特定屋外貯蔵タンクの地盤の液状化の対策工法について(通達)(平成7年消防危99)

消防危第99号
平成7年9月12日
各都道府県消防主管部長 殿
消防庁危険物規制課長
特定屋外貯蔵タンクの地盤の液状化の対策工法について(通達)
地盤が新基準に適合しない旧基準の特定屋外タンク貯蔵所については、「危険物の規制に関する規則の一部を
改正する省令等の施行について」(平成6年9月1日付け消防危第73号(以下「73号通知」という。))において、地盤の
せん断変形を抑制する工法等の改良工法に関し新基準に規定する「これと同等以上の堅固さを有するもの」である
ことの判断基準等をおって示すこととしたところであるが、地盤の液状化対策工法として当面採用が見込まれる鋼矢
板によるせん断変形抑制工法、グラベルドレーン工法及びパイプドレーン工法についての判断基準等を下記のとお
り定めたので、これにより運用されるとともに、貴管下市町村に対してもその旨示達のうえ、よろしく御指導願いた
い。記第1 鋼矢板によるせん断変形抑制工法
1 工法の概要
特定屋外貯蔵タンクの地盤の液状化のおそれのある層を鋼矢板でリング状に囲み、タンク荷重によって地盤の
有効上載圧の増加を図るとともに、鋼矢板リングにより地盤のせん断変形を抑制し、周辺の過剰間隙水圧の伝播の
防止及び側方流動の防止を図ることにより地盤の液状化を防止する工法である。
2 工法の要件
危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成6年自治省令第30号。以下「30号改正規則」という。)附
則第5条第2項第1号の「これと同等以上の堅固さを有するもの」であるための要件は、特定屋外貯蔵タンクの地盤の
液状化のおそれのある層(FL(液状化に対する抵抗率)<1.0である層をいう。以下同じ。)に対し、地震時の地盤のせ
ん断変形の抑制に有効なリング状の鋼矢板(以下「鋼矢板リング」という。)が設けられていること。この場合におい
て、鋼矢板は、地震時における鋼矢板内外の土圧及び水圧の差により、鋼矢板に生じる応力が降伏強度を超えな
い安全なものであること。
3 完成検査前検査
標準貫入試験により液状化のおそれのある層を確認するとともに、併せて打込み試験により鋼矢板深度が適正
であることを確認すること。
4 審査上の留意点等
(1) 鋼矢板リング内部のFLの計算を行う場合は次によること。
FLi=Ri/Li
ここに FLiは、鋼矢板リング内部のFL値
Riは、動的せん断強度比(危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年5月1日
自治省告示第99号)第74条に定めるR)
Liは、地震時せん断応力比であって、次の式により求めた値
σhtは、タンク荷重の地震時水平力による地中せん断応力
σvtは、タンク荷重による地中鉛直応力
rd、ks、σv、σ'vは、73号通知の第3による
(2) 鋼矢板リング内外部の土圧の計算を行う場合の土圧係数は、次式によること。
K=Ko+(1-Ko)Lu
Kは、繰返しせん断中の土圧係数
Koは、初期土圧係数
Luは、過剰間隙水圧比
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なお、FLは、鋼矢板リング内部にあっては、FLiによること。
(3) 鋼矢板リング内外部の土圧の計算を行うに際し、FL<1.0の場合の横方向地盤反力係数は、考慮しないこ
と。
(4) 使用する材料については、以下のものを用いること。
ア 鋼矢板
鋼矢板は原則として直線型鋼矢板とし、JIS A5528「熱間圧延鋼矢板」に適合するもの
イ 鉄筋コンクリート
(ア) 鉄筋
鉄筋は、JIS G3112「鉄筋コンクリート用棒鋼」に適合するもの
(イ) コンクリート
レディーミクストコンクリートを用いる場合には、JIS A5308「レディーミクストコンクリート」のうち呼び強度
18以上に適合するもの又はこれと同等以上の品質を有するもの
(5) その他
ア 鋼矢板の打設深さは、FL≧1.0の層に根入れすること。
イ 矢板の頂部には、鉄筋コンクリート製の枕梁を設けること。
ウ 鋼矢板は、特定屋外貯蔵タンクの基盤に近接した地盤のせん断変形の抑制に有効な位置に設置するこ
と。
エ 鋼矢板には、防食対策を講じること。
第2 グラベルドレーン工法及びパイプドレーン工法
1 工法の概要
特定屋外貯蔵タンクの地盤の液状化のおそれのある層を透水性の高い砕石又はパイプで囲み、その排水効
果により地震時の過剰間隙水圧の上昇を抑制し、液状化を防止する工法である。
2 工法の要件
30号改正規則附則第5条第2項第1号の「これと同等以上の堅固さを有するもの」であるための工法の要件は、
特定屋外貯蔵タンクの地盤の液状化のおそれのある層に対し、地震時の間隙水圧の抑制に有効なドレーンが設け
られていること。この場合において、ドレーンは、特定屋外貯蔵タンクの基礎周囲の液状化のおそれのある層の深さ
にtan30°(=1/√3)を乗じた値(3m未満の場合は3mとする。)以上の幅の対象範囲に3列以上設けること。また、ドレ
ーンの有効集水半径は、対象範囲において相互に重なるか又は接するよう配置されたものであること。
3 完成検査前検査
標準貫入試験により液状化のおそれのある層を確認するとともに、併せてドレーン深度確認試験によりドレー
ン深度が適正であることを確認すること。
4 審査上の留意点等
(1) ドレーン半径(a)及びドレーンピッチの決定に当たり、地盤物性値等の算定を行う場合は、次によること。
ア 許容過剰間隙水圧比(Lua)は、0.5以下とする。
イ 不規則なせん断応力波と等価な一定振幅せん断応力の繰返し回数(Neq)は、25とする。
ウ 有効継続時間(td)は、12秒とする。
エ 時間係数(Td)の算定は、次式による。
ここに kは、地盤の透水係数
mvは、地盤の体積圧縮係数
ρwは、水の密度
gは、重力加速度
オ 等価せん断応力が作用した場合の液状化する繰返し回数(N1)の算定は、次式による。
(2) 改良深さは、地表面から20m以浅におけるFL<1.0の層の最下端までとすること。
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(3) 使用する材料については、以下のものを用いること。
ア 砕石
対象とする地盤に応じ、目詰まりを生じない粒度のものを用いること。
イ パイプ
対象とする地盤に応じたストレーナを有すると共に、目詰まりを生じないものであること。また、材質は腐食
等による劣化が生じないものであること。
(4) 地表面には、砕石を厚さ30センチメートル以上敷くこと。
第3 その他
消防機関にあっては、必要に応じ、立会い又は写真等の資料の提出により実態を把握し、工事の安全の確保に
努めること。
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