廃止措置ってなに?............... P.1-2
安全に、
丁寧に... .................. P.3-4
段階的に進める..................... P.5-6
廃止措置にも歴史あり............ P.7-8
廃止措置Q&A.................. P.9-10
CONTENTS
この印刷物は環境配慮型印刷システムを採用しています。
2023.3
原子力発電所の
廃 止 措 置
発電を終えた原子力発電所から、
施設を解体するなどして放射性物質を取り除く
(注記)本パンフレットは、
通常の廃止措置を対象にしています。
原子力発電所の基数の表示を除き、
福島第一原子力発電所の
廃止措置にかかわる内容は含んでおりません。 1 2廃止措置ってなに?
日本にも廃止措置中の原子力発電所があります
発電を終えた原子力発電 所から、
施設を解体するなどして 放射性物質を取り除くことです。
1966年に日本初の商業用原子力発電所が運転を開始してから約50年。原子力発電所も、
いつかは役目を
終える日が来ます。
「発電を終えた原子力発電所から、
施設を解体するなどして放射性物質を取り除くこと」
を、
廃止措置といいます。2023年現在、
全国にある57基の原子力発電所のうち18基が廃止措置中です。
北海道電力
(株)
泊発電所
東北電力
(株)
女川原子力発電所
東京電力ホールディングス
(株)
福島第一原子力発電所
東京電力ホールディングス
(株)
福島第二原子力発電所
日本原子力発電
(株)
東海第二発電所
日本原子力発電
(株)
東海発電所
中部電力
(株)
浜岡原子力発電所
四国電力
(株)
伊方発電所
東京電力ホールディングス
(株)
柏崎刈羽原子力発電所
北陸電力
(株)
志賀原子力発電所
日本原子力発電
(株)
敦賀発電所
関西電力
(株)
美浜発電所
関西電力
(株)
大飯発電所
関西電力
(株)
高浜発電所
中国電力
(株)
島根原子力発電所
九州電力
(株)
玄海原子力発電所
九州電力
(株)
川内原子力発電所
停止中
審査中
許可
未申請
稼働中
東北電力
(株)
東通原子力発電所
廃止決定
廃止措置中
日本初の商業用原子力発電所である東海発電所
(黒鉛減速炭酸ガス冷却炉型原子炉:出力16.6万キ
ロワット)
は、
1998年に発電を終了
しま
した。
2001年3月に使用済燃
料の搬出を完了し、
同年
12月に解体届
(現在の
廃止措置計画に相当)
を提出し
て、
廃止措置を
進めています。
浜岡原子力発電所1,2号機
(沸騰水型原
子炉:1号出力54万キロワット、
2号出力
84万キロワット)
は、
2009年1月に発電を
終了し、
同年11月に廃止措置計画が認可
されました。
この計画に基づき、
1,2号機か
ら全ての燃料の搬出を完了するなど、
廃止
措置を進めています。1 21 2
3 4 5 6 7
1 2 1 321112 31 2 3
1 2 3 43 43 4 51 21 221 231 221
2 3 413 4
1 2 3 45 6しかく日本の原子力発電所の運転・廃止措置状況 (商業用
・2023年2月末時点)
廃止措置を安全に行うためのルールがあります
廃止措置を安全に行うため、
原子力事業者はまず最初に廃止措置の計画をつくり、
国の原子力規制委員会
の認可を受ける必要があります。また、
計画を変更する時にも認可を受けなければなりません。原子力規
制委員会による廃止措置終了確認までの間、
原子力事業者は規制に基づき適切に作業を進めていきます。原子力規制検査運転終了安全規制の流れ(主なもの)廃 止 措 置 の 実 施 手 順
廃止措置計画の認可
併行して、
原子炉領域以外の
除染を行いつつ、
順次解体撤去
廃止措置終了確認
跡地利用
原子炉領域の安全貯蔵
原子炉領域の解体撤去
原子炉設置許可
設計および工事計画認可
廃止措置計画認可
保安規定変更認可
廃止措置終了確認
保安規定認可
設計・建設段階
運転段階
廃止措置段階廃止措置
解体撤去作業時の放射線
量や放射性廃棄物の低減
のため、
5〜10年程度放射
能を減衰させる。
安全貯蔵期間を経て、
放射
能が減衰したところで実施。
しかく廃止措置中の安全確保の考え方
しかく廃止措置段階の安全規制
出典:原子力規制委員会ホームページを基に作成
原子炉の運転中に安全確保のために要求される主な機能が
「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」
であるのに対し、
廃止措置段階においては、
施設内の放射性物質の
「閉じ込め」
や放射線の遮へいが安全確保のため要求される主
な機能となります。
具体的には、 (1)
解体中における保安のために必要な原子炉施設の適切な維持管理の方法 (2)
一般公衆および放射線業務従事者の放射線被ばくの低減策 (3)
放射性廃棄物の処理などの方法
を中心に、
廃止措置工事中の安全確保に努めています。 3 4黒鉛減速・炭酸ガス冷却型原子炉
(GCR)
東海発電所
沸騰水型原子炉
(BWR)
浜岡原子力発電所1,2号機
加圧水型原子炉
(PWR)
美浜発電所1,2号機
10年目
5年目 15年目 20年目 25年目 30年目
解体準備期間
解体工事
準備期間
原子炉領域周辺
設備解体撤去期間
原子炉領域
解体撤去期間
建屋など
解体撤去期間
原子炉周辺設備解体撤去期間
原子炉領域以外の解体撤去
原子炉領域解体撤去
原子炉領域
解体撤去期間
建屋など
解体撤去期間
建屋など
解体撤去
燃料の搬出
建屋などの解体
周辺設備の解体
原子炉などの解体
▼廃止決定/廃止措置計画認可
▼廃止措置
終了確認
自然界における
放射性物質の量
廃 止 措 置 期 間
発 電 期 間放射性物質の量運転中
廃止措置中
安全に、
丁寧に
廃止措置の工程は、
30年程度の長期にわたります
ルールに基づき、
丁寧に解体を進めていきます
廃止措置中、
放射性物質の量は大幅に減っていきます
廃止措置はルールを守り ながら、
安全かつ丁寧に進めていきます。
原子力規制委員会から認可された計画に基づき、
原子力発電所から放射性物質
(使用済燃料や、
汚染され
た施設)
を、
安全に配慮して丁寧に取り除いていきます。商業用原子力発電所としては、
日本原子力発電
(株)
東海発電所および中部電力
(株)
浜岡原子力発電所1,2号機などが廃止措置に入っています。
廃止措置では使用済燃料の搬出のほか、
放射性物質は時間とともに放射線を出す能力が徐々に減る性質を
利用して時間を置いてその量を減らしたり
(安全貯蔵)、放射性物質を先に取り除いたり
(汚染の除去)
して
国の規制に基づいて解体を進め、
丁寧に放射性物質を取り除いていきます。
使用済燃料を搬出することで、
原子力発電所内の放射性物質は大幅に少なくなります。放射性物質の量
が多い原子炉や、
その周囲の施設を解体することで、
さらに低減します。その後、
放射性物質の量は自然
界と同じくらいになり、
廃止措置終了に向けた作業ができるようになります。
IAEA safety assessment for decommissioning annex I, Part A "Safety Assessment for Decommissioning of Nuclear Power Plant"を基に作成
日本原子力発電
(株)、中部電力
(株)、関西電力
(株)
ホームページを基に作成
(注記)1 安全貯蔵中に周辺設備解体を行わないケースもある (注記)2 廃止措置終了確認までに、
核燃料物質の 譲 渡し、
核燃料物質によって汚染された物の廃棄を行う廃止措置計画認可廃止措置終了確認
燃料の搬出、
安全貯蔵、
汚染の除去、
周辺設備の解体を行う(注記)1
解体範囲
放射性物質の量が多い原子炉などの 解体を行う 有意な汚染を取り除いた後、
建屋などの解体を行う(注記)2
ゆずりわた
[沸騰水型原子炉
(BWR)
の廃止措置の主な手順]
しかく廃止措置中の発電所における廃止措置の工程
(計画)
の例 5 6段階的に進める
燃料の搬出
汚染されていない設備の解体
汚染の調査
汚染された設備の解体
廃棄物は、
できる限りリサイクルへ
現 在 、
廃 止 措 置中の原 子力発電所では、
段階を踏んで安全に進めているところです。
放射性物質によって汚染された設備を解体する場合は、
作業を行う前
に汚染の状況を調べ、
その程度に応じた安全確保の対策を講じて丁寧
に作業を行います
(P.9 Q2参照)
。解体で発生する放射性廃棄物のう
ち、
人の健康への影響がほとんどないレベル
(クリアランスレベル)以下の物は、
クリアランス制度
(P.10 Q4参照)
に基づいて測定し、
国の確
認を経て、
資源としてできる限りリサイクルをしていきます。
作業のリスクを減らすため、
廃止措置では、
放射性物質の量が最も多い使用済燃料を早めに運び出します。 屋外の電気設備など汚染されていない設備の解体も進めていきます。
作業前に汚染の状況を
調べます。
燃料の搬出を行う
汚染された周辺設備の解体を行う
汚染されていない
周辺設備の解体を行う
クリアランスレベル以下であることを
確認し、
できる限りリサイクルします。
放射性廃棄物は廃棄する必要がありますが、
処分方法については国で規制整備などが
進められています。
P.10 Q3
参照
放射性物質によって汚染された設備を解体します。
<東海発電所の汚染された設備解体の例>
汚染された設備
(写真はフィルタ)
を撤去 撤去した物
(写真はフィルタ)
を細断
配管の汚染の状況を確認
汚染されていない設備の例:主変圧器
撤去した物
(写真はフィルタ切断片)
を吊り出し
解体作業の完了
(写真は撤去後の給水ポンプ室) リサイクルの例
(ベンチ)
装置で測定
写真提供:中部電力
(株)、日本原子力発電
(株)
輸送専用容器
(キャスク)
による搬出 燃料集合体
廃止措置終了 18基
187基
205基
合 計
廃止措置中
(廃止決定を含む)
(注記)2023年2月末現在
商業用以外の研究炉
(JPDRやふげん、
もんじゅ)
を含めた基数
イギリス
ベルギー 336 71062111414323 271 2614 2743 4
フランス
スペイン
スイス
ドイツ
イタリア
スロバキア ブルガリア
スウェーデンリトアニア
オランダ
カザフスタン
アルメニア1パキスタン
ウクライナ
ロシア2韓国3台湾
日本
カナダ
アメリカ7 8廃止措置にも歴史あり
日本では長年にわたり、
廃止措置の技術開発を重ねてきました 廃止措置は世界各地で進められています
海外では商業用原子力発電所でも、
廃止措置を安全に終えた実績があります
日本では長年にわたり、
廃止措置の技術開発の歴史を積み重ねてきました。
海外では安全に終了した 実績がいくつもあります。
日本では国や研究機関、
民間企業が協力して、
廃止措置の技術開発を進めてきました。その多くの知見と経
験を踏まえ、
廃止措置の基本となる技術の蓄積を続けています。
廃止措置は世界各地の200基を超える原子力発電所で進められています。日本のJPDRを含む計18
基では、
すでに廃止措置を終了しました。
海外では商業用原子力発電所で
も、
技術面・安全面いずれにおい
ても特に問題なく、
廃止措置を
終了したと報告されています。
それら海外の実績などを踏まえ、
日本における
「廃止措置終了確
認」
に関する具体的な基準や方
法について、
国で検討が進めら
れているところです。
茨城県東海村の動力試験炉 JPDR
(Japan Power Demonstration Reactor) しかく世界の廃止措置状況旧(財)
原子力発電技術機構(注記) NUPEC
(Nuclear Power Engineering Corporation)
動力試験炉
(JPDR)
は、
かつて日本原子力研究所
(現 日本原子力研究開発機構)
が建設し運転した、
日本初
の発電用原子炉です。日本では、
将来の商業用原子力発電所の廃止措置に備え、
1981年からJPDRで解
体技術の総合的な研究開発を行い、
1996年に廃止措置を終了しました。JPDRの試験的な廃止措置を通
して培った、
原子炉施設のさまざまな設備や構造物の解体経験が今に生かされています。
NUPECでは、
遠隔操作による原子炉解体の技術開発を1996年から進
め、
実物大の原子炉模擬体を使った試験を行うなどして、
知見と経験を
積み重ねてきました。
これらの成果は、
現在廃止措置を行っている東海発電所の原子炉解体方
法などの検討に生かされています。
(注記)廃止措置の事業は、
(一財)
エネルギー総合工学研究所へ継承されています。
廃止措置前
原子炉本体解体試験装置
廃止措置後
アメリカ・メインヤンキー原子力発電所:廃止措置前
廃止措置後
原子炉の解体 周辺設備の解体
原子炉の周囲にある
施設の解体
建屋の解体
写真提供:JAEA
(日本原子力研究開発機構)IAEA(国際原子力機関)
ホームページを基に作成
出典:
総合資源エネルギー調査会
廃止措置安全小委
「廃止措置の終了の確認に係る基本的考え方
(中間とりまとめ)」写真提供:旧
(財)
原子力発電技術機構
(NUPEC)
【廃止措置を終了した原子力発電所】
アメリカ エリクリバー、
シッピングポート、
ショーハム、
フォート・セント・ブレイン、
トロージャン、
メインヤンキー、
サクストン、
ビックロックポイント、
パスファインダー、
ヤンキー・
ロー、
ハダムネック、
キャロライナ、
ランチョセコ-1、
ハンボルト・ベイ
ドイツ ニーダアイヒバッハ、
グロスベルツハイム、
カール
日 本 動力試験炉
(JPDR)
放射線を受けた量
(ミリシーベルト)10.01
0.001 0.001未満 原子力発電所からの放出実績
(年間)
0.06 胸のエックス線集団検診
(1回)
0.01 歯のエックス線撮影
(1回)
0.05 原子力発電所周辺の線量目標値
(年間)
東京〜ニューヨーク航空機旅行
(往復)
0.1〜0.2
クリアランスレベル(注記)
0.01
(年間)
1人当たりの自然放射線
(年間) 2.1(日本平均)
1.0 一般公衆に対する制限
(医療は除く)
(年間)0.1(注記)自然界の放射線レベルと比較して
十分小さく、
安全上放射性物質として
扱う必要のない放射線の量。9 10廃止措置Q&A
放射性廃棄物はどうするの?
クリアランス制度ってなに?
一般の建物の解体と、
なにが違うの?
廃止措置についての疑問 にお答えします。
日本では沸騰水型原子炉
(BWR)
と、
加圧水型原子炉
(PWR)
が運転しています。どちらも
「ウラ
ンを核分裂させた熱で水を沸かし、
その蒸気の力でタービンを回して電気をつくる」
共通点があ
ります。原子炉の大きさ、
運転中の圧力、
タービンが汚染しているかどうかなどの違いはありま
すが、
廃止措置の手順に大きな違いはありません。
廃止措置に入り、
使用済燃料を搬出した原子力発電所を解体すると廃棄物が発生しますが、
その大
部分は
「放射性廃棄物でない廃棄物」
と、
「放射性物質が少なく、
放射性廃棄物として扱う必要のな
いもの
(クリアランス物)」で、
資源の有効利用の観点からできる限りリサイクルしていきます。
一部の放射性廃棄物
(低レベル放射性廃棄物)
は廃棄する必要がありますが、
その放射性物質の量
の区分に応じた処分について、
国で規制整備が進められています。
クリアランス制度とは、
放射性廃棄物のうち、
放射性物質が少なく、
人の健康への影響がほとんどな
いレベルのものについて、
国の認可・確認を得て、
一般の廃棄物として再利用または処分できる制度
で、
2005年に法制化されました。
クリアランス制度における基準
(クリアランスレベル)
は、
私たちが自然界から受ける放射線量の1/100
以下
(年間0.01ミリシーベルト)
となるよう法律で定められています。これは仮に複数の影響が重なっ
た場合でも、
人の健康への影響を無視することができるレベルだと国際的に認められています。
原子力発電所の廃止措置では、
放射性物質によって汚染された施設に対して安全を確保するため、
汚染の程度に応じて、
さまざまな対策を講じて工事を実施します。
そのため一般的な建物の解体に比べ、
より丁寧な作業が必要になり、
そのぶん時間がかかります。
詳しくは
「放射性廃棄物 Q&A」
のパンフレットをご覧ください
クリアランス物 約5%
放射性廃棄物でない
廃棄物
約93%
発電を終えた商業用原子力発電所の廃棄物割合の例 低レベル放射性廃棄物の処分概念
低レベル
放射性廃棄物
約2%0m70m
中深度処分
ピット処分
トレンチ処分低高放射能レベル
原子炉の違いで、
手順は変わるの?
Q1 Q3Q2Q4
解体範囲
(注記)1 安全貯蔵中に周辺設備解体を行わないケースもある
(注記)2 廃止措置終了確認までに、
核燃料物質の 譲 渡し、
核燃料物質によって汚染された物の廃棄を行う
ゆずりわた廃止措置計画認可廃止措置終了確認
燃料の搬出、
安全貯蔵、
汚染の
除去、
周辺設備の解体を行う(注記)1
放射性物質の量が多い原子炉
などの解体を行う
有意な汚染を取り除いた後、
建屋等の解体を行う(注記)2
しかく加圧水型原子炉
(PWR)
の廃止措置の主な手順
しかく放射線を受ける量の比較
・放射性物質の飛散の少ない解体方法
・汚染拡大防止囲いの設置
拡散および漏えい防止対策
・放射性物質からの放射線に対する遮へいの設置
・遠隔操作による解体技術の採用
・汚染の除去
被ばく低減対策
・建屋の持つ放射性物質を閉じ込める機能が
損なわれないようにする
事故防止対策
安全確保対策の項目 講じる対策の例
出典:旧原子力安全・保安院
「原子力施設におけるクリアランス制度の整備について」
出典:UNSCEAR 2008 report、
(公財)原子力安全研究協会
「生活環境放射線
(国民線量の算定)
第3版」
ほかを基に作成

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