消 防 予 第 4 8 号
平成17年3月18日
各都道府県消防防災主管部長
東京消防庁・各指定都市消防長
消防庁予防課長
燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安全対策について
現在、循環型社会の構築を目指した環境対策の見地から「ミレニアムプロジェクト(新
しい千年紀プロジェクト)」(平成11年内閣総理大臣決定)に基づき、燃料電池の実用
化が重点的に進められているところです。
これに伴い、「燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議」において、燃料電池実用化
のために必要な検討項目について、平成16年度までに検討することとされました。
このうち、消防庁においては、燃料電池自動車が地下駐車場等へ進入する際の制限につ
いて、地下駐車場等の消火設備の対応も含めて検討することとされ、平成15年度から「
燃料電池自動車の地下駐車場等における防火安全対策検討会(委員長:上原陽一 横浜国
立大学名誉教授)」を設置し、「燃料電池自動車に対応した地下駐車場等における防火安
全対策に関する調査研究報告書」(別に送付予定)を取りまとめたところです。
同検討会における検討結果から、燃料電池自動車火災に際して、消防機関として、下記
の事項について特に留意すべきと考えられますので、貴職におかれましては、執務上の参
考とするようお願いします。
また、各都道府県消防防災主管部長にあっては、貴都道府県内の市町村に対してもこの
旨周知されるようお願いします。記1 燃料電池自動車火災に対する圧縮水素ガス容器の特徴について
(1)燃料電池自動車には、通常、燃料である水素ガスが高圧の状態で貯蔵されている容
器(以下「圧縮水素ガス容器」という。)が積載されているが、圧縮水素ガス容器
には火災等により高温になった場合に破裂を防止するための容器安全弁が設置され
ていること。
(2)圧縮水素ガス容器の容器安全弁は、一定の温度(約110°C)になった場合に破裂
防止のため弁を開放し、圧縮水素ガス容器内の水素ガスを放出するものであるが、
水素ガスは非常に可燃性の高い気体であり、放出の際、着火すると一気に火柱が立
ち上がる等の現象が起きる可能性があること。殿 2 地下駐車場等での燃料電池自動車火災における自動消火設備について
実験の結果、立体駐車場、平置き地下駐車場、二段式機械地下駐車場のいずれの火災
においても、容器安全弁が作動する前に、現行の泡消火設備又は不活性ガス(窒素)消
火設備(以下「自動消火設備」という。)により消火できること。
特に、二段式機械地下駐車場の下部に駐車した自動車が火災になり、燃料電池自動車
の圧縮水素ガス容器の下部が火炎にさらされるという最も危険なケースにあっても、容
器安全弁近傍は110°Cよりも低い温度であり、容器安全弁は作動しないことが確認さ
れたこと。
これらのことから燃料電池自動車火災が地下駐車場等において発生した場合であって
も、現行の自動消火設備により十分な消火又は冷却効果があると認められるので、地下
駐車場等に燃料電池自動車が駐車する場合にも、自動消火設備を適切に設置・維持すれ
ば足りること。
3 その他
(1)今後、燃料電池自動車が普及し、交通事故等によりこれらが火災になることも考え
られるが、この場合の消防活動上の留意事項については、今回の検討により以下の
知見が得られたこと。
ア 火炎の状況や時間経過等様々な要因があるが、容器安全弁が作動するまで概ね3
分程度の時間を有すること。
イ 仮に容器安全弁が作動した場合でも火炎噴出状態が継続するのは約1分間程度で
あること。
ウ 急激な火炎噴出を想定した場合の消防隊員の安全確保のためには、火炎から約1
0m程度離れることが必要であること。
(2)燃料電池自動車にあっては、現段階では設計基準等の法令が定められておらず、
また、新たな技術開発等も想定されることから、設計基準等の今後の動向について
は、必要に応じ情報提供を行う予定であるので留意されたいこと。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /