PCB廃棄物処理事業評価検討会〜中間とりまとめ〜


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4. 国民に対する説明のあり方
4.1 基本的方向性
しろまる 政策評価は、政策の効果等に関し、科学的な知見を活用しつつ合理的な手法
により測定又は分析し、一定の尺度に照らして客観的な判断を行い、その結果
を政策に反映させ、改善等を加え、国民に対する行政の説明責任(アカウンタ
ビリティ)を徹底するものである。そして、政策評価に関する一連の情報の公
表によって、国民に対する行政の説明責任が徹底されることにより、政策につ
この方向は
いての透明性の確保、行政に対する国民の信頼の向上につながる。
政府全体として確認され、政府の各行政機関において取組まなければならないと
されているところである。
しろまる そして、環境省では、特に、環境問題は国民一人ひとりの健康と生活に大き
な影響を与えるため、環境政策に対する国民の関心は高く、政策評価を通じて
政策の意図とその効果について国民に対してわかりやすく説明し、行政の透明
性を確保し、国民に対する行政の説明責任を果たすことが極めて重要であると
認識し、位置づけているところである。
しろまる このようなことを踏まえ、PCB廃棄物処理事業について考えた場合、政策
評価の観点とされている、必要性、効率性、有効性、公平性及び優先性の観点
から、事業自体の効率性はもとより、PCB廃棄物を処理しなければならない
という政策自体の必要性、政策に基づく事業により実際に得られる効果、効果
と負担等の分配の公平性、政策自体の緊急性等の優先性といった多角的な面か
ら、わかりやすく国民全体に説明できるようにしていくことが求められる。
しろまる また、PCB特別措置法等の国会審議の場においても、立地が進まなかった
経緯を踏まえたリスクコミュニケーションを通じて住民等からの理解を得るこ
と、安全性の確保・情報の積極的な公開が決議されているように、PCB廃棄
物処理事業の実施は地域住民の理解が前提となることから、処理施設の立地地
域の住民の信頼感、理解が得られるように具体的で十分な情報の発信が求めら
れる。
しろまる これらの国民とのコミュニケーションは、国民全体に対しては、公費を投入
する事業であるという観点に加えて、将来にわたって国民全体の健康保護が図
られる事業の実施が、処理施設の立地地域の理解の上に成り立っているもので
あるという観点からも必要と考えられる。さらに、こうした観点とともに、特
に、立地地域の住民に対しては、様々な情報の公開、提供等によるリスクコミ
ュニケーションが重要である。
しろまる なお、本検討会における議論等の中間とりまとめ自体も、国民とのコミュニ
ケーションのために必要な情報であると考えられる。
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4.2 方向性と課題
しろまる 国民全体に対する情報公開とコミュニケーションに関する事項と、処理施設
の立地地域の住民に対するリスクコミュニケーションに関する事項に分けて、
方向性と課題を整理する。
(1)国民全体への情報公開とコミュニケーションのあり方
しろまる 第2章において述べられているような、PCB廃棄物を早期に処理しなけれ
ばならないという政策自体の必要性、なぜ高温焼却と比べて費用を要する方法
である化学的な方法による分解処理方法を選択するのかといった、この事業の
前提ともいえる点について、常に説明することが必要である。
しろまる 特に、この事業が処理施設の立地地域の理解の上に成り立っていること、それ
によって将来の世代にわたって利益がもたらされることになること、処理施設の
立地地域における事業の進捗及び立地地域におけるコミュニケーションの有り様
といった点について、国民全体が処理施設の立地地域住民と認識を共有できるよ
うに説明することが重要である。
しろまる また、PCBによる環境汚染が進行すれば、食品等を通じた摂取につながるこ
とから、この事業は、処理施設の立地地域及び国民全体に共通するリスク低減効
果があり、また、海洋等を通じて諸外国にも影響を与えうることから、国際的な
我が国及び国民の責任を果たすという意味があることについて、理解が深まるよ
うにしていくことも重要である。
しろまる このほか、化学的な方法により分解処理する場合の事業の効率性と有効性、
事業の進捗に応じて実際に得られた効果を常に公表していくとともに、再評価
のプロセス及びその結果について、わかりやすく説明していくことが必要であ
。 、 、 、
る このようにすることで 社会的情勢の変化を踏まえ 適切に事業を見直し
より質の高い効率的な事業に改善していくことにつながる。
しろまる また、政策に基づくPCB廃棄物処理事業の効率性についてのわかりやすい
説明のためには、3章において課題として整理された事項について具体的な検
討を進め、正確性や客観性を高めるとともに、複数の評価方法で評価できるよ
うにすることが課題である。さらに、3章では事業に要する費用のうち、施設
の建設費に関して効率性を評価しているが、今後は、施設の稼働に伴う維持管
理費等の経費を含めた全体の事業費での効率性を評価することが課題である。
また、中小企業対策で公費が投入されることとなるが、公費により中小企業の
負担が軽減されることによって処理がどのように促進されるかという点につい
ても、事業の進捗に応じて評価できるようにすることが課題である。
しろまる さらに、環境事業団を活用して全国的な処理体制を構築するということがPC
B廃棄物政策の中心であるが、これについての有効性を定量化し、評価するとい
うことも課題である。
しろまる これらの事項に加え、PCB廃棄物政策及びそれに基づくPCB廃棄物処理
事業の全体像について、わかりやすい形で情報発信し、その情報に接すること
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で、国民がPCB問題及びその解決に向けた進捗状況の全体がわかるようにす
ることが必要である。そして、そのための情報発信のセンター的な窓口を整備
することが課題である。
しろまる なお、事業団においても、例えばISO14001の取得、環境報告書の発行などを検
討し、継続的な見直しと改善が行われていることを公開していくことが適切であ
る。
(2)立地地域住民を中心としたリスクコミュニケーションに関する方向性と課題
しろまる 処理施設の立地地域の住民の信頼感を得ることがリスクコミュニケーション
の前提となると考えられる。このため、処理施設の立地地域において施設の稼
働に伴いどのようなリスクがあるのか、それをどのように管理するのか、これ
らの実際がどのようになっているのかといったことを、事業の進捗に応じて、
常に公表していくことが必要である。
しろまる 現に、環境事業団において、様々なリスクを想定し、それらに対する対策の効
果について評価し、その結果を施設の設計・運転管理に反映させることなどによ
って、想定したリスクの低減を図るというリスクマネジメントの考え方に立ち、
施設全体としてフェイルセーフ、セーフティネットの考え方に基づいた具体的な
取組が進められている。例えば、PCBの環境への排出を防止するための処理施
設における分解処理の完了確認、環境への排出モニタリング、周辺環境のモニタ
リングなどの考え方や、PCBの漏洩につながるような事故を防止するための緊
急事態を想定したハード、ソフト両面からの対応の考え方について、具体化が進
められている。そして、こうしたことが可能となるように、施設への処理対象物
の受入から処理完了後のリサイクル等まで含めたトータル処理システムについ
て、施設のハード面だけでなく、施設の運転管理等のソフト面を含めた総体とし
て、環境・安全に関する高い性能が確保できるようにしていくとともに、設計、
施工の各段階から処理が完了するまでの、事業全体の期間を通じてしっかりとし
た責任体制、チェック体制を整えることとされている。処理施設におけるリスク
マネジメントは、事業を行う上での前提条件となっていることから、事業評価に
当たってもリスクマネジメントの考え方に立った各種の対策は前提条件として考
える必要がある。
、 、
しろまる こうしたリスクマネジメントの取組に関する情報は 地域のニーズに応じて
処理施設において発信されることが適切であると考えられ、その場合、(1)の情
報もあわせて発信されるようにするなど、情報が効果的に発信できるように留
意することが必要である。
しろまる また、処理施設の立地地域において、地域住民に対してどのような方法によ
り情報公開、コミュニケーションを行うかについては、地域のニーズに応じて
考える必要がある。そして、これまでの環境事業団による拠点的な広域処理施
設の立地地域では、立地地域の地方公共団体が大きな役割を果たしており、立
地地域の地方公共団体が住民の参画した第三者による監視委員会の開催や、環
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、 。
境事業団による施設の公開といったことが 具体化又は具体化する方向にある
このような、PCB廃棄物処理事業の実施に伴って行われる住民に対する説
しろまる
明等のリスクコミュニケーションについては、地域のニーズに応じたものとす
ることが適切であり、型にはまった方法というものはないが、どのような方法
でどの程度行われたかということを事業の評価の視点として加え、事業の評価
に組み入れることができるようにすべきである。そのためには、どのように評
、 。 、
価をすることが可能であるか 評価の方法を検討することが課題である また
こうした評価を行うことができるようになれば、そのことによって、リスクコ
ミュニケーションの見直し、改善が図られるようになるものと期待される。

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