地下鉄道の火災対策検討会 報告概要
平成16年3月29日
総務省消防庁 国土交通省
1.韓国大邱(テグ)市地下鉄における列車火災事故の概要
- 発生日時: 平成15年2月18日(火)午前9時53分頃
- 発生場所: 韓国大邱市地下鉄1号線 中央路(チュンアンノ)駅構内
- 死傷者: 死亡者192名、負傷者148名
- 概況: 6両編成の列車(乗客約230人)が中央路駅に到着した際、列車に乗車していた男性が容器に入っていたガソリンを床に撒いて着火。火は、この後到着した対向の6両編成の列車(乗客約190人)に延焼し、両列車とも全焼。
2.わが国における地下鉄道の火災対策の基本的考え方
- 基本的考え方
地下鉄道の不燃化を進めるとともに、万一火災が発生した場合に、旅客が地上まで安全に避難できる対策を総合的に講じることを基本とします。なお、今回の検討に当たっては、これに加え、消防活動を支援するとの観点も考慮しました。
- 想定火災
現行の基準では、車両床下機器からの出火やライターによる放火等を想定していますが、これに加え、列車内や売店等でのガソリンによる放火(大火源火災)を想定します。
3.車両の火災対策
わが国で運用されている車両は、現行の基準を満たしており、一定の防火能力を備えていますが、さらに、大火源火災に対して、車両での延焼拡大を防止するため、以下の措置を講じます。
- 大火源火災において防火能力が低い材料及び溶融滴下する材料は、車両天井部への使用を制限することとします。
- 車両材料燃焼試験に、溶融滴下の判定を追加するとともに、大火源火災における防火能力を判定するための燃焼試験を追加することとします。
- 隣接車両への煙の流入等を防止するため、連結する車両間に、通常時閉じる構造の貫通扉を設置することとします。
4.地下駅・トンネルの火災対策
異なる2以上の避難通路を設けること等の現行の基準に加え、大火源火災に対して、旅客の安全な避難を確保するとともに、消防活動を支援するため、以下の措置を講じます。
- 個別の駅構造に応じ、旅客が安全に避難できる時間を確保する排煙設備を設置することとします。
排煙設備の能力の算定に当たっては、現行の基準では、代表的な地下駅のモデルにより算定していますが、駅の複雑化、深度化に対応するため、個別の駅構造に応じた排煙設備の能力を算定する方法に改定します。また、排煙設備の能力の算定方法に、大火源火災の性状に対応した方法を追加します。
- 旅客の安全な避難を確保するとともに、消防活動を支援するため、ホームとコンコースを結ぶ階段に、出火場所からの煙や炎を遮断できる防火シャッター等を設置することとします。
- 旅客の避難経路を確保するため、袋小路部等には、売店を設置しない。売店を設置する場合には、自動火災報知設備を設置することとし、コンビニ型売店には、これに加え、スプリンクラー設備を設置することとします。
- 円滑で組織的な消防活動を支援するため、消防隊員が地上と通信するための無線通信補助設備を設置することとします。また、地下駅の規模等により、消防隊が使用する機器のための非常コンセント設備を設置することとします。
5.旅客の避難誘導等に関する対策
旅客の安全な避難誘導をより確実に行うため、マニュアルの整備、案内表示の充実等以下の措置を講じます。
- 走行中に列車火災が発生した場合には次駅まで走行する原則等、火災発生時の運転取扱上徹底すべき事項を盛り込んだマニュアルを整備することとします。
- 駅の構造、要員数等個別の駅の状況等に応じたマニュアルを整備します。このマニュアルには、旅客の避難誘導の方法等火災発生時に係員が行うべき事項を定めることとします。
- 消火器、非常通報装置及びドアコックの表示方法を、ピクトグラムを使用する等により統一することとします。
- 駅や車両に避難経路図や消火器等の配置図等を表示するとともに、通常時の構内放送、車内放送により、旅客に対し危機管理意識の高揚を図ることとします。
6.消防機関との連携
駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、駅と消防機関が共有するとともに、定期的に、両者が連携した訓練を実施することとします。