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5. まとめと今後の課題
5.1 検討のまとめ
本検討においては、PCB廃棄物処理事業の事前評価に際し、多様な意見を反映
し、客観的かつ厳格な実施を確保するため、評価の考え方や方法等について、国民
的な視点に立って多角的に検討することを目的として実施した。その結果を整理す
ると下記のようにまとめられる。
1PCB廃棄物処理事業の必要性・有効性の確認
これまでのPCB廃棄物処理を取り巻く歴史的経緯等もふまえ、化学的な処理方
法を前提とするPCB廃棄物処理事業について、その必要性や有効性が定性的には
確認できるところである。今後さらに検討すべき事項や不確実性があるとされてい
るものの、事業を実施する場合と保管を継続する場合を比較して、事業を実施する
ことでPCBの環境中への放出量を減らすことができること、PCBの人への暴露
量を減らすことができることを定量的に示しうることが確認された。
2費用効果分析を通じた効率性の確認
PCB廃棄物処理事業の効果の一部であるダイオキシン類対策としての効果につ
いて、可能な範囲で効果の定量化を行い、その効果について既に実施されたごみ焼
、 。
却施設におけるダイオキシン類対策と比較することにより 効率性の評価を行った
その結果、PCB廃棄物処理事業は、ごみ焼却施設におけるダイオキシン類対策と
比べ、十分に効率的な事業であることが確認された。
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5.2 今後の課題
(1)効率性の評価に関する課題
○しろまる 中間とりまとめにおける効率性の評価では、処理施設の建設費に限定した評
価であるが、今後は、施設の稼働に伴う維持管理費等の経費を含めた全体の事
業費でも効率性を評価することが課題である。
○しろまる 化学的な処理方法は、PCBを化学的な反応をつかって分解する方法である
から、PCBが付着したり、しみこんだものの処理に当たっては、付着等した
PCBの分離、除去という過程を伴い、その費用が必要となる方法である。そ
して、PCB廃棄物の中には、高濃度の液状のPCBを相当量含んでいる廃棄
物以外に、感圧複写紙、ウエス、汚泥のような多様な性状の廃棄物がある。こ
れらについては高温焼却を含め、その他のより効率的な処理技術の適用が考え
られる。このようなことからも、化学的な処理方法の場合と高温焼却を含めた
他の処理方法の場合とでの効率性の比較を客観的に行うことが重要である。
○しろまる なるべく多くの手法により効率性を評価するという観点から、有害物質の削
減対策との比較を検討すること、ダイオキシン対策としての健康リスクの軽減
分の貨幣化を検討すること、その他代替的費用での比較を検討することが課題
である。
(2)リスク評価に関する課題
○しろまる PCB廃棄物処理事業の必要性や有効性を定量的に評価するには、定量的な
リスク評価が必要となる。中間とりまとめでは、PCBに含まれているダイオ
キシン類であるコプラナPCBに的を絞ったリスク削減効果に関する既往研究
を参考、引用しつつ、検討を行ったところであるが、同研究においても指摘さ
れているように未検討のリスクや不確実性の課題について、さらに検討し、よ
り信頼性の高い評価が可能となるようにしていくことが必要である。
(3)その他の課題
○しろまる 今後、PCB廃棄物処理事業の効果が実際にあがるようにするため、すなわ
ち、事業の開始から終了までの期間内でPCB廃棄物の処理が着実に実施でき
るようにするため、どのような方策が必要となるか、例えば、料金政策による
保管事業者に対するインセンティブの付与等について検討し、そのような方策
の必要性の評価を行うことが課題である。
○しろまる 今回の評価は、費用を施設の建設費に限定して設定しているが、今後、維持
管理費等も含めた総事業費での評価に加えて、公費投入による中小企業の処理
費用負担が軽減されることによって円滑な処理が促進されるという点について
も事業の進捗に応じて評価ができるようにすることが課題である。
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○しろまる 地域間の公平性に関する評価については、どのように評価し、国民に説明し
理解を得ていくかが重要な課題である。
○しろまる リスクコミュニケーションをどのように行うかということについても、評価
の方法を検討し、事業の評価の対象に含めることができるようにすることが課
題である。
○しろまる 地域間の公平性やリスクコミュニケーションに共通する課題である、リスク
の受容の課題は、本検討会の直接的な検討対象ではないが、今後ますます重要
となる課題であり、きちんとした議論が行われる必要がある。
○しろまる 今回までの検討ではとりあげられなかった効率性・有効性の向上に役立つよ
うな方策については、環境事業団におけるコスト縮減の取組を踏まえ、さらに
どのような方策があるか具体的な検討を行うことが課題である。北九州事業以
降の個々の事業の施設建設費が設定できるようになった段階では、事業間の比
較などを通じ、具体的な検討ができると考えられる。