WG2資料1


研究活動における不正行為への対応指針
平成27年9月
消防庁
研究活動における不正行為への対応指針 目次
はじめに ...................................................................................................................... 1
第1節 研究活動の不正行為に関する基本的考え方 ............................................... 3
1 研究活動 ........................................................................................................... 3
2 研究成果の発表................................................................................................ 3
3 研究活動における不正行為 ............................................................................. 3
4 不正行為に対する基本姿勢 ............................................................................. 3
5 研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律と研究機関の管理責任 ..... 4
第2節 不正行為の事前防止のための取組 .............................................................. 4
1 不正行為を抑止する環境整備 ......................................................................... 4
2 不正事案の一覧化公開 .................................................................................... 6
第3節 研究活動における特定不正行為への対応 .................................................. 7
1 対象とする研究活動及び不正行為等 .............................................................. 7
2 研究・配分機関における規程・体制の整備及び公表 ................................... 8
3 特定不正行為の告発の受付等 ......................................................................... 8
4 特定不正行為の告発に係る事案の調査 ........................................................ 10
第4節 特定不正行為及び管理責任に対する措置 ................................................ 17
1 特定不正行為に対する研究者、研究機関への措置 ..................................... 17
2 組織としての管理責任に対する研究機関への措置 ..................................... 18
3 措置内容の公表.............................................................................................. 19
(参考資料1) ......................................................................................................... 20 1はじめに
(本指針の目的と策定の背景)
本指針は、研究活動の不正行為に対する基本的考え方を明らかにした上で、研
究活動における不正行為を抑止する研究者、科学コミュニティ及び研究機関の取
組を促しつつ、消防庁、配分機関及び研究機関が研究者による不正行為に適切に
対応するため、それぞれの機関が整備すべき事項等について指針を示すものであ
(注記) 1
本指針は、今般文部科学省において策定された「研究活動における不正への対
応等に関するガイドライン」(平成 26 年8月 26 日文部科学大臣決定)や「研究
不正行為への実効性ある対応に向けて」(平成 26 年9月 19 日総合科学技術・イ
ノベーション会議)を踏まえ改定するものである。研究活動における不正行為へ
の対応は、研究者自らの規律や研究機関、科学コミュニティの自律に基づく自浄
作用によるべきものである、との文部科学省科学技術・学術審議会研究活動の不
正行為に関する特別委員会「研究活動の不正行為への対応ガイドラインについて
-研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書-」
の基本認識を踏襲した上で、
これまで個々の研究者の自己責任のみに委ねられている側面が強かったことを踏
まえ、今後は、研究者自身の規律や科学コミュニティの自律を基本としながらも、
研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることにより、対応の強化を図る
ことを基本的な方針としている。
本指針に沿って、研究機関においては、研究活動の不正行為に対応する適切な
仕組みを整えること、また、配分機関においては、競争的資金等の公募要領や委
託契約書等に本指針の内容を反映させること等により、研究活動における不正行
為への対応等について実効ある取組が一層推進されることを強く求めるものであ
る。
(適用)
本指針は平成 27 年9月8日から適用する。第3節及び第4節については、平成
28 年度当初予算以降(継続を含む。)における消防庁の予算の配分又は措置によ
り行われる全ての研究活動を対象とする。
(用語の定義)
本指針において用いる用語の定義について示す。
(1)競争的資金等
消防庁において配分する消防防災科学技術研究推進制度による 研究資金
などの公募型の研究資金
(2)研究機関
上記(1)の競争的資金等その他の消防庁の予算の配分又は措置により、
(注記) 1
公的研究費の適正な管理については「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイド
ライン(実施基準)」(平成 27 年9月8日改正)を参照のこと。 2所属する研究者が研究活動を行っている全ての機関(大学、独立行政法人、
企業、公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人、一般財団法人、特例民
法法人、国の研究開発機関等)
(3)配分機関
上記(2)の研究機関に対して、上記(1)の競争的資金等の配分をする
機関(消防庁(注記) 2)(4)研究・配分機関
上記(2)の研究機関及び上記(3)の配分機関
(5)配分機関等
上記(2)の研究機関に対して、競争的資金等その他の研究に係る予算の
配分又は措置をする機関(消防庁(注記) 3)(6)管理条件
消防庁が、調査の結果、研究機関の体制整備等の状況について不備を認め
る場合、当該研究機関に対し、改善事項及びその履行期限を示した競争的資
金の交付継続の条件
(留意点)
各節に示す内容は、それぞれの機関の性格や規模、コストやリソース等を考慮
して実効性のある対策として実施されることが必要である。また、企業において、
会社法(平成 17 年法律第 86 号)等に基づく内部統制システムの整備の一環とし
て規程等が既に設けられ、対策が実施されている場合や、大学等において、コン
プライアンス関連の規程等により、本指針の内容を包括する体制等が整備されて
いる場合は、本指針における対策をそれらに明確に位置付けた上で研究機関の規
程を適用することを可能とする。
(注記) 2
「配分機関」における消防庁は、それぞれの競争的資金等を所管する課室又は施設等機関
を示す。
(注記) 3
「配分機関等」における消防庁は、それぞれの競争的資金等又はその他の研究にかかる予
算を所管する課室又は施設等機関を示す。 3第1節 研究活動の不正行為に関する基本的考え方
1 研究活動
研究活動とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等
によって知り得た事実やデータを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイ
ディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為である。
2 研究成果の発表
研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能
なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容
について吟味・批判を受けることである。科学研究による人類共通の知的資産
の構築が健全に行われるには、
研究活動に対する研究者の誠実さを前提とした、
研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。
研究成果の発表は、このチェックシステムへの参入の意味を持つものであり、
多くが論文発表という形で行われ、また、論文の書き方(データ・資料の開示、
論理の展開、結論の提示等の仕方)に一定の作法が要求されるのはその表れで
ある。
3 研究活動における不正行為
研究活動における不正行為とは、得られたデータや結果の捏造
ね つ ぞ う
、改ざん、及
び他者の研究成果等の盗用が、不正行為に該当する。このほか、他の学術誌等
に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、論文著作
者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなどが不正行為として認識さ
れるようになってきている。こうした行為は、研究の立案・計画・実施・成果
の取りまとめの各過程においてなされる可能性がある。
具体的にどのような行為が、二重投稿や不適切なオーサーシップなどの研究
者倫理に反する行為に当たるのかについては、科学コミュニティにおいて、各
研究分野において不正行為が疑われた事例や国際的な動向等を踏まえて、学協
会の倫理規程や行動規範、学術誌の投稿規程等で明確にし、当該行為が発覚し
た場合の対応方針を示していくことが強く望まれる。
なお、新たな研究成果により従来の仮説や研究成果が否定されることは、研
究活動の本質でもあって、科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果
が結果的に誤りであったとしても、それは不正行為には当たらない。
4 不正行為に対する基本姿勢
研究活動における不正行為は、研究活動とその成果発表の本質に反するもの
であるという意味において、科学そのものに対する背信行為であり、また、人
々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げるものであることから、研究
費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。また、不正行為は、研究者
の科学者としての存在意義を自ら否定するものであり、自己破壊につながるも
のでもある。
これらのことを個々の研究者はもとより、科学コミュニティや研究機関、配
分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない。
なお、不正行為への対応の取組が厳正なものでなければならないことは当然で 4あるが、学問の自由を侵すものとなってはならないことはもとより、大胆な仮
説の発表が抑制されるなど、研究を萎縮させるものとなってはならず、むしろ
不正への対応が研究を活性化させるものであるという本来の趣旨を忘れてはな
らない。
5 研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律と研究機関の管理責任
研究の公正性を維持する一義的な責任は研究者が負うものである。研究機関
との関係によらず研究者は高い研究倫理を身につけ、研究の公正性を維持する
責務を負っている。また、研究者が所属する研究機関や、学会等の研究者コミ
ュニティ、配分機関等、消防庁も、研究者を取り巻く環境を整備する主体とし
て、研究の公正性を維持する重要な役割を担っている。したがって、研究者自
身の規律や研究者コミュニティの自律を基本としながらも、研究機関が責任を
持って不正行為の防止に関わることにより、不正行為が起こりにくい環境がつ
くられるよう対応の強化を図る必要がある。特に、研究機関において、組織と
しての責任体制の確立による管理責任の明確化や不正行為を事前に防止する取
組を推進すべきである。
また、研究者や研究支援人材、学生、外国人といった研究活動を行う人材の
多様化、共同研究体制の複雑化が進展していることを踏まえ、研究機関におい
ては、共同研究における個々の研究者等がそれぞれの役割分担・責任を明確化
することや、複数の研究者による研究活動の全容を把握・管理する立場にある
代表研究者が研究活動や研究成果を適切に確認していくことを促すとともに、
若手研究者等が自立した研究活動を遂行できるよう適切な支援・助言等がなさ
れる環境整備(メンターの配置等)を行うことが望ましい。研究機関において
は、このような適切な研究体制が確保されるよう、実効的な取組を推進すべき
である。
第2節 不正行為の事前防止のための取組
1 不正行為を抑止する環境整備
(1)研究倫理教育の実施による研究者倫理の向上
不正行為を事前に防止し、公正な研究活動を推進するためには、研究機関
において、研究者等に求められる倫理規範を修得等させるための教育(以下
「研究倫理教育」という。)を確実に実施することなどにより、研究者倫理
を向上させることがまず重要である。研究倫理教育の実施に当たっては、研
究者の基本的責任、研究活動に対する姿勢などの研究者の行動規範のみなら
ず、研究分野の特性に応じ、例えば、研究データとなる実験・観察ノート等
の記録媒体の作成(作成方法等を含む。)・保管や実験試料・試薬の保存、
論文作成の際の各研究者間における役割分担・責任関係の明確化など、研究
活動に関して守るべき作法についての知識や技術を研究者等に修得・習熟さ
せることが必要である。
研究倫理教育の実施に当たっては、各研究機関では、それぞれ所属する研
究者に加え、将来研究者を目指す人材や研究支援人材など、広く研究活動に
関わる者を対象に実施する必要がある。例えば、諸外国や民間企業からの研 5究者や留学生などが研究機関において一時的に共同研究を行う場合であって
も、当該研究機関において研究倫理教育を受講できるよう配慮する必要があ
る。
このため、研究機関においては、「研究倫理教育責任者」の設置(注記) 4
などの
必要な体制整備を図り、所属する研究者、研究支援人材など、広く研究活動
に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施することにより、研究者等
に研究者倫理に関する知識を定着、更新させることが求められる。このよう
な自律性を高める取組は、学生や若手研究者の研究活動を指導する立場の研
究者が自ら積極的に取り組むべきである。研究機関全体として、研究倫理教
育を徹底し研究者としての規範意識を向上していくため、このような指導的
立場の研究者に対しても、一定期間ごとに研究倫理教育に関するプログラム
を履修させることが適切である。
配分機関においては、研究資金の申請受理等に際して研究倫理教育の受講
を確認するなど、研究の公正性を高める措置に努めることが求められる。
<<研究機関が実施する事項>>
しろまる「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、広く研究活動に
関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること
<<配分機関が実施する事項>>
しろまる競争的資金の契約締結時に、研究機関における行動規範や研究倫理教育の取組
状況について確認するとともに、配分先の研究機関における行動規範の設置状
況等についての調査や中間検査等の際の実施状況等の確認を必要に応じ行うこ
ととする。
(2)研究機関における一定期間の研究データの保存・開示
「第1節 2 研究成果の発表」のとおり、研究成果の発表とは、研究活
動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、
科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受ける
ことである。したがって、故意による研究データの破棄や不適切な管理によ
る紛失は、責任ある研究行為とは言えず、決して許されない。研究データを
一定期間保存し、適切に管理、開示することにより、研究成果の第三者によ
る検証可能性を確保することは、不正行為の抑止や、研究者が万一不正行為
の疑いを受けた場合にその自己防衛に資することのみならず、研究成果を広
く科学コミュニティの間で共有する上でも有益である。
このことから、研究機関において、研究者に対して一定期間研究データを
保存し、必要な場合に開示することを義務付ける旨の規程を設け、その適切
かつ実効的な運用を行うことが必要である。なお、保存又は開示するべき研
究データの具体的な内容やその期間、方法、開示する相手先については、デ
(注記) 4
「研究倫理教育責任者」の設置については「第3節 2 研究・配分機関における規程・
体制の整備及び公表」を参照のこと。 6ータの性質や研究分野の特性等を踏まえることが適切である。
<<研究機関が実施する事項>>
しろまる研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義
務付ける規程を整備し、その適切かつ実効的な運用を行うこと
2 不正事案の一覧化公開
「第3節 4 特定不正行為の告発に係る事案の調査」のとおり、特定不正
行為(次節で規定する「特定不正行為」をいう。以下「2 不正事案の一覧化
公開」において同じ。)が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結
果が公表されることになる。消防庁では、特定不正行為が行われたと確認され
た事案について、その概要及び研究・配分機関における対応などを一覧化して
公開する。これにより、閲覧した者が不正行為の抑止や不正行為が発覚した場
合の対応にいかすことが期待できる。
<<消防庁が実施する事項>>
しろまる特定不正行為が行われたと確認された事案について、その概要及び研究・配分
機関における対応などを一覧化して公開すること 7第3節 研究活動における特定不正行為への対応
1 対象とする研究活動及び不正行為等
本節で対象とする研究活動、研究者及び不正行為は、以下のとおりとする。
(1)対象とする研究活動
本節で対象とする研究活動は、競争的資金等その他の消防庁の予算の配分
又は措置により行われる全ての研究活動である。
(2)対象とする研究者
本節で対象とする研究者は、上記(1)の研究活動を行っている研究者で
ある。
(3)対象とする不正行為(特定不正行為)
本節で対象とする不正行為は、故意又は研究者としてわきまえるべき基本
的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果
の中に示されたデータや調査結果等の捏造
ね つ ぞ う、改ざん及び盗用である
(以下
「特
定不正行為」という。)(注記) 5。1 捏造
ね つ ぞ う
存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
2 改ざん
研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によっ
て得られた結果等を真正でないものに加工すること。
3 盗用
他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又
は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。
なお、研究機関における研究活動の不正行為への対応に関するルールづく
りは、上記(1)から(3)までの対象に限定するものではない。例えば、
研究活動に関しては他府省又は企業からの受託研究等による研究活動など研
究費のいかんを問わず対象にすべきである。
(注記) 5
「競争的資金の適正な執行に関する指針」(平成 17 年9月9日競争的資金に関する関係
府省連絡会申し合わせ。平成 24 年 10 月 17 日改正)では、研究上の不正行為への対応に関
して、競争的資金による研究論文・報告書等に「捏造、改ざん及び盗用」があったと認定さ
れた場合、競争的資金の返還及び応募資格の制限等の措置を講ずることとしている。このこ
とから、本節で対象とする不正行為(特定不正行為)は、特別委員会報告書と同様に「捏造、
改ざん及び盗用」に限定している。 82 研究・配分機関における規程・体制の整備及び公表
研究・配分機関においては、本節を踏まえて、研究活動における特定不正行
為の疑惑が生じたときの調査手続や方法等に関する規程や仕組み・体制等を適
切に整備することが求められる。規程や体制の整備の際、特に、研究活動にお
ける不正行為に対応するための責任者を明確にし、責任者の役割や責任の範囲
を定めること、告発者を含む関係者の秘密保持の徹底や告発後の具体的な手続
を明確にすること、研究活動における特定不正行為の疑惑が生じた事案につい
て本調査の実施の決定その他の報告を当該事案に係る配分機関等及び消防庁に
行うよう規定すること、
特定不正行為の疑惑に関し公表する調査結果の内容(項目等)を定めることが求められる。規程や体制の整備の状況については、当該
研究・配分機関の内外に公表等を行うものとする。研究機関においては、不正
行為に対応するための体制整備の一環として、一定の権限を有する「研究倫理
教育責任者」を部局単位で設置し、組織を挙げて、広く研究活動に関わる者を
対象として研究倫理教育を定期的に行うことが求められる。
<<研究・配分機関が実施する事項>>
しろまる研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑が生じたときの調査手続や方法等に関
する規程等を適切に整備し、これを公表等を行うこと
しろまるその際、
・研究・配分機関は、研究活動における不正行為に対応するための責任者を明
確にし責任者の役割や責任の範囲を定めること
・研究・配分機関は、告発者を含む関係者の秘密保持の徹底や告発後の具体的
な手続を明確にすること
・研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑が生じた事案について本調査の実施
の決定その他の報告を当該事案に係る配分機関等及び消防庁に行うよう規定
すること
・研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑に関し公表する調査結果の内容(項
目等)を定めること
・研究機関は、「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、
広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること【再
掲】
3 特定不正行為の告発の受付等
3-1 告発の受付体制
1 研究・配分機関は、特定不正行為に関する告発(当該研究・配分機関の職
員による告発のみならず、外部の者によるものを含む。以下同じ。)を受け
付け、又は告発の意思を明示しない相談を受ける窓口(以下「受付窓口」と
いう。)を設置しておくものとする。なお、このことは必ずしも新たに部署
を設けることを意味しない。また、受付窓口について、客観性や透明性を向
上する観点から、外部の機関に業務委託することも可能とする。
2 研究・配分機関は、設置する受付窓口について、その名称、場所、連絡先、
受付の方法などを定め、当該研究・配分機関内外に周知する。
3 研究・配分機関は、告発者が告発の方法を書面、電話、FAX、電子メー 9ル、面談など自由に選択できるように受付窓口の体制を整える。
4 研究・配分機関は、告発の受付や調査・事実確認(以下単に「調査」とい
う。)を行う者が自己との利害関係を持つ事案に関与しないよう取り計らう。
5 告発の受付から調査に至るまでの体制について、研究・配分機関はその責
任者として例えば理事、副学長等適切な地位にある者を指定し、必要な組織
を構築して企画・整備・運営する。
3-2 告発の取扱い
1 告発は、受付窓口に対する書面、電話、FAX、電子メール、面談などを
通じて、研究・配分機関に直接行われるべきものとする。
2 原則として、告発は顕名により行われ、特定不正行為を行ったとする研究
者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明示され、かつ不正と
する科学的な合理性のある理由が示されているもののみを受け付ける。
3 2にかかわらず、匿名による告発があった場合、研究・配分機関は告発の
内容に応じ、顕名の告発があった場合に準じた取扱いをすることができる。
4 告発があった研究・配分機関が調査を行うべき機関に該当しないときは、
「4-1 調査を行う機関」により調査機関に該当する研究・配分機関に当
該告発を回付する。回付された研究・配分機関は当該研究・配分機関に告発
があったものとして当該告発を取り扱う。また、「4-1 調査を行う機関」
により、告発があった研究・配分機関に加え、ほかにも調査を行う研究・配
分機関が想定される場合は、告発を受けた研究・配分機関は該当する研究・
配分機関に当該告発について通知する。
5 書面による告発など、受付窓口が受け付けたか否かを告発者が知り得ない
方法による告発がなされた場合は、研究・配分機関は告発者(匿名の告発者
を除く。ただし、調査結果が出る前に告発者の氏名が判明した後は顕名によ
る告発者として取り扱う。以下同じ。)に、告発を受け付けたことを通知す
る。
6 告発の意思を明示しない相談については、相談を受けた機関はその内容に
応じ、告発に準じてその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めた場
合は、相談者に対して告発の意思があるか否か確認するものとする。
7 特定不正行為が行われようとしている、又は特定不正行為を求められてい
るという告発・相談については、告発・相談を受けた機関はその内容を確認
・精査し、相当の理由があると認めたときは、被告発者に警告を行うものと
する。ただし、告発・相談を受けた機関は、当該機関が被告発者の所属する
研究機関でないときは、被告発者の所属する研究機関に事案を回付すること
ができる。被告発者の所属する研究機関でない機関が警告を行った場合は、
当該機関は被告発者の所属する研究機関に警告の内容等について通知する。
3-3 告発者・被告発者の取扱い
1 告発を受け付ける場合、個室で面談したり、電話や電子メールなどを窓口
の担当職員以外は見聞できないようにしたりするなど、告発内容や告発者
(「3-2 告発の取扱い」6及び7における相談者を含む。以下「3-3
告発者・被告発者の取扱い」において同じ。)の秘密を守るため適切な方法
を講じなければならない。 102 研究・配分機関は、受付窓口に寄せられた告発の告発者、被告発者、告発
内容及び調査内容について、調査結果の公表まで、告発者及び被告発者の意
に反して調査関係者以外に漏えいしないよう、
関係者の秘密保持を徹底する。
3 調査事案が漏えいした場合、研究・配分機関は告発者及び被告発者の了解
を得て、調査中にかかわらず調査事案について公に説明することができる。
ただし、告発者又は被告発者の責により漏えいした場合は、当人の了解は不
要とする。
4 研究・配分機関は、悪意(被告発者を陥れるため、又は被告発者が行う研
究を妨害するためなど、専ら被告発者に何らかの損害を与えることや被告発
者が所属する機関・組織等に不利益を与えることを目的とする意思。以下同
じ。)に基づく告発を防止するため、告発は原則として顕名によるもののみ
受け付けることや、告発には不正とする科学的な合理性のある理由を示すこ
とが必要であること、告発者に調査に協力を求める場合があること、調査の
結果、悪意に基づく告発であったことが判明した場合は、氏名の公表や懲戒
処分、刑事告発があり得ることなどを当該研究・配分機関内外にあらかじめ
周知する。
5 研究・配分機関は、悪意に基づく告発であることが判明しない限り、単に
告発したことを理由に、告発者に対し、解雇、降格、減給その他不利益な取
扱いをしてはならない。
6 研究・配分機関は、相当な理由なしに、単に告発がなされたことのみをも
って、被告発者の研究活動を部分的又は全面的に禁止したり、解雇、降格、
減給その他不利益な取扱いをしたりしてはならない。
3-4 告発の受付によらないものの取扱い
1 「3-2 告発の取扱い」6による告発の意思を明示しない相談について、
告発の意思表示がなされない場合にも、研究・配分機関の判断でその事案の
調査を開始することができる。
2 学会等の科学コミュニティや報道により特定不正行為の疑いが指摘された
場合は、当該特定不正行為を指摘された者が所属する研究機関に告発があっ
た場合に準じた取扱いをすることができる。
3 特定不正行為の疑いがインターネット上に掲載されている(特定不正行為
を行ったとする研究者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明
示され、かつ不正とする科学的な合理性のある理由が示されている場合に限
る。)ことを、当該特定不正行為を指摘された者が所属する研究機関が確認
した場合、当該研究機関に告発があった場合に準じた取扱いをすることがで
きる。
4 特定不正行為の告発に係る事案の調査
4-1 調査を行う機関
1 研究機関に所属する(どの研究機関にも所属していないが専ら特定の研究
機関の施設・設備を使用して研究する場合を含む。以下同じ。)研究者に係
る特定不正行為の告発があった場合、原則として、当該研究機関が告発され
た事案の調査を行う。 112 被告発者が複数の研究機関に所属する場合、原則として被告発者が告発さ
れた事案に係る研究活動を主に行っていた研究機関を中心に、所属する複数
の研究機関が合同で調査を行うものとする。ただし、中心となる研究機関や
調査に参加する研究機関については、関係研究機関間において、事案の内容
等を考慮して別の定めをすることができる。
3 被告発者が現に所属する研究機関と異なる研究機関で行った研究活動に係
る告発があった場合、現に所属する研究機関と当該研究活動が行われた研究
機関とが合同で、告発された事案の調査を行う。
4 被告発者が、告発された事案に係る研究活動を行っていた際に所属してい
た研究機関を既に離職している場合、現に所属する研究機関が、離職した研
究機関と合同で、告発された事案の調査を行う。被告発者が離職後、どの研
究機関にも所属していないときは、告発された事案に係る研究活動を行って
いた際に所属していた研究機関が、告発された事案の調査を行う。
5 上記1から4までによって、告発された事案の調査を行うこととなった研
究機関は、被告発者が当該研究機関に現に所属しているかどうかにかかわら
ず、誠実に調査を行わなければならない。
6 被告発者が、調査開始のとき及び告発された事案に係る研究活動を行って
いたときの双方の時点でいかなる研究機関にも所属していなかった場合や、
調査を行うべき研究機関による調査の実施が極めて困難であると、告発され
た事案に係る研究活動の予算を配分した配分機関が特に認めた場合は、当該
配分機関が調査を行う。この場合、本来調査を行うべき研究機関は当該配分
機関から協力を求められたときは、誠実に協力しなければならない。
7 研究機関は他の機関や学協会等の科学コミュニティに、また、配分機関は
告発された事案に係る研究活動の分野に関連がある機関や学協会等の科学コ
ミュニティに、調査を委託すること又は調査を実施する上での協力を求める
ことができる。このとき、「3-3 告発者・被告発者の取扱い」1から3
まで及び「4 特定不正行為の告発に係る事案の調査」は委託された機関等
又は調査に協力する機関等に準用されるものとする。
4-2 告発に対する調査体制・方法
各研究機関等は、調査の具体的な進め方について、各研究機関等の実情等に応じ
て適切に定めるものとする。
(1)予備調査
1 「4-1 調査を行う機関」により調査を行う機関(以下「調査機関」と
いう。)は、告発を受け付けた後速やかに、告発された特定不正行為が行わ
れた可能性、告発の際示された科学的な合理性のある理由の論理性、告発さ
れた事案に係る研究活動の公表から告発までの期間が、生データ、実験・観
察ノート、実験試料・試薬など研究成果の事後の検証を可能とするものにつ
いての各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間、又は被告発者が所属す
る研究機関が定める保存期間を超えるか否かなど告発内容の合理性、調査可
能性等について予備調査を行う。調査機関は、下記(2)2の調査委員会を
設置して予備調査に当たらせることができる。 122 告発がなされる前に取り下げられた論文等に対する告発に係る予備調査を
行う場合は、取下げに至った経緯・事情を含め、特定不正行為の問題として
調査すべきものか否か調査し、判断するものとする。
3 調査機関は、予備調査の結果、告発がなされた事案が本格的な調査をすべ
きものと判断した場合、本調査を行う。調査機関は、告発を受け付けた後、
相当の期間(例えば、目安として30日)内に本調査を行うか否かを決定す
るものとする。
4 本調査を行わないことを決定した場合、その旨を理由とともに告発者に通
知するものとする。この場合、調査機関は予備調査に係る資料等を保存し、
その事案に係る配分機関等及び告発者の求めに応じ開示するものとする。
(2)本調査
1 通知・報告
(ア)本調査を行うことを決定した場合、調査機関は、告発者及び被告発者に
対し、本調査を行うことを通知し、調査への協力を求める。被告発者が調
査機関以外の機関に所属している場合は、その所属機関にも通知する。告
発された事案の調査に当たっては、告発者が了承したときを除き、調査関
係者以外の者や被告発者に告発者が特定されないよう周到に配慮する。
(イ)調査機関は、当該事案に係る配分機関等及び消防庁に本調査を行う旨報
告する。
(ウ)本調査は、実施の決定後相当の期間の目安(例えば、目安として30日)
内に開始されるべきものとする。
2 調査体制
(ア)調査機関は、本調査に当たっては、当該調査機関に属さない外部有識者
を含む調査委員会を設置する。この調査委員会は、調査委員の半数以上が
外部有識者で構成され、全ての調査委員は、告発者及び被告発者と直接の
利害関係(例えば、特定不正行為を指摘された研究活動が論文のとおりの
成果を得ることにより特許や技術移転等に利害があるなど)を有しない者
でなければならない。
(イ)調査機関は、調査委員会を設置したときは、調査委員の氏名や所属を告
発者及び被告発者に示すものとする。これに対し、告発者及び被告発者は、
あらかじめ調査機関が定めた期間内に異議申立てをすることができる。異
議申立てがあった場合、調査機関は内容を審査し、その内容が妥当である
と判断したときは、
当該異議申立てに係る調査委員を交代させるとともに、
その旨を告発者及び被告発者に通知する。
(ウ)調査委員会の調査機関内における位置付けについては、調査機関におい
て定める。
3 調査方法・権限
(ア)本調査は、告発された事案に係る研究活動に関する論文や実験・観察ノ
ート、生データ等の各種資料の精査や、関係者のヒアリング、再実験の要
請などにより行われる。この際、被告発者の弁明の聴取が行われなければ
ならない。
(イ)告発された特定不正行為が行われた可能性を調査するために、調査委員
会が再実験などにより再現性を示すことを被告発者に求める場合、又は被 13告発者自らの意思によりそれを申し出て調査委員会がその必要性を認める
場合は、それに要する期間及び機会(機器、経費等を含む。)に関し調査
機関により合理的に必要と判断される範囲内において、これを行う。その
際、調査委員会の指導・監督の下に行うこととする。
(ウ)上記(ア)、(イ)に関して、調査機関は調査委員会の調査権限につい
て定め、関係者に周知する。この調査権限に基づく調査委員会の調査に対
し、告発者及び被告発者などの関係者は誠実に協力しなければならない。
また、調査機関以外の機関において調査がなされる場合、調査機関は当該
機関に協力を要請する。協力を要請された当該機関は誠実に協力しなけれ
ばならない。
4 調査の対象となる研究活動
調査の対象には、告発された事案に係る研究活動のほか、調査委員会の判
断により調査に関連した被告発者の他の研究活動も含めることができる。
5 証拠の保全措置
調査機関は本調査に当たって、告発された事案に係る研究活動に関して、
証拠となるような資料等を保全する措置をとる。この場合、告発された事案
に係る研究活動が行われた研究機関が調査機関となっていないときは、当該
研究機関は調査機関の要請に応じ、
告発された事案に係る研究活動に関して、
証拠となるような資料等を保全する措置をとる。これらの措置に影響しない
範囲内であれば、被告発者の研究活動を制限しない。
6 調査の中間報告
調査機関が研究機関であるときは、告発された事案に係る研究活動の予算
の配分又は措置をした配分機関等の求めに応じ、調査の終了前であっても、
調査の中間報告を当該配分機関等に提出するものとする。
7 調査における研究又は技術上の情報の保護
調査に当たっては、調査対象における公表前のデータ、論文等の研究又は
技術上秘密とすべき情報が、調査の遂行上必要な範囲外に漏えいすることの
ないよう十分配慮する。
4-3 認定
(1)認定
1 調査委員会は、本調査の開始後、相当の期間(例えば、目安として150
日)内に調査した内容をまとめ、特定不正行為が行われたか否か、特定不正
行為と認定された場合はその内容、特定不正行為に関与した者とその関与の
度合い、特定不正行為と認定された研究活動に係る論文等の各著者の当該論
文等及び当該研究活動における役割を認定する。
2 特定不正行為が行われなかったと認定される場合であって、調査を通じて
告発が悪意に基づくものであることが判明したときは、調査委員会は、併せ
てその旨の認定を行うものとする。この認定を行うに当たっては、告発者に
弁明の機会を与えなければならない。
3 上記1又は2について認定を終了したときは、調査委員会は直ちにその設
置者たる調査機関に報告する。
(2)特定不正行為の疑惑への説明責任 14調査委員会の調査において、被告発者が告発された事案に係る研究活動に
関する疑惑を晴らそうとする場合には、自己の責任において、当該研究活動
が科学的に適正な方法と手続にのっとって行われたこと、論文等もそれに基
づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明し
なければならない。
(3)特定不正行為か否かの認定
1 調査委員会は、上記(2)により被告発者が行う説明を受けるとともに、
調査によって得られた、物的・科学的証拠、証言、被告発者の自認等の諸証
拠を総合的に判断して、特定不正行為か否かの認定を行う。証拠の証明力は、
調査委員会の判断に委ねられるが、被告発者の研究体制、データチェックの
なされ方など様々な点から客観的不正行為事実及び故意性等を判断すること
が重要である。なお、被告発者の自認を唯一の証拠として特定不正行為と認
定することはできない。
2 特定不正行為に関する証拠が提出された場合には、被告発者の説明及びそ
の他の証拠によって、特定不正行為であるとの疑いが覆されないときは、特
定不正行為と認定される。
また、被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存
在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、特定不正行為である
との疑いを覆すに足る証拠を示せないときも同様とする。ただし、被告発者
が善良な管理者の注意義務を履行していたにもかかわらず、その責によらな
い理由(例えば災害など)により、上記の基本的な要素を十分に示すことが
できなくなった場合等正当な理由があると認められる場合はこの限りではな
い。また、生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存在などが、
各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間や被告発者が所属する、又は告
発に係る研究活動を行っていたときに所属していた研究機関が定める保存期
間を超えることによるものである場合についても同様とする。
3 上記(2)の説明責任の程度及び上記2の本来存在するべき基本的要素に
ついては、研究分野の特性に応じ、調査委員会の判断に委ねられる。
(4)調査結果の通知及び報告
1 調査機関は、調査結果(認定を含む。以下同じ。)を速やかに告発者及び
被告発者(被告発者以外で特定不正行為に関与したと認定された者を含む。
以下同じ。)に通知する。被告発者が調査機関以外の機関に所属している場
合は、その所属機関にも当該調査結果を通知する。
2 上記1に加えて、調査機関は、その事案に係る配分機関等及び消防庁に当
該調査結果を報告する(注記) 6。3 悪意に基づく告発との認定があった場合、調査機関は告発者の所属機関に
も通知する。
(注記) 6
調査結果を配分機関等及び消防庁に報告する際、その報告書に盛り込むべき事項を「参考
資料2」に示す。 15(5)不服申立て
1 特定不正行為と認定された被告発者は、あらかじめ調査機関が定めた期間
内に、調査機関に不服申立てをすることができる。ただし、その期間内であ
っても、同一理由による不服申立てを繰り返すことはできない。
2 告発が悪意に基づくものと認定された告発者(被告発者の不服申立ての審
査の段階で悪意に基づく告発と認定された者を含む。この場合の認定につい
ては、上記(1)2を準用する。)は、その認定について、上記1の例によ
り不服申立てをすることができる。
3 不服申立ての審査は調査委員会が行う。その際、不服申立ての趣旨が新た
に専門性を要する判断が必要となるものである場合には、調査機関は、調査
委員の交代若しくは追加、又は調査委員会に代えて他の者に審査をさせる。
ただし、調査機関が当該不服申立てについて調査委員会の構成の変更等を必
要とする相当の理由がないと認めるときは、この限りでない。
4 特定不正行為があったと認定された場合に係る被告発者による不服申立て
について、調査委員会(上記3の調査委員会に代わる者を含む。以下「(5)
不服申立て」において同じ。)は、不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、そ
の事案の再調査を行うか否かを速やかに決定する。当該事案の再調査を行う
までもなく、不服申立てを却下すべきものと決定した場合には、直ちに調査
機関に報告し、調査機関は被告発者に当該決定を通知する。このとき、当該
不服申立てが当該事案の引き延ばしや認定に伴う各措置の先送りを主な目的
とすると調査委員会が判断するときは、調査機関は以後の不服申立てを受け
付けないことができる。
上記1の不服申立てについて、再調査を行う決定を行った場合には、調査
委員会は被告発者に対し、先の調査結果を覆すに足る資料の提出等、当該事
案の速やかな解決に向けて、再調査に協力することを求める。その協力が得
られない場合には、再調査を行わず、審査を打ち切ることができる。その場
合には直ちに調査機関に報告し、
調査機関は被告発者に当該決定を通知する。
5 調査機関は、被告発者から特定不正行為の認定に係る不服申立てがあった
ときは、告発者に通知する。加えて、調査機関は、その事案に係る配分機関
等及び消防庁に報告する。不服申立ての却下及び再調査開始の決定をしたと
きも同様とする。
6 調査委員会は、再調査を開始した場合は、相当の期間(例えば、目安とし
て50日)内に、先の調査結果を覆すか否かを決定し、その結果を直ちに調
査機関に報告し、調査機関は当該結果を被告発者、被告発者が所属する機関
及び告発者に通知する。加えて、調査機関は、その事案に係る配分機関等及
び消防庁に報告する。
7 上記2の悪意に基づく告発と認定された告発者から不服申立てがあった場
合、調査機関は、告発者が所属する機関及び被告発者に通知する。加えて、
調査機関は、その事案に係る配分機関等及び消防庁に報告する。
8 上記2の不服申立てについては、調査委員会は相当の期間(例えば、目安
として30日)内に再調査を行い、その結果を直ちに調査機関に報告するも
のとする。調査機関は、当該結果を告発者、告発者が所属する機関及び被告
発者に通知する。加えて、調査機関は、その事案に係る配分機関等及び消防
庁に報告する。 16(6)調査結果の公表
1 調査機関は、特定不正行為が行われたとの認定があった場合は、速やかに
調査結果を公表する。
2 調査機関は、特定不正行為が行われなかったとの認定があった場合は、原
則として調査結果を公表しない。ただし、調査事案が外部に漏えいしていた
場合及び論文等に故意によるものでない誤りがあった場合は、調査結果を公
表する。悪意に基づく告発の認定があったときは、調査結果を公表する。
3 上記1、2の公表する調査結果の内容(項目等)は、調査機関の定めると
ころによる。
(7)告発者及び被告発者に対する措置
1 特定不正行為が行われたとの認定があった場合、特定不正行為への関与が
認定された者及び関与したとまでは認定されないが、特定不正行為が認定さ
れた論文等の内容について責任を負う者として認定された著者(以下「被認
定者」という。)の所属する機関は、被認定者に対し、内部規程に基づき適
切な処置をとるとともに、特定不正行為と認定された論文等の取下げを勧告
するものとする。
2 告発が悪意に基づくものと認定された場合、告発者の所属する機関は、当
該者に対し、内部規程に基づき適切な処置を行う。 17第4節 特定不正行為及び管理責任に対する措置
1 特定不正行為に対する研究者、研究機関への措置
前節の特定不正行為について、配分機関等は、調査機関から本調査の実施の
決定その他の報告を受けた場合は、以下のとおり、その事案に係る配分機関等
が、当該調査機関に対して当該事案の速やかな全容解明を要請し、当該調査機
関から提出される調査結果等を踏まえ、
関係機関に対して必要な改善を求める。
配分機関等は、前節の対象とする研究活動における特定不正行為を確認した場
合は、研究者及び研究機関に以下の措置を講じる。
1 配分機関等は、調査機関から本調査の実施の決定その他の報告を受けた場
合は、当該調査機関における調査が適切に実施されるよう、必要に応じて指
示を行うとともに、速やかにその事案の全容を解明し、調査を完了させるよ
う要請する。
2 配分機関等は、調査の過程であっても、調査機関から特定不正行為の一部
が認定された旨の報告があった場合は、必要に応じ、被認定者が関わる競争
的資金等について、採択又は交付決定の保留、交付停止、関係機関に対する
執行停止の指示等を行う。
3 配分機関等は、
調査機関から特定不正行為を認定した調査結果が提出され、
それを確認した場合は、当該調査結果の内容を踏まえ、以下の措置を講じる
ものとする。
(ア)措置の対象となる研究者
・特定不正行為があったと認定された研究に係る論文等において、特定
不正行為に関与したと認定された著者(共著者を含む。以下同じ。)
・特定不正行為があったと認定された研究に係る論文等の著者ではない
が、当該特定不正行為に関与したと認定された者
・特定不正行為に関与したとは認定されないものの、特定不正行為があ
ったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者とし
て認定された著者
(イ)特定不正行為に係る競争的資金等の返還等
特定不正行為が確認された研究活動に係る競争的資金等において、配分
機関は、上記(ア)の措置の対象となる研究者及び研究機関に対し、事案
に応じて、交付決定の取消し等を行い、また、当該競争的資金等の配分の
一部又は全部の返還を求める。
(ウ)競争的資金等への申請及び参加資格の制限
配分機関等は、上記(ア)の措置の対象となる研究者に対し、事案に応
じて、競争的資金等への申請及び参加資格を制限する。
競争的資金の配分により行われた研究活動における特定不正行為につい
ては、「競争的資金の適正な執行に関する指針」(平成 17 年9月9日競争
的資金に関する関係府省連絡会申し合わせ。以下「指針」という。)に基
づき措置を講じるとともにその他の競争的資金等への申請及び参加資格も
指針に準じて制限する。
また、その他の研究活動における特定不正行為(競争的資金の配分によ 18り行われた研究活動に係るものを除く。)についても、同様に、競争的資
金等への申請及び参加資格を指針に準じて制限する。
<<配分機関等が実施する事項>>
しろまる調査機関から本調査の実施の決定その他の報告を受けた場合は、関係機関に対
して必要な指示等を行うこと
しろまる特定不正行為に対する研究者、研究機関への措置を講じることができるよう、
配分機関等の規程等を整備すること、及び配分機関等が講じる措置の内容や措
置の対象となる研究者の範囲について、競争的資金等の公募要領や委託契約書
(付属資料を含む。)等に記載し、研究者及び研究機関がそれをあらかじめ承
知して応募又は契約するように取り計らうこと
2 組織としての管理責任に対する研究機関への措置
研究活動における不正行為を事前に防止するとともに、不正行為の疑いのあ
る事案が発覚した場合に適切に対応することにより、公正な研究活動を推進す
ることが重要である。本指針では、研究機関が責任を持って不正行為の防止に
関わることで、不正行為が起こりにくい環境がつくられるよう対応の強化を図
ることを基本としており、組織としての責任体制を明確化して研究活動におけ
る不正行為に適切に対応するための規程や体制の整備を求めている。これを踏
まえ、配分機関は、組織として研究機関の管理責任が果たされるよう、以下の
措置を講じる。なお、措置の実施に当たっては、あらかじめ研究機関からの弁
明の機会を設けるものとする。
(1)組織としての責任体制の確保
1 管理条件の付与
消防庁は、以下に掲げる場合において、研究機関に対し、体制整備等の不
備について改善事項及びその履行期限を示した管理条件を付す。また、消防
庁は、管理条件の履行状況について毎年度確認を行う。
(ア)「第2節 1 不正行為を抑止する環境整備」で掲げた研究機関に対す
る履行状況調査の結果、体制整備等に不備があることが確認された場合
(イ)研究活動における特定不正行為が確認された研究機関において、体制整
備等に改善を求める必要があることが確認された場合
2 間接経費の削減
消防庁が管理条件の履行状況について行う確認の結果において、管理条件
の履行が認められないと消防庁が判断した場合、競争的資金の配分機関は、
その研究機関に対する競争的資金における翌年度以降の間接経費措置額を一
定割合削減する。
間接経費措置額の削減割合については、
消防庁による確認の結果に応じて、
段階的に引き上げ、その上限を間接経費措置額の15%とする。間接経費措
置額の削減割合の基準については、消防庁が別に定めることとする。
3 配分の停止 19間接経費を上限まで削減する措置を講ずることを決定した後も、消防庁が
管理条件の履行が認められないと判断した場合は、
競争的資金の配分機関は、
その研究機関に対する翌年度以降の競争的資金の配分を停止する。
なお、上記1から3までの措置の解除は、以下によるものとする。
・1の措置は、研究機関において管理条件を着実に履行していると消防庁
が判断した時点で、消防庁が解除する。
・2の措置は、研究機関において管理条件を着実に履行している、又は管
理条件の履行に進展があると消防庁が判断した場合、配分機関がその翌
年度に解除する。
・3の措置は、研究機関において管理条件を着実に履行している、又は管
理条件の履行に進展があると消防庁が判断した時点で、配分機関が解除
する。
(2)迅速な調査の確保
競争的資金の配分機関は、当該競争的資金の配分により行われた研究活動
において特定不正行為の疑いがある事案が発覚したにもかかわらず、正当な
理由なく研究機関による調査が遅れた場合は、当該競争的資金における翌年
度以降の1か年度の間接経費措置額を一定割合削減する。
間接経費措置額の削減割合については、上限を間接経費措置額の10%と
し、配分機関が個別に定めるものとする。
<<配分機関が実施する事項>>
しろまる組織としての管理責任に対する研究機関への措置を講じることができるよう、
配分機関の規程等を整備すること、
及び配分機関が講じる措置の内容について、
競争的資金の公募要領や委託契約書(付属資料を含む。)等に記載し、研究機
関がそれをあらかじめ承知して応募又は契約するように取り計らうこと
3 措置内容の公表
消防庁及び配分機関等は、上記1及び2に掲げる措置を決定したときは、こ
れを速やかに公表する。 20(参考資料1)
調査結果の報告書に盛り込むべき事項
しろいしかく 経緯・概要
しろまる 発覚の時期及び契機((注記)「告発」の場合はその内容・時期等)
しろまる 調査に至った経緯等
しろいしかく 調査
しろまる 調査体制((注記)調査機関に属さない外部有識者を含む調査委員会の設置)
しろまる 調査内容
・調査期間
・調査対象((注記)対象者、対象研究活動、対象経費〔競争的資金、基盤的経費〕)
・調査方法・手順(例:書面調査〔当該研究活動に係る論文や実験・観察ノート、
生データ等の各種資料の精査等〕、関係者のヒアリング、
再実験を行った場合は、その内容及び結果等)
・調査委員会の構成(氏名・所属を含む。)、開催日時・内容等
しろいしかく 調査の結果(特定不正行為の内容)
しろまる 認定した特定不正行為の種別(例:捏造、改ざん、盗用)
しろまる 特定不正行為に係る研究者((注記)共謀者を含む。)
1特定不正行為に関与したと認定した研究者(氏名
(所属・職
((注記)現職))、
研究者番号)
2特定不正行為があったと認定した研究に係る論文等の内容について責任
を負う者として認定した研究者(氏名(所属・職((注記)現職))、研究者番号)
しろまる 特定不正行為が行われた経費・研究課題
〈競争的資金等〉
・制度名
・研究種目名、研究課題名、研究期間
・交付決定額又は委託契約額
・研究代表者氏名(所属・職((注記)現職))、研究者番号
・研究分担者及び連携研究者氏名(所属・職((注記)現職))、研究者番号
〈基盤的経費〉
・運営費交付金
しろまる 特定不正行為の具体的な内容((注記)可能な限り詳細に記載すること)
・手法
・内容
・特定不正行為と認定した研究活動に対して支出された競争的資金等又は
基盤的経費の額及びその使途
しろまる 調査を踏まえた機関としての結論と判断理由
しろいしかく 調査機関がこれまで行った措置の内容
(例)競争的資金等の執行停止等の措置、関係者の処分、論文等の取下げ勧告等
しろいしかく 特定不正行為の発生要因と再発防止策
しろまる 発生要因(不正が行われた当時の研究機関の管理体制、必要な規程の整
備状況を含む。)((注記)可能な限り詳細に記載すること)
しろまる 再発防止策

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