1消 防 予 第 1 0 3 号
平成18年3月10日
各都道府県消防防災主管部長 殿
東京消防庁・各指定都市消防長 殿
消防庁予防課長
スプリンクラー設備等におけるループ配管の取扱いについて
屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、屋外消火栓設備
等の配管については、それぞれ消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号。以下「規則
」という。)第12条第1項第6号、第14条第1項第10号、第16条第3項第2号の
2及び第18条第4項第8号、第22条第8号等により設けることとされており、また、
当該配管の摩擦損失計算にあっては、規則第12条第1項第7号チ、第14条第1項第1
1号ホ及び第16条第3項第3号ヘに基づき、「配管の摩擦損失計算の基準」(昭和51
年消防庁告示第3号。以下「摩擦損失基準」という。)により算出することとされていま
す。
一方、最近、配管をリング状に結合する(以下「ループ配管」という。)など、摩擦損
失基準をそのまま適用するだけでは配管の摩擦損失を算出できないものが現れてきている
ことから、今般、ループ配管の摩擦損失計算については下記のとおり取り扱うこととした
ので、執務上の参考としてください。
なお、各都道府県消防防災主管部長におきましては、貴都道府県内の市町村に対しても
この旨周知されますようお願いします。記1 ループ配管の摩擦損失計算について
ループ配管の摩擦損失計算では、分岐点から合流点までにおけるそれぞれの配管内の
摩擦損失水頭が等しくなるように流量を配分すること。なお、摩擦損失計算には複数の
手法が考えられるが、その一つとして次のような手法も考えられること。
(1) ループ配管の流入部側分岐点を設定するとともに、当該分岐点から最遠となる流出
部側合流点を設定する。
(2) ループ配管に流れる流量を仮想値で設定し、摩擦損失基準に基づき仮想摩擦損失水
頭を計算する。
(3) 流水の摩擦損失は、配管長さに比例し、流量の1.85乗に正比例することから、ルー
プ配管で圧力の不均衡が生じた場合の修正流量(q)は次式で表せることが分かって
いる。 2 そこで、(2)で仮想した流量及び仮想摩擦損失水頭の値を用いて、修正流量を求める。
(4) (2)で設定した仮想流量及び(3)で求めた修正流量を踏まえ、再度ループ配管に流れ
る流量を設定し、ループ配管の流出部側合流点における摩擦損失水頭の数値の合計(
絶対値)が0.05m未満となるまで(3)の計算を繰り返す。
なお、摩擦損失計算の計算例を次に示す。
(計算例)
次図のようにスプリンクラー設備の配管をループにし、最も遠いヘッドまでの水流が
二系統に分かれる場合の配管の摩擦損失計算の算出方法等の例は、次のとおりである。
なお、計算条件として、ループ配管はSGP(配管用炭素鋼管)50Aを用いるもの
とし、流入部の総水量は1,000L/min、1の配管は直管200mに相当する圧力損失
があり、2の配管は直管150mに相当する圧力損失があるものとする。
ア ループ部の流入部(A)を設定するとともに最遠となる流出部(B)を設定する。
イ 流入部(A)と流出部(B)間の配管の摩擦損失水頭を求めるために次の手順によ
り計算する。なお、流入部(A)を基点として時計回りを+、反時計回りを−とし、
流入部に最も近いスプリンクラーヘッドへの分岐点をC、流入部に最も近いスプリン
クラーヘッドをDとする。
a 配管1及び2に流れる仮想流量(任意の値を設定)をそれぞれ500L/minと
想定し、配管の摩擦損失水頭を摩擦損失基準により求める。q≒SumPSum1.85PQq:修正流量(L/min)
P:配管摩擦損失水頭(m)
Q:流量(+又は−方向の仮想流量)
1,000L/min 1,000L/min
1 SGP50A 200m
2 SGP50A 150mBA+−C1,000L/min 1,000L/min
1 SGP50A 200m
2 SGP50A 150mD 3
第一次計算
区間
配管口径(A)流量
(L/min)
直管相当長(m)摩擦損失水頭(m)計算式(注記)
配管1
(+側)
50 500 200 +70.807
配管2
(−側)
50 500 150 −53.105
+側及び−側の摩擦損失水頭の合計(m) +17.702 (注記)摩擦損失基準第二に規定される の計算式に
よる。
H:配管の摩擦損失水頭(m)
N:配管の摩擦損失計算に必要なHnの数
Qk:大きさの呼びがkである配管内を流れる水の流量(L/min)の絶対値
Dk:大きさの呼びがkである管の基準内径(cm)の絶対値
I’k:大きさの呼びがkの直管の長さの合計(m)
I"k:大きさの呼びがkの管継手及びバルブ類について、当該管継手及びバルブ類の大きさの呼びに応
じて使用する管の種別ごとに定めた摩擦損失基準別表第一から別表第三までに定める値により直
管相当長さに換算した値の合計(m)
b 仮想流量(=500L/min)に対する修正流量を以下の式で求める。
q≒(+側−側のPの値の合計)÷(+側−側の(1.85P/Q)式の値の合計)

1 +側の配管摩擦損失水頭=+70.807
2 −側の配管摩擦損失水頭=−53.105
3 +側及び−側の配管摩擦損失水頭の合計(SumP=1+2)=+17.702
4 +側の(1.85P/Q)式の値(+−関係なく絶対値)=(×ばつ70.807/500
)=0.262
5 −側の(1.85P/Q)式の値(+−関係なく絶対値)=(×ばつ53.105/500
)=0.196
6 +側及び−側の(1.85P/Q)式の値の合計(Sum(1.85/Q)=4+5)
=0.458
7 3で求めた値を6で求めた値で除すと、修正流量(q)が求められる。
=17.702/0.458≒38.650
この結果、+側では仮想流量500L/minに対し38.650L/min多く、−側では仮
想流量500L/minに対し38.650L/min少ないということとなる。
∴ q≒SumPSum
1.85PQq:修正流量(L/min)
P:配管摩擦損失水頭(m)
Q:流量(+又は−方向の仮想流量)
5001.85 ×ばつ ×ばつ
5.294.87 100
5001.85 ×ばつ ×ばつ
5.294.87 100
Qk1.85
I’k+I"k
Hn=1.2
Dk4.87 100N
H= Σ Hnn=1 4
c +側と−側の仮想流量(=500L/min)に修正流量(=38.650L/min)を考
慮し、新たな仮想流量(=+側461.350L/min、−側538.650L/min)として、
再度計算する。
(注記)これを繰り返して、+側及び−側の摩擦損失水頭の数値の合計(絶対値)が0.05
未満になるまで計算する。
第二次計算
区間
配管口径(A)修正流量
(L/min)
流量
(L/min)
直管相当長(m)摩擦損失水頭(m)計算式
配管1
(+側)
50 461.350 200 +61.015
配管2
(−側)5038.650
538.650 150 −60.948
+側及び−側の摩擦損失水頭の合計(m) +0.067
1 +側の配管摩擦損失水頭=+61.015
2 −側の配管摩擦損失水頭=−60.948
3 +側及び−側の配管摩擦損失水頭の合計(SumP=1+2)=+0.067
4 +側の(1.85P/Q)式の値(+−関係なく絶対値)=(×ばつ61.015/
461.350)=0.244
5 −側の(1.85P/Q)式の値(+−関係なく絶対値)=(×ばつ60.948/
538.650)=0.209
6 +側及び−側の(1.85P/Q)式の値の合計(Sum(1.85/Q)=4+5)
=0.453
7 3で求めた値を6で求めた値で除すと、修正流量(q)が求められる。
=0.067/0.453≒0.147
この結果、+側では仮想流量461.350L/minに対し0.147L/min多く、−側で
は仮想流量538.650L/minに対し0.147L/min少ないということとなる。
第三次計算
区間
配管口径(A)修正流量
(L/min)
流量
(L/min)
直管相当長(m)摩擦損失水頭(m)計算式
配管1
(+側)
50 461.203 200 +60.979
配管2
(−側)500.147
538.797 150 −60.978
+側及び−側の摩擦損失水頭の合計(m) −0.05<0.001<0.05
461.351.85 ×ばつ ×ばつ
5.294.87 100
538.651.85 ×ばつ ×ばつ
5.294.87 100
461.2031.85 ×ばつ ×ばつ
5.294.87 100
538.7971.85 ×ばつ ×ばつ
5.294.87 100 5 e +側と−側の摩擦損失水頭の合計の絶対値が0.05未満となった数値(≒61.0m)
が当該ループ配管A〜B間における配管摩擦損失水頭となる。
ウ 流入部に最も近いスプリンクラーヘッド(D)における放水圧力が規定圧力(
1.0MPa)を超えないことを以下の手順により確認する。
a スプリンクラーヘッド1個が作動し、放水圧力が1.0MPa時の放水量を以下の式
によって求める。 ここに、
P:放水量80L/min時のスプリンクラーヘッドの放水圧力(=0.1MPa)
Q:放水圧力0.1MPa時のスプリンクラーヘッドの放水量(=80L/min)
P1:放水圧力1.0MPa
Q1:放水圧力1.0MPa時の放水量
とする。

故に放水圧力1.0MPaでは、放水量は253L/minとなる。
b 加圧送水装置の揚程曲線(P−Q曲線)から、流量253L/min時の揚程を求める。
c 加圧送水装置から流量253L/min時のA点までの摩擦損失水頭を求める。
d ループ配管部A−B−CとA−Cにおいて上記ループ配管の計算の例等を用いて
流量253L/min時の摩擦損失水頭を求める。
e bで求めた加圧送水装置の揚程から、A点まで、ループ配管部(A−C間、dで
求められた値)まで及びC点から直近のスプリンクラーヘッド(D点)までの摩擦
損失水頭、その他落差等を差し引くと、流量253L/min時のスプリンクラーヘッド
における放水圧力が求められる。
{(bで求めた加圧送水装置の揚程)−((加圧送水装置からAまでの摩擦損失水
頭)+(AからCまでの摩擦損失水頭)+(CからDまでの摩擦損失水頭)+(そ
の他落差等))}/100=Dのスプリンクラーヘッド放水圧力(MPa)
f D点のスプリンクラーヘッドにおいて1.0MPaを超えていなければ可とし、超え
ている場合は不可となり減圧措置を講じる必要がある。
2 ループ配管の口径について
将来的にループ部からの配管の増設等の可能性がある場合には、ループ配管部の口径
の大きさに余裕をもたせる等の指導すること。
3 その他
ア ループ配管にあっては、上記1の例に示すとおり単にループにしているもの以外に、
複雑なループ形式をしている配管やグリッド配管(複数の配管が並列に並んでいる 6)が見られるが、本通知は単純なループ配管の場合の例に限定した計算例である。
なお、複雑なループ形式をしている配管やグリッド配管については、その計算例
が客観的に確定され次第、別途通知する予定である。
イ 上記1の例については、ループ部分の配管の摩擦損失水頭を求めているが、ループ
配管から末端の放出口までの配管の摩擦損失水頭を含めた合計摩擦損失が最大とな
る部分が配管の摩擦損失水頭の最大値となるので、ポンプの全揚程等の計算の際に
は注意が必要である。
例えば、次図で配管口径及び材質が全て同じ場合は、ループ部分のみから判断す
ると摩擦損失水頭はA−B間の方がA−D間より大きいが、D−E間の摩擦損失水
頭とB−C間の摩擦損失水頭との差は、A−B間の摩擦損失水頭とA−D間の摩擦
損失水頭との差より大きいため、合計損失ではA−B−C間よりA−D−E間の方
が大きくなり、最遠部はEで最大の摩擦損失水頭はA−D−E間となる。BA+−CD
末端放出口
E 末端放出口
連絡先 消防庁予防課設備係
伊藤・安井
TEL 03‐5253‐7523
FAX 03‐5253‐7533

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