1中 防 消 第 5 号
令和6年5月28日
関係都道府県防災会議会長 殿
中央防災会議会長
(内閣総理大臣)
岸 田 文 雄
梅雨期及び台風期における防災態勢の強化について
貴殿におかれては、日頃から各般の施策を通じて災害対策の推進に御尽力をいただ
いているところであり、感謝を申し上げる。
例年、梅雨期及び台風期においては、各地で局地的大雨や集中豪雨が観測され、河川
の急な増水・氾濫、内水氾濫、がけ崩れ、土石流、地すべり、高潮、高波、竜巻等によ
り、多数の人的被害及び住家被害が発生している。とりわけ近年は、平成 30 年7月豪
雨、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨、令和3年7月1日からの大雨等、毎年の
ように大規模な風水害が発生しており、昨年も、梅雨前線による大雨、台風第6号、台
風第7号、台風第 13 号等により、全国各地で土砂災害や浸水被害が発生した。加えて、
令和6年能登半島地震で揺れが大きかった地域では、地盤の緩みや河道閉塞等が発生
していることから、
土砂災害や河川等の氾濫が発生しやすいと考えられるため、
その点
御留意いただきたい。
このような頻発化・激甚化する災害の被害を踏まえ、
防災態勢の強化に取り組んでき
たところであるが、梅雨期及び台風期を迎えるに当たり、人命の保護を第一義とし、下
記の点に留意した防災態勢の一層の強化を図られるよう依頼する。記1.
災害の発生を未然に防止するため、
防災事務に従事する者の安全確保にも留意した
上で、
職員の参集や災害対策本部の設置等適切な災害即応態勢の確保を図り、
関係機
関との緊密な連携の下に、特に以下の取組について万全を期すること。
1「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等の国土強靱化に向けた取
組の推進
国民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するため、「防災・減災、国
土強靱化のための5か年加速化対策」(閣議決定、令和2年 12 月)に基づく、激
甚化する風水害や切迫する大規模地震、火山噴火等への対策、予防保全型インフラ
メンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速及び国土強靱化に関する施策を
効率的に進めるためのデジタル化等の推進について各分野の取組の更なる加速化・ 2深化を図るための対策を始め、国土強靱化に向けた取組全般を推進すること。
2危険箇所等の巡視・点検の徹底
河川等の氾濫、がけ崩れ、土石流等の災害発生のおそれのある危険箇所の巡視・
点検の徹底を図るとともに、
地形、地質、
盛土等の土地改変の状況、土地利用状況、
災害履歴及び最近の地震や降雨等の状況を勘案し、
従来危険性を把握していなかっ
た区域も併せて再度安全性を点検するなど、適切な措置を講ずること。災害復旧事
業施行中の箇所について、再度の災害発生及び復旧作業中の事故等を防止するた
め、気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うなど、適切な措置を講ずること。
3河川管理施設を始めとする施設管理等の強化
施設管理者等は、災害発生に備え、管理施設等について、点検及び必要な箇所
に対する補修等の措置を講ずるとともに、施設の操作人員の配置計画、連絡体
制、操作規則等の確認をするなど、管理の強化を図ること。
また、台風の接近等、災害発生のおそれのある場合には、事前に改めて施設の
点検等を行うこと。
4地下空間の浸水対策等の強化
地下空間を管理する主体と連携し、地下空間の浸水に係る危険性について、利用
者に対して事前の周知を図り、
浸水対策及び避難誘導等安全体制の強化に万全を期
すること。洪水等が発生し、又は洪水等が発生するおそれがある場合には、迅速か
つ的確な情報の伝達、利用者等の避難のための措置等を講ずること。
5道路の冠水・法面崩壊・越波対策等の強化
道路のアンダーパス部等、局地的な大雨により冠水し、車両が水没するなど、重
大な事故が起きるおそれがある箇所については、
道路利用者への注意喚起や情報提
供を適切に行うとともに、事前に標識、情報板、排水ポンプ等の施設を点検するな
どの措置を講ずること。台風による越波、大雨による法面崩壊等の土砂災害のおそ
れのある箇所については、通行止め等の措置を適切に行い、被害を防止すること。
施設管理者や所轄の警察、消防は引き続き、相互に情報を共有するとともに、連絡
体制の確保、通行止めの措置、救助等に遅れが生じないよう措置を講ずること。ま
た、台風等による電柱倒壊で道路の閉塞が発生した際には、通行止め等の措置を適
切に行うとともに、
電線管理者より可及的速やかに報告がなされるよう連絡体制を
確保すること。
6港湾の浸水・コンテナ等の飛散対策等の強化
港湾において、
台風等に伴う高潮、
高波による浸水により港湾機能が低下するお
それのある箇所については、港湾利用者への注意喚起や情報提供を適切に行うと
ともに、過去に被災した施設等脆弱箇所への土嚢等の設置等を行うなど直前予防
策を講ずること。
暴風によりコンテナの飛散等のおそれのある箇所については、コンテナの固縛等の対策を適切に行い、被害を防止すること。施設管理者は引き続
き、水際・防災対策連絡会議を設置している場合にあっては、関係者が取るべき措
置、関係者間の連絡体制等の確認等、連携体制の強化を図ること。その他の場合に
あっては、関係機関の各主体が必要な情報収集や情報発信を適切に実施できる体 3制を構築し、連携体制を確保すること。
7災害発生のおそれのある箇所及び災害時にとるべき行動等の周知徹底
住民等が災害から身を守るための避難行動に資するため、浸水想定区域(洪水、
雨水出水、高潮、津波)や、津波災害警戒区域、土砂災害警戒区域を始めとする災
害発生のおそれのある箇所や避難経路、指定緊急避難場所等の情報について、ハザ
ードマップを各戸に配布又は回覧することで、
住民一人一人が自ら確認することを
促し、看板の設置等を通じ、住民等への周知徹底を図ること。また、住民等が災害
時にとるべき行動を判断するための「避難行動判定フロー」、及び避難情報を読み
解き避難するタイミング等を理解するための
「避難情報のポイント」
の周知を通じ、
『避難』とは『難』を『避』けることであり、ハザードマップや避難行動判定フロ
ー等を踏まえた上で、安全な場所にいる人は避難場所に行く必要がないこと、安全
な親戚・知人宅も避難先となりうること等について、住民の理解を促すこと。
8災害時に市町村が発令する避難情報の周知徹底
平時から避難情報に関する周知等を十分に行うこと。
特に、
警戒レベル3の高齢
者等避難は、災害リスクのある区域等の高齢者等が危険な場所から避難するべき
状況において発令される情報であること、
警戒レベル4の避難指示は、
災害リスク
のある区域等の住民等が危険な場所から避難するべき状況において発令される情
報であること、
警戒レベル5の緊急安全確保は、
災害が発生又は切迫し指定緊急避
難場所等への立退き避難が、かえって危険であると考えられる場合に発令される
ことがある情報であり、警戒レベル5に至る前の警戒レベル4までに必ず避難す
ること等について、住民等が十分に理解できるよう周知徹底すること。
9企業等に対する避難意識等の啓発
企業等に対し、事業所等の所在地の災害リスクや、災害警戒時に取るべき行動、
行動のタイミング等を確認すること。また、防災情報に留意し、甚大な災害発生の
危険や、
海抜ゼロメートル地帯等における大規模な広域避難の可能性が高まったと
きには、来客や従業員の安全確保を最優先して、店舗や事業所等の計画的な休業、
テレワークの実施、時差出勤、必要に応じて安全確保が必要な従業員の待機・受入
れ等、実情に応じた適切な対応を講ずるよう協力を求めるとともに、都道府県・市
町村においても、上記の取組を促進すること。あわせて、「事業継続ガイドライン
‐あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応‐」
(内閣府、
令和5年3月)
を参考にして、各企業等が事業継続計画の策定や改定を行うよう働きかけること。
10水辺等利用者に対する情報提供及び自助意識の啓発
大雨後の河川増水時には、河川管理者等と連携し、河川等の水辺利用者に対して
情報を提供し、安全な場所へ避難するよう注意を促すなど、適切に対応すること。
増水時や台風の際、農業用水路、排水路、岸壁等から落ちる危険性等もあることか
ら、これらに近付かないなどの注意を促すことも含めて、水難事故防止についての
自助意識を啓発すること。
11指定緊急避難場所の確保等
市町村は、避難経路の安全性や住民が安全に避難できる時間等も考慮した上で、 4住民の居住地近隣に災害の種別ごとに指定緊急避難場所を確保するとともに、
指定
緊急避難場所を確保することが困難である場合には、
指定緊急避難場所以外の比較
的安全な避難場所を確保することや自主防災組織等が地域内で比較的安全な施設
等を近隣の安全な場所として自主的に設定することに対し助言すること等により、
住民の居住地近隣に避難場所を確保することについても検討すること。
このほかに、関係機関及び市町村が指定緊急避難場所の表示等を新設・更新する
際は、当該避難場所が対応している災害種別が一目でわかるよう、日本産業規格と
して定めた「災害種別一般図記号(JISZ8210)」及び「災害種別避難誘導標識シス
テム(JISZ9098)」に基づく表示に努めること。
また、
激しい雨が継続する、あるいは落石等の災害の前兆現象が発生するなどし
て、
指定緊急避難場所まで移動することが、
かえって命に危険を及ぼしかねないと
判断される場合は、
近隣のより安全な場所や建物へ移動し、それさえ危険な場合は
屋内上階の山からできるだけ離れた部屋等へ避難するなどして直ちに身の安全を
確保すること、
特に地震の被害を受けた地域においては、降雨による土砂災害が発
生しやすい状況にあるため十分に注意することについて、周知を支援すること。
なお、避難所における感染症対策として、「避難所におけるマスク着用等の考
え方について」(内閣府・消防庁・厚生労働省、令和5年3月)、「新型コロナ
ウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う避難所における新型コロナ
ウイルス感染症の感染対策等について」
(内閣府・消防庁・厚生労働省、令和5年
4月)等を踏まえた対応をとること。
避難所の開設・運営に当たっては、
「災害対応力を強化する女性の視点〜男女共
同参画の視点からの防災・復興ガイドライン〜」(内閣府男女共同参画局、令和2
年5月)
の内容を踏まえ、
女性と男性のニーズの違いを十分に配慮した環境整備と
ともに、運営体制への女性の参画に努めること。
12指定福祉避難所等の確保
従前、災害時において、受入れを想定していない被災者の避難により、福祉避難
所としての対応に支障が生ずるなどの懸念から、指定避難所としての福祉避難所
(以下「指定福祉避難所」という。
)の確保が進まない課題に対応するため、災害
対策基本法施行規則(昭和 37 年総理府令第 52 号)において、指定避難所の公示事
項を明確化している。これにより、市町村長は、指定福祉避難所ごとに、受入対象
者を特定してあらかじめ指定の際に公示し、
受入対象者とその家族のみが避難する
施設であることを明確化することが可能となることから、
「福祉避難所の確保・運
営ガイドライン(内閣府、令和3年5月改定)
」の内容も参考にしつつ、指定福祉
避難所等の確保について検討すること。
また、
14の個別避難計画等の作成に当たって、避難先として指定福祉避難所等を
定めることにより、避難行動要支援者の円滑な避難を進めるよう調整すること。
13要配慮者利用施設等における避難体制の確保
介護保険法(平成9年法律第 123 号)や水防法(昭和 24 年法律第 193 号)、土
砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成 12 年法律
第 57 号)等により、要配慮者利用施設は、避難確保計画等の自然災害に関する計
画(以下「災害計画」という。)を作成することとされている。要配慮者利用施設
管理者等に対して、
災害計画の作成や避難訓練の実施の支援に努めるとともに、市 5
町村における避難訓練の実施状況について確認し、施設へ避難指示等の情報が確
実に伝達されるよう、情報伝達体制を定めておくこと。また、学校における避難確
保計画の作成、避難訓練及び避難訓練を通じた防災教育を効果的に実施するため
の取組について、積極的に支援すること。
14個別避難計画の作成等
災害対策基本法(昭和 36 年法律第 223 号)において、自ら避難することが困難
な高齢者や障害者等の避難行動要支援者ごとの避難支援等を実施するための計画
である「個別避難計画」の作成が市町村の努力義務とされている。
内閣府では、
個別避難計画の作成手順等を明示した具体的な取組指針である「避
難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(内閣府、令和3年5月改定)」を示しており、この内容も参考にし、防災・福祉等関係部局が連携するとともに、
福祉専門職等関係者の参画を得て作成に努めること。
個別避難計画の作成に当たっては、
避難行動要支援者名簿に記載又は記録された
避難行動要支援者のうち、作成の優先順位が高いと市町村が考える者について、令
和3年度からおおむね5年程度で作成に取り組むよう努めること。なお、所要経費
については、地方交付税措置が講じられている。
また、市町村は災害の発生に備え、避難支援等関係者に対し、避難行動要支援者
名簿及び個別避難計画の情報を提供するものとする。この場合、情報漏えいの防止
のために必要な措置を講ずるよう求めるなど必要な措置を講ずるよう努めること。
15災害対策本部における機能の維持
災害対策本部は、
本部長である市町村長が適時適切な判断を下せるよう、的確な
情報の収集・整理を行うなど、膨大な業務に対処する必要があることから、防災担
当部局の職員に過度な負担がかかり機能不全に陥ることがないよう、
平常時から非
常時優先業務を絞り込むとともに、当該業務を遂行するための役割を分担するな
ど、全庁を挙げた体制をあらかじめ構築しておくこと。また、国が、災害が発生す
るおそれ段階での災害対策本部を設置したときには、該当する地域の都道府県、市
町村においても災害対策本部を設置するなど、
相応の体制を取ることができるよう
検討すること。
非常時優先業務を継続的に行えるよう業務継続計画を確認し、
必要に応じて修正
するなどの対策を講ずること。災害対策本部が設置される庁舎においては、災害発
生時に備え、
非常用電源を設置し、浸水等への対策や十分な燃料の確保を行うとと
もに、定期的な保守・点検等の実施や停電時に確実に作動するよう確認、訓練の実
施の対策を講ずること。
16受援体制の整備
災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に、市町村は、国・都道府県・市
町村・救助機関・医療機関・ボランティア等、様々な主体から多数の応援の申出が
なされると同時に、応援を要請することが想定される。それらの応援を迅速・的確
に受け入れて情報共有や各種調整等を行うため、
市町村は地域防災計画等に受援計
画を位置付け、
受援担当者の選定や応援職員等の執務スペースの確保等を行うこと
により、受援体制の整備に努めること。また、都道府県においても、上記事項につ
いて同様に留意するとともに、
受援調整等について市町村への積極的な支援に努め 6ること。
17避難指示等の発令・伝達、避難判断のための訓練等
災害時に躊躇なく避難指示等を発令・伝達できるようにすること。そのために、
災害対応eラーニング等を積極的に受講し、知識や手順の確認を行うとともに、避
難指示等の発令・伝達に関する機器操作の習熟を推進すること。また、住民自身が
適切に避難行動を取ることができるようにするため、
気象防災アドバイザー等の専
門家等の知見も活用し、
職員と多数の住民の参加による洪水や土砂災害等の地域の
実情に応じた災害を想定した避難指示等の発令・伝達、避難判断のために地域内で
の声かけにより避難する取組や、安全を確認する訓練を、災害発生のおそれが高ま
る出水期前に実施するよう努めること。加えて、各地域における自助・共助の取組
の適切かつ継続的な実施に向け、
専門家の支援により防災の基本的な知見を兼ね備
えた地域防災リーダーの育成に努めること。
18ボランティアによる支援活動環境整備
災害が発生した場合、ボランティアによる支援活動が円滑に行われるよう、発災
時のみならず平常時から社会福祉協議会、ボランティア団体、災害中間支援組織
(NPO・ボランティア団体等の活動を支援するため、人材、資金、情報等の仲介や
コーディネート等を担う組織)等との連携を促進し、必要な情報の提供を行うとと
もに、社会福祉協議会による災害ボランティアセンターの設置運営に係る研修・訓
練への支援及び参加を行うなど、受援体制の整備に努めること。特に発災後は、被
災者支援活動の情報等の共有、活動の調整等を行う「情報共有会議」の開催や参加
を促すこと。また、ボランティアを受け入れるに当たっては、ボランティア保険へ
の加入奨励、危険な作業の回避、熱中症予防対策の実施等の安全確保対策を十分に
講ずること。
19災害時における安否不明者の氏名等の公表
災害発生時、捜索対象者となる安否不明者の特定に向け、安否情報の提供を呼び
かけるために実施する、安否不明者の氏名等の公表について、
「防災分野における
個人情報の取扱いに関する指針(内閣府、令和5年3月)
」の内容を踏まえ、適切に
対応すること。
都道府県は、市町村や関係機関と連携の上、災害発生時の具体的なタイムライン
を想定し、安否不明者の氏名等の公表や安否情報の収集・精査に係る一連の手続等
について、平時から整理しておくこと。
また、安否不明者に係る個人情報を保有するに当たっては、利用目的を適切に特
定しておき、救助活動の効率化・円滑化に資する場合には、安否不明者の氏名等の
公表の実施を速やかに検討すること。
20関係機関から市町村に対する助言
都道府県は、市町村において時機を失することなく避難情報が発令されるよ
う、市町村に対して、積極的に助言すること。また、市町村に対しては、必要に
応じ都道府県等に助言を求めるよう周知すること。2.災害発生時には早期避難のための避難態勢の構築等を図り、
住民が適時適切な避難 7行動を判断できるよう、
関係機関との緊密な連携の下に、
特に以下の取組について万
全を期すこと。
1防災気象情報及び河川情報の収集、
早い段階からの危機意識の醸成並びに確実な情
報伝達の徹底
災害発生の危険度の高まりに応じて段階的に発表される注意報・警報・特別警報
等(早期注意情報、警報に切り替える可能性が高い注意報を含む。)、危険度の高
まりが5段階等で色分け表示された危険度分布(キキクル)や流域雨量指数の予測
値、土砂災害警戒情報、指定河川洪水予報(大雨ピーク後に水位が上昇する場合を
含む。)、線状降水帯に関する各種情報(発生可能性に関する半日程度前からの呼
びかけ、発生を知らせる情報)、竜巻注意情報、台風情報等の防災気象情報及び河
川の水位、カメラ画像等の河川情報の収集・伝達を徹底し、関係者間での危機意識
の醸成及び共有を図ること。
また、避難指示等の発令に資する情報を、気象庁、施設管理者等が警戒レベル相
当情報として市町村に提供するなどして、
市町村の避難指示等の発令判断を支援す
ることとしているので、これに留意し、住民の主体的な避難行動を支援すること。
ホームページ、SNS 等のインターネット等により提供された情報については、必
要に応じ適切に災害対応に活用すること。
住民等の安全確保のため、市町村は、防災行政無線、緊急速報メールを始め、マ
スメディアとの連携や、広報車・インターネット・コミュニティ FM・Lアラート等
を活用した多様な伝達手段を整備・多重化・点検を行い、また、組み合わせて活用
するなど、
不特定多数の者が出入りする施設等の関係者を含め、住民等に対し早い
段階から確実に防災情報を提供すること。
さらに、プッシュ型手段によるエリアを
限定した避難指示等の伝達については、
特に人口や面積の規模が大きい市町村にお
いて、夜間や早朝に突発的・局地的大雨が発生した場合、住民の混乱や市町村にお
ける応急対応の遅れ等のリスクを低減する観点から有効であると考えられるため、
地域の実情に応じて、その有効性や運用上の課題等を考慮した上で検討すること。
また、
市町村のホームページのサーバが、緊急時のアクセス増によりダウンしない
よう、ウェブサイトの軽量化等の対策を講ずること。
2避難指示等の発令
市町村は、関係機関の支援を受けながら、具体的でわかりやすい避難指示等の発
令基準や適切に絞り込んだ発令対象区域を設定し、
事前に発令対象区域や発令のタ
イミング等を住民等に周知すること。なお、設定にあたっては、細分化すればする
ほど市町村が伝達する地区数が増え、情報が煩雑になる側面もあることから、自然
条件や地形、住民の居住状況等といった市町村の実情に応じて設定すること。
特に土砂災害警戒情報が発表された場合は、
市町村は避難指示を発令することを
基本とすること。また、市町村は、専門的知見を有する国や都道府県によるホット
ライン等の技術的な助言や、
必要に応じて気象防災アドバイザー等の専門家の技術
的な助言等を活用しながら、発令判断を行うこと。
災害が発生・切迫し、指定緊急避難場所等への立退き避難が、かえって危険であ
ると考えられる状況において、そのような立退き避難から、自宅等において少しで
も安全な場所に移動するなどにより直ちに身の安全を確保するよう、
行動変容を特
に促したい場合には、警戒レベル5の緊急安全確保を発令するなど、適切に対応す 8るこ と。ただし、災害が発生・切迫している状況において、市町村がその状況を
把握することができるとは限らないことから、
本情報は必ず発令される情報ではな
いことについて、住民等に周知すること。
洪水や高潮等の浸水想定区域に警戒レベル3の高齢者等避難や警戒レベル4の
避難指示を発令する際には、
避難行動として必ずしも立退き避難のみを求める必要
はなく、ハザードマップ等を確認し住民等の判断により、計画的に屋内で身の安全
を確保することも検討するよう促すことも可能であることから、
緊急時にはそのよ
うな呼び掛けを行うとともに、平時より住民等に屋内安全確保も含め、取るべき避
難行動を検討するよう周知等すること。
避難指示等の発令については、避難住民の受入れに備え、警戒レベル3の高齢者
等避難の段階から指定緊急避難場所を開放しているが、
局地的かつ短時間の大雨の
場合等に備え、
行政職員の到着を待たずとも指定緊急避難場所を地域の住民等によ
って開放できるようにしておき、
適切なタイミングで躊躇なく避難指示等を発令す
ること。
避難指示等に係る本庁と行政区・支所との間における責任区分や発令権者を明確
化すること。また、時機を逸することなく適切に避難指示等を発令・伝達できるよ
う、夜間休日も含めた宿日直体制や職員緊急参集体制の構築により、万全の体制を
確保すること。
3要配慮者への情報伝達等
要配慮者の避難を考慮し、市町村への防災情報の提供を早期に行うとともに、市
町村において、
視聴覚障害者等の情報が伝わりにくい要配慮者に対しても多様な伝
達手段に加え、字幕・手話放送、多言語(やさしい日本語を含む。)での情報発信
等により避難指示等の情報が確実に伝達されるよう適切な措置を講ずること。ま
た、要配慮者の避難が夜間に及ぶおそれのある場合には、日没前に避難が完了でき
るよう警戒レベル3の高齢者等避難を発令するなど、
着実な情報伝達及び早い段階
での避難の促進に努めること。
さらに、市町村は、避難行動要支援者名簿等を活用し、在宅の要配慮者の把握に
努めること。また、福祉関係者等と連携しながら、自宅の災害リスク等についてハ
ザードマップや避難行動判定フロー等を用いて本人と一緒に確認してもらうこと
に加え、新たな避難情報について紹介すること等を通じ、要配慮者自身の避難行動
の理解や支援体制の構築に向けた取組を推進すること。
4個別避難計画等に基づく避難支援等の実施
災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、市町村は、避難行動要
支援者名簿及び個別避難計画に基づく避難支援等の実施に努めること。
また、避難支援等実施者が避難支援等を実施できない場合、避難支援等関係者そ
の他の者に対し、個別避難計画情報を提供することができることに留意すること。
5広域避難の実効性確保に向けた取組の推進
市町村や都道府県の区域を越えた広域避難が必要となる地域においては、市町
村、都道府県、国の機関、交通事業者等の関係機関同士で早めの情報共有や調整、
意思決定がなされるよう、平時より関係機関同士で顔の見える関係を構築し、具体
的な計画や協定等の締結を進めるなど、
円滑な広域避難の実施に向けた取組を推進 9すること。
また、
災害対策基本法における広域避難に係る居住者等の受入れ等に関する規定
を踏まえ、
市町村においては平時からあらかじめ管内の施設の受入能力を把握して
おくとともに、
自己の管理下にない施設を受入先として提供しようとする場合にお
いては、当該施設の管理者の同意を得ることが必要となることに留意すること。
広域避難が必要な地域においては、通常の避難とは異なるタイミング・避難先へ
と避難することも考えられるため、
災害時に居住者等が適時適切な避難行動が取れ
るよう、平時から住民等への周知啓発による理解促進に努めること。
6災害救助法の適用について
災害が発生し、
住家への一定数以上の被害が生じた場合のほか、多数の者が生命
又は身体への危害を受け、又は受けるおそれが生じた場合には、災害救助法(昭和
22 年法律第 118 号)の適用が可能である。都道府県又は救助実施市においては、
被害状況、
避難状況等の情報の把握に努めるとともに、被害の程度が不明確な場合
でも、被害が生じているおそれがあるときは、都道府県知事・救助実施市長の判断
により、躊躇なく適用について検討し、速やかに内閣府に情報共有すること。
また、
令和3年5月の災害救助法の改正により、
大規模な災害等が発生するおそ
れがある段階において、
災害対策基本法に基づく国の災害対策本部が設置された場
合には、告示された所管区域に該当する都道府県又は救助実施市において、災害救
助法の適用が可能であるので、都道府県又は救助実施市においては、同法に基づく
救助(避難所の供与や避難行動が困難な要配慮者等の輸送)の実施について適切に
判断を行うこと。なお、令和4年台風第 14 号において、災害が発生するおそれが
ある段階において、初めて救助が実施されたところである。
3.市町村は、上記1〜2の留意事項を含め必要な取組を確認・実行できるよう、「防
災・危機管理セルフチェック項目」等を活用し、災害対応の在り方について職員の理
解を深めるとともに、自己点検を通じて災害対応能力の向上を図ること。
以上

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