接
取り込んだと仮定した潜在的な有害度
4.76m
1.032m
0.82m
1.73m
キャニスターに入った
使用済燃料:3.98m3Mモックス
OX燃料
プルトニウムとウランを混合
してつくった混合酸化物燃料
「Mixed Oxide Fuel」
の略語。
「プルサーマル」
ってなに?Q M
モックス
OX燃料は、
ウラン燃料に比べて放射線を出す能力
(放射能)
が強いので、
原子力発電所でM
モックス
OX燃料を取り
扱う時には、
従業員はもとより周辺環境に放射線の影
響がおよばないように安全対策を行います。1Mモックス
OX燃料を輸送する時は、
遮へい対策をした専用容
器を使う。
2原子力発電所内では、
従業員がM
モックス
OX燃料を取り扱う
場合に、
遮へい対策をした専用装置で遠隔操作を行
うことや、
放射線を通しにくい水中にM
モックス
OX燃料を入
れて保管するなどの対策を行う。
3使用済M
モックス
OX燃料は、
使用済ウラン燃料と同様に水中
で保管する。
制御棒は、
原子炉内で核分裂を停止・制御するための主
要な装置で、
車のブレーキとアクセルのような役割を持
っています。プルサーマルを行うと、Mモックス
OX燃料の特性
により、
制御棒が原子炉を停止・制御する能力が若干落
ちます。
しかし、
制御棒の能力はもともと十分な余裕を持った設
計をしています。また、Mモックス
OX燃料とウラン燃料の配置な
どを工夫することで、
いままでと同じ程度に原子炉を停
止・制御できます。したがって、
制御棒は現在使ってい
るものをそのまま使用しても、
安全上問題となることは
ありません。Mモックス
OX燃料が溶け出す温度
(融点)
は約2,720°Cで、
ウラン
燃料が溶け出す温度である約2,790°Cよりも約70°C低い
という特性があります。しかし、
原子力発電所で運転中のMモックス
OX燃料の温度は通常時で約1,770°Cで、
万が一異常
な運転をした場合でも、
約2,320°Cと想定されています。
つまり、
運転中のM
モックス
OX燃料の温度は融点よりも低いので、
安全上問題となることはありません。
制御棒の能力には十分な余裕があります。Mモックス
OX燃料は融点が低いという特性がありますが、
いままでと同様に、
安全上問題となることはありません。
若干の差
原子炉を止める
ために実際に
必要な能力
ウラン燃料
のみにおける
制御棒の能力
プルサ−マル
における
制御棒の能力
十分な
余裕
しかく制御棒が原子炉を止める能力
(イメージ)
しかく新燃料から出る放射線の量
(例)
しかく原子力発電におけるウラン燃料の変化
しかくウランとプルトニウムの発電割合
(例)
表面線量率
燃料の種類Mモックス
OX燃料
ウラン燃料
約2.2
(mSv/h)
約0.03
(mSv/h)Mモックス
OX燃料の方が
放射線の量が多い
mSv/h
(ミリシーベルト毎時):放射線により、
身体が受けた影響を表す単位
プルサーマルの特長・安全対策3 4平成13年版原子力安全白書より作成Mモックス
OX燃料を取り扱う時には、
従業員はもとより周辺環境に
放射線の影響がおよばないように、
安全対策を行います。Mモックス
OX燃料を
使っても制御性は
同程度
ウラン燃料のみを使用した原子力発電所では、
プルトニウ
ムが発電の途中で生まれ、
発電量の約3〜4割はプルトニ
ウムによるものです。プルサーマルでは、
燃料全体のうち
の3分の1程度*を、
プルトニウムを含むM
モックス
OX燃料に替え
て使うことで、
プルトニウムの発電量の割合は約5〜6割
になります。また、
プルサーマルを行うために原子力発電
所は特別な設備変更などを行うことなく、
現在の設備をそ
のまま利用できます。
燃料全体のうちの3分の1程度までをM
モックス
OX燃料に替えて使います。
*国の旧原子力安全委員会において、Mモックス
OX燃料の割合が3分の1程度までであれば、
ウラン燃料のみを使用した場合と同様に扱えることが確認されています。
減速された中性子
核分裂しやすい
核分裂しやすい
核分裂しやすい
核分裂しにくい
減速された
中性子
新しくプルトニウムができる
中性子
熱エネルギー
ウラン235ウラン235ウラン238プルトニウム239中性子
熱エネルギー
中性子
熱エネルギー
ウラン燃料のみを
使用する原子炉
プルトニウムはすでに発電の役に立っています。
プルサーマルの原子炉
(MOX燃料を1/3程度使用する場合)
モックス
ウラン70%ウラン50%プルトニウム50%プルトニウム30%プルサーマルを導入する場合、
通常の原子力発
電所は3分の1程度までをM
モックス
OX燃料に替えます
が、
建設中の電源開発
(株)
大間原子力発電所
は、
制御棒の能力を向上させるなどして、
すべ
ての燃料をM
モックス
OX燃料とする発電を目指してい
ます。
プルサーマルは
いままでと燃料がどう違うの?
プルサーマルのリスクと
安全対策は?いままでと違うの?Q Q しかく各国の軽水炉におけるM
モックス
OX燃料の累積使用実績
(装荷体数)
国の試算では、
使用済燃料を再処理し、
高レベル放射性
廃棄物を処分するためにかかる費用、
すなわち原子燃料
サイクルの費用は1.7円/キロワット時となっています。
原子力の発電コスト11.5円〜/キロワット時に占める割
合は、
約15%と小さいため、
発電コストへの影響はわず
かです。また、
電気料金は原子力発電のコストだけでな
く、
他電源の発電コスト、
送電・配電コスト、
営業コスト
などの全体で決まるため、
電気料金への影響はさらに小
さくなります。
使用済燃料から回収されたプルトニウムには、
核分裂し
やすいプルトニウムの割合が約6割程度しか含まれてい
ないことから、
核分裂しやすいプルトニウムを9割以上必
要とする核兵器に転用することは技術的に困難です。
なお、
原子力の平和利用などを目的に設立された国際原
子力機関
(IAEA)
では、
各国の原子力施設にある放射性物
質が核兵器に転用されていないかを監視する活動
(国際
保障措置)
を行っています。
日本は、
すべての原子力施設で国際保障措置を受け入れ、
日本原燃
(株)
の六ヶ所再処理工場では、
IAEAおよび国の
査察官が常駐しています。日本で取り出されたプルトニ
ウムはIAEAおよび国の査察官による厳格な監視下にあ
り、
核兵器に転用されることはありません。
電気料金は高くならないの?
プルトニウムは核兵器に
転用されないの?
プルサーマルを実施しても、
電気料金への影響はわずかです。
原子力発電所からできる
プルトニウムを核兵器に
転用することは技術的に困難です。
海外では行われているの?
プルサーマルは
海外でも実績があります。
プルサーマルは1960年代から、
フランス・ドイツ
・スイスなどの原子力発電所で行
われてきました。2019年11月現在、
フラ
ンス・ドイツ
・スイス
・オランダが継続し
て実施しています。日本では1986年から
1991年の間に、
日本原子力発電(株)敦賀
発電所1号機と関西電力(株)美浜発電所1
号機の2カ所で、
合計6体のM
モックス
OX燃料を使
用した実績があります。また、2009年12
月以降、
九州電力
(株)
玄海原子力発電所
3号機で36体、
四国電力
(株)
伊方発電所3
号機で21体、
関西電力
(株)
高浜発電所3号
機で28体、
高浜発電所4号機で20体、東京電力HD
(株)
福島第一原子力発電所3号機*
で32体のM
モックス
OX燃料を使用した実績が
あります。
出典:日本原子力産業協会
「世界の原子力発電の動向 2022年度版」050012148 8
1,000
1,500
2,000
2,500
3,500
3,500
3,000
2,474280合計6,449体
(2022年1月1日時点)フランスドイツスイス日本オランダアメリカ
プルサーマルは
海外で豊富な
実績がある
プルサーマルをもっと知る5 6国は
「資源の有効利用、
高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、
使用済燃料を再処理し、
回収さ
れるプルトニウム等を有効利用する」
ことを基本方針とし
ています。
使用済M
モックス
OX燃料の再処理は、
これまでに国内では日本原
子力研究開発機構の東海再処理施設で、
海外ではフラン
スのラ
・アーグ再処理工場などで再処理された実績があ
り、
技術的にはリサイクル可能です。
使い終わったM
モックス
OX燃料は? 技術的にはリサイクル可能です。
しかく原子力発電コストに占める原子燃料サイクルの費用
(注)
使用済燃料の全量を適切な期間貯蔵しつつ再処理していく場合。 稼動年数40年、
設備利用率70%、
割引率3%。
各項目の比率は、
四捨五入により合計が100にはならない。
出典:2021年8月発電コスト検証ワーキンググループ
「発電コスト検証に関する取りまとめ
(案)」資本費
3.3円/キロワット時(29%)
運転維持費
3.3円/キロワット時(29%)
フロントエンド*1
1.0円/キロワット時(9%)
バックエンド*2
0.7円/キロワット時(6%)
その他*3
3.2円〜/キロワット時(28%)
原子燃料サイクルの費用(1.7円)
原子力発電コスト
11.5円〜/
キロワット時
*1 ウラン燃料、Mモックス
OX燃料などの燃料費
*2 再処理、
中間貯蔵、
高レベル放射性廃棄物処分など
*3 追加的安全対策費、
政策経費、
事故リスク対応費用
*2012年4月19日廃止
プルサーマルについて、
もっと知りたい!

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