地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保の在り方について(概要)
(「地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会」報告)
平成16年3月
I 地域防災体制の中核的存在としての消防団
平成15年は、9月に発生した十勝沖地震をはじめ、各地で大きな災害が発生し、消防団が被害軽減、住民の安全確保に活躍した。消防団は、地域住民を中心とした組織として、今後は幅広い防災力と地域コミュニティとの連携を強化し、地域防災体制の中核的存在としての役割を担っていく必要があるが、消防団員数の減少が大きな課題となっている。そこで、平成15年度においては、平成15年3月に、「新時代に即した消防団のあり方について」として提言された事項のうち、「消防団員数の確保」に重点をおいて検討するため、平成15年11月から、「地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会」を開催し、アンケート調査及び現地調査等の実態調査結果に基づき具体的な方策を検討し、対応策及び今後の検討事項を取りまとめた。今後は地域の防災体制の整備に責任を持つ市町村長がリーダーシップを発揮し、各施策の具現化にあたる必要がある。
II 総消防団員数の確保方策
1 消防団員減少抑止策
1) 消防団員減少原因の分析と消防団員減少抑止策
- 都道府県、市町村による消防団の条例定数、実員数の動向把握と条例定数の維持
- 女性、大学生・専門学校生、被雇用者(サラリーマン)等の入団促進など、地域の実態にあった団員確保方策の推進
- 国、都道府県、市町村等と消防団が連携した消防団確保方策の実施
2) 市町村合併による消防団員定数削減の抑止
- 市町村合併時に地域防災力の維持・向上ができる団員数を確保
- 合併後の消防団組織は、地域の実態を考慮し、最も適した組織
- 合併時には団員の士気低下を防ぐ観点から、団員の処遇維持に配慮
2 消防団員数の数値指標
1) 総団員数の数値指標
- 全国の消防団員数の目標数値100万人以上について、各消防団が確保すべき団員数を算定するための、地域特性を反映した指標を、「消防力の整備指針の調査検討会」の中で検討
2) 各消防団の団員数目標数値
- 上記1)の数値指標に各地域の実情を加味して、各市町村、消防本部、消防団が協議して、必要団員数を算定
3) 女性消防団員数の目標数値
- 女性団員数の目標数値10万人以上について、女性団員の入団を促進するため、各消防団の活動実態に合わせて確保すべき団員数の目標数値を設定
II 対象別の団員確保方策
1 被雇用者団員の確保方策
1) 消防団員雇用事業所と消防団との連携方策
- 事業所への消防団活動の説明、事業所との交流等、事業所の理解を深める活動の推進により地元事業所と消防団、市町村との連携を強化
- 都道府県、市町村による団員雇用事業所の表彰、広報等により、団員の雇用を社会的にアピールし、企業イメージの向上に協力
- 東京等に本社機構を持つ事業所への国、都道府県と市町村・消防団が歩調を合わせた協力依頼
2) 公務員及び公共的団体職員の確保
- 地域防災体制を強化のため、市町村職員、都道府県職員の入団促進
- 地域社会との繋がりが深い、郵便局、農業協同組合職員等の消防団への入団を、国、都道府県、市町村が協力して推進
3) 被雇用者団員(サラリーマン団員)の活動環境の整備
- 訓練、行事の土日、夜間の実施など、消防団活動に団員の勤務状況を配意
- 消防団員の勤務地、勤務時間に応じて各種活動への参加を配慮
- 国では、サラリーマン団員の活動環境整備のため、活動実態調査を実施し、今後検討すべき課題を把握
2 女性消防団員の確保方策
1) 女性採用消防団数の拡大
- 婦人防火クラブと消防団との役割の違いを考慮し、女性の入団を促進
- 条例定数の増員、制服の整備、女性団員の役割整理など、女性が入団しやすい環境を整備
- 各分団への女性配置、女性分団設置など、女性の入団に配慮した組織の整備
- 国では、女性を採用していない消防団の実態を調査し、採用団拡大のため検討すべき課題を把握
2) 女性消防団員の役割の拡大
- 災害現場、火災予防、地域防災等、様々な面で地域コミュニティとのつながりが深い女性団員が活動できる環境を整備
- 女性団員の地域の防災リーダーとしての位置づけ
3 大学生・専門学校生等の若年層の確保方策
- 将来にわたって地域の防災体制充実に効果がある、大学生・専門学校生等の積極的な入団の促進
- 卒業後も引き続き、消防団活動等の地域防災活動に参加しやすい環境を整備
IV 消防団員確保の重点方策
1 消防団員周知施策の強化
1) 消防団への理解を深める広報施策
- 国、都道府県、市町村が連携した各種広報施策の推進
- 消防団、市町村が連携し、防災フェアの開催やターミナル駅、ショッピングセンター等での広報活動の実施を推進
- 消防団の具体的活動内容を説明する広報活動の実施
- 消防団に広報担当を設置し各種活動を記録、消防団の災害活動、地域活動等の積極的な紹介
2) 対象を絞った周知活動
- 事業所向けパンフレットの作成、各事業所の本社機構・各地域の商工会議所等への周知活動
- 女性の具体的活動の紹介など、女性を対象した募集活動
- 新住民等に対する各行政機関協同での説明会の実施
3) 消防団情報の提供と共有化
- 市町村等の支援による各消防団ホームページの充実、市町村・都道府県ホームページでの消防団活動の紹介
- 投稿制度の導入、各団の活動紹介等により国のホームページ・メールマガジンの充実し、住民・団員が消防団情報にアクセスしやすい環境の整備
- 団員意見発表会、交流会等の都道府県、市町村による開催により、団員に情報発信・情報交換の場を提供
- サラリーマン団員、女性団員、若年層団員等に対象を絞った研修会、活性化大会の各地域での開催を検討
4) 自主防災組織、ボランティア団体・NPO等との連携方策
- 消防団と自主防災組織が地域防災体制の中で果たす役割の違いを明確にし、両組織を充実強化
- 災害対応、訓練等においては、消防団がリーダー的役割を果たすことの明確化
- 防災のみならず、介護支援、高齢者関連等、様々なボランティア団体・NPO等と消防団の連携方策を検討
2 消防団員支援施策の推進
1) 消防団員の活動環境の改善
- 団員の職業、勤務形態、消防団の活動状況に応じた活動の見直しによる団員の負担軽減
- 魅力ある消防団づくりのため、団活動への女性、若年層の意見を反映する方策を構築
- 消防団業務の範囲拡大による参加者拡大などの検討
- 消防団の役割の拡大に伴う、消火活動中心の訓練見直しの検討
2) 活動の能力向上に資する平常時の支援方策
- 団員の士気向上を図るため、普通救命講習等の団活動関連の資格取得、各種講習会参加を支援
- 応急手当指導員資格保有団員等による住民を対象とした講習会の実施
- 体力増進を支援するため消防団員の利用料減免措置による公の施設・消防本部施設等の利用促進、健康診断の内容を充実
- 団員の家族を出初め式、消防操法大会などに招待したり、表彰するなど、家族へ配慮
3) 消防団員の処遇等の改善
- 団員の活動環境を整備し、魅力ある消防団とするために処遇全般を視野に入れた対応策を検討
3 次世代の消防団員育成
1) 中学生・高校生への周知活動
- 学校の防災訓練、地域の防災訓練における団員による指導
- 防火パトロールなど、消防団の日常活動への参加による周知活動
2) 小学生への周知活動
- 学校等で地域の防災を学ぶ機会における冊子やビデオなどによる周知活動
- 消防団活動と地域のこども会活動とを連携した周知活動の実施
4 運営組織の充実強化
1) 役割に応じた消防団組織
- 予防業務を担当する分団、昼間の災害対応を担当する分団など、地域の実態に即した新たな形態の組織を検討
- 団員相互で業務を分担する制度、団員の自由な選択により活動に参加できる登録制の団員制度等の検討
2) 勤務地を活動地域とする消防団
- 昼間帯に人口が集中する市街地、人口が減少する住宅地等での地域防災力を確保するため、条例に勤務者も団員として任用できるよう明記し、勤務地を活動地域とする団員の任用を促進
- 消防団が事業所内外で効果的な活動ができるよう、勤務先の自衛消防隊との連係方策について、事業所と十分に協議
- 事業所又は集客施設が集中する区域において、事業所が一定人数を確保し、活動する事業所消防分団制度、この場合に団員の年額報酬相当額を該当事業所に支給できる制度の検討
- 特殊技能を有し、大規模災害時に必要に応じて出動する消防分団制度の検討
- 地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保の在り方について(報告書)
- ※(注記) 目次をクリックして下さい。本文をみることができます。
- 地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会運営要綱(資料・PDF)
- 地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会構成員(資料・PDF)
- 消防団員確保に係るアンケート調査結果(資料・PDF)
- 地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保について(通知)