消防団を中核とした地域防災力の充実強化
の在り方に関する中間答申
平成26年7月3日
消 防 審 議 会
平成26年2月13日付けで諮問のあった「消防団を中核とした地域防災力
の充実強化の在り方」について、別紙のとおり中間答申する。
平成26年7月3日
消防審議会会長 室 﨑 益 輝
消防庁長官 大 石 利 雄 殿
(別紙)
消防団を中核とした地域防災力の充実強化の在り方に関
する中間答申
目 次
はじめに
第1 地域防災力を取り巻く現状
第2 消防団等の充実強化のために早急に取り組むべき事項
1 被用者の消防団への加入の促進
2 地域における消防団活動に対する理解の促進
3 若者の消防団への加入の促進等
4 女性及びシニア世代の消防団への加入の促進等
5 消防団員の処遇の改善等
6 消防団の装備の改善
7 消防団員の教育訓練の改善
8 地域防災力の充実強化に関する国民運動の展開1 はじめに
昨年平成25年は、消防団120年、自治体消防65周年という、我が国の
消防にとって節目となる年であった。この節目の年に成立した正に消防団等に
とっての画期となる法律が、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関
する法律」(平成25年法律第110号。以下「消防団等充実強化法」という。)であ
る。消防団等充実強化法の成立を受け、消防庁では平成25年12月24日に
「消防団充実強化対策本部」を立ち上げ、消防団の充実強化を強力に推進する
体制がとられており、消防庁や各地方公共団体において、消防団の充実強化を
始めとする地域防災力の充実強化のための取組が進められているところである。
第27次消防審議会は、平成26年1月に発足し、同年2月13日に、消防
庁長官から、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化の在り方」について
諮問を受け、消防団等充実強化法の成立を踏まえた消防団の強化の在り方及び
地域防災力の強化の進め方について、これまで3回の調査審議を行ってきた。
調査審議においては、消防団の強化の在り方に関する議論のほか、社会経済情
勢の変化を踏まえた今後の消防団の在り方、消防団と常備消防や自主防災組織
等の他の主体との連携・役割分担を始めとする総合的な地域における防災体制
の強化の必要性等、幅広い議論を行っているところである。
その中で、当審議会としては、消防団への加入の促進を始めとする消防団の
基盤の強化のうち取組が特に急がれる事項を中心として、一定の結論が得られ
た内容を中間答申として取りまとめることとした。
その結果として、ここに中間答申を行うものであり、当審議会としては、最
終答申に向け、調査審議を続けていく所存である。2 第1 地域防災力を取り巻く現状
「地域防災力」とは、消防団等充実強化法において、「住民一人一人が自ら
行う防災活動、自主防災組織(中略)、消防団、水防団その他の地域における
多様な主体が行う防災活動並びに地方公共団体、国及びその他の公共機関が行
う防災活動の適切な役割分担及び相互の連携協力によって確保される地域にお
ける総合的な防災の体制及びその能力をいう」と定義されている(第2条)。
消防団等充実強化法において、地域防災力の中核を担うのが消防団であると
されており、「要員動員力、即時対応力、地域密着性」を有する消防団が地域
の安心・安全を確保するために果たす役割は極めて大きいものである。一方、
社会経済情勢の変化を受け、消防団員の数は、平成2年には100万人を割り、
平成26年4月1日現在、864,633人(速報値)と、年々減少を続けて
いる状況にあるが、対前年減少幅(しろさんかく4,239人)は平成25年(しろさんかく5,321
人)に比べ小さくなっている。
また、特に南海トラフ地震や首都直下地震を始めとした大規模災害に対応す
るためには、地域防災力の充実強化は、公助だけでなく、自助・共助とのバラ
ンスを取りつつ総合的に進めていくことが必要である。この点で、自主防災組
織・女性防火クラブ・少年消防クラブといった地域の自主防災活動を担う組織
の役割も重要である。自主防災組織は、平成25年4月1日現在、約15万3,
600の組織が設置されており、その数は増加傾向にある。一方、女性防火ク
ラブは、平成25年4月1日現在、9,554クラブ(構成員約143万人)、
少年消防クラブは、同年5月1日現在、4,587クラブ(構成員約42万人)
設置されているが、その数は減少傾向にある。
消防団等充実強化法第3条の基本理念にもうたわれているように、消防団を
中核としつつ防災に関する多様な主体が適切に役割分担をしながら相互に連携
協力する体制を構築していくことが重要であり、このことは安心・安全な社会
を確保するための土台となるものである。3 第2 消防団等の充実強化のために早急に取り組むべき事項
消防団等充実強化法の成立を踏まえ、国及び各地方公共団体その他の関係主
体は、消防団への加入の促進、消防団員の処遇の改善、消防団の装備の改善及
び消防団員の教育訓練の改善により消防団の強化を図るとともに、地域におけ
る防災体制の強化を図ることにより、消防団を中核とした地域防災力の充実強
化に総合的・計画的に取り組むべきである。
1 被用者の消防団への加入の促進
消防団員全体に占める被用者団員の割合は、平成25年4月1日現在で71.
9%となっており、大きな割合を占めている。人口当たりの消防団員数が少な
い傾向にある都市部を中心に、被用者の割合の増加が今後も進展することが見
込まれることを踏まえ、被用者の消防団への加入の促進に特に力を入れていく
ことが必要である。
(1) 事業者の消防団活動に対する理解の促進
被用者の消防団への加入の促進に当たっては、消防団員が被用者として所属
する事業者の理解が不可欠であることから、消防団活動に協力する事業所等に
表示証を交付してその貢献を社会的に評価することにより消防団と事業所等と
の連携協力体制を一層強化することを目的として、「消防団協力事業所表示制
度」が平成18年度から設けられている。同制度は、平成26年4月1日現在
で1,046(約61%)の市町村が既に導入しているが、全市町村において
導入される必要があり、未だに同制度を導入していない約670の市町村に対
し、速やかに同制度を導入するよう徹底すべきである。
また、消防団協力事業所の増加のためには、消防団協力事業所に対して効果
的なメリットを用意することが必要である。このため、長野県及び静岡県にお
いて一定の要件を満たす消防団協力事業所に対し事業税額の2分の1(限度額
10万円)を減税する措置が実施されているが、国においては、当該措置を全
国に普及させるとともに、当該措置に係る財源措置等の支援策の検討を行うべ
きである。また、入札において事業者の消防団活動への協力を積極的に評価す4 る地方公共団体の取組についても、一層の普及を図るべきである。あわせて、
消防団協力事業所となった事業所等を消防団に関する広報の中で紹介する等の
取組も有効であると考えられる。
(2) 勤務地における被用者の消防団への加入の促進等
被用者については、特に都市部においては居住地と勤務地が大きく離れてい
る場合が多いことを踏まえ、相当の時間を過ごす勤務地における加入の促進を
図る必要がある。このため、現在条例上又は運用上在勤者の入団を認めていな
い市町村に対し、早急にその入団を認めるよう働きかけを行うべきである。
また、事業者が設置する自衛消防組織が既に7,122件(平成25年3月3
1日現在)の防災管理対象物において設置される状況となっていることを踏ま
え、自衛消防組織の要員の経験を有する被用者に対し、勤務地における機能別
団員(特定の活動・役割のみに参加する消防団員)として加入を促進するとともに、
自衛消防組織や水防団等の防災に関する組織の構成員により、大規模災害時等
にその本来業務に支障が生じない範囲で活動する機能別分団を組織することを
推進すべきである。
(3) 公務員等の消防団への加入の促進
公務員等の消防団への加入の促進については、現在特に地方公務員や日本郵
政グループ職員について加入促進を図ってきているところである。
そのような中で、公務員については、消防団等充実強化法において、消防団
員との兼職に関する特例が設けられ(第10条)、特に消防団への加入の促進
のために具体的な法制上の手当がなされたところである。
このような消防団等充実強化法の趣旨を踏まえ、国及び地方公共団体におい
て、大規模災害時の職員の参集体制の確保等にも配慮しつつ、公務員の消防団
への加入の促進を図ることが必要である。
また、特に地方公務員や日本郵政グループ職員については、引き続き加入促
進に努力すべきである。5 2 地域における消防団活動に対する理解の促進
消防団への加入の促進に当たっては、事業者の理解に加え、広く地域におけ
る消防団活動に対する理解を促進することが重要となる。
(1) 広報啓発活動の充実
地域における消防団活動に対する理解の促進に関し、まずは、「消防団が将
来にわたり地域防災力の中核として欠くことのできない代替性のない存在であ
る」(消防団等充実強化法第8条)という認識に立って消防団等充実強化法が制定
された趣旨も踏まえ、消防団活動の重要性に対する理解を促進することが必要
である。
このため、スマートフォンのアプリケーションの活用、消防団への入団を検
討している者がウェブ上で居住地や勤務地の消防団に関する情報を容易に検索
できるシステムの構築といった新たな手法の活用や、消防関係団体が情報誌
(紙)等により行う広報啓発活動の支援等、幅広い国民に向けた広報啓発活動
の更なる充実が必要である。
また、消防団協力事業所の増加に加え、地域における防災活動の担い手づく
りのための教育訓練において消防団員が指導的な役割を担うことや、平素から
消防団員一人一人が消防団の広報を担っているという意識で臨むなど、住民一
人一人が日々の生活の中で消防団に身近に触れる機会を増やすことが重要であ
る。
(2) 地域ぐるみでの消防団員に対する支援
消防団への加入の促進に当たっては、消防団員及びその家族に、消防団活動
が地域全体から応援・感謝されているということが感じられ、誇りを持っても
らえるようにすることが重要であり、中でも消防団活動を行うことに対する具
体的なメリットを感じてもらえるような取組が有効である。
このため、事業所の協力を得て消防団員に対する優遇措置等を講じる「消防
団応援の店」の取組を実施している地方公共団体の事例も参考としつつ、例え
ば消防団員に対して全国的に通用するカード(身分証としての役割を持たせること
も検討)を発行し、店舗等での提示により消防団員が優遇を受けられるといっ6 た仕組みの展開を図るべきである。
3 若者の消防団への加入の促進等
長期的に消防団員を確保していくためには若い人材の確保が重要であり、大
学生等の加入の促進のほか、少年消防クラブ等の活動の活性化を通じた将来の
消防団員となる高等学校以下の児童及び生徒の消防団活動に対する理解の促進
について、教育関係者の協力も得た取組が重要である。
(1) 大学生等の消防団への加入の促進
大学生等の消防団への加入を促進する前提として、特に都市部を念頭に、消
防団員の任命資格として、居住及び勤務に加え、通学も認めるべきである。
大学生等が消防団活動に参画することは、消防団の組織の活性化、次世代の
担い手育成といった消防団側の意義は当然であるが、入団する大学生等の側に
とっても、1地域社会の一員として地域の安全に貢献しているという誇りを感
じることができる、2応急手当の技術、消火用器具・救助用器具の使用方法等、
卒業後に社会生活を送る上で役に立つ知識・技術を身につけることができる、
3体力づくり・仲間づくりにもつながる、といった様々な意義を有するもので
ある。そこで、このような消防団活動の意義について、改めて周知を図るべき
である。
また、大学等に対しては、1消防団活動に参加する学生等に対する補講・追
試の実施やレポートの活用による学修評価等、消防団活動のための修学上の配
慮、2地域づくり活動やボランティア活動等と同様に、消防団活動を実習・演
習等の授業の一環として位置付け、単位を付与する等、消防団活動の積極的評
価、3大学のキャンパス内における学生消防(分)団の設置等について、文部
科学省及び大学関係団体の協力を得て先進事例を周知するなど、大学等の自主
性に配慮しつつ、より具体的な働きかけを行うべきである。
さらに、大学生等の加入の促進に当たっては、特に就職を想定したインセン
ティヴの付与が効果的である。このため、市町村に対し、消防団に所属する大
学生等へ就職活動用の推薦状等を発出するよう働きかけを行うとともに、経済
界に対し、こうした取組を周知することにより、就職活動において消防団活動7 が積極的に評価されるように働きかけを行うべきである。
(2) 消防団で活動した大学生等の卒業後の消防団活動の継続への配慮
大学生等は消防団に加入しても卒業後就職等で転出する場合が少なくないが、
転出した地域において改めて消防団に加入し、消防団活動を継続してもらいや
すくするという観点から、大学生等の時期に加入していた消防団とは別の消防
団に改めて加入した場合には当該消防団において大学生等の時期の活動経歴を
考慮するなど、大学生等の時期の消防団活動の経験がその後の消防団活動につ
ながるような配慮を行うべきである。
(3) 少年消防クラブ等の活動の活性化等を通じた子供の頃からの消防団活動に
対する理解の促進
子供の頃から地域防災に関する意識付けを行い、将来の消防団員を育てる基
盤的活動として、少年消防クラブ及び幼年消防クラブの活動の活性化等を通じ、
高等学校以下の児童及び生徒の消防団活動に対する理解を促進することが重要
である。
このため、学校関係者の協力がより得られるように必要な働きかけを行うと
ともに、1消防団員による学校への出前講座の実施や学校が実施する防災行事
への協力等を通じた消防団に対する理解の促進、2消防団による少年消防クラ
ブの教育訓練における指導等の協力活動に対する支援、3少年消防クラブの全
国的交流行事等を通じた意識の啓発等の取組を進めるべきである。また、1高
等学校における消防団との交流活動や消防クラブの設置、2義勇消防と青少年
消防組織との密接な連携が義勇消防隊員の確保につながっている海外の事例も
参考として、消防団との共同活動等少年消防クラブの活動において消防団の活
動を身近に感じる機会を設定すること等により、少年消防クラブ員等から進学
や就職を機に消防団員へ自然に進んでいくという気運を醸成すべきである。
4 女性及びシニア世代の消防団への加入の促進等
少子高齢化の進展や、被用者の増加の中で、特に都市近郊の地域等において
は、日中に地域にいる割合の高い女性やシニア世代に、自主防災組織、女性防
火クラブ等による地域における防災活動にとどまらず、消防団活動をも担って8 もらうことが今後更に重要となる。
このため、女性及びシニア世代の消防団への加入の促進等について、各地域
の実情を十分に踏まえつつ、積極的に取り組む必要がある。
(1) 女性の消防団への加入の促進
女性消防団員については、平成25年4月1日現在で20,785人となっ
ており、消防団員総数が減少する中でも年々増加しているが、消防団員全体に
占める割合は2.4%、女性消防団員が所属している消防団の割合は59.
4%にとどまっている。一方で、応急手当・火災予防の普及啓発から消火活動
まで、女性消防団員の活動の幅は広がってきており、女性消防団員が地域の安
心・安全の確保のために果たす役割は益々高まっている。
このため、未だに女性消防団員が所属していない消防団においては女性消防
団員の入団について真剣に取り組むよう徹底するとともに、女性団員がより幅
広い分野で消防団員として活躍できるようにするための方策を整理し、周知す
ることや、常備消防と連携した加入促進活動の実施など、更に積極的な女性の
消防団への加入の促進の取組が必要である。
(2) シニア世代の消防団への加入の促進等
シニア世代については、今後の一層の高齢化の進展を踏まえ、65歳以上で
も十分活動できる人が消防団員として活躍できるようにする必要がある。この
ため、定年制を設けている市町村における定年年齢の引上げ等を進めるほか、
シニア世代が活躍しやすい活動領域について整理する等の取組を進めるべきで
ある。
また、退職消防職団員がそれまでの経験で培った消防防災に関する技術・能
力は、地域防災力の向上のための貴重な資産である。そこで、自主防災組織の
リーダー・構成員、少年消防クラブの指導者等としての活動のほか、退職消防
職団員が大規模災害時等に限定して消防団員として活動する機能別分団(特定
の活動・役割を担う分団)を創設するなど、退職消防職団員が地域における防災
活動の担い手として活動しやすい環境づくりを進めるべきである。9 5 消防団員の処遇の改善等
消防団員の処遇の改善については、消防団等充実強化法の施行を踏まえ、消
防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律施行令(昭和31年政令第34
6号)の一部改正により、平成26年4月1日からの退職報償金の全階級一律
5万円引上げ及び最低額の20万円への引上げが行われている。また、消防団
の活動の実態に応じた適切な報酬等の支給に係る地方公共団体への働きかけの
結果、平成25年4月1日現在で27団体あった無報酬団体が平成26年4月
1日現在では13団体に減少し、平成27年度中には解消する見込みとなって
いる。このように、消防団員の処遇については一定の改善が図られているとこ
ろであり、「消防団応援の店」のような地域における支援も広がりつつあるが、
一方で、多くの市町村において、地方交付税単価(年間報酬36,500円、1回
当たり出動手当7,000円)よりも実際の単価が低い状況にある。
このため、消防団は大規模災害時に地域で即時に対応し、厳しい状況の中で
長時間にわたり災害対応に当たることとなることを踏まえ、引き続き、消防団
の活動の実態に応じた適切な報酬等の支給を地方公共団体に働きかけ、特に支
給額の低い市町村に対しては、地方交付税措置額を踏まえた水準となるよう、
引上げを強く要請していく必要がある。
また、金銭的な処遇の改善に併せて、消防団拠点施設の整備・機能強化、エ
アーテントや寝袋の整備等により、大規模災害時において消防団活動が長期に
わたった場合においても消防団員が活動に専念できる環境の充実も必要である。
6 消防団の装備の改善
消防団の装備の改善については、消防団等充実強化法の施行を踏まえ、平成
26年2月7日に「消防団の装備の基準」(昭和63年消防庁告示第3号)の一部
改正が行われ、1消防団員の安全確保のための装備(安全靴、ライフジャケット等)
の充実、2双方向の情報伝達が可能な情報通信機器(トランシーバー等)の充実
及び3救助活動用資機材(チェーンソー、油圧ジャッキ、投光器等)の充実が図られ
たところである。また、消防団の装備に関する地方交付税措置が、標準団体当
たり約1,000万円から約1,600万円に大幅増額されたところである。10 この基準の改正及び地方交付税措置の大幅増額を受け、地方公共団体におい
て消防団の装備の改善に向けた取組が進められつつあるが、各地方公共団体に
おいては、このような機会を捉えて一層の消防団の装備の改善が集中的・計画
的に進むよう、地方交付税措置額の水準を踏まえた適切な予算措置を講じるべ
きであり、国としてもきめ細かな働きかけを行っていくべきである。
また、情報通信機器については、同基準において全国的に配備するものとさ
れているトランシーバー等の機器に加え、地域の実情に応じて配備するものと
されている、タブレット端末やスマートフォン等の双方向通信のための機器、
デジタルカメラ、ビデオカメラその他の情報の収集及び伝達のために用いる機
器も、災害現場の情報を収集し、迅速に災害対策本部や他機関等との共有を図
るために重要であり、その充実を図っていくべきである。
7 消防団員の教育訓練の改善
消防団員の教育訓練の改善については、消防団等充実強化法の施行を踏まえ、
大規模災害への対応という観点から消防団の現場指揮者の担う役割の重要性が
増してきたことに鑑み、現場指揮者に対する安全管理や救助活動等に係る教育
訓練の充実を図るため、平成26年3月28日に「消防学校の教育訓練の基準」
(平成15年消防庁告示第3号)の一部改正が行われ、消防団員に対する幹部教育
のうち中級幹部科を抜本的に見直し、指揮幹部科として拡充強化されたところ
である。
この改正を受けた各消防学校における教育訓練の改善を円滑に進めるため、
指揮幹部科の教科目の一部の受講を代替する個別学習用の教材の配布を進める
ほか、退職消防職員の活用等を通じた指導者の確保等により、できる限り多く
の現場指揮者となる者に指揮幹部科の課程を受講してもらえるような環境づく
りに取り組む必要がある。また、常備消防と連携した教育訓練の実施等、消防
学校以外の場における教育訓練の充実も図る必要がある。
さらに、NBCテロ・災害に関しても消防団員が基本的な知識を持ち、避難
誘導等を適切に行う必要があり、それらを想定した訓練に消防団が指導的な役
割を果たして国民の参加を促すという観点が重要であることから、NBCテ11 ロ・災害に係る教育訓練について、「「消防学校の教育訓練の基準」の教育指
標」(平成15年11月19日付け消防消第220号)への追加や指揮幹部科の現場
指揮課程の新規教育訓練内容に関する教材の作成等に、取り組む必要がある。
8 地域防災力の充実強化に関する国民運動の展開
地域防災力の充実強化については、各界各層の幅広い理解が必要であること
から、各界の中心で活躍されている方が発起人となり、日本消防協会が中心と
なって平成26年8月29日に開催される「消防団を中核とした地域防災力充
実強化大会」を契機として、これを国民運動につなげていく必要がある。
このため、同大会の推進体制を活かし、国民会議体を構築して国民運動を継
続的に推進するとともに、国民運動が全国各地において展開されるよう、各地
域における同様の大会の開催等により各地域において地域防災力の充実強化の
重要性についての理解を促進することが重要である。また、消防団等充実強化
法の趣旨を徹底するための広報の実施、消防団の重要性の周知等について、2
(1)で述べた消防団への加入の促進の観点からの広報啓発活動と併せ、幅広い
PR活動等の取組を進めるべきである。12

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