消 防 予 第 1 8 7 号
平成17年8月12日
各都道府県消防防災主管部長
東京消防庁・各指定都市消防長
消防庁予防課長
消火器の不適切点検に係る留意事項について
消火器の不適切点検(以下「不適切点検」という )については、被害を未然に防ぐよ。う各消防本部に対して周知いただいているところですが、依然、全国的に発生している
状況にあります。
このことから 「消火器不適切点検に係る実態調査について(依頼 (平成17年4
、 )」月28日付け消防予第86号)にて調査、報告していただいたところですが、その結果
を別添のとおり取りまとめました。不適切点検に際する本調査結果等を踏まえると、特
に下記の事項に留意すべきと考えられますので、貴職におかれましては執務上の参考と
されますようお願いします。
また、各都道府県消防防災主管部長にあっては、貴都道府県内の市町村に対してもこ
の旨周知されますようお願いします。記1 不適切点検の調査結果
今回の不適切点検の調査結果から得られた最近の傾向は次のとおりである。
ア 不適切点検の発生件数は、半年間で484件(1年間に換算すると968件)で
、 (
「 」
あり 昨年の調査結果データ 消火器の不適切点検に係る執務資料の送付について
(平成16年9月10日付け消防予第162号)別添。以下「15年中データ」と
いう )の1,260件と比較するとやや減少していること。。イ 請求額は15年中データと比較して、やや減少はしているものの、消火器1本当
たりの請求額をみても、大きな変化は見られないこと。
ウ 都道府県別では、各都道府県により不適切点検の件数にばらつきがあるものの、
都市部(特に近畿圏)において比較的多いこと。
なお、15年中データと比較して、顕著な減少が見られる都道府県もあることか
ら、当該都道府県内の消防本部の不適切点検防止における取組み内容の一部を次の
とおり紹介するので、参考とされたい。殿 (取組み内容例)
・条例により「消防設備業者は誠実に事業を行い、消防設備機器の設置又は維持管
理の状況を法令等の規定に適合しないものとする行為などの火災予防上不適当な
行為を行ってはならないこと 「その疑いが認められる場合には、必要な調査が」、
できること 「火災予防上不適当な行為を行っている業者に対し、指導、勧告及」、
び公表することができること」などを定めた。
・各地域の消費者生活センターへ消火器の不適切点検について情報提供した。
・消火器の不適切点検防止のポスターを、駅やスーパーなど人の目に付く場所に貼
付することで消火器の不適切点検に関する注意喚起を図った。
・消火器の不適切点検防止のポスターやリーフレットなどを、一般市民に対する防
火実習で活用したり、法人会へ配布するなど、消防関係者以外にも普及啓発の拡
大・強化を図った。
エ 用途別では、不適切点検の実数は別添「6 用途別件数」のとおり、工場、事務
所 一般住宅等が多くなっていること なお 対象物数に対する発生件数の割合 用
、 。 、 (
途別)は別添「7 対象物数に対する発生件数の割合(用途別 」のとおりとなって)おり、あまり差違が見られないこと。
オ 時間帯別では、一般の会社等の勤務時間に合わせて多く発生しているが、午後の
時間帯が比較的多いこと。
カ 手口別では、約8割以上が点検・詰め替えを名乗っていること。
これは、販売等ではなく点検・詰め替えを名目とすることにより、防火対象物の
関係者等が受け入れてしまう傾向が強いこと、また、関係者等が適切な点検である
と誤解し、契約等をしてしまうことが考えられる。
キ 支払い状況は不明なものが多いが、請求額に対して、少しでも支払ったものが約
4割であったのに対し、未払い・未遂が約3割となっており、不適切点検に対する
一定の知識が事業所の関係者等に周知されつつあることが考えられる。
2 不適切点検防止の普及啓発(広報)における留意事項
事業所の関係者等に対して消火器の不適切点検防止について普及啓発(広報)を行
うにあたっては 「消火器不適切点検に係る執務資料の送付について (平成16年9
、 」
月10日付け消防予第162号)で送付した事業所向けリーフレットの活用を図ると
ともに、次の事項に留意されたい。
ア 最近は手口の巧妙化が見られることから、次に示す事例を参考に関係者等に対し
て、手口の紹介をするとともに、不適切な点検を行おうとする業者に対しては点検
の実施を拒否する姿勢をとるように説明すること。
(事例)
1 出入りの点検業者を装い、事前の電話(女性の声が多い)により点検の予約を
とる。
2 訪問時には電話で事前に説明済みあることを、受付や対応従業員に口頭のみで
簡単な説明で済まし、契約書であることを隠して(預かり書などのように見せか
けるなど 、サインをさせる。また、当該契約書は、契約について責任のない者が)サインをしても有効である旨が備考などに記されている。
3 すぐに消火器を回収しはじめ、離れた場所で全数の消火薬剤を交換する。
4 点検作業を全て終えた状態で金額の請求をする。
5 関係者等が請求額が高額であることに気付き、出入り点検業者ではないと分か
、 、 、
っても 支払いの拒否をすると 回収した消火器を返却しないなどとまくし立て
.....
すごむなどにより、支払いを強要する。...イ 引き続き、マスコミ、ホームページ、防火管理者講習、婦人防火クラブを活用す
るなど、普及啓発(広報)を行う範囲を拡大させること。
ウ 不適切点検に対して注意喚起をするのみでなく、適切な点検を行うことの重要性
についても改めて認識させること。
3 高額な請求があった場合の留意事項
ア 一般住宅の場合
1 原則として契約日から8日間はクーリング・オフが適用されるので、配達証明
付き内容証明郵便等により契約等の撤回、無効の主張を行うことが有効であるこ
と。
2 必要に応じて消費生活センターに相談することも有効であるので、事前に十分
な協議を行っておき、適切な対応を講じられるよう配意すること。
イ 事業所等の場合
1 クーリング・オフの適用については 「特定商取引に関する法律 (昭和51年
、 」
法律第57号)第26条第1項において 「売買契約又は役務提供契約で、その申、込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しく
は役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る
販売又は役務の提供」は適用除外とされているが 「大阪高等裁判所 平成15年、7月30日判決 平成15年(ネ)第1055号 動産引渡等請求控訴事件」の
ように事業所における消火器の不適切点検について契約の無効が認められた事例
もあるので、当該事例を事業所等に紹介することが有効であること。
2 不適切点検業者が言った言葉やその手口を詳細に記録しておくことにより、弁
護士等と相談の上で、錯誤による契約の無効や詐欺を主張することも考えられる
こと。
3 消火器の不適切点検によるトラブルについて裁判で争われた事例としては上記
1の他に「大津地方裁判所 平成13年12月7日判決 平成13年(ワ)第1
98号 請負代金請求事件」が挙げられる。これらの裁判の概要については消防
庁のホームページ( )を参考とされた
http://www fdma go jp/html/life/caution html
. . . .
いこと。
別添
1 調査期間
平成16年10月1日〜平成17年3月31日までの6ヶ月間
2 調査対象
各消防本部に連絡等により把握している消火器の不適切訪問点検事例
3 発生件数
484件
昨年中(平成15年1月1日〜平成15年12月31日) 1,260件
4 請求額
(1)
請求総額
47,106,317円
昨年中 193,160,480円
(2)
1件当たりの平均請求額
115,457円(最高698,000、消火器62本)
昨年中 153,301円(最高3,155,157円、消火器30本)
(3)
消火器1本当たりの平均請求額
14,813円(最高70,000円)
昨年中 15,270円(最高150,000円) 5 都道府県別件数(昨年中と比較できるよう、今回の調査件数を倍にして換算してあります。) 都道府県別件数050100150200250300北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
(15年1月〜12月)件数
(16年10月〜17年3月)×ばつ2件数 6 用途別件数(昨年中と比較できるよう、今回の調査件数を倍にして換算してあります。)
用途別件数0501001502002503001項イ
1項ロ
2項イ
2項ロ
2項ハ
3項イ
3項ロ4項5項イ
5項ロ
6項イ
6項ロ
6項ハ7項8項
9項イ
9項ロ
10項
11項
12項イ
12項ロ
13項イ
13項ロ
14項
15項
16項イ
16項ロ
16の2項
16の3項
17項
一般住宅
不明
(15年1月〜12月)件数
(16年10月〜17年3月)×ばつ2件数 7 対象物数に対する発生件数の割合(用途別)
対象物数に対する発生件数の割合(用途別)00.010.020.030.040.050.060.070.080.090.11項イ
1項ロ
2項イ
2項ハ
2項ロ
3項イ
3項ロ4項5項イ
5項ロ
6項イ
6項ハ
6項ロ7項8項
9項イ
9項ロ
10項
11項
12項イ
12項ロ
13項イ
13項ロ
14項
15項
16項イ
16項ロ
16の2項
16の3項
17項
一般住宅
不明% 8 時間帯別割合
時間帯別割合0.02.04.06.08.010.012.014.016.018.0
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 時
% (15年1月〜12月)割合
(16年10月〜17年3月)割合 9 手口別割合
法令改正・設置義務
古い
脅迫・強制
消防・町内会の世話
点検・詰め替え
職員名乗る
失効消火器
契約者名乗る
不明
その他
未回答
(15年1月〜12月)割合
(16年10月〜17年3月)割合0.010.020.030.040.050.060.070.080.0%
手口別割合
(15年1月〜12月)割合
(16年10月〜17年3月)割合 10 支払い状況別件数
支払い状況別件数
支払い39%未払い13%未遂20%不明28%支払い
未払い
未遂
不明

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