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DX - データと先進デジタル技術の活用

私たちは企業理念およびビジョンの達成や社会の要請に応えるために必要なあらゆるDXを推進しています。
バリューチェーン全体にわたる高品質なデータの創出・活用による高い価値の創造、データと先進デジタル技術の効果的活用による新しい価値・新規治療ソリューションの創製、デジタルイノベーションによる業務プロセス・コミュニケーション・コラボレーションの革新、DXを支えるIT基盤の整備と運用を推進しています。

第一三共グループグローバルDX推進ポリシー

DXビジョンと戦略

2030DXビジョン 先進的グローバルヘルスケアカンパニーとして、
データとデジタル技術を駆使してヘルスケア変革に貢献する

第一三共は、上記の2030DXビジョンを掲げ、新薬における創薬から臨床開発、サプライチェーン、販売・情報提供までの一貫した製薬バリューチェーン全体をDXにより革新し、一人でも多くの患者さんに1日でも早く新薬を届けるための取り組みを行っています。

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データの利活用による価値創出

データは21世紀の石油とも言われるほど、あらゆる産業や国の競争力を生み出す重要な資産です。私たちはデータを貴重な戦略資産と位置づけ、ビジネスや経営に積極的に活用しています。
過去の分析や未来の予測を通じて、意思決定の質を高めるだけでなく、潜在的なニーズを引き出し新たな気付きを得ることで、多様な価値を創出しています。

以下に、具体的な活用例を示します。

  • 医薬品の効用を高める成分の配合や、培養方法の最適化
  • 臨床現場で注目されている副作用の可視化
  • 新薬申請に必要な膨大な文書作成への生成AIの活用
  • リアルワールドデータの活用による適応症の拡大と新たなエビデンスの創出

このように高度なデータ活用が進む中で、企業にはその利活用を適切に管理する責任が求められます。特に生成AIなどの新技術の導入により、データの信頼性や倫理性、法令遵守への対応がこれまで以上に重要になっています。
こうした背景を踏まえ、当社では、『グローバルデータガバナンスポリシー』や『AIポリシー』を制定し、規制やコンプライアンスに準拠した、安全で信頼性の高いデータ資産の構築とその有効活用を推進しています。
私たちは、データを通じて社会に価値を還元することを目指し、今後も責任ある活用と継続的な改善を推進しています。

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先進デジタル技術活用による全社変革

私たちは、先進デジタル技術の活用を通じて、仕事の在り方そのものを根本から変革する取り組みを進めています。テクノロジーの進化は日々加速しており、かつては実現困難とされていた課題にも、今では具体的な解決策を見出せるようになってきました。
この変革を牽引するのが、当社のDX推進部門です。DX推進部門では、各組織との連携を通じて、双方向のコミュニケーションを重ねながら、組織目標の達成に向けた戦略的課題や変革ニーズを収集しています。これらのニーズに対して、最適な先進テクノロジーを探索・評価し、両者をマッチングさせることで、具体的な施策の検討や実行を支援しています。

私たちは先進デジタル技術の活用により、業務プロセスの効率化と新たな価値創出を目指し、継続的な変革に取り組んでいます。

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DXによる全社変革推進のためのIT基盤整備

私たちの2030ビジョンは「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」になることです。この目標を達成するためには、第一三共グループの経営戦略や事業戦略を実現するためのIT基盤の整備が必要不可欠です。

各バリューチェーンにおけるDX事例

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創薬

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データドリブン創薬を実現するDX人材の育成

私たちは、大容量データを分析するプラットフォームとAIなどの先進技術を活用して、新しい化合物の創出や創薬研究プロセスの加速を目指しています。この目標を達成するためには、創薬とデジタル技術の両方に精通した人材の育成が不可欠です。
そこで私たちは、創薬プロセスをデジタル技術によって革新できる人材の育成に注力しています。具体的には、2020年よりEnthought社をはじめとするパートナーと協力し、社内で「創薬DXリーダー」の人材を育てる取り組みを進めています。

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最先端のロボティックス技術による合成実験プロセスの自動化

前述のとおり、社内で育成した「創薬DXリーダー」のもと、多様化する創薬環境に柔軟に対応し画期的な新薬を創出するためには、先進デジタル技術を駆使した研究プロセス自体の変革が不可欠です。
私たちは、最先端のロボティックス技術を導入することで、従来は人の手で行っていた医薬品の候補化合物の合成研究プロセスの自動化に成功しました。これにより、24時間無人で、かつリモートでの合成研究が可能となりました。
2023年9月からは、国内の自社研究施設で低分子化合物を対象とした創薬研究にこの技術を活用し始めています。さらに、2024年4月には、低分子化合物以外のモダリティにもその適用範囲を拡大し、多くの研究プロジェクトの推進に役立てています。

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米国・サンディエゴにスマートリサーチラボを設立

私たちの創薬研究をさらに進化させる試みとして、2025年1月にカリフォルニア州サンディエゴに最先端技術を導入したスマートリサーチラボを設立しました。このラボでは、高機能なソフトウェアを用いた最先端ロボティクスの統合制御により、様々な評価を多様なモダリティに対して自動で効率的に実施し、データを創出できるようになります。
さらに自社開発のソフトウェア技術により、多次元的なデータの利活用しやすい形での収集が可能となる環境を整えました。このプロセスは、迅速に開発候補薬物を生み出すだけでなく、AIを用いた次世代創薬プロセスに不可欠な、膨大なデータを収集するための重要な一歩です。

私たちは、未来の医薬品開発に向けて引き続き革新を追求してまいります。

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臨床開発

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臨床試験のステータスおよびリスクの分析と可視化

私たちは臨床試験に対する複数の集計・分析支援ツールをIDAP上で開発しています。これらのツールは、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、台湾など世界中の700人以上の、臨床試験を担当している社員が利用しています。
最もよく使用されるツールは、"Performance&Delivery (P&D) Dashboard"です。これは、私たちが実施している世界中の臨床試験のステータスとポートフォリオ全体の健全性を評価するツールです。
これにより、進行中の臨床試験の透明性を高め、重要なリスクや問題を特定し、それらを軽減する策を立てることが可能になります。さらに、各試験の国別の治験施設の立ち上げ状況、症例登録状況を可視化することもできます。

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リアルワールドデータ活用による開発品質の向上

データ活用は経営判断だけでなく、医薬品開発の現場でも進化しています。中でも、リアルワールドデータ*(RWD)は、医薬品の開発にとって非常に重要なヒントをもたらします。
これまでRWDは、企業や機関ごとにバラバラに存在していたため、分析は外部に委託することが多くありました。しかし当社では、RWDを全社データ基盤「Integrated Data Analytics Platform(IDAP)」**に集約し、社内でデータの抽出、加工、分析までを一貫して行える環境を整えました。
この仕組みにより、自社の臨床試験だけでは得られなかった新たな知見を得ることができ、規制当局への申請や臨床開発プログラムの設計において、より効率的で効果的な医薬品の開発や使用方法の確立につながっています。

さらに、RWDは以下のような分野でも活用されています:

  • 臨床研究
  • 費用対効果の評価
  • 製造販売後調査


たとえば日本では、がんの遺伝子変化を調べるプロジェクトであるSCRUM-Japan疾患レジストリ**のデータを活用し、当社のがん領域の開発品に関する一部変更承認申請において、その有効性に対する臨床的意義を科学的に示しました。また米国でも、当社の開発品の承認申請時の参考資料としてRWDを活用しています。
このようにRWDを活用することで、医薬品の価値を科学的に示すための証拠(エビデンス)を、より早い段階で提供できるようになっています。

今後も私たちは、RWDを柔軟に活用しながら、医薬品開発の質とスピードを高め、より良い医療の実現に貢献していきます。


*ここでは、実際の医療現場から得られる患者さんの健康状態や治療内容などの情報
**IDAPについては、後続のセクションで詳細に紹介しています
***患者さんに最適な治験薬を届けるために、がんの遺伝子変化を調べるプロジェクト

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サプライチェーン

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グローバルでの品質一元管理

私たちは、低分子化合物からADC、細胞治療、mRNAワクチン、核酸といった多様なモダリティを扱い、それぞれに対する品質保証を徹底しています。さらに、がん治療薬の販売国が拡大するにつれて、各国の規制に合致した品質保証が必要となりました。
このような状況に対応すべく、私たちは品質問題の早期解決やリスク軽減を目指し、強固な品質保証体制をグローバルに確立しました。具体的には、品質管理プロセスを統一し、品質情報をグローバルレベルでリアルタイムに一元管理するIT基盤を導入しました。

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需給生産情報の一元管理による安定供給

当社のがん製品の販売国が拡大し、新規適応が追加されるなど、患者さんからの治療薬に対する需要が増加しています。このような需要の変化に素早く対応し、患者さんに高品質な治療薬を安定して供給するために、私たちは製造において国内外の自社工場だけでなく、CMO(医薬品製造受託機関)も活用しています。このためにグローバルに高度な供給計画が求められています。
これらを実現するために、効率的で正確な需給生産情報の一元管理を可能にするIT基盤を導入しました。また、自社生産拠点では、スマートファクトリーを実現するために、製造品質データ管理システムの導入およびデータ共有・分析基盤の構築を推進しています。これらの取り組みにより、私たちは患者さんからのニーズに迅速に対応し、適切な供給計画を立てることができます。

これは、患者さんに安定して高品質な治療薬を供給するための重要なステップであり、私たちはこれを通じて患者さんの治療に貢献してまいります。

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販売・情報提供

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タイムリーな安全性情報モニタリング

当社は拡大するがん製品や新規モダリティ(治療手段)を含む開発から市販後までの全製品の高品質な安全性情報を迅速に提供することで、患者さんの安全確保に尽力しています。昨今は開発品の新たな適応追加や市場拡大に加え、アストラゼネカ社やメルク社との提携に伴うタイムリーな安全性情報モニタリングが急増しています。
これに対し、私たちは安全性分析ツールや症例評価プロセスをグローバルに一元管理するIT基盤を整備し、ファーマコビジランス機能の基盤を強化しています。

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医療関係者・患者さんへの情報提供の個別最適化

COVID-19の影響により、私たちのMR(医薬品情報担当者)活動は大きく変化しました。対面での情報提供に加え、非対面での活動も必要となり、それぞれの医療関係者とのコミュニケーション方法が多様化しました。当社は医療関係者一人ひとりに合わせた最適なMR活動を推進できるよう、デジタルチャネルを活用した多角的でシームレスな活動を支援する情報提供基盤を整備しました。
さらに、プライマリ領域からがん領域へと事業の重点を移す中で、当社のプレゼンスを確立するために、幅広い領域の製品を有する当社ならではの大量のデータを活用する環境を整備しました。また、これらに対応するデジタル人材の育成にも注力しています。
私たちはこれらの取り組みを通じて、医療関係者に最適な情報を提供し、患者さんの治療に役立つ情報を提供することを目指しています。それにより、患者さんが最適な治療を選択できるようサポートしています。

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チャットボットによる医療関係者・患者さんへの迅速な情報提供

私たちは2018年当時、業界として初めて、AIを活用した全製品対応のコールセンターQ&Aシステムを導入し、製品に関するお問い合わせへの対応品質の向上に繋げてきました。2019年にはこのシステムの利用範囲を医薬情報担当者(MR)にも拡大し、2021年にはWeb上での情報提供ニーズの高まりを受けて、医療関係者向けのDrug Informationチャットボット「いつでもDI 24」を公開しました。
これらの取り組みにより、当社はAIを活用することで、患者さんや医療関係者が必要かつ最適切な製品情報を、いつでも迅速に入手・活用できる環境を整備しています。

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全体

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データ利活用のための価値創出を推進する組織の発足

私たちは、製薬バリューチェーン全体にわたって高品質なデータを創出し、それらを活用することで、より高い価値を創造することを目指しています。
近年、データの種類や量が急速に増加し、活用領域も多様化する中で、分散した機能やリソースでは十分な対応が難しくなっています。こうした課題に対応し、グローバルで一貫性のあるデータ戦略を推進するために、必要な機能を集約したData Intelligence Center of Excellence(DI CoE)という組織を発足させました。

DI CoEでは、以下のような機能をグローバルで集約し、データ活用の可能性を最大限に引き出しています:

  • データ利活用の戦略立案
  • データガバナンスの強化
  • データサイエンスおよび統計科学の活用
  • AIや機械学習技術の応用
  • リアルワールドデータを含む多様なデータの活用推進


これらの機能を連携させることで、シナジーとエコシステムを創出し、グローバル規模でのデータ利活用を可能にしています。

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全社データ基盤(IDAP)

上記のとおりデータ利活用への期待が高まる一方で、従来は組織やシステム間でデータが分断され、連携や分析の効率化に課題がありました。こうした”データのサイロ化”を解消するため、2020年に全社データ基盤「Integrated Data Analytics Platform(IDAP)」を構築し、運用を開始しました。
IDAPは、社内外の多様な目的や領域で収集されたデータを、用途に応じて加工・統合・管理できるプラットフォームです。データはグローバルデータガバナンスポリシーに基づき厳密に管理され、社内外で安全に共有可能です。さらに、大容量のデータを高速に解析する環境も整備されており、現在は約2000名のグローバルユーザーが活用しています。
データの一元管理と統合により、全社的なデータ利活用を加速させ、意思決定の質とスピードの向上に貢献しています。

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IDAPの解析力向上と使いやすさの改善

IDAPの活用が進む中で、より高度な解析ニーズや柔軟な運用環境へのニーズが増加してきました。そこで、2024年11月に私たちは IDAPの基盤として外部クラウドプラットフォームを新たに導入しました。このクラウド導入により、データの活用スピードと柔軟性が飛躍的に向上し、これまで難しかった高度な解析も可能になっています。

たとえば、以下のような取り組みが進んでいます:

  • 大規模言語モデルによるヒト遺伝子データの解析
    複雑で膨大な遺伝子情報を高性能GPUで処理することで、疾患の原因解明や新たな治療法の可能性を探る研究が加速しています。
  • 数テラバイト規模のリアルワールドデータの高速処理
    医療現場から得られる膨大な実データを素早く抽出・加工することで、従来は把握が難しかった適応症の拡大可能性や副作用の兆候を、より早期に検知・評価できる環境が整いつつあります。
  • ビジネス部門のデータサイエンティストによる自律的な解析の実現
    専門部門に頼らず、現場の担当者自身がデータを扱える環境が整ったことで、意思決定のスピードと精度が向上しています。

これらの取り組みは、クラウド導入によって実現した「わかりやすい認証」「シンプルな権限管理」「高速な処理能力」「ユーザーごとの解析環境」といった要素に支えられています。
今後も私たちは、使いやすさと解析性能の両立を目指し、最新テクノロジーの導入を積極的に進めていきます。

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資源計画システム刷新によるデータ駆動型経営の推進

IDAPとクラウド基盤の導入により解析環境が整った今、次のステップは「経営に直結するデータの標準化と可視化」です。
これを実現するため、私たちはプロジェクト4D(Daiichi Sankyo Data-Driven Decision Making)を発足しました。このプロジェクトでは、ERP(Enterprise Resources Planning;統合業務管理システム)の刷新を通じて、グローバルなビジネスプロセスから得られるデータを標準化し、経営情報を一元化することを目指しています。
具体的には、IDAPを活用して、世界中の拠点から集まる経営データをリアルタイムで可視化しています。

ERPの刷新が完了すれば、以下のような効果が期待されます:

  • 各組織の意思決定がよりスピーディーになる
  • 予算管理や実績のモニタリングがより高度になる
  • 製品の需給調整がより効率的になる

これらの変化を通じて、データに基づいた経営判断が、より確実かつ迅速に行える体制が整います。

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グローバルでのコミュニケーション・コラボレーション基盤整備

がん製品のグローバルにおける提供開始に伴い、当社事業のグローバル化は加速しており、地域間のコミュニケーションやコラボレーションが以前に増して、重要になっています。また、第一三共グループでは企業文化「One DS Culture」を作り上げ、世界中の社員が協力・信頼し合いながら当社のパーパス・ミッション・ビジョン実現に向けて効果的に連携できる職場の実現を目指しています。
これらの一環として、グローバルでコミュニケーション(メール、チャット、社内SNS等)やコラボレーション(文書共有基盤)基盤を共通化し、社員間のシームレスな連携によりOne DS Cultureの醸成や生産性の向上に繋げています。

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業務プロセスの可視化・自動化(Process Discovery and Automation as a Service)

近年、業界を問わずRobotic Process Automation*(RPA)をはじめとする自動化テクノロジーの導入が進んでいます。私たちもRPAを活用していますが、単なるツールの導入に留まらず、業務そのものの変革・改善こそが真のDXであると考えています。私たちは、「業務プロセスの可視化・自動化」の活動を通じて、全社的な業務変革の機会を見極め、持続可能な変革と改善の実現を目指しています。
* PCを用いて人が行う業務をロボットで自動化できるツール

業務の可視化に向けて、私たちはBusiness Process Management Center of Excellent (BPM CoE)を設立し、関連サービスの開発を進めています。また、グローバルで共通に活用できる業務管理システム(BPMS)の導入や、トレーニングコンテンツ・ガイドラインの整備を通じて、業務の流れを可視化し、継続的な改善を支える仕組みづくりに取り組んでいます。

また業務の自動化を全社的に進めるため、私たちは「System Development & Implementation (SD&I)」という専門チームを立ち上げました。SD&Iは、UiPath®やPower Platformなどの自動化技術をグローバルに展開し、従業員による市民開発も支援しています。
これらの取り組みにより、社内にイノベーションを生み出す文化を育みながら、従業員のスキル向上、そして業務の質と効率の向上(オペレーショナルエクセレンス)を目指しています。

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バリューチェーン全体にわたるAI・機械学習の活用

ここまで、医薬品の各バリューチェーンにおけるDXをご紹介してきましたが、AI開発においても国や組織を越えたグローバルネットワークを形成し、バリューチェーン全体にわたってAIや機械学習の活用を推進しています。
これにより、創薬プロセスの効率化や品質向上、さらには医療現場への迅速な情報提供など、さまざまな領域での価値創出につながっています。 具体的AI活用の取り組みに関しては、次の項目より紹介しております。

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生成AI活用による生産性向上

業界やバリューチェーンの枠を超えた新たな可能性を追求するため、私たちは社内の機密情報とプライバシーを保護した独自の生成AIシステム「DS-GAI(Daiichi Sankyo-Generative AI)」を開発し、2023年9月より全社運用を開始しました。
DS-GAIはアイデア創出、コーディング支援、文章作成、学習、分析など、幅広い業務に活用されており、現在では11カ国のグループ会社に所属する9,300名以上の従業員が利用しており、その他のグループ会社においても、同様の生成AIシステムを展開しております。プログラミングの専門知識がなくてもコード生成機能を活用してアプリを自らカスタマイズするなど、新しいスキルを習得する社員も現れており、当社の想定を超える活用が広がっています。

運用開始後は、プロンプト入力のヒントや活用事例の共有サイト開設に加え、講演会やアイディエーションワークショップなどの施策を通じて、利活用を促進しています。また、利用者の声を反映しながらアジャイル開発による継続的な機能追加を行うことで、常に最新の生成AI技術を全従業員が利用できる環境を整えています。

これらの取り組みは、業務効率やアウトプットの品質向上に貢献するだけでなく、社員同士が新たな働き方を学び合い、組織全体の風土を変革していく原動力にもなっています。

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画像AI技術の活用による創薬・製剤工程の自動化と効率化

生成AIによる業務支援に加え、私たちは画像AI解析技術の活用にも取り組んでおります。2022年7月には、高度な画像AI解析技術を有するエルピクセル社*と包括的な提携基本契約を締結しました。
この提携により、社内における画像AI解析活用ニーズの明確化、技術導入プロセスの迅速化、リードタイムの短縮を実現しています。さらに、知見を共有する仕組みを構築し、画像AI解析の利活用促進や社員の技術応用力向上にもつながっています。探索研究から臨床試験、製造、市販後に至るまで、バリューチェーン全体においてAIモデルの開発に向けた予備解析や概念実証を進めており、すでに実運用に至った事例も複数創出されています。

たとえば、スマートラボ化**の一環として、実験装置にAIを組み込むことで、これまで人が目視で行っていた液体の量の測定や、液体同士の境目(分液界面)の確認をリアルタイムで自動的に行えるようになりました。これにより、実験操作の一部が自動化され、作業の正確性と効率が向上しています。また、製剤工程では、薬の凍結乾燥処理において、これまで手作業で行っていた工程を自動化することで、開発作業のスピードアップと品質の安定を図っています。
これらの取り組みは、当社が注力するがん領域において、創薬・製剤工程の自動化や工程短縮による原価低減、品質管理の高度化に貢献しており、当社事業を支えています。

*ライフサイエンスと画像AI解析技術の融合分野におけるリーディングカンパニー
**AI、IoT、ロボット等を活用して、研究機器の自動化や必要な遠隔業務環境の構築を目指す取り組

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翻訳AIによる業務効率化

生成AIや画像解析AIの活用に加え、私たちはグローバルに広がるビジネスを支えるため、すべての従業員が高精度なAI翻訳を自由に利活用できる環境を整備しています。2020年よりAI翻訳プラットフォームを導入し、さまざまな業務領域で活用してきました。
そして2025年4月からは、新たな翻訳環境として「DeepL Pro」の運用を開始しました。これにより、テキストやファイルの翻訳がこれまで以上に迅速かつ正確に行えるようになり、言語の壁を越えたコミュニケーションがよりスムーズに進められるようになっています。

今後も、翻訳精度の向上と業務効率化を目指し、最適なツールの導入と活用を推進していきます。

Healthcare as a Service(HaaS)

HaaS社会到来に向けた準備

「患者さん、家族、社会が笑顔に」――これは、第一三共が描く未来のHealthcare as a Service(以下、HaaS)社会のビジョンです。



一人ひとりのユニークなライフジャーニーに寄り添い、治療だけでなく、健康促進・予防・予後ケアまでを含むトータルケアを実現する新しい社会を「HaaS社会」と定義しています。
この社会では、ヘルスケアサービスや関連データが連携し、個人に最適化されたケアが提供されます。

HaaS社会の実現には、データ活用や先進技術の導入が不可欠です。私たちは、製薬業界をはじめとする医療・健康関連企業、データプロバイダー、テクノロジー企業との連携を通じて、未来のヘルスケアのあり方を分析・予測することが重要であると考えています。

第一三共の存在意義(パーパス)は「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことです。この実現のために、短期的なビジネス視点にとどまらず、HaaS社会の到来を見据えた準備を継続的に行っています。


味の素株式会社との協業

HaaS社会に向けた取り組みの一環として、2023年10月より味の素株式会社との協業を開始しました。これは、食事や栄養に関する課題解決を目的とした異業種連携の事例です。
具体的には、患者さんとそのご家族の食事・栄養に関する課題解決を支援するため、味の素社が開発した栄養指導・食事相談支援サイトReTabell(リタベル)の共同普及活動に取り組んできました。食と健康のつながりを強化することは、HaaS社会におけるトータルケアの実現において欠かせない要素となります。

第一三共株式会社の管理外にあるウェブサイトへ移動します

体調に合わせた食事の工夫やレシピを検索できます。

情報セキュリティ

堅牢なサイバー環境で企業資産を守る

データと先進デジタル技術の利活用を進めるうえで、情報は企業の重大な資産です。第一三共グループ全体で機密情報の流出・改ざんリスク、生産ライン停止リスク、製造物責任・訴訟リスクに対する最適なセキュリティ対策を実施し、堅牢なサイバー環境を実現していきます。

情報セキュリティマネジメント体制の整備・強化

私たちは、製品の安定供給と信頼性のある情報を顧客に提供するために、情報セキュリティに関するグローバルポリシーを制定しました。さらに、情報セキュリティの管理全般に関する最終的な責任者としてCDXO*を定めるとともに、 CDXOによって任命された Head of Global Cybersecurityが第一三共グループの情報セキュリティ対策を主導することを明記しました。また、第一三共グループにおける情報セキュリティ対策を推進するために、セキュリティコミッティも設置しています。
このポリシーでは、当社グループ内の情報や資産だけでなく、取引先等のビジネスパートナーや顧客の情報を含む情報および情報が保存されるデータ、媒体、情報システム、産業システムを対象としています。グローバルでの情報セキュリティ対策を向上させるために、第一三共グループ情報セキュリティスタンダードを制定し、第一三共グループ各社のセキュリティ対策の状況を評価し、その結果に基づいて継続的な改善を行っています。セキュリティの脅威から情報資源を守るためには、全社員が情報セキュリティの重要性を理解することが不可欠です。そのため、各社の状況に応じた社員への教育活動として、サイバー攻撃の手口の解説や標的型メール等に対する意識啓発、注意喚起を継続的に実施しています。
* Chief Digital Transformation Officerの略

サイバーセキュリティへの対応

近年、増加しているサイバー攻撃に対応するため、私たちはCSIRT**をHead of Global Cybersecurityのリーダーシップのもとで運営しています。外部セキュリティパートナーと協力し、24時間体制でのセキュリティ監視を行い、発生したインシデントは迅速に対応できる体制を整えています。
サイバー攻撃の脅威に対しては、同業・他業種といった他組織と連携することが非常に重要です。そのため、社外の専門組織や他社CSIRT等の社外セキュリティチームと協力し、サイバーセキュリティに関わる情報を収集しています。そしてこれらの情報をもとに、当社グループとしてのセキュリティ施策を計画し、実施しています。また、社外との協力関係を構築することで、当社グループ内だけでなく社会全体のセキュリティ向上にも貢献することを目指し、CSIRTを中心として活動を続けています。
**企業等におけるコンピュータセキュリティに関するインシデント対応を行う枠組み

Operational Technology(OT)セキュリティへの対応

当社の使命である高品質な医薬品の安定供給を果たすために、医薬品の製造プロセスに関わる制御装置やシステムへのサイバー攻撃リスクへのセキュリティ(OTセキュリティ)施策を推進しています。
具体的には、製造拠点における推奨セキュリティ技術施策を整理した標準モデルを作成し、OTセキュリティリスクを特定し管理するための評価・管理プロセス等を設計しています。これらの対策により、品質管理や安定供給におけるリスクを最小限に抑え、患者さんへの医薬品提供を支えています。

グローバルDXガバナンスと人材育成

データとデジタルを駆使するグローバル組織体制

グローバルDXはグローバルコーポレート機能の1つとしてCEOとCOOの第一三共グループ経営戦略立案および経営の執行と円滑な推進管理をサポートしています。Chief Digital Transformation Officer(CDXO)を実務執行責任者とし、グローバルにデジタル戦略、ITおよびデータ利活用に関するグローバルガバナンスを強化しています。


*DSI:DAIICHI SANKYO, INC.(第一三共 INC.)(アメリカ)、DSE:DAIICHI SANKYO EUROPE GmbH(第一三共ヨーロッパ GmbH)(ドイツ)

全社DXを推進する風土醸成と人材育成

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各組織のDX人材像の
定義と育成計画

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各種資格取得のサポート

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スキルに合わせた
トレーニングの提供

グローバル体制を深化させ、全社一丸となってデータと先進デジタル技術を活用していくための企業風土醸成や人材育成・確保、組織間コミュニケーションを進めています。また、最新の技術や最適な技術をいち早く取り入れ活用するという観点から外部連携にも注力しています。

人材育成においては、全社員の育成としてITパスポートやデータサイエンティスト検定、G検定取得を推奨する*とともに、DX推進スキル、データ分析スキル向上プログラムを導入しています。また、各組織のDX推進に必要な人材育成計画を策定し推進しています。これ以外に、リテラシー向上策として定期的なセミナーや短編動画の配信にも力を入れています。

* ITパスポート 約2千名が合格(2023年12月時点)

DX人材の育成の詳細情報はこちら

外部表彰・認定

社会から認められるレベルでDXを推進

第一三共は、DX銘柄やDX認定を取得しています。

DX銘柄

DX銘柄2024

第一三共は、2025年4月11日付で、経済産業省、東京証券取引所および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)より「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2025」に選定され、3年連続での選定となりました。
DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を選定するものです。

当社は、前述した2030DXビジョン「先進的グローバルヘルスケアカンパニーとして、データとデジタル技術を駆使してヘルスケア変革に貢献する」の実現を目指し、DXを通じて全社的な変革に取り組んでおります。この度のDX銘柄認定は、主に以下の様な点が評価されたものです。

  • 変革を可能にする基盤
    • CDXOを中心とした明確な組織体制と戦略的なDX推進体制の確立
    • 充実したDX人材育成プログラムの整備による全社的なDX推進の土台の構築
    • ITシステム・セキュリティリスク管理体制・全社データ基盤の整備による、安全で効果的なDX利活用環境の提供具体的な成果・新たな価値の創出
  • 具体的な成果・新たな価値の創出
    • 創薬から安全性情報のモニタリングや、生成AI活用・RPA等の導入による、幅広い領域での業務効率化と迅速
    • 医療ビッグデータの活用による既存事業の深化
    • データと先進技術を活用したHealthcare as a Service構想による新しい価値創造への挑戦

DX認定

DX認定

第一三共は、2023年1月1日付で経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定され、2025年1月1日付で認定が更新されました。

DX認定とは、経済産業省が定める「デジタルガバナンス・コード」の認定要件を満たしてDX推進の準備が整っている事業者(DX-Ready)を「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業大臣が認定する制度です。

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