消 防 救 第 3 4 号
医政発0331第48号
平成28年3月31日
各都道府県知事 殿
(消防防災主管部局、衛生主管部局扱い)
消 防 庁 次 長
( 公 印 省 略 )
厚 生 労 働 省 医 政 局 長
( 公 印 省 略 )
転院搬送における救急車の適正利用の推進について
近年、救急搬送件数は、高齢化の進展等によりほぼ一貫して増加しており、需要増に
救急隊の増加が追いつかず、
真に必要な傷病者への対応が遅れ、救命率に影響が出かね
ない状況となっています。
限りある搬送資源を緊急性の高い事案に優先して投入するためには、
救急車の適正利
用を積極的に推進していく必要があります。
救急車の適正利用に向けた取組については、
平成 27 年度救急業務のあり方に関する検討会において議論が行われたところですが、
この中の重要な論点の一つとして、
傷病者を一の医療機関から他の医療機関へ搬送する
事案(以下「転院搬送」という。
)に係る救急車の適正利用の推進についても検討がな
されました。
検討会においては、転院搬送について、
救急医療提供体制の確保に必要なものもある
一方で、
全救急出動件数の1割弱を占めるため全体の救急搬送件数に与える影響が大き
く、救急車の適正な利用が特に求められていること、また、転院搬送における救急車の
適正利用の推進のためには、
消防庁と厚生労働省とが連携して転院搬送における救急車
の適正利用に係るガイドラインを作成し、
各地域においては、当該ガイドラインを参考
にしつつ、消防機関、医師会、医療機関等、関係者間で合意の上、救急業務として転院
搬送を行う場合についてのルールを定めることが有効であることが報告されました。
つきましては、各都道府県においては、
転院搬送における救急車の適正利用の推進に
向け、下記に示す手順を参考に、関係機関と協議の上、各地域におけるルール化に向け
た合意形成の支援を行うようお願いします。併せて、各地域においては、都道府県の支
援を受け、別紙ガイドライン(
「救急業務として転院搬送を行う場合のルールについて
合意形成を行う際の参照事項」
)を参考にしつつ、地域の実情に応じ、ルール化に向け
た合意形成のための取組を積極的に行うようお願いします。
貴職におかれては、本通知の趣旨を十分理解した上で、貴都道府県内市町村(消防の
事務を処理する一部事務組合等を含む。
)に周知いただくようお願いします。
なお、本通知は、消防組織法(昭和 22 年法律第 226 号)第 37 条及び地方自治法(昭
和 22 年法律第 67 号)
第 245 条の 4 第 1 項の規定に基づく技術的助言として発出するも
のであることを申し添えます。記1 都道府県の役割
都道府県は、各地域メディカルコントロール協議会等に対し、転院搬送における救急
車の適正利用のための合意形成について、技術的な支援を行うこと。
その際、都道府県メディカルコントロール協議会等において、都道府県医師会、救急
医療に精通した医師、
消防機関、
都道府県消防防災主管部局、
都道府県衛生主管部局等、
関係者間で、
消防機関が実施する救急業務は緊急性のある傷病者の搬送を対象とするも
のであることを改めて共有し、
転院搬送における救急車の適正利用の推進について、十
分な議論を行うこと。併せて、以下の事項についても検討すること。
イ 緊急性の乏しい転院搬送については、
本来、
消防機関が実施するものではないため、
医療機関が所有するいわゆる病院救急車、
消防機関が認定する患者等搬送事業者等を
活用すること。
ロ 地域医療支援病院等の救急用又は患者輸送用自動車を有している医療機関につい
ては、当該病院が所有する救急用又は患者輸送用自動車の使用実態を把握した上で、
当該自動車を転院搬送に有効活用するよう要請すること。
ハ 消防法第 35 条の5第1項に規定する傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関
する基準のうち、同条第2項第7号の基準(その他基準)は、
「前各号に掲げるもの
のほか、
傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関し都道府県が必要と認める事項」
を定めるものとされていることから、必要に応じ、当該基準に転院搬送ガイドライン
等の内容を踏まえた規定を定めること。
ニ 2による合意形成を行う区域の設定については、
都道府県の区域又は医療を提供す
る体制の状況を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域
(地域メディカルコント
ロール協議会、二次医療圏、消防本部の管轄区域等)など、地域の実情に応じて定め
ること。
2 地域における合意形成
1で定めた各地域においては、都道府県の助言を受けつつ、地域メディカルコントロ
ール協議会等の枠組みを活用し、転院搬送における救急車の適正利用の推進に向けた、
救急業務として転院搬送を行う場合についてのルールについて合意形成を行うこと。
その際、地域メディカルコントロール協議会等において、郡市区医師会、救急医療に
精通した医師、消防機関、市町村消防防災主管部局、市町村衛生主管部局等、関係者間
で、
消防機関が実施する救急業務は緊急性のある傷病者の搬送を対象とするものである
ことを改めて共有し、
転院搬送における救急車の適正利用の推進について十分な議論を
行った上で、関係者間の合意の下、地域の実情を踏まえたものとすること。併せて、以
下の事項についても検討すること。
イ 緊急性の乏しい転院搬送については、
本来、
消防機関が実施するものではないため、
医療機関が所有するいわゆる病院救急車、
消防機関が認定する患者等搬送事業者等を
活用すること。
ロ 都道府県の助言を受けつつ、
合意形成を行う区域を越えた転院搬送を行う場合等に
おける区域間の調整を実施すること。
救急業務として転院搬送を行う場合のルールについて合意形成を行う際の
参照事項
1 消防機関が救急業務として行う転院搬送は、
原則として以下のイ及びロの条件を満た
す傷病者について、転院搬送を要請する医療機関(以下「要請元医療機関」という。)の医師によって、医療機関が所有する患者等搬送車、民間の患者等搬送事業者、公共交
通機関等、他の搬送手段が活用できないと判断される場合に実施するものとする。
イ 緊急性
緊急に処置が必要であること。
ロ 専門医療等の必要性
高度医療が必要な傷病者、特殊疾患等に対する専門医療が必要な傷病者等、要請
元医療機関での治療が困難であること。なお、一の医療機関において急性期の治療
が終了した傷病者について、当該医療機関の医師が、他の医療機関において専門医
療又は相当の医療を要すると判断したときにおいても、
当該要件を満たす場合もあ
ること。
2 消防機関が救急業務として転院搬送を行う場合、1の原則を踏まえた上で、地域の実
情に応じ、以下の項目について関係者間で検討し、合意の上でルール化しておくことが
望ましい。
イ 要請元医療機関が、あらかじめ転院する医療機関を決定し、受入れの了解を得て
おくこと。
ロ 要請元医療機関が、その管理と責任の下で搬送を行うため、原則として要請元医
療機関の医師又は看護師が同乗すること。同乗できない場合は、救急隊のみで搬送
することについて、要請元医療機関が患者、家族等に説明し、了承を得ること。
ハ 要請元医療機関が、消防機関に対し、転院の理由、搬送を依頼する理由、担当医
師名、患者の状態、処置内容等を示した転院搬送依頼書を提出すること。
3 地域において救急業務として転院搬送を行う場合についてのルールを策定するに当
たっては、地域の実情を踏まえ、必要に応じ、以下の事項についても検討することとす
る。
イ 特殊な疾患等を有する傷病者を除き、一定の時間内に搬送することが可能な区域
に関する定めなど、他の救急業務の実施に支障を生じさせるおそれのない転院搬送
の地理的な範囲に関する事項
ロ 傷病者の迅速な受入れのために、転院搬送を前提として一旦、一の医療機関が傷
病者の受入れを実施するなど、消防機関と医療機関との間で既に設けられている一
別紙
定のルールに基づいた事項
ハ その他、医療機能の分化・連携の進展状況等を踏まえ、地域の実情に応じ、特に
定めることを必要とする事項

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