令 和 6 年 8 月 9 日
消 防 庁
「石油コンビナート等防災体制検討会(石油コンビナートにおける事故に関す
る検討)報告書」の公表
石油コンビナートにおける事故件数は近年増加傾向にあり、
事故件数の増加には重
大事故の発生につながる危険が潜んでいることから、
これまで以上に積極的に事故防
止に取り組んでいくことが求められています。
これら事故データの分析の結果、事故
件数増加の一方でその多くは小規模な事故や重大な事故ではない状況がみられまし
た。
このため、令和5年度から「石油コンビナート等防災体制検討会(石油コンビナー
トにおける事故に関する検討)」を開催し、事故データを分析するとともに、事業者
における取り組みを調査することで、
重大な事故につなげないよう事故を防止する方
策や事故が発生したとしても被害を軽減するための方策の検討を行ってきました。
この度、検討の結果を報告書として取りまとめましたので公表します。
1 検討会報告書の概要
別紙のとおり
・事故を防止する方策
「石油コンビナートにおける事故分析を踏まえた事故防止の手引き」の作成
・被害を軽減する方策
「自衛防災組織等の防災活動の手引き」及び「自衛防災組織等の防災要員のため
の標準的な教育テキスト」の改訂
2 その他
本検討会の報告書及び検討経過は、消防庁ホームページをご確認ください。
(注記)消防庁ホームページ
(https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/post-157.html)
(連絡先)
消防庁特殊災害室
担 当 山口課長補佐、三原係長、佐々木事務官
電 話 03-5253-7528(直通)
FAX 03-5253-7538
E-mail tokusaishitsu@soumu.go.jp
石油コンビナート等防災体制検討会(石油コンビナートにおける事故に関する検討)報告書の概要 1
石油コンビナートにおける事故件数は近年増加傾向にあり、事故件数の増加には重大事故の発生につながる危険が潜んで
いることから、これまで以上に積極的に事故防止に取り組んでいくことが求められている。これら事故データの分析の結果、
事故件数増加の一方でその多くは小規模な事故や重大な事故ではない状況がみられた。これは事業者において事故を小規模
にとどめる取り組みが功を奏していることも要因のひとつと考えられる。
そこで本検討会では事故データを分析するとともに、事業者における取り組みを調査することで、重大な事故につなげな
いよう事故を防止する方策や事故が発生したとしても被害を軽減するための方策を検討しとりまとめた。
具体的には、事故防止の方策として、統計データをもとに類型化した事故事例とその対策を紹介するとともに、現場での
取り組みにすぐに活用できるようイラストを活用した事故事例を掲載した「石油コンビナートにおける事故分析を踏まえた
事故防止の手引き」を作成した。また、被害を軽減する方策として、小規模漏えい事案の活動要領等を既存の教育テキスト
等に追加した。
【検討体制】020040060080010001200020406080100120140160180200220S51535557596163H24681012141618202224262830R24事業所数火災 爆発
漏えい その他
事業所数
【石油コンビナートにおける一般事故発生件数の推移】件【検討経過】
・第1回 令和5年10月 ・第2回 令和6年3月
・第3回 令和6年6月1別紙
小林 恭一
危険物保安技術協会 特別顧問 (座長)
(元東京理科大学教授)
西 晴樹
消防庁消防大学校 消防研究センター
技術研究部長(座長代理)
荒木 勝美 石油化学工業協会 消防防災専門委員長
江藤 義晴 四日市市消防本部 参事兼予防保安課長
小山田 賢治
高圧ガス保安協会 保安技術部門
グループマネージャー
金子 正和 川崎市消防局 予防部保安課長
熊﨑 美枝子 横浜国立大学大学院 環境情報研究院教授
宍戸 仁(R6.4〜)
富田 正幸(〜R6.3)
仙台市消防局 予防部規制指導課長
辻 裕一 東京電機大学 工学部機械工学科特定教授
時岡 宏彰
危険物保安技術協会
事故防止調査研修センター長
中西 美和 慶應義塾大学 理工学部管理工学科教授
橋本 昌樹(R6.4〜)
小谷 茂(〜R6.3)
日本鉄鋼連盟 防災委員会委員
藤井 直路(R6.4〜)
舘 宏明(〜R6.3)
茨城県 防災・危機管理部消防安全課長
三浦 安史 石油連盟 安全管理部長
石油コンビナート等防災体制検討会(石油コンビナートにおける事故に関する検討)報告書の概要 2
【検討結果1 事故を防止する方策】
「石油コンビナートにおける事故分析を踏まえた事故防止の
手引き」の作成
消防庁が保有する石油コンビナートにおける事故データに基づき過
去5年間に発生した爆発、火災、漏えい事故等の合計1,000件を超える
事故事例を分類分けした上で、事故防止のためのポイント等を示した新
たな資料である。
各事業所の安全管理部門向けに作成しているが、安全管理部門を通じ
て、現場監督者など現場サイドに展開され活用されるよう、具体的な対
策事例などはイラストを活用して分かりやすくまとめ、そのまま現場の
教育に活用できるようにした。
(手引きの特色)
・事故事例は、事業者の一連の業務である「設計」「施工」「維持管
理」の場面ごとに分類している。
・各場面ごとに分類された事故事例は、爆発、火災、漏えいの3種類の
災害種別、更には石油コンビナートを構成する業態(石油製品等製造業
の他3業態)ごとに分類し、事故防止のための配慮事項を示している。
・事故事例を踏まえた事故防止のポイントを挙げるとともに、多く発
生している事故形態を複数選び、イラストを付けて具体的な対策事例を
示している。
・事業所における事故防止のための取組み事例をコラムとして紹介し
ている。
【事故防止の具体的対策事例から一例を抜粋】2【場面ごとに分類された事故事例から一例を抜粋】(注記)施工面・漏えい事故・化学工業
No 発生機器別 機器等名称 起因物質 発生要因 事故概要
事業所の対処を
踏まえた配慮事項
事業所の対処 施工要因 漏えい要因
6 混合、溶解槽 毒劇物 取付け不良
濃硫酸を希硫酸タンクへ移送中、異物混入防止措置と
していたコーキングが外れ、希硫酸タンク上部受入ノズ
ルに差し込んでいたテフロンチューブが外れたため、濃
硫酸が漏えいしたもの。
ねじ込み継手の変更やチュー
ブ本体への被覆を実施すること・ねじ込み継手の使用
・チューブ本体の被覆
コーキングの
取付け不良
脱落
(送液チューブ)7蒸留、精留塔
(スタビライザー、スト
リッパー)
その他 施工内容の間違い
無水硫酸に対して耐食性が低い塩化ビニル樹脂製のエ
ンドフランジが取り付けられていたため、エンドフラン
ジが腐食によりに穴が開き、無水硫酸が漏えいしたも
の。
使用部品等の材質は、作業指
示書にて使用する器具の材質
を指定しておくこと
作業指示書にて使用す
る器具の材質を指定
不適切な材質
の選定
腐食
(材質)
塔槽類
【10件】
石油コンビナート等防災体制検討会(石油コンビナートにおける事故に関する検討)報告書の概要 3
【検討結果2 被害を軽減する方策】
小規模漏えい事案の活動要領を作成
漏洩事故の件数は、施設の老朽化等により増加傾向に
あり、引き続き事故を発生させないよう取り組む一方で、
事故が発生したとしても被害を軽減させる取り組みを効
果的に講じることも重要である。
漏えい事案を小規模なものにとどめるための効果的な
活動方法について事業所調査を踏まえ、活動要領として
新たに作成し、既存の「自衛防災組織等の防災活動の手
引き」及び「自衛防災組織等の防災要員のための標準的
な教育テキスト」へ追加し改定することで、事業者の自
衛防災組織等の関係者に広く共有を図る。
しろまる小規模漏えい事案の活動要領の主な項目
写真等を交えて活動フェーズごとに整理
[活動フェーズ]
(1) 早期覚知
・点検やパトロールにおけるポイント
・検知機器の例
(2) 早期通報
(3) 被害軽減措置
・装置の緊急停止
・配管等の縁切り
・オイルパンによる漏えい拡大防止
・応急用固定バンド等による応急補修
・ガス吸引設備による回収
・オイルフェンスの展張
・施設外への漏えい防止
(4) 出火防止措置
・散水による拡散防止
・窒素置換による引火防止3【小規模漏えい事案の活動要領から一部を抜粋】

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