消 防 予 第 号


消 防 予 第 1 0 1 号
平成19年3月20日
各都道府県消防防災主管部長殿東京消防庁・指定都市消防長
消 防 庁 予 防 課 長
住宅防火対策のさらなる推進に関する具体的実践方策等について
住宅防火対策については、「新たな住宅防火対策の推進について」(平成 13
年 4 月 1 日付け消防予第 91 号)により定めた住宅防火基本方針に基づき、10
年後における放火自殺者等を除く住宅火災による死者の発生数を、現状から予
測される死者発生数の半数に低減・抑制することを目標として、各種施策を推
進願っているところである。
平成 17 年末までの住宅火災による死者の発生状況を見ると、平成 14 年まで
は、高齢者人口の増加等の状況を踏まえれば、住宅火災による死者の総数は概
ね抑制状態の傾向にあったが、その後平成 15 年からは年間 1,000 人を超える
死者が発生する状況であり、高齢者を中心とする死者は依然として多発してい
る状況となっている。
また、消防庁においては、これまでも消防法を改正し、住宅用火災警報器の
設置義務化を行うなど、住宅防火対策に注力してきたところであるが、今後さ
らに重点的に取り組むこととしており、これに伴い「住宅防火対策推進体制の
整備について」
(平成 3 年 8 月 27 日付け消防予第 168 号)で通知した住宅防火
対策の推進体制の見直しを行い、学識経験者、関係行政機関、関係団体等で構
成する「住宅防火対策推進懇談会」を設置したところである。
こうした動きに呼応する形で、住宅防火対策の推進強化に資するとの観点か
ら、住宅防火対策に関する事業の実施を促進することを目的として、関係団体
で構成される「住宅防火対策推進協議会」が設置されるとともに、平成19年
4月1日をもってその事務局が財団法人日本消防設備安全センターから財団法
人日本防火研究普及協会に移管され、推進体制のさらなる強化が図られている
ところである。
ついては、今後本格的な高齢社会を迎えるにあたり、高齢者等を中心とした
住宅火災による死者数の一層の低減を図るために、下記事項に留意し、各種施
策を総合的かつ効果的に展開し、住宅防火対策の積極的推進に取り組むようお
願いします。
また、各都道府県消防防災主管部長におかれては、貴都道府県内の市町村に
対してこの旨ご周知いただくようお願いします。記1 基本的考え方
高齢化の進展とともに住宅火災による死者が増加するなか、
設置が義務付け
られた住宅用火災警報器等の既存住宅への早期設置及び防炎品の普及の促進
とともに、
地域の関係団体等と連携した積極的な広報活動等により、
住宅火災
による死者数を大幅に低減することを目指す。
注)なお、平成19年度消防庁重点施策では、
「過去最悪となった住宅火災死
者数(1,220人:平成17年)を今後10年間で半減させることを目標
とし、既存住宅への住宅用火災警報器の設置の促進、防炎品(カーテン、寝
具類、衣類等)の使用拡大に向けた取組みを集中的に実施する」とされてい
るところ。
2 今後の課題と推進の方向性
従来、個人が私生活を営む場である住宅の防火責任は、当該個人が負うべき
ものとの考えのもとに、
火気管理等の防火管理並びに消防用設備等の設置及び
維持管理の規制については、
火災発生時に人命危険等を共有する共同住宅等の
一部を除き、法令による義務は課されてこなかったところであるが、住宅火災
による死者数の急増に対応するため平成 16 年の消防法改正により、住宅へ住
宅用火災警報器等の設置を義務付ける法制度が導入されたところである。
しかしながら、住宅防火を推進するためには、まず個人の責任において個々
の住宅の防火安全性の向上を図ることが重要である。
また、火災発生時に初期消火や避難などの対応が困難となりやすい高齢者や
身体障害者等が居住する住宅等にあっては、
さらなる防火安全性の確保のため、
着火抑制の機能を持つ防炎品の使用により出火防止対策を図ることが重要で
あるとともに、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委
員などの福祉関係者や消防団、
婦人防火クラブ及び自主防災組織など地域にお
いて活動する団体等と連携した地域ぐるみでの住宅防火対策の推進が不可欠
である。
今後の住宅防火対策の推進に当たっては、これらの考え方に立ち、住宅の住
宅用火災警報器等の設置や防炎品の使用等による個々の住宅の防火安全度の
向上を図るための支援と地域における住宅防火対策の推進のための支援に重
点を置き、
「地域と行政の連携による住宅防火対策の推進」をスローガンとし
て、必要かつ具体的な対策を積極的に実践していくものとする。
3 具体的実践方策
(1) 住宅用火災警報器等の設置促進
住宅用火災警報器の早期設置により住宅火災による死者数の低減を図る
ため、以下の方策等を積極的に行うものとする。
ア 既存住宅への計画的な普及活動を実施する。
イ 住宅用火災警報器等に関する各種情報(販売店・取扱店の情報、普及活
動の事例、不適正販売に関する情報等)を積極的に収集するとともに、関
係団体に対して積極的に提供する。
ウ 自治会や消防団、
婦人防火クラブ及び自主防災組織など地域において活
動する団体等による共同購入の実施を呼びかける。
エ 関係団体との連携により、リース方式を活用した火災・ガス漏れ複合型
警報器等の設置促進を図る。
オ 福祉関係者等との連携により、住宅用火災警報器等の点検や機能の低下
した機器の更新等を実施できない高齢者宅等の点検等を実施できる協力
体制を確立する。
(2) 防炎品の普及促進
防炎寝具、衣類、カーテン類は、火源の接触による着火を抑制する機能
を有しており、火災の発生防止、拡大防止及び着衣着火等による死者の発
生防止に極めて有効であるため、以下の方策等により防炎品の積極的な使
用促進を図るものとする。
ア 火災の危険性や防炎品に対する認知度、
必要性について住民意識の醸成
を図る。
イ 高齢者や喫煙者の生活実態等ニーズに応じた防炎品推奨基準を策定し、
使用の推進を図る。
ウ 防炎品の有効性に係る具体的事例を積極的に収集するとともに、
防炎品
の火災防止への有効性等の情報を広報媒体等を活用した広報活動により
積極的に提供し、使用促進を図る。
エ 関係団体の連携により、
防炎品のリサイクルシステムの確立を推進する
とともに、廃棄方法等についての情報提供を行う。
(3)住宅の防火安全度向上の推進
住宅のハード面における防火安全性能の向上及び防災環境の充実により
住宅防火の徹底を図るため、
以下の方策等により各種住宅用防災機器等の普
及促進を図るものとする。
ア 消火器等推奨基準に基づき、
住宅構造、
居住者の生活環境等に適した、
設置しやすく、使いやすい住宅用消火器及びエアゾール式簡易消火具等
の普及促進を図る。
イ 取扱いの習熟を図るため消火器等による消火訓練を推進するとともに、
実訓練を通して消火器等の有効性を周知することにより設置促進を図る。
ウ 住宅用スプリンクラー設備及び住宅用自動消火装置について、
住宅金融
公庫の割増融資制度その他の情報を積極的に情報提供し、設置促進を図る。
エ 普及・設置促進とあわせて、既に設置されている消火器等の点検システ
ム及びリサイクルシステムについての情報提供を推進する。
オ 住宅用防災機器等推奨制度及び住宅防火安心マーク表示制度の周知を
図るとともに、住宅防火安心マークを活用した住宅用防災機器等の設置・
使用の促進を図る。
(4) 関係機関等の連携に基づく住宅防火の推進
国、地方公共団体及び関係団体等が緊密な連携を図り、以下の対策等を積
極的に行うものとする。
ア 関係行政機関、町内会・自治会等の公共的団体、ホームヘルパー・民生
委員等の福祉関係者、関係業界等が連携・協力し、各種住宅用防災機器等
の給付・助成制度の活用等により普及啓発を実施する。
イ 高齢者等の所在把握のための連携を強化する。
ウ 関係行政機関、福祉関係者等との連携・協力により、高齢者等が居住す
る住宅について住宅の訪問診断を重点的に実施する。
エ 報道機関及び広報誌等と連携した積極的な広報活動を展開する。
(5) 防火意識の更なる高揚
情報の共有化などにより防火意識の高揚を図り、住民自らによる個々の住
宅の防火安全性の向上が図られるよう、
以下の方策等を積極的に実施するも
のとする。
ア 住宅火災により多数の死者が発生した場合に、出火原因、死亡に至った
要因等を早期に情報提供するなど、機会を捉えたタイムリーな情報提供を
実施し、住宅火災に対する注意喚起を図る。
イ インターネットの活用や地域の実情に即した住宅防火の展示普及事業、
住宅防火対策推進シンポジウム等の充実強化等により、情報の共有化を促
進する。
ウ 損害保険料の割引制度などの住宅防火対策の普及に資する情報を積極
的に収集・情報提供するとともに、高齢者等にも分かりやすい防火対策資
料の作成・配布等により、
日常の具体的な防火対策について情報提供する。
エ 関係機関及び住民のリーダーが必要とする知識を網羅した具体的な指
導教材を作成・配布するとともに、リーダー育成支援プログラムを作成す
ること等により、地域の住宅防火対策を推進するリーダーの育成を図る。
オ 学校、幼稚園、保育所等及び地域のサークル活動等の教育の場を活用し
た住宅防火知識の普及を推進する。
カ インターネットの活用や防火イベント、シンポジウム、講習会等多数の
者が集まる機会を捉えた、個々の住宅等の防火安全に係る評価と具体的な
防火対策の提示を行う住宅防火診断ソフト及び防火チェックリスト・防火
対策フローシート等を活用した防火診断の実施を推進する。
(6) 住宅防火に係る技術開発等の推進
住宅防火対策の普及促進のため、以下の方策等により技術開発等を推進す
るものとする。
ア 各研究機関等と連携した実用的かつ安価な住宅用防災設備機器の研究
開発を積極的に促進するとともに、必要な機能を有する、より安価で使い
やすい機器の開発及び販売を関係団体に呼びかける。
イ 高齢者等の視力及び聴力等を考慮した住宅用火災警報器等の開発を促
進する。
ウ 防炎品の普及のため、製造業者等に対し、品質、デザイン、販売方法等
の工夫や安価な防炎品の製品開発を行うよう働きかけを行う。

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