省エネルギーセンターの国際協力事業
持続可能なグローバルエネルギー社会実現のために
1.黎明期(1979年〜1981年)
当時、国内で省エネルギー推進活動に携わる人々の間には、2度にわたる石油危機を克服し、
「日本の省
エネルギー推進状況は、世界的にもトップクラスにある」との自負がありました。その様な時代認識を映し
て、省エネルギーセンターは、設立当初から世界を視野に入れた活動を行ってきました。省エネルギーセン
ター設立直後の 1979 年 6 月には、アジア生産性機構(APO)が実施した「アジア諸国エネルギー管理者対象
の研修コース」のコース編成に協力しました。また、省エネルギーに関連する国際会議への参加と欧米の先
進工業諸国における省エネ事情の調査を目的として、1990 年代半ばまで毎年「省エネルギーミッション」を
派遣していました。
2.国際協力事業部の発足と国際協力機構(JICA)からの受託(1982年〜現在)
1981 年 7 月 1 日、海外からの協力要請に積極的に対処し、かつ国際交流を深める事を目的に国際協力本
部の前身である「国際協力事業部」が設置されました。翌年から JICA から委託を受け、タイ向け省エネルギ
ー研修を開始しています。1986年には対象国がインド、インドネシア、マレーシア、中国に拡大され、
以降もアジア、ラテンアメリカ、中央アジア・東欧に順次対象国を広げ、今日に至っています。1992年
に制定されたタイの省エネルギー法、2001制定のインドの省エネルギー法は、日本の省エネルギーを手
本にしており、この JICA 省エネルギー研修受託事業の成果です。この JICA 省エネルギー研修受託の経験を
通じて、海外諸国向け省エネルギー研修コースの基本的なカリキュラムが構築されました。
3.経産省からの受託「国際省エネルギー人材育成事業」
(2000年〜現在)
2000 年から経産省の委託を受け、ASEAN 諸国の省エネ推進に協力するための専門家派遣プログラム
PROMEEC(Promotion for Energy Efficiency and Conservation)が開始されました。2005 年には受入研修
プログラムの MTPEC
(Multi-Training Program for Energy Conservation)
が開始され、
2006 年からは PROMEEC
と MTPEC を包含する形で、インド、ブラジル、中国、サウジアラビア、その他に対象国をひろげ「国際省エ
ネルギー人材育成事業」として再編成されました。これにより ECCJ の国際協力活動規模が一気に拡大しま
した。以降、年間 100 人・回前後の専門家を派遣し、2009 年にはピーク値として年間 450 名を超す研修生を
受け入れました。2012 年頃から受入研修の人数は減少しましたが、現在でも JICA その他を通じたプログラ
ムを含めて、年間 100 名以上の研修生を海外から受け入れています。
1. 国際協力事業の歴史
受入研修実績 (機関別)
(1) 専門家派遣
(3) 国際機関との共働、情報収集・発信/企業の海外展開のお手伝い
エネルギー需要が増大する途上国等の省エネ推進に資するためには、
我が国の優れた省エネ技術の移転や人材
育成等を通じた制度の普及が効果的です。このため専門家派遣・研修生受入等による国際協力を実施するとと
もに海外企業・機関とのビジネス交流を支援します。
アジアを中心に海外現地へ専門家を派遣しています。
我が国の経
験をもとに、工場やビルのエネルギー管理技術の普及をはじめ、
エネルギー管理制度や政策の立案、省エネ活動基盤の構築等を支
援します。
[2019 年度までの実績:約 2,000 名の専門家を派遣]
アジアや中東等から、
政策立案・実施の責任者を研修生として受
け入れています。省エネ政策、技術・実習、工場視察等実践的な研
修は、各国の省エネ関連制度の構築・省エネリーダーの育成に効
果をあげています。
[2019 年度までの実績:約 4,400 名の研修生を受け入れ]
ワークショップ
現地ビル診断
人の変化・社会の変化
省エネ政策・制度等基盤
多国間研修
研修生受入れ工場視察
専門家派遣実績 (国別)
ACE(ASEAN Centre for Energy)
、アジア開発銀行、世界銀行、SEforALL(Sustainable Energy for All:
万人のための持続可能なエネルギー)等、省エネ関連の国際機関とネットワークを構築し、これを通じ省エ
ネ政策・技術情報の提供・収集等を行います。個別の企業ニーズに合わせ、各国のエネルギー関連制度や技
術レベルに関する情報提供等により海外展開のお手伝いをします。
政策、制度
の構築
運用する
人材の育成
人と社会
の変革
2. 国際協力における省エネルギーセンターの役割
(1) 専門家派遣
(2) 受入研修
<ASEAN 多国間支援活動>
アジア諸国連合(ASEAN)への協力は、
経産省による 2000 年の PROMEEC プログラムから始まり、
様々な変遷
を経て、現在の国際省エネルギー人材育成プログラムに至っています。この間、省エネ診断手法の定着、
エネルギー管理士制度の設計及びエネルギー管理士・エネルギー管理士トレーナーの育成、
ASEAN 省エネビ
ル表彰制度の確立、
機器省エネ基準
&ラベリング制度の推進等の成果
を上げてきました。また、ASEAN に
おける省エネルギー推進活動のカ
ウンターパートである ACE(ASEAN
Centre for Energy) とは 1999 年
の同機関設立以来、
密接な関係を維
持して ASEAN の省エネルギー推進
の為に活動しています。
<タイ>
タイへの協力は、1982 年の JICA 省エネ集団研修以来、経産省の国際省エネルギー人材育成プログラムや
JETRO 等各種機関の省エネルギープログラムを通じて 40 年近い歴史があります。
タイの省エネ法は 1992 年
に制定されましたが、その骨格は、日本の省エネ法に倣っており、日本の協力活動の成果です。その後、省
エネ法改正(2007 年)や省エネルギーハンドブック作成(2003〜2011 年)
、省エネルギー研修プラント設
立・指導、
省エネ訓練カリキュラム作成等に協力してきました。
2020 年からは、
日本の工場等判断基準(英訳は EC Guideline)の導入支援の二国間活動を実施しています。
<インドネシア>
インドネシアへの協力の歴史も古く、1986 年の JICA 省エネ集団研修から始まり、経産省国際省エネルギ
ー人材育成プログラムを通じて今日まで継続しています。2007 年にエネルギー法が施行され、2009 年には
同法の元にエネルギー管理指定工場制度、エネルギー管理士制度、ラベリング制度等、日本と同様の省エ
ネ制度が規程化されています。
それ以外にも、
省エネ推進機関である DGNREEC(Directorate General of New
Renewable Energy and Energy Conservation)の政策立案や ESCO 導入支援、現在は ISO50001 に基づくエネ
ルギー管理体系構築モデルプロジェクトを推進しています。
<マレーシア>
マレーシアへの協力は、
1986 年から JICA の省エネ集団研修を通じて断続的に、
2000 年からは経産省の省
エネルギー人材育成プログラム等を通じ継続的に実施してきております。産業用エネルギーガイドライン
の作成、電気エネルギーの効率的な管理の為の規則(EMEER2008)の制定に協力してきました。同国では、
電気エネルギーに限定していた省エネ規則を燃料及び熱エネルギーに適用拡大を図っており、今後とも支
援を継続していく予定です。
3. 主な国々における活動と成果
<インド>
インドへの協力は、1986 年の JICA 省エネ集団研修から始まり、経産省の国際省エネルギー人材育成プロ
グラムを通じて継続的に実施してきております。2001 年に日本の省エネルギー法に倣ったインド省エネル
ギー法(EC Act2001)が策定され、指定工場制度(Designated Consumer)、定期報告制度、エネルギー管理
士制度、ラベリング制度など、日本と同様の包括的法的枠組みを構築しています。2012 年には、独自の省
エネ証書取引制度(PAT Scheme、PAT は Perform, Achieve, Trade の頭文字)を開始し、同制度を円滑に推
進する目的で、日本の支援で日本の工場等判断基準を同国向けにカスタマイズした"Energy Conservation
Guideline for Industries"を導入しました。インドとは、今後も密接な協力関係を維持していく予定で
す。
<中国>
中国への協力も 1986 年の JICA 省エネ集団研修以来、
途中中断した時期もありましたが、
継続的に協力活
動を実施してきました。1998 年に省エネルギー法(2008 年、2016 年改正)が制定されましたが、地方行政
組織における省エネ法執行体制の整備とその為の人材育成が課題とされ、日本からの支援が行われてきま
した。
<ロシア>
ロシアへの協力は、2009 年から経産省の省エネルギー人材育成プログラムの元で開始されました。途中
中断がありましたが、現在は 2016 年に合意した「8項目の協力プラン」の一つであるエネルギー分野にお
けるテーマとして実施しています。ロシアでは、冬期における暖房の為に消費するエネルギーが大きな課
題の一つとなっており、現在は、公共建築物及び地域暖房プラントの省エネルギー対策検討支援を行って
います。
<ブラジル、ラテンアメリカ>
ラテンアメリカの国々についても 1986 年から JICA の省エネ集団研修を通じて省エネルギー推進にも協
力しています。また、ブラジルについては、2015 年から経産省の国際省エネルギー人材育成プログラムを
通じて、節電ピークカットに資するエネルギー管理システムの構築支援を行っています。
<サウジアラビアを中心とした中東諸国、エジプト、トルコ、イラン、東欧>
サウジアラビアを中心とした中東諸国、エジプト、トルコ、イラン、ポーランド・ブルガリアといった東
欧の国々等、広範な地域各国への協力活動の実績があります。サウジアラビアについては、重点資源国と
してエネルギー管理制度の構築支援を継続して行っているところです。
関連機関・団体
・経済産業省 / 資源エネルギー庁
・環境省
・国際協力機構(JICA)
・アジア生産性本部(APO)
・海外産業人材育成協会(AOTS)
・世界省エネルギー等ビジネス推進協議会(JASE-W)
・地球環境戦略研究機関(IGES)
・ASEAN Centre for Energy(ACE)
・世界銀行、アジア開発銀行、欧州開発銀行、米州開発銀行
・国際連合
国際協力フットプリント

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /