令 和 5 年 9 月 2 5 日
消 防 庁
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の
技術ガイドラインの改訂に対する意見公募
消防庁は、
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段における技術ガイドライン
の改訂について、令和5年9月 26 日(火)から令和5年 10 月 25 日(水)までの間、
意見を公募します。
1 主な改正内容
令和4年度の技術実証の結果を踏まえ、複数自治体と複数放送局で運用する場合の放送遅延等
を防止するために、関係者間で定めておくべき運用のルールを留意事項として追記するなど所要
の改正を行うものです。
2 意見公募対象及び意見公募要領
しろまる 意見公募対象
・地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン
(令和5年くろまる月改訂)
(案)
3 意見公募の期限
令和5年9月 26 日(火)から令和5年 10 月 25 日(水)まで(必着)(郵送については、
締切日の消印まで有効とします。)
4 資料の入手方法
意見公募要領の詳細については、総務省ホームページ(http://www.soumu.go.jp)の「報道資
料」欄に、また消防庁ホームページ(https://www.fdma.go.jp/)の「報道発表」欄に、本日(9
月 25 日(月))に掲載するほか、電子政府の総合窓口[e-Gov](http://www.e-gov.go.jp)の
「パブリックコメント」欄に掲載するとともに、連絡先窓口において配布します。
5 今後の予定
意見公募の結果を検討した上で、当該ガイドラインを改訂し公表する予定です。
総務省消防庁 国民保護・防災部 防災課
防災情報室
担当:金子、荷見、山口
電話:03-5253-7526(直通)
Email:bgm-boujo_atmark_ml.soumu.go.jp
(注記)スパムメール対策のため、
「@」を「_atmark_」と表示して
おります。送信の際には、
「@」に変更してください。
意見公募要領
1 意見公募対象
・地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン(令和5年くろまる
改訂)(案)
2 意見公募の趣旨・目的・背景
令和4年3月に公開された「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段のガイ
ドライン策定等に係る検討報告書」の第 2 部 第 2 章「地上デジタル放送波を活用した
災害情報伝達手段の技術ガイドライン」について、令和 4 年度における複数自治体が
単一放送事業者の帯域を共用する際に発生する課題とそれを解決する複数放送局の複
数帯域を切り替えて運用するモデルでの技術実証における成果を踏まえて、改訂を行
う。
3 資料入手方法
準備が整い次第 e-Gov(https://www.e-Gov.go.jp/)の「パブリックコメント」欄及び総
務省ホームページ(http://www.soumu.go.jp/)の「報道資料」欄に掲載するとともに、連
絡先窓口において配布することとします。
4 意見の提出方法・提出先
下記(1)の場合は、意見提出フォームに郵便番号、氏名及び住所(法人又は団体の
場合は、名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)並びに連絡先(電話番号又は
電子メールアドレス)を記載の上、意見提出期限までに提出してください。
下記(2)〜(4)のいずれかの場合は、意見書(別紙様式)に氏名及び住所(法人
又は団体の場合は、名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
、並びに連絡先
(電話番号又は電子メールアドレス)を明記の上、意見提出期限までに提出してくださ
い。
なお、提出意見は必ず日本語で記入してください。
(1)e-Gov を利用する場合
e-Gov
(https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public)
の意見提出フォームからご提
出ください。
なお、添付ファイルは利用できません。添付ファイルを送付する場合は、
(2)によ
り提出してください。
(2)電子メールを利用する場合
電子メールアドレス: bgm-boujo_atmark_ml.soumu.go.jp
総務省消防庁 国民保護・防災部 防災課 防災情報室 あて
(注記)スパムメール防止のため@を「_atmark_」としております。送信の際には恐れ入り
ますが、半角に修正の上、お送りいただきますようお願いします。
(注記)意見の提出を装ってウイルスメールが送付される事案を防ぐため、(1)の e-Gov を
極力ご利用いただきますよう、ご協力の程よろしくお願いいたします。
(注記)メールに直接意見を書き込んでいただきますようお願いします。添付ファイルを送
付する場合、
ファイル形式は、
テキストファイル、
マイクロソフト社 Word ファイル、
ジャストシステム社一太郎ファイルにより提出してください(他のファイル形式と
する場合は、担当までお問合せください。)。
(注記)電子メールアドレスの受取可能最大容量は、メール本文等を含めて 10MB となって
います。
(3)郵送する場合
〒100-8926 東京都千代田区霞が関2-1-2
総務省消防庁 国民保護・防災部 防災課 防災情報室 あて
別途、意見の内容を保存した光ディスクを添えて提出いただくようお願いする場合
があります。その場合の条件は次のとおりです。
しろまるディスクの種類:CD‐R、CD‐RW、DVD-R 又は DVD-RW
しろまるファイル形式:テキストファイル、マイクロソフト社 Word ファイル又はジャスト
システム社一太郎ファイル(他のファイル形式とする場合には、事前に担当者まで
お問い合わせください。)しろまるディスクには、提出者の氏名、提出日、ファイル名を記載してください。
なお、送付いただいたディスクについては、返却できませんのであらかじめ御了承
ください。
(4)FAX を利用する場合
FAX 番号:03-5253-7536
総務省消防庁 国民保護・防災部 防災課 防災情報室 あて
(注記)連絡先窓口の担当に電話連絡後、送付してください。
なお、別途、電子データによる送付をお願いする場合があります。
5 意見提出期間
令和5年9月 26 日(火)から令和5年 10 月 25 日(水)まで(必着)
(注記)郵送については、締切日の消印まで有効とします。
6 留意事項
・意見が 1000 字を超える場合、その内容の要旨を添付してください。また、それぞれ
の意見には、当該意見の対象である命令等の案の名称、そのページ等を記載して下さ
い。
・提出された意見は、e-Gov 及び総務省ホームページに掲載するほか、総務省消防庁
国民保護・防災部 防災課 防災情報室にて配布又は閲覧に供します。
・御記入いただいた氏名(法人又は団体にあっては、その名称並びに代表者及び連絡担
当者の氏名)
、住所(所在地)
、電話番号、電子メールアドレスは、提出意見の内容に
不明な点があった場合等の連絡・確認のために利用します。
・なお、提出された意見とともに、意見提出者名(法人又は団体にあってはその名称及
び代表者の氏名に限り、個人で意見提出された方の氏名は含みません。
)を公表する
場合があります。法人又は団体にあっては、その名称及び代表者の氏名について、匿
名を希望される場合には、その旨を記入してください(連絡担当者の氏名は公表しま
せん。)。
・意見に対する個別の回答はいたしかねますので、あらかじめ御了承ください。
・意見提出期間の終了後に提出された意見、意見募集対象である命令等の案以外につい
ての意見については、提出意見として取り扱わないことがありますので、あらかじめ
御了承ください。
・提出された意見は、結果の公示の際、必要に応じ整理・要約したものを公示すること
があります。その場合には、提出された意見を連絡先窓口に備え付け、閲覧に供しま
すので、あらかじめ御了承ください。
・提出された意見を公示又は公にすることにより第三者の利益を害するおそれがあると
き、その他正当な理由があるときは、提出意見の全部又は一部を除いて公示又は公に
することがありますので、あらかじめ御了承ください。
連絡先窓口
総務省消防庁 国民保護・防災部 防災課 防災情報室
担 当:金子、荷見、山口
電 話:03-5253-7526
電子メールアドレス:bgm-boujo_atmark_ml.soumu.go.jp
(注記)迷惑メール防止のため、@を「_atmark_」と表示しています。
メールをお送りになる際には、
「_atmark_」
を@に直してください。
意 見 書
令和 年 月 日
総務省消防庁 国民保護・防災部 防災課
防災情報室 あて
郵便番号
(ふりがな)
住所(所在地)
(ふりがな)
氏名(法人又は団体名等)
(注1)
電話番号
電子メールアドレス
「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン
(令和5年くろまる
改訂)
(案)
」に関し、別紙のとおり意見を提出します。
注1 法人又は団体にあっては、その名称及び代表者の氏名を記載すること。併せて、連絡
担当者の氏名を記載すること。
注2 用紙の大きさは、
日本産業規格A列4番とすること。
別紙にはページ番号を記載する
こと。
別紙様式
該当箇所 御意見
- 1 -
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン
令和4年3月
令和5年くろまる月 改訂
- 2 -
(技術ガイドライン 目次)
はじめに
1 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の特徴 ・・・・・・・・・4
(1)地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の概要 ・・・・・・・4
(2)地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の利点(メリット)
・・6
(3)情報伝達の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2 情報伝達システムの詳細 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
(1)入力(送信)システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
(2)統合運用調整機能(バックエンド機能) ・・・・・・・・・・・・・8
(3)テレビ局マスター設備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(4)屋外スピーカー・屋内受信機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
(5)その他の追加的な機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3 情報伝達システムの標準とするべき技術的要件 ・・・・・・・・・・・・19
(1)基本的な要件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(2)EDXL の標準仕様について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(3)入力(送信)システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
(4)統合運用調整機能(バックエンド機能) ・・・・・・・・・・・・・22
(5)IPDC連携装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(6)受信機の標準仕様 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
4 導入に当たっての留意事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(1)入力(送信)システムの検討・導入 ・・・・・・・・・・・・・・27
(2)サービス提供事業者との利用契約 ・・・・・・・・・・・・・・・27
(3)IPDC連携装置の設置及び基幹放送設備との接続 ・・・・・・・28
(4)地上デジタル放送事業者との利用契約 ・・・・・・・・・・・・・28
(5)屋外スピーカー・屋内受信機の整備・導入 ・・・・・・・・・・・・29
- 3 -
はじめに
本ガイドラインは、
令和3年度の
「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の
ガイドライン策定等に係る検討会」における議論や実証等を通じて得られた知見を整理
し、
令和4年3月に公開された
「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段のガイ
ドライン策定等に係る検討報告書」の第 2 部 第 2 章「地上デジタル放送波を活用した災
害情報伝達手段の技術ガイドライン」について、令和 4 年度における複数自治体が単一
放送事業者の帯域を共用する際に発生する課題とそれを解決する複数放送局の複数帯域
を切り替えて運用するモデル(以下「m:nモデル」という。
)での技術実証における成
果を踏まえて改訂を行ったものである。
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の導入と運用に当たっては、地上デ
ジタル放送事業者に加え、入力(送信)システム、電子署名の認証局機能及び指定する放
送事業者へのルーティング機能(バックエンド機能)
、地上デジタル放送関連設備、各種
受信装置の機能・サービスを提供する事業者が関連することから、
各市町村が別々の調達
仕様で独自に本手段の整備・導入を進めた場合、
これらのサービス提供事業者毎に仕様が
異なること等につながり、当該事業者間での競争が働かず、導入・運用経費が低廉化でき
ない等の弊害が生じるおそれがあることから、
本ガイドラインは、
地上デジタル放送波を
活用した災害情報伝達手段の中核となる技術・機器について標準とするべき技術的要件・
仕様を提示し、これに準拠したシステムや機器等を市町村が調達することで事業者間の
競争性を確保することを狙いとするものである。
さらに、
新しい災害情報伝達手段であることを踏まえ、
市町村の防災担当職員が導入を
検討する際の参考に資する手引きとするとともに、地上デジタル放送事業者やサービス
提供事業者等の関係者に対して、標準とするべき技術的要件への理解を深められる資料
とする。
本ガイドラインの構成は、
1及び2において令和3、
4年度の技術実証を踏まえて得ら
れた技術的知見を総括し、
これを踏まえ、
3において地上デジタル放送事業者やサービス
提供事業者等の関係者に対する標準とするべき技術的要件をとりまとめるとともに、4
において導入に当たり市町村の防災担当職員及び地上デジタル放送事業者等の関係者が
留意すべき事項をとりまとめた。
なお、本ガイドラインをもとに、本手段の整備・運用に関わる市町村、放送事業者、サ
ービス提供事業者等が主体となり、
全国的な課題の解決に向けた検討や、
ガイドラインの
要件を達成するための標準的な仕様や運用ルールの策定を行うことで、本手段のより一
層の整備促進が期待される。
- 4 -
1 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の特徴
(1) 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の概要
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段は、市町村が伝達する災
害情報をインターネットで一般的な IP パケットとして、テレビの地上デジタ
ル放送波に重畳して、屋外スピーカーや屋内受信機に一斉同報する伝達手段
である。
地上デジタル放送波に IP パケットを重畳し一斉配信する放送技術・サービ
ス(以下「IPDC」という。
)については、文字や音声、映像のほか、PDF
ファイルやオフィス系ソフト(Word、Excel 等)のファイル、センサー信号等
も放送波に重畳することが可能である。また、受信した IP パケットは、その
ままイーサネット等のコンピューターネットワークに載せることができるた
め、インターネットインフラでの情報伝送が容易となっている。
このIPDC方式について地上デジタル放送を活用して放送するのが「地
上デジタル放送波を活用したIPDC型データ放送」
であり、
地上デジタル放
送波を活用した災害情報伝達手段は、このIPDC型データ放送を用いて災
害情報を伝達するものである。
また、本手段は情報交換言語として EDXL を採用する。EDXL とは
Emergency Data eXchange Language の略である。
以降、
当文書の中で
「EDXL」
と表現する場合、消防庁の標準定義フォーマット(別添参照)に準拠した
「EDXL」を指す。
(参考)
EDXL は、通信に関する標準化団体 OASIS により、災害情報管理・処理のた
めに XML で定義された文書形式で、
異なるシステム間で情報の伝送を行うため
の標準記述形式である。これは、L アラートにおいても一部拡張され「コモンズ
EDXL」として採用されている。
消防庁が平成 28 年度に実施した「災害情報伝達手段等の高度化事業」におい
ては、加古川市における V-Low マルチメディア放送を活用した同報系システム
の整備・実証に当たり、文字情報を伝送できる「コモンズ EDXL」をマルチメデ
ィア(音声、画像等)の伝達を可能とするよう拡張した EDXL が導入された。
地上デジタル放送波を活用した情報伝達手段において用いられる EDXL につい
ても、V-Low マルチメディア放送を活用した同報系システムに用いられた
EDXL を地上デジタル放送波用に拡張したものを活用する。
(屋外スピーカー、
屋内受信機、デジタルサイネージ、避難所の館内放送設備等に音声・文字・画像
情報を伝送できるだけでなく、避難所の施錠装置や照明の操作等も可能である。)現状、開発・製造が見込まれる当該伝達手段の受信機等においては、文字や
音声、
デジタルサイネージへの表示、
受信機のソフトウェアアップデート等が
可能となっているが、将来的には、市町村等のニーズに応じて、サービス提供
- 5 -
事業者等において、
映像や電子ファイル、
センサー信号等の伝送が可能となる
設備・機器の開発や製造が行われる可能性がある。
IPDC型データ放送については、
地上デジタル放送波の特性
(一斉同報、
高い耐障害性、各世帯でのテレビ受信環境の普及等)を活かし、デジタルサイ
ネージ等の多様なIP端末に情報伝達が可能な技術として、IPDCフォー
ラムにおいて、規格化や技術仕様検討等が行われ、アナログテレビ放送(VH
F)の跡地利用として、事業化が試みられたマルチメディア放送(V-hig
h/V-Low)に実装された技術である。
本手段のシステム構成については、次のとおりである(図 1)。図 1 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の構成
(1市町村の操作端末)
後述する要件【3 - (3)】を満たすことができれば、既存の一斉同報のイン
ターネットサービスや防災行政無線操作卓等からの情報発信も可能である。
操作端末から入力する災害情報は、EDXL で記述され、情報を伝送する。
(1市町村〜2統合運用調整機能(バックエンド機能))指定の地上デジタル放送事業者に対して EDXL を伝送するメッセージルー
ティングを行う。情報が適切に送信されたことを市町村庁舎の操作端末に
返信する。
(2統合運用調整機能(バックエンド機能)〜3放送事業者)
EDXL で記述された災害情報を、放送事業者の基幹放送設備に接続するI
PDC連携装置において、TS(トランスポートストリーム:放送用のコン
テナ形式)に変換し、基幹放送設備に出力し、地上デジタル放送波に重畳さ
れ、情報が伝送される。
2統合運用調整機能
(バックエンド機能)
- 6 -
(3放送事業者〜4屋外スピーカー・屋内受信機等)
屋外スピーカー・屋内受信機において、音声・文字表示等により住民等へ災
害情報を伝達する。
受信し処理した文書IDに動作結果等を付して、LPWA等の通信網を通じてアンサーバックを行うことも可能となっている(拡
張的な機能)。(2) 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の利点(メリット)
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段については、次の利点がある。
ア 本手段に用いているIPDC型データ放送は、情報を既存のコンピューター
ネットワークに載せることが容易であるため、様々な機器・デバイスに情報を伝
送することができる。
イ 既存の地上デジタル放送網を活用するため、市町村にとって新規の設備整備
の負担が少ない。また、運用保守については、バックエンドを運営する事業者
及び地上デジタル放送事業者との利用契約を締結する形式となるため、これら
の設備等の保守は不要となり、市町村が自ら整備した屋外スピーカーや屋内受
信機の保守管理を行うこととなる。
なお、他営網を用いること、限られた伝送能力を複数の市町村がシェアして
利用する場合があることから、同様の特性を持つ他の災害情報伝達手段と同様
に、放送波の利用には制限(先着順に放送)や一定のルール(1回の情報発信
の音声ファイルの大きさ)が生じうることに注意が必要である。
ウ 地上デジタル放送の対象地域は、県域(又は広域)であるため、広域避難を想
定した場合でも、市町村外の住民に情報伝達が可能である。
エ テレビコンセントに接続した同軸ケーブルと屋内受信機を接続することで、
屋内での情報受信が可能となり、アンテナ工事等が不要のため、比較的安価に
屋内受信機を配備することができる。
(3) 情報伝達の流れ
市町村の防災担当職員は、
入力
(送信)
システムを経由して災害情報を入力し、
バックエンドでは、認証アカウンティングを含む情報交換網の中核を担い災害
情報のルーティング、キューイングを行う。
災害情報が放送局内に届くと、IPDC連携装置で TS(トランスポートスト
リーム)という形式に変換され、地上デジタル放送の本放送の TS とともに多重
化され、送信所から送出される。送出された TS は、屋外スピーカーや屋内受信
機で受信され、音声等で伝達される。
(図2)
- 7 -
図 2 情報伝達の流れのイメージ
2 情報伝達システムの詳細
上記1(3)に記載したとおり、地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段
は、1入力(送信)システム、2統合運用調整機能(バックエンド機能)
、3テレビ
局マスター設備(IPDC連携装置、多重化装置)
、4屋外スピーカー、屋内受信機
で構成される。以下に各構成の詳細を示す。
(1) 入力(送信)システム
入力(送信)システムは、市町村の防災担当職員が容易に使用できるユーザー
インターフェース(UI)を有し、電子署名に対応することが可能で、EDXL を出
力する機能があれば、
専用のシステム等に限定されるものではない。
一斉送信シ
ステムのクラウド型の WEB アプリケーションや既存の災害情報システムの入
力システムを活用することを想定している。
なお、本手段のための専用の入力(送信)システムを構築する場合、災害時にお
いて防災担当職員は複数の情報伝達手段への入力作業が必要となり、情報伝達
業務が増大することにつながるため、近年市町村で導入されている一斉送信シ
ステムなどから、統合運用調整機能(バックエンド機能)
(後述(2)を参照。)に対して、EDXL を生成し連携することが効果的である。
(ワンソース・マルチ
ユースによる最適化)
実証では、一斉送信システム)と連携し、情報伝達が可能であることが確認さ
れている。また、市町村防災行政無線(同報系)と一斉送信システムとを連携さ
せ、
防災行政無線の操作端末から発信された災害情報を、
一斉送信システムを経
由して FAX や一斉架電システム、登録制メールと連携させている場合があり、
実証においても入力システムとして利用するのではなく、連携インターフェイ
スとして活用し、防災行政無線からのテキストや音声を自動的に取得する検証
を行い、
擬似的な検証環境において連携可能であることが確認されている。
この
屋外スピーカー
入力(送信)
システム
統合運用調整機能
(バックエンド機能)
- 8 -
ことから、
既存の防災行政無線を活用し、
一斉送信システムを連携させることに
より、モデル実証で確認されたような情報伝達方法を導入することも可能であ
る。
一方、
EDXL において記述可能な項目は多岐にわたるが、
既存のクラウド型の
一斉送信システムの多くは、全ての EDXL の記述項目に対応していないことか
ら、
本手段の機能を十分に活かすためには、
既存の一斉送信システムにおいて入
力項目を追加する等により EDXL に対応させること、又は EDXL 対応に最適化
された入力システムを利用すること等が必要となる。
(2) 統合運用調整機能(バックエンド機能)
統合運用調整機能(バックエンド機能)は、指定の地上デジタル放送事業者に
対して EDXL を伝送するメッセージルーティングを行い、情報が適切に送信さ
れたことを市町村の入力(送信)システムに返却するものであり、情報セキュリ
ティに必要となる、認証(市町村からの送信であるという真正性の確認)
、認可
(アクセス権限の確認)
、アカウンティング(市町村からの送信履歴等の収集)
を含む情報交換網の中核を担うものである。入力(送信)システムから災害情報
を受信し、受信した EDXL についてバリデーションチェック(入力されたデー
タが入力規則に対して適切に記述されているかを確認すること。
)を行い、電子
署名の真正性を確認した後、放送局内のIPDC連携装置に配信する。
複数の市町村からの情報発信を受信し、複数の放送事業者に対してルーティ
ングを動的に最適化するための重要な役割を担う。
また、隣接する自治体において、統合運用調整機能(バックエンド機能)を提
供する事業者が異なる場合は、
必要に応じ、
それぞれの自治体からの要請を踏ま
え連携を図る。
統合運用調整機能(バックエンド機能)は、以下の機能を担う。
ア 電子署名の証明書の認証局機能
市町村から発信される災害情報が記載された EDXL には、
真正性を担保し、
なりすましを防止するために電子署名
(XML 署名)
を付すことが必須とされ、
必ず市町村の電子署名が付されることから、
統合運用調整機能
(バックエンド
機能)は、その電子署名に必要なクライアント証明書の発行・管理を行う機能
を有している。
イ ID 発番・管理
統合運用調整機能(バックエンド機能)は、複数の入力システムから EDXL
を受信することが想定されることから、管理に必要となる ID を一意とするた
め、ID の発番・管理を行う機能を有している。この機能により、複数の市町
村からの災害情報や添付された音声ファイルをシステム全体で一意に取り扱
- 9 -
うことが可能となり、ログ管理が可能となる。
ウ 優先順位制御
受信した情報を優先基準に基づき順序を入れ替えて配信する機能を有して
いる。具体的には、国民保護情報や津波警報等、緊急度の高い情報を他の配信
情報よりも優先して配信する等の機能がある。
エ メッセージルーティング
入力(送信)システムから受け取った災害情報を指定する放送事業者に対
して送信する(ルーティングする)機能を有している。
オ メッセージキューイング
入力(送信)システムから受け取った災害情報を放送事業者に「確実に」、「重複することなく」、「順序通りに」届ける非同期の機能を有している。
(注記) メッセージキューイングとは、機器やプログラムの間でデータの受け渡
しを非同期に行う手法をいう。
カ ログ管理
市町村からの情報発信、放送事業者からの放送、屋外同報系装置・屋内受信
機での受信などのログを全て収集管理する。
(3) テレビ局マスター設備
地上デジタル放送局内では、統合運用調整機能(バックエンド機能)から送出
された EDXL で記述された災害情報を、放送事業者の基幹放送設備に接続する
IPDC連携装置において、IP パケット(UDP/IP)化し、TS(トランスポー
トストリーム:放送用のコンテナ形式)に変換し、多重化装置に出力し、地上デ
ジタル放送波に重畳する。
ア IPDC連携装置
IPDC連携装置は、主として以下の機能を有する。
1 情報入力部
統合運用調整機能(バックエンド機能)とのインターフェイスを担う機能
であり、統合運用調整機能(バックエンド機能)を有する機器との接続は
災害時においても信頼性が高く(回線の完全2重化)
、高セキュリティの
通信回線(閉域網)を用いることが重要である。入力された災害情報をそ
のまま2情報処理部に出力する。
2情報処理部
- 10 -
入力された災害情報を地上デジタル放送波に重畳するために必要なIPD
C型データ放送用 TS に変換し、情報送出部に送出する。
3情報送出部
指定されたタイミングで基幹放送設備へ情報を送出する(原則は即時送出)。4運行執行部
上記1から3の運用状況を監視できる機能を有しており、どの市町村から
どのような情報が放送されたかを確認できる機能を有している。
イ 多重化装置
多重化装置では、IPDC連携装置から送出されたIPDC型データ放送用
TS を本放送(テレビサービス用 TS)に重畳し、放送される。その際、多重化装
置のいくつかの設定値の変更が必要となる。
(4) 屋外スピーカー・屋内受信機
防災行政無線と同様に、
音声等により住民へ災害情報を伝達する設備・機器で
あり、IPDC型データ放送を受信して、EDXL に記述を解釈し、音声鳴動、文
字表示等を行う。
地上デジタル放送波は広域の電波であることから、
市町村の災害情報
(EDXL)
を載せたIPDC型データ放送は、他の市町村の屋外スピーカーや屋内受信機
においても受信されることとなるが、受信機に設定された自治体コードとIP
DC型データ放送により送信された EDXL の自治体コードが一致しない限り動
作しないため、
他の市町村が設置した屋外スピーカーや屋内受信機
(異なる自治
体コードで設定したもの)が音声鳴動すること等は生じない。
ア 屋外スピーカー
屋外スピーカーは、市町村防災行政無線(同報系)等と同様に、受信部、屋外
スピーカー、非常電源、鋼管柱等から構成される。
受信部を地上デジタル放送波に対応した機器に交換することで既存の屋外ス
ピーカーを活用することも可能である。
イ 屋内受信機
屋内受信機については、防災行政無線の戸別受信機と同等の機能を有する必
要がある。具体的には、平成 30 年 3 月に公開された「防災行政無線等の戸別受
信機の標準的なモデル等のあり方に関する検討会報告書」
にある
「標準的なモデ
ルの機能一覧」
をベースに、
IPDC型データ放送の特性を加味して技術的要件
を整理する。
- 11 -
 音声受信:音声放送の受信
 緊急一括呼出:緊急時に音量を自動で最大に調整
(緊急事態を知らせる機能) 選択呼出:一括呼出、グループ呼出、個別呼出
 録音再生:放送の録音再生が可能
 停電時対応:商用電源から内蔵の電池へ自動切替
 内蔵電池の動作時間:24 時間以上(例:放送5分/待受け 55 分の条件)
 外部アンテナ接続:外付けのアンテナが接続可能
 受信機の状態を表示できる機能
EDXL の活用により、受信機のファームウェアアップデートが可能である。
EDXL には、
受信機の設定情報の更新等、
ファームウェアアップデートを行うた
めの仕様が定義されており、地上デジタル放送波に重畳することで遠隔でシス
テムアップデートが可能となる。後述(5)アのアンサーバック機能と組み合わ
せることで、製品の不具合改修、機能改善等に活用することが可能で、ソフトウ
ェアを随時アップデートすることで、システム全体の運用寿命を延ばすことが
可能となる。
(5) その他の追加的な機能
EDXL が情報受信者
(Recipient)
・情報消費者
(Consumer)
の属性に応じて、
伝達内容を記述した表現形を多様な体現形に変換することができるため、災害
情報の伝達における様々な場面や情報消費者への幅広い応用が可能となる。実
証で実施した内容を中心に追加的機能を以下に示す。
ア アンサーバック
LPWA 等の通信網を利用することで、アンサーバックを行うことができる。
アンサーバックは以下の2種類に大別することができる。
1 状態通知・変化/エラー通知
定期的(3時間に1回、1日に1回等)に受信機側から機器の状態や異常の
有無、電波の受信感度などの情報を統合運用調整機能(バックエンド機能)に
回答する。
なお、
状態通知のアンサーバックを活用して、
市町村の情報伝達手段の管理
PC や警告灯等で機器の異常を通知することや、受信機の保守事業者に連絡す
ることも可能である。
2 指示応答/アンケート回答
受信した EDXL に報告要求が記述されていた場合、受信機側から統合運用
調整機能(バックエンド機能)に対して受信状態を応答する。また、受信した
EDXL にアンケート要求があり、
情報消費者が受信機の操作によって、
回答し
- 12 -
た内容を応答する。
(参考)
実証では LPWA(Low Power Wide Area network:低消費電力で長距離の通信
ができる無線通信技術)の1つである Sigfox を用いてアンサーバックを行った
が、
他の事業者が提供するLPWA網や、
他の通信網を活用してアンサーバック
を行うことも可能である。
イ 多言語対応
EDXL は、1つの伝達文に複数の言語表現(テキスト・音声)を含めて記述す
ることが可能となっており、受信機側の言語設定に応じて指定された言語で音
声放送・テキストの表示を行うことができる(イメージは図3を参照。)。
多言語の音声やテキストデータは、
あらかじめ市町村で用意するか、
又は多言
語翻訳機能(テキストからの自動音声合成を含む。
)を有するシステム等を利用
することが考えられる。
図 3 多言語対応のイメージ
(右写真は屋内受信機(試作機)の言語設定画面)
- 13 -
ウ 聴覚に障害のある住民への情報伝達
EDXL を活用することにより、聴覚に障害のある住民用の屋内信号装置と屋
内受信機を協調して動作させることができる。
(参考)
実証では、屋内信号装置として一般に使用されている Bellman & Symfon®の
ベルマンビジットシステム(マルチセンサ発信機、フラッシュ受信機、ベッドシ
ェーカー)
との連携が可能であることが確認された。
屋内受信機と屋内信号装置
が連携し、屋内受信機の受信情報を光・振動に変換することが可能である。
具体的な設定方法としては、
屋内受信機とマルチセンサ発信機を 3.5 mmステレ
オミニプラグ付きのオーディオケーブルで接続し、マルチセンサ発信機はフラ
ッシュ受信機と無線通信を行い、フラッシュ受信機とベッドシェーカーを配線
接続した。
(接続イメージは図4を参照)
図 4 屋内受信機とマルチセンサ発信器等との接続イメージ
(右写真は、実証で設定した際の状況)
エ コミュニティ FM との連携
屋内受信機にラジオ機能が備わっている場合は、地上デジタル放送波で特定
の日時に特定の周波数
(臨時災害放送局の周波数)
に同調してラジオを起動する
ことを記述した EDXL を放送し、指定日時に自動的に屋内受信機のラジオ機能
から臨時災害放送局等の放送を受信することができる(図5参照。)。
地上デジタル放送(広域の情報)と臨時災害放送局(狭域の情報)が連携する
ことで、災害時に、住民に対して、より細やかな情報を伝達することができる。
インターネットが利用不能な状態においても、
市長のメッセージや医療情報、罹災証明書発行、給水や炊き出しなどを住民に伝達する手段として有効に利用す
ることが考えられる。
- 14 -
図 5 コミュニティ FM との連携のイメージ
(右写真は、コミュニティ FM の周波数に自動で設定されている状況)
オ デジタルサイネージ等との連携
民間企業等が設置・運用しているデジタルサイネージやテレビに対して、
市町
村が伝達する災害情報を表示させることができる(図6)。デジタルサイネージディスプレイに HDMI の空きポートがある場合、ディス
プレイに EDXL を体現すること(表示すること)ができるアプリケーションを
搭載した受信機とディスプレイとを直接接続する(図7)
。ディスプレイに空き
ポートがない場合、HDMI 切替機を接続する(図8)
。受信機がデジタルサイネ
ージに対して災害情報を表示する際、表示切り替え指示をサイネージ制御装置
側に送り、サイネージ制御装置がパネルの表示切り替え制御を行うことで災害
情報を表示する。HDMI 切替機を挟む場合、HDMI 切替機の機種によっては、
制御が効かないことがあるので留意が必要である。
また、高機能な HDMI 切替機を用いて、ディスプレイの制御権をやり取りす
ることにとどまらず、既存のディスプレイ上の表示画面にオーバーレイやワイ
プの画面表示で場所や場面に応じた表示を行うことができる(図9)。導入にあたっては、民間施設のデジタルサイネージの表示面の一部又は全部
を、どういう状況下において、市町村からの災害情報を表示するのか、どういう
状況において、
元に戻すのかについて、
予め自治体とサイネージを管理する民間
事業者との間で調整が必要となる。
- 15 -
【今後の可能性】
民間施設においても、
災害が発生した場合、
施設管理者において当該施設
に滞在する者の避難誘導等、
在館者の安全を確保する取組みが行われる(消防法令に基づき、防火管理者や防災管理者が選任されている場合は、防火・
防災管理業務の一環として避難誘導等が行われる。)そのため、受信機が受信した市町村からの災害情報を自動的にデジタル
サイネージに連携するだけでなく、施設管理者の判断によって伝達のタイ
ミングや内容を適宜コントロールする機能が必要となる場合が考えられ、
今後、そのコントロールを含めて高機能な HDMI で制御することが可能と
なることが見込まれる。
図 6 デジタルサイネージへの災害情報の表示
右写真:軽井沢町での実証の例
左写真:中央区での実証の例
図 7 サイネージパネルに空きポート 図 8 HDMI スイッチャーを接続する
がある場合の論理構成 場合の論理構成
- 16 -
図 9 既存のディスプレイ上の表示画面にテロップ(画面下部分)を表示した状況
カ 避難所の解錠
EDXL を用いて、避難所の鍵ボックスの解錠・施錠を行うことができる。
「災害情報伝達手段等の高度化事業」を通じて、兵庫県加古川市においては、
既に導入されている(加古川市に設置されている避難所の鍵ボックスは図 10 を
参照。)。
一般には、避難所の開設は、市町村職員が避難所へ行き、解錠等を行っている
が、
EDXL 及びIPDC型データ放送を活用することで、
遠隔で鍵ボックスを解
錠し、避難した住民が解錠・施設内に避難することができる。
図 10 避難所の鍵ボックス
キ 避難者の行動捕捉
屋内受信機に Bluetooth 通信機能が搭載されている場合、屋内受信機と
Bluetooth 検知器や Bluetooth 通信検知アプリを搭載したスマートフォンを用
いて、避難者の行動を捕捉し、市町村庁舎(災害対策本部等)で管理 PC の地
図上で確認することができる。現状では、この機能の導入に当たっては、民間
事業者のサービスを利用することが考えられる。
テロップの表示
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(参考)
実証では、みまもりタグの仕様に従って、Bluetooth のビーコンを屋内受信機
から発信し、ALSOK の「みまもりタグ感知器」や ALSOK のスマートフォンア
プリで Bluetooth を検知し、
「みまもりタグ検知器」の設置場所情報やスマート
フォンの GPS 位置情報から避難者の行動を捕捉することができる。
(図 11)
図 11 実証で実施した避難者行動の捕捉イメージ
ク FM トランスミッター装置との連携
屋内受信機のボタンを押下して、
避難所への避難等の意思を市町
村へ伝達
屋内受信機を持って
避難所へ避難
Bluetooth 検知器と屋内受信機との
通信により、避難者の行動を捕捉
市町村(災害対策本部)の管理 PC の地図上で避難者の行動を把握
Bluetooth 検知器の例 みまもりアプリの例
- 18 -
屋内受信機と FM トランスミッター装置を連携させることで、地上デジタル
放送波を用いて屋内受信機で受信した音声ファイルを FM トランスミッター装
置で情報伝達することができる。
想定される利活用シーンとしては、避難所の屋外で車両に避難している住民
への FM ラジオを用いた情報伝達、避難所内で掲示板やデジタルサイネージだ
けでなく、音声による情報伝達等が考えられる。
これらは、
EDXL を用いてプログラムすることで可能となり、
災害時の様々な
場面で、ツールを組み合わせて住民への情報伝達が可能となると考えられる。
(参考)EDXL の応用例として「メッセージフェリーデバイス」の利用
インターネットが使用できない状況下であっても、災害対策本部と避難所と
の間でデジタル情報の交換を行う場合に、DTN(Delay Tolerant Networking:遅
延耐性ネットワーク)環境を構築し、
「メッセージフェリーデバイス」を用いる
ことで、
交換する情報を EDXL で記述した上で
「メッセージフェリーデバイス」
に載せ、
「メッセージフェリーデバイス」同士が近づくだけで何ら操作がいらず
に情報を伝搬することができる。
ケ J アラート連携
J アラートとの連携も可能である。J アラート受信機と入力システムを接続す
ること等により、J アラートで配信される国民保護情報や津波情報等の災害情報
を伝達することができる。
(参考)J アラート連携の具体的な事例
兵庫県加古川市において、J アラート受信機のイーサネットで接続したシング
ルボードコンピュータで EDXL を生成し、
バックエンドに連携することで、
J ア
ラートで配信される国民保護情報や津波警報等の災害情報を地上デジタル放送
波に重畳することとしている。
- 19 -
3 情報伝達システムの標準とするべき技術的要件について
上記1及び2で示した実証から得られた技術的知見を踏まえ、
本項においては、本手段の中核となる技術・機器について標準とするべき技術的要件を提示し、
これに準
拠したシステムや機器等を市町村が調達することで事業者間の競争性を確保するこ
とが期待されるものである。
システム全体としての共通的動作を保証しつつ、
サービ
ス・機器提供事業者間の競争性を確保する観点から、
以下の1から3を満たす必要が
ある。
1 受信機は市町村で共通に使用できなければならない
テレビ受像機製品と同様に、ベンダー(メーカー)を問わず、災害情報伝達の
仕組みとしての基本的機能が保証され、全国すべてのテレビ局(放送事業者)
の電波を受信し、共通的に動作しなければならない。受信機は、市町村コード
を設定することで、
すべての市町村を個別特定して利用できなければならない。
2 空中波直接受信、再送信受信にかかわらず動作する
再送信については同一周波数パススルー方式、周波数変換パススルー方式に対
応しなければならない。周波数変換パススルー方式の場合、UHF 帯以外の帯域
(CATV 帯域)にも対応しなければならない。
3 市町村が複数の放送事業者、
サービス提供事業者等から調達しても統一した動
作が保証できる
分割調達や複数年度にまたがる調達によって、複数の事業者の製品が混在して
いても、相互運用することができなければならない。
また、m:nモデルにおいては、輻輳する恐れがあることから、IPDC 方式が蓄積
型放送である特性を踏まえつつ、輻輳による情報発信から受信機動作までの時間が
一定以内に収まるよう、以下の4及び5を満たす必要がある
4 市町村が生成する災害情報を記述した音声ファイル等のデータ量の大きさの
上限について、事前に市町村相互で運用ルールを定めなければならない。
5 回線の圧迫を緩和する目的で、
可能な限り情報発信のタイミングをずらすため、
市町村相互での情報発信のタイミングの事前共有等の運用ルールを定めなけ
ればならない。
本システムは、
災害情報を伝達するための手段であり、
安定的かつ継続的に運用
されることが重要であることから、次の6から8に留意する必要がある。
6 受信機において再生される音声品質は、確実な災害情報伝達のため、市町村防
災行政無線(同報系)と同等以上の音質を確保しなければならない。
7 地上デジタル放送事業者においては、
災害情報伝達のために利用を許諾したデ
- 20 -
ータ放送帯域、
及び当該帯域に重畳する音声ファイル等のデータ量の上限に基
づき、
当該帯域を共用する市町村数に上限を設けサービス品質を確保しなけれ
ばならない。
8 地上デジタル放送事業者においては、
災害情報伝達のために供出するデータ放
送帯域は、商業利用も含めた他の用途にも利用されるものであるが、市町村か
らの災害情報が送信された際は、
他に優先して当該データ放送帯域を用いた放
送を行うこと。
そしてその満たすべき技術的要件を(1)から(7)までまとめる。なお、以下の
技術的要件を満たすシステムや機器等が、追加的機能を搭載することを制限しない。
また、1で述べたように、市町村における本手段の整備においては、災害情報交換
言語として EDXL を採用することを標準の要件とし、
サービス・機器提供事業者毎に
仕様が異なることにつながりやすい屋内受信機等の仕様について、
標準仕様に準拠し
た製品を調達することが重要である。
(1) 基本的な要件
情報伝達システムの各構成要素(入力(送信)システムから地上デジタル放送
設備を経由して受信機に至るまでの情報伝達経路)
について、
異なる放送事業者、
サービス提供事業者等であっても容易に災害情報の伝送、設備・機器の接続・動
作が可能となるよう EDXL を利用でき、確実に動作するものとすること。各構
成要素の一部に EDXL を利用できない要素が含まれる場合、本ガイドラインに
おける標準とするべき技術的要件に準拠したシステムではない。
本手段の特徴的な技術は、災害情報交換言語 EDXL であり、EDXL が標準定
義フォーマットに基づき記述され、
情報伝送されることにより、
屋外スピーカー、
屋内受信機のみならず、
他の IP 端末との連携も可能となる。
(EDXL の標準定義
フォーマットは別添資料に示す。)また、入力(送信)システムから受信機までを一つのシステムと捉え、セキュリテ
ィの3要素(機密性、可用性、完全性)の確保を含め、システム全体におけるセキュ
リティを担保しなければならない。
(2) EDXL の標準仕様について
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段では、情報交換言語として
EDXL を用いて災害情報を伝送する。IPDC型データ放送の特徴の一つとし
て、
情報の伝送が容易であることを示したが、
その利点を最大限に活かすため、
伝送路や周波数帯、ネットワーク、ハードウェアに依存することなく、オープン
- 21 -
で柔軟な情報交換言語を採用する。
(参考)EDXL と4ロールモデル
地上デジタルテレビ放送は原則として、
情報発信者と情報伝達者が必ず一致し、放送局は放送内容から送信まですべての責任を負う。地上デジタル放送波を活用した
IPDC型データ放送では、
情報発信者は市町村であり、
市町村から災害情報配信の
放送データ重畳委託の契約を根拠として、
放送法等関係法令の規定を踏まえ、
市町村
の災害情報を放送することとなる。
また、地上デジタルテレビ放送は、
「公衆によって直接受信されることを目的とす
る電気通信の送信」であり、テレビ放送は一般社団法人電波産業会(ARIB)で標準
化されたテレビ受像機にて受信され、
「公衆」がその情報を受け取ることとなる。地
上デジタル放送波を活用したIPDC型データ放送の場合、防災行政無線と同等の
機能を有するために必要となる基本的な動作を行うためのアプリケーションを標準
化しつつ、その他多様な機能やサービスを実装した受信機が出現する可能性がある。
先例としては、
「災害情報伝達手段等の高度化事業」
における V-Low マルチメディア
放送において、EDXL を用いて避難所の鍵ボックスや避難階段の照明に対する操作
が可能となった。
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段に用いる EDXL においては、テ
レビ放送とは異なる属性に対して役割を定義する必要があり、それを 4 ロールモデ
ルとして定義している。
それぞれの期待される役割等は EDXL の中に
「originatorRole」
「senderRole」
「recipientRole」
「consumerRole」として記述されている。
図 12 EDXL における4ロールモデルのイメージ
1 情報発信者(Originator)
意味を記述する主体。
入力
(送信)
システムを利用し、
1 個の表現形として様々
な体現形に変換可能な EDXL を生成し、情報伝達者(Sender)にむけて、情報
- 22 -
送信を依頼する。
2 情報伝達者(Sender)
情報発信者が制作した表現形のコンテンツを受領し、公衆たる情報消費者に
向けて配信する。ルーティング・アカウンティング・優先順位制御・ログ管理・
送出等を担う。放送法において放送番組編集の自由を定め、放送事業者は、この
枠組みの中で、自主自律の下、自らの責任において放送番組を編集し、市町村と
の契約に基づいて、適法に情報を送出する。
3 情報受信者(Recipient)
EDXL を受信・解釈する機器。表現形である EDXL を情報消費者属性に応じ
て様々な形態で提供(体現形)する。例えば、
「音声を再生する」
「デジタルサイ
ネージに文字情報を表示する」
「鍵ボックスを解錠する」等で表現された EDXL
を解釈し、その表現のとおり動作等を行う。
4 情報消費者(Consumer)
動作を「期待」される人・モノ(公衆)
。情報受信者によって体現された情報
を受け取り、避難行動を取ったり、避難所の鍵が開いたりする。
(3)入力(送信)システム
入力(送信)システムは以下アからウの要件を満たさなければならない。エに
ついては市町村が必要と判断した場合、対応しなければならない。
ア EDXL を生成すること
入力(送信)システムに入力された災害情報から EDXL を生成し、電子署名
の証明書の認証局機能及びメッセージルーティング機能が要求するプロトコル
で連携する機能を有すること。その際、統合運用調整機能(バックエンド機能)
から都度、ID が発番されるので、その発番された ID を利用しなければならな
い。
イ 電子署名をつけること
情報の改ざん防止と発信者の同一性を担保するため、電子署名(XML 署名)
をつける機能を有すること。
なお、
デジタル証明書を発行する認証局については
特に指定しない。
ウ 統合運用調整機能が要求するプロトコルで連携できること
電子署名の証明書の認証局機能及び放送事業者間のメッセージルーティング
機能等を提供する統合運用調整機能
(バックエンド機能)
が要求するプロトコル
- 23 -
で連携する機能を有すること。
(市町村において必要とする場合の追加的な機能)
上記アからウまでの標準仕様に加え、
市町村において、
モデル検証で実施した多様な
情報伝達方法を導入するため、次の機能を追加することが考えられる。
エ J アラート連携
市町村が必要と判断した場合、J アラート受信機と連携し、国民保護情報や大
津波警報等の情報を EDXL 化し、統合運用調整機能(バックエンド機能)へ連
携しなければならない。
ただし、J アラートは、その情報の特性上、広範囲(県域または複数の都道府
県に跨って)を対象に発令されることが多い。その際、一つの放送事業者に対し
て複数の市町村が、
同じ内容の放送要求をほぼ同時に行った場合、
放送事業者は
それらの放送要求に対して一つずつ先着順に、
放送を行っていくため、
順番の遅
い市町村の情報発信に遅れが出る可能性がある。このような遅延を防止するた
め、地上デジタル放送の県域または広域圏を放送対象地域とする特性を活かし、
同一内容の放送を一つずつ先着順に放送するのではなく、
一回の放送で、
県域ま
たは広域圏に情報発信するなど、関係者間においてあらかじめ運用に関する取
り決めを行っておくことが重要である。
(4)統合運用調整機能(バックエンド機能)
統合運用調整機能
(バックエンド機能)
は、m:nモデルに必須の機能であり、
以下4項目の要件を満たさなければならない。
ア 電子署名の証明書の認証局機能の提供
統合運用調整機能
(バックエンド機能)
は、
EDXL に付すべき電子署名(XML署名)
に必要なクライアント証明書の発行・管理を行う機能及び外部の認証局機
能との連携機能を提供しなければならない。
イ 優先順位制御機能の提供
市町村から受信した災害情報の情報種に応じて、放送事業者への連携優先順
位を制御する機能を有すること。情報種ごとの優先順位については市町村と協
議の上確定すること。また、複数の市町村の情報を取り扱う際には、関係する市
町村間においてあらかじめ運用に関する取り決めを行わなくてはならない。
ウ メッセージルーティング機能の提供
入力システムから受け取った災害情報を、指定する放送事業者に対してルー
ティングする機能を有すること。
- 24 -
複数の市町村、
複数の放送事業者間におけるルーティングは、
放送事業者の放
送休止期間やIPDCサービスを提供できない時間帯に対してのルーティング
先の切り替え等の処理だけでなく、ルーティングテーブルを最適化してシステ
ム全体に通知する機能を有すること。
エ メッセージキューイング機能の提供
放送事業者
(IPDC連携装置)
に対しメッセージキューイング機能を提供し、
市町村の災害情報を連携しなければならない。
(5)IPDC連携装置
設備は、
放送事業者のマスター設備内に設置する。
信頼性が必要なため冗⻑系
統を必須とし、
現用系と予備系で完全に二重構成を有すること。
機能要件として
は以下2項目の要件を満たさなければならない。
ア 統合運用調整機能(バックエンド機能)とのインターフェイス機能の提供
EDXL を受信し、電子署名の検証機能を有するとともに、必要に応じて、送出
を停止する機能を有すること。
イ FLUTE / AL-FEC 送出機能の提供
m:nモデルの運用に対応するため、適切に EDXL を FLUTE / AL-FEC に変
換し TS に重畳して送出する機能を有すること。
放送局間で共通する運用規定を
定めて受信機能と同期して安定かつ確実な動作が保証できること。
(6)受信機の標準仕様
受信機の標準的な仕様については、市町村防災行政無線(同報系)の戸別受信
機の標準モデル機能を踏まえ、以下アからコの要件 10 項目を満たさなければな
らない。
サからソの 5 項目については市町村が必要と判断した場合、
対応しなけ
ればならない。
ア 音声受信:音声ファイルの受信
地上デジタル放送波を受信し、IPDC型データ放送に重畳された EDXL デ
ータを解析し、格納された音声ファイル(市町村からの災害情報)をスピーカー
にて聞くことができる機能を有すること。特に、EDXL に含まれる自治体コー
ド、エリア ID、グループコードを識別し、適切に動作をする機能を有しなけれ
ばならない。
- 25 -
また、
市町村が必要と認めた場合、
アンサーバック機能を提供しなければなら
ない。
イ 緊急一括呼出:緊急時に音量を自動で最大に調整(緊急事態を知らせる機能)
緊急一括放送を受信した場合、
受信機の音量設定に関係なく、
当該受信機の最
大音量で放送内容を聞くことができる機能を有すること。
ウ 選択呼出:一括呼出、グループ呼出、個別呼出
地区単位やあらかじめ設定したグループ
(消防団や高齢者世帯、
土砂災害警戒
区域内にある世帯等)に対する放送(グループ呼出)や、特定の屋内受信機だけ
を鳴動させるような放送(個別呼出)に対応できる機能を有すること。
エ 録音再生:放送の録音再生が可能
内蔵メモリ等により放送内容を録音かつ再生できる機能を有すること。
オ 停電時対応:商用電源から内蔵の電池へ自動切替
通常は商用電源で運用していて、
停電時等に内蔵の電池
(乾電池やリチウムイ
オン電池、ニッケル水素電池等)に自動で切り替わり、停電時等の放送を聞き漏
らさないようにする機能を有すること。
カ 内蔵電池の動作時間:24 時間以上(例:放送5分/待受け 55 分の条件)
停電時等に内蔵電池での運用に切り替わった際に、内蔵電池において 24 時間
以上の運用・動作を可能とする機能を有すること。
キ 外部アンテナ接続:外付けのアンテナが接続可能
屋内受信機を設置する住戸に設置されているテレビコンセント(地上デジタ
ル放送を受信するためのコンセント)に接続するための端子(コネクタ等)を有
し、接続すると自動でテレビコンセントからの受信に切り替わる機能を有する。
屋外において、地上デジタル放送波(空中波)を受信するための本体付属のア
ンテナを有すること。
ク 受信機の状態を表示できる機能
電波の受信状況、
待受状態、
録音状態等の受信機の状態を表示できる機能を有
すること。
ケ 時刻同期及び保持機能
放送により蓄積された情報を EDXL の内容により時刻指定再生などが可能に
なるよう時刻を取得し保持できる機能を有すること。
- 26 -
コ m:nモデルへの対応機能
統合運用機能と連携して m:n モデルの運用に対応できること。放送によりス
ケジュールされた放送局切り替えや自律的に市町村コードにより特定される放
送役務へ自動同調する機能を有すること。
(市町村において必要とする場合の追加的な機能)
上記アからケまでの標準仕様に加え、
市町村において、
モデル検証で実施した多様な
情報伝達方法を導入するため、次の機能を追加することが考えられる。
サ FM 放送を受信するための機能
FM 放送(76.0MHz〜108.0MHz)を受信し、内蔵するスピーカーにて放送内容
を聞くことができる機能を有し、
EDXL を解析するソフトウェアと連携して FM
受信機能を制御できること。
シ LPWA 通信を行うための機能
屋内受信機の受信状況や作動状況の確認等を行うアンサーバック機能に用い
るため、LPWA(Low Power Wide Area)の通信網と通信ができる機能を有する
こと。
ス Bluetooth 通信を行うための機能
屋内受信機の位置を追跡し、動態把握等を行うため、Bluetooth により通信が
できる機能を有すること。
セ 光により受信したこと等を示すための機能
LED 等が設けられ、屋内受信機が放送を受信したことを光の点灯や点滅で知
らせるための機能を有すること。
ソ 外部機器と接続するための機能
聴覚に障害のある住民に屋内受信機を配備する場合に、フラッシュ受信機や
振動により気づきを与える機器との接続や、放送内容を表示するデジタルサイ
ネージやテレビ等との接続ができるよう、外部機器と接続するための端子を有
すること。
- 27 -
4 導入に当たっての留意事項
市町村が地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の導入について検討す
る場合、まずは当該市町村管内に地上デジタル放送を提供する放送事業者とIPD
C型データ放送の利用が可能かについて協議を行うことが必要となる。放送事業者
との協議が進んだ場合、入力システムの検討、サービス提供事業者の選定・調達、屋
外スピーカーや屋内受信機の調達・整備等の情報伝達システムの整備を進めていく
こととなる。
このような地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の導入検討に際して、
実証で得られた知見等から主な留意事項を以下に示す。
なお、
屋外スピーカー及び屋
内受信機を活用した同報系システムの整備を念頭に置いており、LPWA 網や
Bluetooth 検知など拡張的な機能の導入は含めていない。
(1)入力(送信)システムの検討・導入
入力(送信)システムは、EDXL を作成・送信できる機能があれば、一斉送信
システムや既存の災害情報システムを利用することが可能である。一斉送信シ
ステムを利用する場合、標準定義フォーマットに準拠した EDXL の利用が可能
であるか、作成・送信できる EDXL に制限があるかどうかを確認しておく必要
がある。
(参考)他の同報系システムを既に整備している場合に屋内受信機の配備やデジタ
ルサイネージとの連携等のために本手段を補完的に利用する場合の応用例
既に市町村防災行政無線
(同報系)
等の同報系システムを整備している場合で
あって、本手段の屋内受信機やデジタルサイネージ等との連携等の情報伝達を
補完的に利用するニーズがある場合、既存の同報系システムに一斉送信システ
ムを連携させることにより、一斉送信システムを連携インターフェイスとして
用いて EDXL を自動作成させ、統合運用調整機能(バックエンド機能)への情
報伝送が可能である。
これにより、
従来と同じように、
使い慣れた同報系システムの操作卓を利用し
て、IPDC型データ放送の利用が可能となる。
(2)サービス提供事業者との利用契約
現状では、市町村とサービス提供事業者との間で、統合運用調整機能(バック
エンド機能)
を用いて、
IPDC型データ放送に重畳するための災害情報を記述
した EDXL 伝達文を指定の放送事業者に伝送するサービスの利用契約を結ぶ必
要がある。
統合運用調整機能(バックエンド機能)の利用契約に当たり、仕様書には、次
の要件が満たされているか確認すること。
- 28 -
ア サービス要件
24 時間 365 日サービス提供が可能で、稼働率 99%以上を確保すること。た
だし、
システムメンテナンス等による停止は除く。
システムメンテナンスは、
事前に日時を通知し、
台風や大雨等、
災害の発生が予測される時には実施しな
い。
イ データセンターの要件
・国内のデータセンター内に構築したシステムによる SaaS(Software as a
Service)方式とする。
・データセンターは、
情報セキュリティマネジメントシステムの規格である
JIS Q 27001 又は ISO/IEC 27001 に基づく認証を取得していること。
・データセンターは、
土砂災害特別警戒区域や浸水想定区域などの危険区域
に存在しないものとすること。
(危険区域に存在する場合は危険性に応じ
た必要な対策が講じられていること。)・データセンターは、建築基準法に規定する耐火建築物で、耐震性に優れ、
必要な防火対策・雷対策が講じられているものとすること。
・データセンターへの出入りは常駐警備による入退室管理が 24 時間 365 日
実施され、入室セキュリティは3段階以上とすること。
・回線・設備機器が冗長化されており、障害発生時にも通信が可能であるこ
と。
ウ システムセキュリティ要件
・データベースのデータはバックアップを行っており、
2拠点以上のデータ
センターに保管すること。
・システム稼働状況を 24 時間 365 日監視し、異常を検知した場合には、関
係者に緊急連絡が行われ、障害復旧に当たる体制を整えていること。
・データの保管や持ち出しに対し、機密保持対策が講じられ、外部からのサ
イバー攻撃対策やウイルス対策が実施され、常に最新の監視状態に維持
されていること。
(3)IPDC連携装置の設置及び基幹放送設備との接続
利用しようとする放送事業者の放送局内にIPDC連携装置が未設置の場合、
IPDC連携装置の設置及び基幹放送設備との接続が必要となる。
費用負担については、
市町村及び放送事業者との間で調整が必要となるが、地上デジタル放送波の特性から、複数の市町村が1の放送事業者の放送波を利用
することも可能であることから、都道府県も含めた関係機関で検討することが
望ましい。
(4)地上デジタル放送事業者との利用契約
- 29 -
災害情報をIPDC型データ放送に重畳して放送することについて、市町村
と地上デジタル放送事業者との間で事前協議を行い、利用契約を結ぶ必要があ
る。
利用契約には、次の事項について相互に確認しておくことが望ましい。
• 市町村が住民へ伝達する災害情報の放送データを制作して、これを放送
事業者の放送設備(多重化装置)に入力し、当該放送データを放送事業者
の放送帯域に重畳して配信することの確認
• 放送データを重畳して配信するための利用料の確認
• 市町村において使用する入力(送信)システムや、IPDC型データ放送
を受信する機器(屋外スピーカー、屋内受信機、避難所の鍵ボックス等)
の確認
• 放送事業者は、
放送法及び電波法その他関連法令を遵守し、
自主自律の下、
自らの責任において放送番組の編集ができることの確認
• 放送について、
平時に災害情報以外の情報を配信する場合は、
有事の際に
災害情報を優先して配信することの確認
• 災害情報の内容に誤りがあることが判明した場合、市町村は直ちにその
責任において修正を行うこととし、
修正を行う場合は、
予め放送事業者に
その旨を事前に通知することの確認
(緊急を要する場合は、
事後報告とす
ることができるかについても確認しておくことが望ましい。)。
• 放送休止時間や放送事業者が放送役務を実施できない状況下における免
責等についての対応についての確認
もし、ひとつの放送事業者が複数の市町村と契約をする場合、上記に加え、以
下の確認事項も必要となる。
• それぞれの市町村からの放送要求が同時刻に集中した場合、放送事業者
は放送要求の先着順に実施し、放送までのタイムラグが発生する可能性
があることを確認
今後、本手段が普及し、同一放送対象地域内の複数の放送事業者が参入し、ま
た、
複数の市町村が利用しようとする際の利用契約においては、
放送実績に関わ
らず定額の契約を交わす「定額方式」と、放送実績に応じて利用料を支払う契約
を交わす「放送実績按分方式」が考えられる。また、市町村と放送事業者がそれ
ぞれ個別に契約を交わす場合のほか、参画する複数の市町村と複数の放送事業
者間で協議会を形成し、運用におけるルールを定め合意することも考えられる。
なお、
地上デジタル放送事業者は、
データ放送帯域を災害情報伝達のために利
用するサービスを開始した後、当該事業者の放送エリア内における他の市町村
- 30 -
からサービス利用の申し出があった場合は、
当該市町村と誠実に協議を行い、必要とされるサービスが提供するように取り計らうことが望ましい。
また、
地上デ
ジタル放送事業者は、
当該事業者の放送エリア内において、
他の放送事業者がサ
ービス利用を開始する場合には、相互に協議を行い、m:nモデルの実現に努め
ること。
(5)屋外スピーカー・屋内受信機の整備・導入
屋外スピーカーについては、既存のものがあれば、アンテナ・受信装置等を交
換することで本手段の導入が可能となる。
アンテナ・受信装置の切り替えに併せ
て、
非常電源の長時間化や高機能スピーカーの導入等についても検討し、
機能強
化による耐災害性の向上に努めることが望ましい。
屋内受信機については、上記3(7)に示す標準仕様に準拠した製品を調達す
ること。これにより、屋内受信機を追加的に配備する場合においても、特定のベ
ンダーに依存することなく、他のベンダー製品も導入でき、競争性を確保し、調
達価格の低廉化に寄与するものと考えられる。
(以下 省略)
別添資料
災害情報交換言語(EDXL)の標準定義フォーマット(ver1)
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン
改訂のポイント
<概要>
令和4年3月に公開された「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段のガイドラ
イン策定等に係る検討報告書」の第 2 部 第 2 章「地上デジタル放送波を活用した災害情
報伝達手段の技術ガイドライン」について、令和 4 年度における複数自治体が単一放送事
業者の帯域を共用する際に発生する課題とそれを解決する複数放送局の複数帯域を切り替
えて運用するモデル(以下「m:nモデル」という。
)での技術実証における成果を踏ま
えて、改訂を行う。
<主な改訂ポイント>
1 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の特徴
(2) 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の利点(メリット)
しろまる(追記)m:nモデルの利用に当たって、限られた伝送能力を複数の市町村がシェアす
る必要があることから、放送波の利用について一定の制限及びルール作りが必要であるこ
と。例:・1 回の情報発信の音声ファイルの大きさ制限
2 情報伝達システムの詳細
(2) 統合運用調整機能(バックエンド機能)
しろまる(修正)バックエンド機能を放送事業者が担うことで「バックエンド事業者」が存在し
ないケースが想定されることから、
「バックエンド事業者」の記載を削除すると共に、新
たに「統合運用調整機能(バックエンド機能)
」の語を用いること。
3 情報伝達システムの標準とするべき技術的要件について
しろまる(追記)サービス・機器提供事業者間の競争性を確保するための新たな要件例:・テレビ受像機製品と同様に、ベンダー(メーカー)を問わず、災害情報伝達の仕組み
としての基本的機能が保証され、全国すべてのテレビ局(放送事業者)の電波を受信
し、共通的に動作しなければならない
しろまる(追記)m:nモデルの利用に当たって輻輳を避けるための新たな要件例:・市町村が生成する災害情報を記述した音声ファイル等のデータ量の大きさの上限につ
いて、事前に市町村相互で運用ルールを定めなければならない。
・回線の圧迫を緩和する目的で、可能な限り情報発信のタイミングをずらすため、市町
村相互での情報発信のタイミングの事前共有等の運用ルールを定めなければならな
い。
しろまる(追記)災害情報の伝達に必要となる安全かつ継続的運用のための新たな要件例:・市町村防災行政無線(同報系)と同等以上の音質を確保すること
・市町村からの災害情報が送信された際は、他に優先して当該データ放送帯域を用いた
放送を行うこと
3(1) 基本的な要件
しろまる(追記)セキュリティ対策の明確化例:・システム全体におけるセキュリティ担保(セキュリティの 3 要素含む)が必要である
こと
3(3)入力(送信)システム
しろまる(追記)J アラートとの連携を行うべきこと、及びその際に留意すべき事項例:・国民保護情報や大津波警報等の情報を EDXL 化し、統合運用調整機能(バックエン
ド機能)と連携すること
・遅延防止のため、関係者間においてあらかじめ運用に関する取り決めを行うこと
3(6)受信機の標準仕様
しろまる(追記)受信機の標準的仕様について、m:nモデルの利用に当たって必要となる新た
な要件例:・EDXL に含まれる自治体コード、エリア ID、グループコードを識別し、適切に動作
をする機能を有しなければならない
・放送により蓄積された情報を EDXL の内容により時刻指定再生などが可能になるよ
う時刻を取得し保持できる機能を有すること
4 導入に当たっての留意事項
(4)地上デジタル放送事業者との利用契約
しろまる(追記)地上デジタル放送事業者との利用契約に当たって、確実に情報伝達するために
留意しておくべき事項、及び、m:nモデルの利用に際して留意すべき事項例:・有事の際に災害情報を優先して配信することの確認
・それぞれの市町村からの放送要求が同時刻に集中した場合、放送事業者は放送要求
の先着順に実施し、放送までのタイムラグが発生する可能性があることを確認
- 30 -
第2章 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン
本章では、
本検討会での議論や実証等を通じて得られた知見に基づき、
地上デジタル放
送波を活用した災害情報伝達手段の技術ガイドライン(以下単に「技術ガイドライン」と
いう。
)に必要な技術的知見を整理する。
各市町村がバラバラの調達仕様で独自に本手段の整備・導入を進めた場合、
ベンダー毎
に仕様が異なること等につながり、ベンダー間での競争が働かず、導入・運用経費が低廉
化できない等の弊害が生じるおそれがある。
技術ガイドラインは、
本手段の中核となる技術・機器について標準とするべき技術的要
件・仕様を提示し、
これに準拠したシステムや機器等を市町村が調達することでベンダー
間の競争性を確保することを狙いとするものである。
さらに、
新しい災害情報伝達手段であることを踏まえ、
市町村の防災担当職員が導入を
検討する際の参考に資する手引きとするとともに、地上デジタル放送事業者やベンダー
等の関係者に対して、標準とするべき技術的要件への理解を深められる資料とする。
(技術ガイドライン 目次)
1 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の特徴
2 情報伝達システムの詳細
3 情報伝達システムの標準とするべき技術的要件
4 導入に当たっての留意事項
(参考) 災害情報交換言語(EDXL)の標準定義フォーマット
1 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の特徴
(1) 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の概要
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段は、市町村が伝達する防
災情報をインターネットで一般的な IP パケットとして、テレビの地上デジタ
ル放送波に重畳して、屋外スピーカーや屋内受信機に一斉同報する伝達手段
である。
地上デジタル放送波に IP パケットを重畳し一斉配信する放送技術・サービ
ス(以下「IPDC」という。
)については、文字や音声、映像のほか、PDF
ファイルやオフィス系ソフト(Word、Excel 等)のファイル、センサー信号等
も放送波に重畳することが可能である。また、受信した IP パケットは、その
ままイーサネット等のコンピューターネットワークに載せることができるた
め、インターネットインフラでの情報伝送が容易となっている。
この IPDC 方式について地上デジタル放送を活用して放送するのが「地上
デジタル放送波を活用した IPDC 型データ放送」であり、地上デジタル放送
波を活用した災害情報伝達手段は、この IPDC 型データ放送を用いて防災情
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段のガイドライン策定等に係る検討会報
告書(令和4年3月)より抜粋
- 31 -
報を伝達するものである。
現状、開発・製造が見込まれる当該伝達手段の受信機等においては、文字や
音声、
デジタルサイネージへの表示、
受信機のソフトウェアアップデート等が
可能となっているが、将来的には、市町村等のニーズに応じて、ベンダー等に
おいて、映像や電子ファイル、センサー信号等の伝送が可能となる設備・機器
の開発や製造が行われる可能性がある。
IPDC 型データ放送については、地上デジタル放送波の特性(一斉同報、高
い耐障害性、各世帯でのテレビ受信環境の普及等)を活かし、デジタルサイネ
ージ等の多様なIP端末に情報伝達が可能な技術として、IPDCフォーラ
ムにおいて、規格化や技術使用の検討等が行われ、アナログテレビ放送(VH
F)の跡地利用として、事業化が試みられたマルチメディア放送(V-hig
h/V-Low)に実装された技術である。
本手段のシステム構成については、次のとおりである(図 31 を参照。)。
図 31 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の構成(再掲)
(1市町村庁舎の操作端末)
市町村庁舎からは、PC端末等の操作端末(スマートフォンでの代替も可
能。)から防災情報を送信。
情報入力ユーザーインターフェース(UI)は、
一斉送信システム
(一の入力で複数の情報伝達手段に送信できる仕組み)を活用。
操作端末から入力する防災情報は、
システム内で個別の文書IDを持
つ災害情報交換言語(EDXL)で記述され、情報を伝送する。
(1市町村庁舎〜2バックエンド)
バックエンドにおいて、指定の地上デジタル放送事業者に対してEDXL
を伝送するメッセージルーティングを行う。情報が適切に送信されたこと
を市町村庁舎の操作端末に返信する。
- 32 -
(2バックエンド〜3地上デジタル放送事業者)
EDXLで記述された防災情報を、放送事業者の基幹放送設備に接続する
IPDC連携装置において、TS(トランスポートストリーム:放送用のコ
ンテナ形式)に変換し、基幹放送設備に出力し、地上デジタル放送波に重畳
され、情報が伝送される。
(3地上デジタル放送事業者〜4屋外スピーカー・屋内受信機等)
屋外スピーカー・屋内受信機において、音声・文字表示等により住民等で防
災情報を伝達する。
受信し処理した文書IDに動作結果等を付して、LPWA等の通信網を通じてアンサーバックを行うことも可能となっている(拡
張的な機能)。(2) 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の利点(メリット)
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段については、次の利点がある。
ア 本手段に用いている IPDC 型データ放送は、情報を既存のコンピューターネ
ットワークに載せることが容易であるため、様々な機器・デバイスに情報を伝送
することができる。
イ 既存の地上デジタル放送網を活用するため、市町村にとって新規の設備整備
の負担が少ない。また、運用保守については、バックエンドを運営する事業者
及び地上デジタル放送事業者との利用契約を締結する形式となるため、これら
の設備等の保守は不要となり、市町村が自ら整備した屋外スピーカーや屋内受
信機の保守管理を行うこととなる。
ウ 地上デジタル放送の対象地域は、県域(又は広域)であるため、広域避難を想
定した場合でも、市町村外の住民に情報伝達が可能である。
エ テレビコンセントに接続した同軸ケーブルと屋内受信機を接続することで、
屋内での情報受信が可能となり、アンテナ工事等が不要のため、比較的安価に
屋内受信機を配備することができる。
(3) 情報伝達の流れ
市町村の防災担当職員は、
入力システムを経由して防災情報を入力し、
バック
エンドでは、認証アカウンティングを含む情報交換網の中核を担い防災情報の
ルーティング、キューイングを行う。
防災情報が放送局内に届くと、IPDC 連携装置で TS(トランスポートストリ
ーム)という形式に変換され、地上デジタル放送の本放送の TS とともに多重化
され、送信所から送出される。送出された TS は、屋外スピーカーや屋内受信機
で受信され、音声等で伝達される。
(情報伝達の流れ(イメージ)は図 32 を参照。) - 33 -
図 32 情報伝達の流れのイメージ
(4) EDXL について
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段では、情報交換言語として
EDXL(Emergency Data eXchange Language)を用いて防災情報を伝送する。
IPDC 型データ放送の特徴の一つとして、
情報の伝送が容易であることを示した
が、その利点を最大限に活かすため、伝送路や周波数帯、ネットワーク、ハード
ウェアに依存することなく、オープンで柔軟な情報交換言語が採用されている。
EDXL は、通信に関する標準化団体 OASIS により、災害情報管理・処理のた
めに XML で定義された文書形式で、
異なるシステム間で情報の伝送を行うため
の標準記述形式である。これは、L アラートにおいても「コモンズ EDXL」とし
て採用されている。
消防庁が平成 28 年度に実施した「災害情報伝達手段等の高度化事業」におい
ては、加古川市における V-Low マルチメディア放送を活用した同報系システム
の整備・実証に当たり、文字情報を伝送できる「コモンズ EDXL」をマルチメデ
ィア(音声、画像等)の伝達を可能とするよう拡張した EDXL が導入された。
地上デジタル放送波を活用した情報伝達手段において用いられる EDXL につい
ても、V-Low マルチメディア放送を活用した同報系システムに用いられた
EDXL を地上デジタル放送波用に拡張したものを活用する。
(屋外スピーカー、
屋内受信機、デジタルサイネージ、避難所の館内放送設備等に音声・文字・画像
情報を伝送できるだけでなく、避難所の施錠装置や照明の操作等も可能である。)(参考)EDXL と4ロールモデル
地上デジタルテレビ放送は原則として、
情報発信者と情報伝達者が必ず一致し、放送局は放送内容から送信まですべての責任を負う。地上デジタル放送波を活用した
IPDC 型データ放送では、情報発信者は市町村であり、市町村から災害情報配信の放
送データ重畳委託の契約を根拠として、
放送法等関係法令の規定を踏まえ、
市町村の
入力システム
- 34 -
防災情報を放送することとなる。
また、地上デジタルテレビ放送は、
「公衆によって直接受信されることを目的とす
る電気通信の送信」であり、テレビ放送は一般社団法人電波産業会(ARIB)で標準
化されたテレビ受像機にて受信され、
「公衆」がその情報を受け取ることとなる。地
上デジタル放送波を活用した IPDC 型データ放送の場合、防災行政無線と同等の機
能を有するために必要となる基本的な動作を行うためのアプリケーションを標準化
しつつ、
その他多様な機能やサービスを実装した受信機が出現する可能性がある。先例としては、
「災害情報伝達手段等の高度化事業」
における V-Low マルチメディア放
送において、EDXL を用いて避難所の鍵ボックスや避難階段の照明に対する操作が
可能となった。
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段に用いる EDXL においては、テ
レビ放送とは異なる属性に対して役割を定義する必要があり、それを 4 ロールモデ
ルとして定義している。
それぞれの期待される役割等は EDXL の中に
「originatorRole」
「senderRole」
「recipientRole」
「consumerRole」に記述されている。
(図 33 参照)
図 33 EDXL における4ロールモデルのイメージ
1 情報発信者(Originator)
意味を記述する主体。入力システムを利用し、1 個の表現形として様々な体現
形に変換可能な EDXL を生成し、情報伝達者(Sender)にむけて、情報送信を
依頼する。
2 情報伝達者(Sender)
情報発信者が制作した表現形のコンテンツを受領し、公衆たる情報消費者に
向けて配信する。ルーティング・アカウンティング・優先順位制御・ログ管理・
送出等を担う。放送法において放送番組編集の自由を定め、放送事業者は、この
枠組みの中で、自主自律の下、自らの責任において放送番組を編集し、市町村と
- 35 -
の契約に基づいて、適法に情報を送出する。
3 情報受信者(Recipient)
EDXL を受信・解釈する機器。表現形である EDXL を情報消費者属性に応じ
て様々な形態で提供(体現形)する。例えば、
「音声を再生する」
「デジタルサイ
ネージに文字情報を表示する」
「鍵ボックスを解錠する」等で表現された EDXL
を解釈し、その表現のとおり動作等を行う。
4 情報消費者(Consumer)
動作を「期待」される人・モノ(公衆)
。情報受信者によって体現された情報
を受け取り、避難行動を取ったり、避難所の鍵が開いたりする。
(5) 標準化すべき技術等について
本技術ガイドラインでは、
地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段に
用いられる技術・機器のうち、標準化するものとして、災害情報交換言語 EDXL
の標準定義フォーマット及び屋内受信機の標準仕様を示している。
本手段の特徴的な技術は、
上記(3)の災害情報交換言語 EDXL であり、EDXLが標準定義フォーマットに基づき記述され、
情報伝送されることにより、
屋外ス
ピーカー、屋内受信機のみならず、他の IP 端末との連携も可能となる。
(EDXL
の標準定義フォーマットは参考資料5に示す。)また、市町村防災行政無線(同報系)の戸別受信機のように、ベンダー毎に仕
様が異なることにつながりやすい屋内受信機の仕様については、戸別受信機の
標準モデルを参照しつつ、
実証を通じて得られた知見を活用し、
屋内受信機の標
準仕様を提示することにより、市町村が調達する際のベンダー間の競争性を確
保する。
なお、市町村の防災担当職員が利用する入力システム(操作端末)は、一斉送
信システムや既存の防災情報システムの活用が想定されるため、
EDXL の標準化
によりベンダー間の競争性を確保できる。
また、
バックエンド及び地上デジタル
放送局内システムについては、既存のシステムを用いることから、
標準化は必要
なく、設定条件等の例示により利用が可能となるものである。
- 36 -
2 情報伝達システムの詳細
上記1(3)に記載したとおり、地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段
は、1市町村庁舎の入力システム、2バックエンド、3地上デジタル放送局内システム(IPDC 連携装置、
基幹放送設備)、4屋外スピーカー、
屋内受信機で構成される。
以下に各構成の詳細を示す。
(1) 入力システム
入力システムは、市町村の防災担当職員が容易に使用できるユーザーインタ
ーフェース(UI)を有し、電子署名に対応することが可能で、EDXL を出力する
機能があれば、
専用のシステム等に限定されるものではない。
入力システムの想
定としては、
一斉送信システムのクラウド型の WEB アプリケーションや既存の
防災情報システムの入力システムを活用することが考えられる。
なお、
本手段のための専用の入力システムを構築する場合、
災害時において防災
担当職員は複数の情報伝達手段への入力作業が必要となり、情報伝達業務が増
大することにつながるため、近年市町村で導入されている一斉送信システムな
どから、バックエンド(後述(2)を参照。
)に対して、EDXL を生成し連携す
ることが効果的である(ワンソース・マルチユースによる最適化。)実証では、クラウド型の一斉送信システム(実証協力企業である(株)アルカ
ディアの「SpeeCAN RAIDEN」や(株)メイテツコムの「L’mo」
)と連携し、
情報伝達が可能であることが確認されている。また、市町村防災行政無線(同報系)と一斉送信システムとを連携させ、
防災行政無線の操作端末から発信された
防災情報を、一斉送信システムを経由して FAX や一斉架電システム、登録制メ
ールと連携させている場合があり、実証においても「SpeeCAN RAIDEN」を入
力システムとして利用するのではなく、
連携インターフェイスとして活用し、防災行政無線からのテキストや音声を自動的に取得する検証を行い、擬似的な検
証環境において連携可能であることが確認されている。
このことから、
既存の防
災行政無線を活用し、
一斉送信システムを連携させることにより、
モデル実証で
確認されたような情報伝達方法を導入することも可能である。
一方、
EDXL において記述可能な項目は多岐にわたるが、
既存のクラウド型の
一斉送信システムの多くは、全ての EDXL の記述に対応していないことから、
本手段の機能を十分に活かすためには、既存の一斉送信システムにおいて入力
項目を追加する等により EDXL に対応させること、又は EDXL 対応に最適化さ
れた入力システムを利用すること等が考えられる。
また、J アラートとの連携も可能である。J アラート受信機と入力システムを
接続すること等により、J アラートで配信される国民保護情報や津波情報等の防
災情報を伝達することができる。
- 37 -
【J アラート連携の具体的な事例】
兵庫県加古川市において、J アラート受信機のイーサネットで接続したシング
ルボードコンピュータで EDXL を生成し、バックエンドに連携することで、J
アラートで配信される国民保護情報や津波警報等の防災情報を地上デジタル
放送波に重畳することとしている。
(2) バックエンド(データセンター)
バックエンドは、指定の地上デジタル放送事業者に対してEDXLを伝送す
るメッセージルーティングを行い、情報が適切に送信されたことを市町村庁舎
の操作端末に返信する機能を担うものであり、情報セキュリティに必要となる、
認証(市町村からの送信であるという真正性の確認)
、認可(アクセス権限の確認)、アカウンティング(市町村からの送信履歴等の収集)を含む情報交換網の
中核を担うものである。入力システムからは、SOAP(Simple Object Access
Protocol。一般に、EDXL 等の XML 形式の情報等のやりとりに用いられる通信
規格。
)インターフェイスを用いて情報を受信する。バックエンドでは、受信し
た EDXL について、バリデーションチェック(入力されたデータが入力規則に
対して適切に記述されているかを確認すること。
)を行い、電子署名の真正性が
確認され、その後、放送局内の IPDC 連携装置に配信される。
バックエンドは、以下の機能を担っている。
ア 電子署名の証明書の認証局機能
市町村から発信される防災情報が記載された EDXL には、
真正性を担保し、
なりすましを防止するために電子署名
(XML 署名)
を付すことが必須とされ、
必ず市町村の電子署名が付されることから、
バックエンドは、
その電子署名に
必要なクライアント証明書の発行・管理を行う機能を有している。
(注記)電子署名の付記方法の詳細な仕様は標準化団体 OASIS によって定められ
た仕様に準拠
- 38 -
イ ID 発番・管理
バックエンドは、複数の入力システムから EDXL を受信することが想定さ
れることから、管理に必要となる ID(リターン ID・メディア ID)を一意とす
る(紐付ける)ため、ID の発番・管理を行う機能を有している。
(図 34)
図 34 バックエンドの ID 発番・管理のイメージ
・リターン ID:アンサーバック(本手段に導入した場合)の情報を一元的に
管理するための ID(半角英数6桁のデータ形式)
・メディア ID:音声ファイル等、EDXL によって送受信されるメディアファ
イルを一元的に管理するための ID
(半角 32 桁のデータ形式)
ウ 優先順位制御
受信した情報を優先基準に基づき順序を入れ替えて配信する機能を有して
いる。具体的には、国民保護情報や津波警報等、緊急度の高い情報を他の配信
情報よりも優先して配信する等の機能がある。
エ メッセージルーティング
入力システムから受け取った防災情報を指定する放送局に対して送信する
(ルーティングする)機能を有している。
オ メッセージキューイング
入力システムから受け取った防災情報を放送局に
「確実に」、「重複すること
なく」、「順序通りに」届ける非同期の機能を有している。
(注記) メッセージキューイングとは、機器やプログラムの間でデータの受け渡
しを非同期に行う手法をいう。EDXL は zlib 形式で圧縮され、先行信号部
と EDXL 部は BASE64 エンコードされ、メッセージキューの body として
送信される。メッセージキューは、body と一緒にメタ情報を送信する。送
- 39 -
信する防災情報が1つのメッセージキューの最大サイズを超える場合、複
数のメッセージキューに分割して送信する。
先行信号には、
地方公共団体コ
ード等が含まれ、受信機側のリソース管理に貢献する(図 35 参照)。図 35 メッセージキューのイメージ
カ ログ管理
市町村からの情報発信、放送局からの放送、屋外スピーカー・屋内受信機で
の受信などのログを全て収集管理する。
(3) 地上デジタル放送局内システム
地上デジタル放送局内では、バックエンドから送出されたEDXLで記述さ
れた防災情報を、放送事業者の基幹放送設備に接続するIPDC連携装置にお
いて、IP パケット(UDP/IP)化し、TS(トランスポートストリーム:放送用
のコンテナ形式)に変換し、基幹放送設備に出力し、地上デジタル放送波に重畳
する。
ア IPDC 連携装置の主な機能
IPDC 連携装置は、主として以下の機能を有する。
1情報入力部
バックエンドとのインターフェイスを担う機能であり、バックエンドとの
- 40 -
接続は災害時においても信頼性が高く(回線の完全2重化)
、高セキュリテ
ィの通信回線(閉域網)を用いることが重要である。入力された防災情報を
そのまま2情報処理部に出力する。
2情報処理部
入力された防災情報を地上デジタル放送波に重畳するために必要な IPDC
型データ放送用 TS に変換し、情報送出部に送出する。
3情報送出部
指定されたタイミングで基幹放送設備へ情報を送出する(原則は即時送出)。4運行執行部
上記1から3の運用状況を監視できる機能を有しており、どの市町村から
どのような情報が放送されたかを確認できる機能を有している。
イ 放送局の基幹放送設備の主な機能
基幹放送設備では、IPDC 連携装置から送出された IPDC 型データ放送用 TS
を本放送(テレビサービス用 TS)に重畳し、放送される。
(4) 屋外スピーカー・屋内受信機
防災行政無線と同様に、
音声等により住民へ防災情報を伝達する設備・機器で
あり、IPDC型データ放送を受信して、EDXLに記述されたとおり、音声鳴
動、文字表示等を行う。
地上デジタル放送波は広域の電波であることから、
市町村の防災情報(EDXL)
を載せたIPDC型データ放送は、
他の市町村の屋外スピーカーや屋内受信
機においても受信されることとなるが、受信機に設定された自治体コードとI
PDC型データ放送により送信されたEDXLの自治体コードが一致しない限
り動作しないため、
他の市町村が設置した屋外スピーカーや屋内受信機
(異なる
自治体コードで設定したもの)が音声鳴動すること等は生じない。
以下、本手段における屋外スピーカー及び屋内受信機の概要を示す。
ア 屋外スピーカー
屋外スピーカーは、市町村防災行政無線(同報系)等と同様に、受信部、屋外
スピーカー、非常電源、鋼管柱等から構成される。受信部を地上デジタル放送波
に対応した機器に交換することで既存の屋外スピーカーを活用することも可能
である。
イ 屋内受信機
屋内受信機については、後述3(3)の標準仕様に準拠した製品であることが
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求められる。
実証では、音声ファイルの運用について以下の条件で実施した。
・ファイルフォーマット:WAV(LPCM)
・サンプリングレート:11kHz
・プロファイル:Low Complexity(LC)
・音声モード:モノラル
・最大ビットレート:24kbps
・最大ファイルサイズ:580kbyte
これにより、約 20 秒程度の音声データの再生が可能となっている。ファイル
フォーマットを AAC の圧縮方式を採用することで 90 秒程度の再生時間が見込
まれ、さらに屋内受信機キャッシュメモリ容量の拡大等を行うことで再生時間
を調整することが可能となる。
また、
EDXL の活用により、
受信機のファームウェアアップデートが可能であ
る。EDXL には、
受信機の設定情報の更新等、
ファームウェアアップデートを行
うための仕様が定義されており、地上デジタル放送波に重畳することで遠隔で
システムアップデートが可能となる。後述(5)アのアンサーバック機能と組み
合わせることで、製品の不具合改修、機能改善等に活用することが可能で、ソフ
トウェアを随時アップデートすることで、システム全体の運用寿命を延ばすこ
とが可能となる。
(5) その他の追加的な機能
EDXL が情報受信者
(Recipient)
・情報消費者
(Consumer)
の属性に応じて、
伝達内容を記述した表現形を多様な体現形に変換することができるため、防災
情報の伝達における様々な場面や情報消費者への幅広い応用が可能となる。実
証で実施した内容を中心に追加的機能を以下に示す。
ア アンサーバック
LPWA 等の通信網を利用することで、アンサーバックを行うことができる。
アンサーバックは以下の2種類に大別することができる。
1 状態通知・変化/エラー通知
定期的(3時間に1回、1日に1回等)に受信機側から機器の状態や異常の
有無、電波の受信感度などの情報をバックエンドに回答する。
なお、
状態通知のアンサーバックを活用して、
バックエンドと連携した市町
村の情報伝達手段の管理 PC や警告灯等で機器の異常を通知することや、
受信
機の保守事業者に連絡することも可能である。
2 指示応答/アンケート回答
受信した EDXL に報告要求が記述されていた場合、受信機側からバックエ
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ンドに対して受信状態を応答する。また、受信した EDXL にアンケート要求
があり、情報消費者が受信機の操作によって、回答した内容を応答する。
(参考)
実証では LPWA(Low Power Wide Area network:低消費電力で長距離の通信
ができる無線通信技術)の1つである Sigfox を用いてアンサーバックを行った
が、
他の事業者が提供するLPWA網や、
他の通信網を活用してアンサーバック
を行うことは可能である。
イ 多言語対応
EDXL は、1つの伝達文に複数の言語表現(テキスト・音声)を含めて記述す
ることが可能となっており、受信機側の言語設定に応じて指定された言語で音
声放送・テキストの表示を行うことができる(イメージは図 36 を参照。)。
多言語の音声やテキストデータは、
あらかじめ市町村で用意するか、
又は多言
語翻訳機能(テキストからの自動音声合成を含む。
)を有するシステム等を利用
することが考えられる。
図 36 多言語対応のイメージ
(右写真は屋内受信機(試作機)の言語設定画面)
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ウ 聴覚に障害のある住民への情報伝達
EDXL を活用することにより、聴覚に障害のある住民用の屋内信号装置と屋
内受信機が協調して動作させることができる。
(参考)
実証では、屋内信号装置として一般に使用されている Bellman & Symfon®の
ベルマンビジットシステム(マルチセンサ発信機、フラッシュ受信機、ベッドシ
ェーカー)
との連携が可能であることが確認された。
屋内受信機と屋内信号装置
が連携し、屋内受信機の受信情報を光・振動に変換することが可能である。
具体的な設定方法としては、
屋内受信機とマルチセンサ発信機を 3.5 mmステレ
オミニプラグ付きのオーディオケーブルで接続し、マルチセンサ発信機はフラ
ッシュ受信機と無線通信を行い、フラッシュ受信機とベッドシェーカーを配線
接続した。
(接続イメージは図 37 を参照)
図 37 屋内受信機とマルチセンサ発信器等との接続イメージ
(右写真は、実証で設定した際の状況)
エ コミュニティ FM との連携
屋内受信機にラジオ機能が備わっている場合は、地上デジタル放送波で特定
の日時に特定の周波数
(臨時災害放送局の周波数)
に同調してラジオを起動する
ことを記述した EDXL を放送し、指定日時に自動的に屋内受信機のラジオ機能
から臨時災害放送局等の放送を受信することができる(図 38 参照。)。
地上デジタル放送(広域の情報)と臨時災害放送局(狭域の情報)が連携する
ことで、災害時に、住民に対して、より細やかな情報を伝達することができる。
インターネットが利用不能な状態においても、
市長のメッセージや医療情報、罹災証明書発行、給水や炊き出しなどを住民に伝達する手段として有効に利用す
ることが考えられる。
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図 38 コミュニティ FM との連携のイメージ
(右写真は、コミュニティ FM の周波数に自動で設定されている状況)
オ デジタルサイネージ等との連携
民間企業等が設置・運用しているデジタルサイネージやテレビに対して、
市町
村が伝達する防災情報を表示させることができる(図 39)。デジタルサイネージディスプレイに HDMI の空きポートがある場合、ディス
プレイに EDXL を体現すること(表示すること)ができるアプリケーションを
搭載した受信機とディスプレイとを直接接続する(図 40)
。ディスプレイに空き
ポートがない場合、HDMI 切替機を接続する(図 41)
。受信機がデジタルサイネ
ージに対して防災情報を表示する際、表示切り替え指示をサイネージ制御装置
側に送り、サイネージ制御装置がパネルの表示切り替え制御を行うことで災害
情報を表示する。HDMI 切替機を挟む場合、HDMI 切替機の機種によっては、
制御が効かないことがあるので留意が必要である。
また、高機能な HDMI 切替機を用いて、ディスプレイの制御権をやり取りす
ることにとどまらず、既存のディスプレイ上の表示画面にオーバーレイやワイ
プの画面表示で場所や場面に応じた表示を行うことができる(図 42)。導入にあたっては、民間施設のデジタルサイネージの表示面の一部又は全部
を、どういう状況下において、市町村からの防災情報を表示するのか、どういう
状況において、
元に戻すのかについて、
予め自治体とサイネージを管理する民間
事業者との間で調整が必要となる。
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【今後の可能性】
民間施設においても、
災害が発生した場合、
施設管理者において当該施設
に滞在する者の避難誘導等、
在館者の安全を確保する取組みが行われる(消防法令に基づき、防火管理者や防災管理者が選任されている場合は、防火・
防災管理業務の一環として避難誘導等が行われる。)そのため、受信機が受信した市町村からの防災情報を自動的にデジタル
サイネージに連携するだけでなく、施設管理者の判断によって伝達のタイ
ミングや内容を適宜コントロールする機能が必要となる場合が考えられ、
今後、そのコントロールを含めて高機能な HDMI で制御することが可能と
なることが見込まれる。
図 39 デジタルサイネージへの防災情報の表示
右写真:軽井沢町での実証の例
左写真:中央区での実証の例
図 40 サイネージパネルに空きポート 図 41 HDMI スイッチャーを接続する
がある場合の論理構成 場合の論理構成
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図 42 既存のディスプレイ上の表示画面にテロップ(画面下部分)を表示した状況
カ 避難所の解錠
EDXL を用いて、避難所の鍵ボックスの解錠・施錠を行うことができる。
「災害情報伝達手段等の高度化事業」を通じて、兵庫県加古川市においては、
既に導入されている(加古川市に設置されている避難所の鍵ボックスは図 43 を
参照。)。
一般には、避難所の開設は、市町村職員が避難所へ行き、解錠等を行っている
が、EDXL 及び IPDC 型データ放送を活用することで、遠隔で鍵ボックスを解
錠し、避難した住民が解錠・施設内に避難することができる。
図 43 避難所の鍵ボックス
キ 避難者の行動捕捉
屋内受信機に Bluetooth 通信機能が搭載されている場合、屋内受信機と
Bluetooth 検知器や Bluetooth 通信検知アプリを搭載したスマートフォンを用
いて、避難者の行動を捕捉し、市町村庁舎(災害対策本部等)で管理 PC の地
図上で確認することができる。現状では、この機能の導入に当たっては、民間
事業者のサービスを利用することが考えられる。
テロップの表示
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(参考)
実証では、綜合警備保障(株)(「ALSOK」
)の協力を得て、ALSOK が提供す
るみまもりタグの仕様に従って、
Bluetooth のビーコンを屋内受信機から発信し、
ALSOK の「みまもりタグ感知器」や ALSOK のスマートフォンアプリで
Bluetooth を検知し、
「みまもりタグ検知器」
の設置場所情報やスマートフォンの
GPS 位置情報から避難者の行動を捕捉することができる。
(イメージは図 45 を
参照)
図 45 実証で実施した避難者行動の捕捉イメージ
屋内受信機のボタンを押下して、
避難所への避難等の意思を市町
村へ伝達
屋内受信機を持って
避難所へ避難
Bluetooth 検知器と屋内受信機との
通信により、避難者の行動を捕捉
市町村(災害対策本部)の管理 PC の地図上で避難者の行動を把握
Bluetooth 検知器の例 みまもりアプリの例
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ク FM トランスミッター装置との連携
屋内受信機と FM トランスミッター装置を連携させることで、地上デジタル
放送波を用いて屋内受信機で受信した音声ファイルを FM トランスミッター装
置で情報伝達することができる。
想定される利活用シーンとしては、避難所の屋外で車両に避難している住民
への FM ラジオを用いた情報伝達、避難所内で掲示板やデジタルサイネージだ
けでなく、音声による情報伝達等が考えられる。
これらは、
EDXL を用いてプログラムすることで可能となり、
災害時の様々な
場面で、ツールを組み合わせて住民への情報伝達が可能となると考えられる。
(参考)EDXL の応用例として「メッセージフェリーデバイス」の利用
インターネットが使用できない状況下であっても、災害対策本部と避難所と
の間でデジタル情報の交換を行う場合に、DTN(Delay Tolerant Networking:遅
延耐性ネットワーク)環境を構築し、
「メッセージフェリーデバイス」を用いる
ことで、
交換する情報を EDXL で記述した上で
「メッセージフェリーデバイス」
に載せ、
「メッセージフェリーデバイス」同士が近づくだけで何ら操作がいらず
に情報を伝搬することができる。
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3 情報伝達システムの標準とするべき技術的要件について
本項において、本手段の中核となる技術・機器について標準とするべき技術的要
件・仕様を提示し、
これに準拠したシステムや機器等を市町村が調達することでベン
ダー間の競争性を確保することが期待されるものである。
市町村における本手段の整備において、
システム全体を災害情報交換言語
(EDXL)
に対応したものとすることを標準の要件とし、
ベンダー毎に仕様が異なることにつな
がりやすい屋内受信機の仕様について標準仕様に準拠した製品を調達することが重
要である。
以下に、標準とするべき技術的要件を示す。
(1) 基本的な要件
情報伝達システムの各構成要素(入力システム、バックエンド、放送局内シス
テム、屋外スピーカー・屋内受信機)について、異なるベンダー等であっても容
易に防災情報の伝送、設備・機器の接続・動作が可能となるよう、災害情報交換
言語(EDXL)を利用でき、確実に動作するものとすること。各構成要素の一部
に EDXL を利用できない要素が含まれる場合、本技術ガイドラインにおける標
準とするべき技術的要件に準拠したシステムではない。
(2) 災害情報交換言語(EDXL)の標準定義フォーマット
システムに用いる災害情報交換言語(EDXL)は、標準定義フォーマットを用
いること(参考資料5)。(3) 屋内受信機の標準仕様
屋内受信機の標準的な仕様については、市町村防災行政無線(同報系)の戸別
受信機の標準モデル機能を踏まえ、次のとおりとする。
ア 音声受信:音声放送の受信
地上デジタル放送波(470MHz〜710MHz)を受信し、IPDC型データ放送
に重畳された EDXL データを解析し、格納された音声ファイル(市町村からの
防災情報)を本体内蔵のスピーカーにて聞くことができる機能を有すること。
イ 緊急一括呼出:緊急時に音量を自動で最大に調整(緊急事態を知らせる機能)
緊急一括放送を受信した場合、
受信機の音量設定に関係なく、
当該受信機の最
大音量で放送内容を聞くことができる機能を有すること。
ウ 選択呼出:一括呼出、グループ呼出、個別呼出
地区単位やあらかじめ設定したグループ
(消防団や高齢者世帯、
土砂災害警戒
区域内にある世帯等)に対する放送(グループ呼出)や、特定の屋内受信機だけ
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を鳴動させるような放送(個別呼出)に対応できる機能を有すること。
エ 録音再生:放送の録音再生が可能
内蔵メモリ等により放送内容を録音かつ再生できる機能を有すること。
オ 停電時対応:商用電源から内蔵の電池へ自動切替
通常は商用電源で運用していて、
停電時等に内蔵の電池
(乾電池やリチウムイ
オン電池、ニッケル水素電池等)に自動で切り替わり、停電時等の放送を聞き漏
らさないようにする機能を有すること。
カ 内蔵電池の動作時間:24 時間以上(例:放送5分/待受け 55 分の条件)
停電時等に内蔵電池での運用に切り替わった際に、内蔵電池において 24 時間
以上の運用・動作を可能とする機能を有すること。
キ 外部アンテナ接続:外付けのアンテナが接続可能
屋内受信機を設置する住戸に設置されているテレビコンセント(地上デジタ
ル放送を受信するためのコンセント)に接続するための端子(コネクタ等)を有
し、接続すると自動でテレビコンセントからの受信に切り替わる機能を有する。
屋外において、地上デジタル放送波(空中波)を受信するための本体付属のア
ンテナを有すること。
ク 文字等を表示できるディスプレイ
ディスプレイを備えることにより、
IPDC型データ放送に重畳された EDXL
データに格納された伝達文や、電波の受信状況等を表示することができる機能
を有すること。
ケ ソフトウェアのアップデート機能
IPDC型データ放送に重畳されたEDXLデータにより、受信機のファー
ムウェア等をアップデート(書き換え)することができる機能を有すること。
(市町村において必要とする場合の追加的な機能)
上記アからケまでの標準仕様に加え、
市町村において、
モデル検証で実施した多様な
情報伝達方法を導入するため、
次の機能のいずれかを必要とする場合は、
該当する機能
の記載例を参考に、調達仕様書を作成することが考えられる。
コ FM 放送を受信するための機能
FM 放送(76.0MHz〜108.0MHz)を受信し、内蔵するスピーカーにて放送内容
を聞くことができる機能を有し、
EDXL を解析するソフトフェアと連携して FM
受信機能を制御できること。
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サ LPWA 通信を行うための機能
屋内受信機の受信状況や作動状況の確認等を行うアンサーバック機能に用い
るため、LPWA(Low Power Wide Area)の通信網と通信ができる機能を有する
こと。
シ Bluetooth 通信を行うための機能
屋内受信機の位置を追跡し、動態把握等を行うため、Bluetooth により通信が
できる機能を有すること。
ス 光により受信したこと等を示すための機能
LED 等が設けられ、屋内受信機が放送を受信したことを光の点灯や点滅で知
らせるための機能を有すること。
セ 外部機器と接続するための機能
聴覚に障害のある住民に屋内受信機を配備する場合に、フラッシュ受信機や
振動により気づきを与える機器との接続や、放送内容を表示するデジタルサイ
ネージやテレビ等との接続ができるよう、外部機器と接続するための端子を有
すること。
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4 導入に当たっての留意事項
市町村が地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段の導入について検討す
る場合、
まずは当該市町村管内に地上デジタル放送を提供する放送事業者と IPDC 型
データ放送の利用が可能かについて協議を行うことが必要となる。放送事業者との
協議が進んだ場合、入力システムの検討、バックエンド事業者の選定・調達、屋外ス
ピーカーや屋内受信機の調達・整備等の情報伝達システムの整備を進めていくこと
となる。
このような本手段の導入検討に際して、実証で得られた知見等から主な留意事項
を以下に示す。
なお、
屋外スピーカー及び屋内受信機を活用した同報系システムの整
備を念頭に置いており、LPWA 網や Bluetooth 検知など拡張的な機能の導入は含め
ていない。
(1)入力システムの検討・導入
入力システムは、EDXL を作成・送信できる機能があれば、
一斉送信システム
や既存の防災情報システムを利用することが可能である。一斉送信システムを
利用する場合、
標準定義フォーマットに準拠した EDXL の利用が可能であるか、
作成・送信できる EDXL に制限があるかどうかを確認しておく必要がある。
(参考)他の同報系システムを既に整備している場合に屋内受信機の配備やデジタ
ルサイネージとの連携等のために本手段を補完的に利用する場合の応用例
既に市町村防災行政無線
(同報系)
等の同報系システムを整備している場合で
あって、本手段の屋内受信機やデジタルサイネージ等との連携等の情報伝達を
補完的に利用するニーズがある場合、既存の同報系システムに一斉送信システ
ムを連携させることにより、一斉送信システムを連携インターフェイスとして
用いて EDXL を自動作成させ、バックエンドへの情報伝送が可能である。
これにより、
従来と同じように、
使い慣れた同報系システムの操作卓を利用し
て、IPDC 型データ放送の利用が可能となる。
(2)バックエンド事業者との利用契約
現状では、市町村とバックエンド事業者との間で、バックエンドを用いて、
IPDC 型データ放送に重畳するための防災情報を記述した EDXL 伝達文を指定
の放送事業者に伝送するサービスの利用契約を結ぶ必要がある。
バックエンドの利用契約に当たり、
仕様書には、
次の要件を記載することが望
ましい。
ア サービス要件
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24 時間 365 日サービス提供が可能で、稼働率 99%以上を確保すること。た
だし、
システムメンテナンス等による停止は除く。
システムメンテナンスは、
事前に日時を通知し、
台風や大雨等、
災害の発生が予測される時には実施しな
い。
イ データセンターの要件
・国内のデータセンター内に構築したシステムによる SaaS(Software as a
Service)方式とする。
・データセンターは、
情報セキュリティマネジメントシステムの規格である
JIS Q 27001 又は ISO/IEC 27001 に基づく認証を取得していること。
・データセンターは、
土砂災害特別警戒区域や浸水想定区域などの危険区域
に存在しないものとすること。
(危険区域に存在する場合は危険性に応じ
た必要な対策が講じられていること。)・データセンターは、建築基準法に規定する耐火建築物で、耐震性に優れ、
必要な防火対策・雷対策が講じられているものとすること。
・データセンターへの出入りは常駐警備による入退室管理が 24 時間 365 日
実施され、入室セキュリティは3段階以上とすること。
・回線・設備機器が冗長化されており、障害発生時にも通信が可能であるこ
と。
ウ システムセキュリティ要件
・データベースのデータはバックアップを行っており、
2拠点以上のデータ
センターに保管すること。
・システム稼働状況を 24 時間 365 日監視し、異常を検知した場合には、関
係者に緊急連絡が行われ、障害復旧に当たる体制を整えていること。
・データの保管や持ち出しに対し、機密保持対策が講じられ、外部からのサ
イバー攻撃対策やウイルス対策が実施され、常に最新の監視状態に維持
されていること。
(3)IPDC 連携装置の設置及び基幹放送設備との接続
利用しようとする放送事業者の放送局内に IPDC 連携装置が未設置の場合、
IPDC 連携装置の設置及び基幹放送設備との接続が必要となる。
費用負担については、
市町村及び放送事業者との間で調整が必要となるが、地上デジタル放送波の特性から、複数の市町村が1の放送事業者の放送波を利用
することも可能であることから、都道府県も含めた関係機関で検討することが
望ましい。
(4)地上デジタル放送事業者との利用契約
市町村と地上デジタル放送事業者との間で、防災情報を IPDC 型データ放送
に重畳して放送することについて、
事前協議を行い、
利用契約を結ぶ必要がある。
利用契約には、次の事項について相互に確認しておくことが望ましい。
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・想定されるスキームは、
市町村が住民へ伝達する防災情報の放送データを制
作して、これを放送事業者の放送設備(多重化装置)に入力し、当該放送デ
ータを放送事業者の放送帯域に重畳して配信することの確認
・放送データを重畳して配信するための利用料の確認
・市町村において使用する入力システムや、
IPDC 型データ放送を受信する機
器(屋外スピーカー、屋内受信機、避難所の鍵ボックス等)の範囲の確認
・放送事業者は、
放送法及び電波法その他関連法令を遵守し、
自主自律の下、
自らの責任において放送番組の編集ができることの確認
・防災情報の内容に誤りがあることが判明した場合、
市町村は直ちにその責任
において修正を行うこととし、
修正を行う場合は、
予め放送事業者にその旨
を事前に通知することの確認
(緊急を要する場合は、
事後報告とすることが
できるかについても確認しておくことが望ましい。)。
(5)屋外スピーカー・屋内受信機の整備・導入
屋外スピーカーについては、
既存のものがあれば、
受信装置を交換することで
本手段の導入が可能となる。
受信装置の切り替えに併せて、
非常電源の長時間化
や高機能スピーカーの導入等についても検討し、機能強化による耐災害性の向
上に努めることが望ましい。
屋内受信機については、上記3に示す標準仕様に準拠した製品を調達するこ
と。これにより、屋内受信機を追加的に配備する場合においても、特定のベンダ
ーに依存することなく、他のベンダー製品も導入でき、競争性を確保し、調達価
格の低廉化に寄与するものと考えられる。
(以下 省略)
参考資料
災害情報交換言語(EDXL)の標準定義フォーマット(ver1)

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