令 和 6 年3 月 27 日
消 防 庁
「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討報告書」の公表
昨今、
各分野において技術革新やデジタル化が急速に進展しており、
危険物施設について安
全性、効率化を高める新技術の導入により効果的な保安を行うこと(スマート保安)の実現が
期待されています。
また、規制改革実施計画(令和5年6月 16 日閣議決定)において、省令改正等必要な措置
を講ずることとされました。
このような状況を踏まえ、消防庁では、
「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検
討会」を開催し、危険物施設のスマート保安を進めていくための方策として AI の活用等につ
いて検討を行うとともに、危険物の流出防止のための措置について検討を行いました。
このことについて、今般、報告書がとりまとめられたので公表します。
1 検討結果の概要(詳細は別紙参照)
(1)危険物施設のスマート保安について
ア セルフ給油取扱所における AI の活用について
(ア)AI システムを活用することにより、顧客の給油作業等が直視できない場所で可搬式の制
御機器の操作を行うことについて
セルフ給油取扱所で AI システムを活用することにより、
顧客の給油作業等が直視できな
い場所(給油取扱所内の任意の場所)から可搬式の制御機器の操作を行えるものとするこ
とが適当であるとされました。
(イ)条件付自動型 AI システム((注記))の導入に向けた実証実験の要件の整理について
一定の要件を満たす場合は、セルフ給油取扱所において、条件付自動型 AI システムの実
証実験を行うことについて差し支えないとされました。
(注記)予め設定した環境条件を満たす場合にのみ、給油許可機能を自動で行う AI システム
イ 可燃性蒸気の滞留範囲の明確化について
屋内貯蔵所において、危険物の詰め替え、小分け、混合等が行われない場合にあっては、
可燃性蒸気が滞留するおそれの無い場所と取り扱うこととして差し支えないとされました。
(2)危険物施設の流出防止のための措置について(規制改革実施計画関係)
危険物の規制に関する政令第9条第1項第 12 号で未制定となっている「危険物の流出防
止にこれと同等以上の効果があると認められる総務省令で定める措置」として、次の1、2
を定めることが適当であるとされました。
1 周囲の地盤面に危険物の流出防止に有効な溝等を設ける措置
2 架台等に危険物の流出防止に有効な囲い等を設ける措置
2 今後の予定
本検討結果を踏まえ、所要の省令改正等を行うこととしています。
3 その他
報告書全文については、消防庁ホームページ(https://www.fdma.go.jp/)に掲載します。
<連絡先>消防庁危険物保安室 担当:千葉、北中
TEL:03-5253-7524
E-mail:fdma.hoanshitsu_atmark_soumu.go.jp
(注記)スパムメール対策のため、
「@」を「_atmark_」と表示
しております。送信の際には、
「@」に変更してください。 0別紙
消防庁危険物保安室
危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討報告書 概要
危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会
危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会(概要)
昨今、各分野において技術革新やデジタル化が急速に進展しており、危険物施設について安全性、効率化を高める新技術の
導入により効果的な保安を行うこと(スマート保安)の実現が期待されている。このような状況を踏まえ、危険物施設のスマート
保安を進めていくための方策として、AIの活用等について検討を行った。
また、規制改革実施計画(令和5年度6月16日閣議決定)において、「危険物の規制に関する政令第9条第1項第12
号において、流出防止の措置として、「その直下の地盤面の周囲に高さ0.15メートル以上の囲い」の他に、側溝等を認めている
地方公共団体がいることを鑑み、側溝等による代替措置について、その要件を検討し、現在規定していない「同等以上の効果
があると認められる総務省令で定める措置」として規定するために省令改正等必要な措置を講ずる。」とされた。このため、危険
物の流出防止のための措置について検討を行った。
検討の背景
1 危険物施設のスマート保安について
(1) セルフ給油取扱所におけるAIの活用について
(2) 可燃性蒸気の滞留範囲の明確化について
2 危険物の流出防止のための措置について(規制改革実施計画関係)
検討項目1 1(1) セルフ給油取扱所におけるAIの活用について
現 状
1AIシステムを活用することにより、顧客の給油作業等が直視できない場所で可搬式の制御機器の操作を行うことについて
➢ AIシステムを活用することにより、顧客の給油作業等が直視できない場所において、可搬式の制御機器を操作した場合に、顧客の給
油作業等に係る安全の確保が可能か、実証実験を実施した。
➢実証実験の結果、顧客の給油作業等が直視できない場所において、可搬式の制御機器を操作した場合であっても、安全が確保される
ことが確認できたことから、給油取扱所内の任意の場所で可搬式の制御機器の操作を行えるものとすることが適当である。
(技術的助言を発出予定)
2 条件付自動型AIシステムの導入に向けた実証実験の要件の整理について
➢条件付自動型AIシステムの導入に向けた、実証実験を安全に実施するための要件について検討した。
➢以下の要件を満たす場合は、セルフ給油取扱所において条件付自動型AIシステムの導入に向けた実証実験を行うことについて差し支えない。(技術的助言を発出予定)
1 セルフ給油取扱所が法令を遵守し条件付自動型AIシステムに関係する必要な設備が設置されていること
2 条件付自動型AIシステムの機能が一定の要件(予め設定された環境条件を満たす場合以外では、自動での給油許可は行わない等)を満たすものであること
3 条件付自動型AIシステムを適切に運用するための体制のほか、条件付自動型AIシステムが適切に作動しない場合や事故等が発生した場合の応急対応等のため
の体制が確保されていること
4 実証実験の実施要領等を文書により明確に定めること
5 実証実験の実施に係る顧客への周知及び保安上の注意喚起を行うこと
6 実証実験に使用する条件付自動型AIシステムの安全性及び機能等について顧客へ周知すること
7 条件付自動型AIシステムの作動状況等を記録し、保存データを適切に管理すること 2
可搬式の制御機器の画面表示
(AIシステム搭載)
➢セルフ給油取扱所においては、制御卓又は可搬式の制御機器を用いて従業員が顧客の給油作業等を監視し、及び制御し、並びに顧客に対し必要な指示を行うこととされて
いる。 また、可搬式の制御機器の操作は、顧客の給油作業等について直視が可能な固定給油設備等の近傍において行うこととされている。
(規則第40条の3の10)
➢セルフ給油取扱所では、業務の省力化・効率化のため、AIシステムの導入が期待されている。
➢令和4年度の検討会においては、以下の結論を得た。
1 「給油の許可の判断に資する情報を従業員へ提供するAIシステム」(情報提供型AIシステム)をセルフ給油取扱所に導入することは差し支えない。
2 「一定の条件下において自動で給油の許可を行うAIシステム」(条件付自動型AIシステム)は導入に向けた安全の確保策等について更なる検討が必要である。
➢セルフ給油取扱所の更なる業務の省人化・効率化のため、次のことが課題となっている。
1 AIシステムを活用することにより、顧客の給油作業等が直視できない場所(固定給油設備等の近傍以外の場所)で可搬式の制御機器の操作を行えるようにすること。
2 条件付自動型AIシステムの導入に向けた実証実験の要件を整理すること。
検討結果
1(2) 可燃性蒸気の滞留範囲の明確化について
現 状
➢危険物施設においてデジタル機器等を使用する場合、可燃性蒸気が滞留するおそれの無い場所で使用するか、当該機器等を防爆のものとする必要がある。
(危政令第24条第13号)
➢これまで、給油取扱所や屋外タンク貯蔵所における可燃性蒸気の滞留範囲について検討し、その結果を技術的助言((注記))として示してきたところ。
(注記)「給油取扱所に電気自動車用急速充電設備を設置する場合における技術上の基準の運用について」(平成24年3月16日付け消防危第77号)
「屋外タンク周囲の可燃性蒸気の滞留する恐れのある場所に関する運用について」(令和4年8月4日付け消防危第175号)
➢屋内貯蔵所は、建物の構造や貯蔵形態が比較的単純で、全国的に施設数が多く、タブレット等のデジタル機器の使用が見込まれることから、令和5年度にお
いては、屋内貯蔵所内における可燃性蒸気の滞留範囲について検討した。
➢実際に危険物を貯蔵している屋内貯蔵所に可燃性ガス検知器を設置し、可燃性蒸気の滞留範囲を実測((注記))した。
(注記)夏場の可燃性蒸気が滞留しやすい環境とした上で、揮発性の高い第4類第1石油類を使用
➢実証実験の結果、屋内貯蔵所内の可燃性ガスの濃度は、可燃性ガス検知器の検出限界以下であった。
➢このことから、屋内貯蔵所内は、危険物の詰め替え、小分け、混合等の作業が行われない場合にあっては、可燃性蒸気が滞留するおそれの無い場所(デジ
タル機器等を使用する場合に、防爆のものとする必要が無い場所)と取り扱うこととして差し支えない。 (技術的助言を発出予定)
➢地震等の事故時には、屋内貯蔵所内の容器が破損することで、危険物の漏えいが発生し、可燃性蒸気が屋内貯蔵所内に滞留するおそれがあることから、防
爆構造でない固定式の電気機器を設置する場合には、地震時に自動で電源が遮断される機能(インターロック機能)を有したものを設置する必要がある。
検討結果
実証実験施設の外観 実証実験施設内部の状況 ガス検知器の設置状況3 2 危険物の流出防止のための措置について(規制改革実施計画関係)
➢製造所の屋外に危険物を取り扱う設備を設置する場合には、その周囲に危険物の流出防止のための0.15メートル以上の囲いを設置するか、又はこれと同等以上
の効果があると認められる総務省令で定める措置(未制定)を講ずることとされている。 (政令第9条第1項第12号)
➢危険物の流出防止のために、「0.15メートル以上の囲いを設置する」以外の措置について、各消防本部が認めた事例等を調査した。
➢調査の結果、次の1、2の措置が複数の消防本部において認められていた。
1 危険物を取り扱う設備の直下の地盤面の周囲に危険物の流出防止に有効な溝等を設ける措置
2 危険物を取り扱う設備の架台等に危険物の流出防止に有効な囲い等を設ける措置
➢上記1、2の措置について検討した結果、これらの措置は、危険物の流出防止のための措置として十分な効果があると認められることから、「危険物の流出防止にこ
れと同等以上の効果があると認められる措置」として定めることが適当である。(省令改正を実施予定)
車両の乗り入れ箇所以外は
0.15m以上の囲いによる措置あり
危険物が流出しても溝と油分離装置で
危険物が回収できる措置となっている 架台部分が囲い構造
1の措置 2の措置4現 状
検討結果

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