特集 大雪への備え〜雪害では、どのような災害が起こるのか

雪害(雪による災害)にはどのようなものがあるか
日本では、国土の半分以上が豪雪地帯((注記)図1)に指定されており、約2000万人もの人々が豪雪地帯で生活を営んでいます。
図1 日本の豪雪地帯

雪害には、地域住民だけでなく、冬山登山やスキー、観光などで豪雪地帯を訪れる多くの人々が被害に遭っています。

雪害の代表的なものとしては、雪崩、除雪中の転落事故などの豪雪地帯特有の災害のほか、路面凍結などによる交通事故や歩行中の転倒事故など、豪雪地帯以外でも発生する災害もあります。

雪害に遭わないためにも、雪に対する正しい知識を深めておくことが大切です。

(注記)1:豪雪地帯対策特別措置法によって指定されている、冬期に大量の積雪がある地域。北海道から山陰までの24道府県が対象。

1.雪崩による事故

1雪崩の発生状況

雪崩災害は1〜3月を中心に発生しており、死者・行方不明者を伴う被害も起きています。(図2)

図2 月ごとの雪崩災害
さらに、集落を対象とした雪崩の危険箇所(人家5戸以上など)は全国で2万箇所以上もあり、集落や山間の道路のほか、雪崩災害はスキー場や観光地といった様々な場所で起こっています。(図3)
図3 都道府県別雪崩危険箇所(平成16年度公表)
出典:国土交通省

詳細は、各都道府県の砂防部局までお問い合わせください。

2雪崩ではどのような災害が起こるのか

雪崩とは、「斜面上にある雪や氷の全部又は一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」を言い、積雪が崩れて動き始める「発生区」と、発生した雪崩が通る「走路」、そして、崩れ落ちた雪が積み重なる「堆積(たいせき)区」からなっています。また、雪崩によって堆積した雪を「デブリ」と呼びます。(図4)

図4 雪崩の名称

なお、雪崩は"すべり面"の違いによって、「表層(ひょうそう)雪崩」と「全層(ぜんそう)雪崩」の大きく2つのタイプに分けられます。(図5)

図5 雪崩の種類

3雪崩災害に遭わないために〜雪崩が発生しやすいケースは急斜面や植生がまばらな場所など。気象条件や前兆現象にも要注意!

雪崩はスピードが速いため、発生に気付いてから逃げることは困難です。災害から身を守るためには、前もって雪崩が発生しやすいケースを知っておくことが重要です。日頃から危険箇所や気象情報をチェックし、雪崩の前兆を発見したらすぐに最寄りの市町村役場や警察署へ通報してください。

〈発生しやすい場所〉

くろまる急な斜面

一般的に、スキーの上級者コースと同程度の傾斜が30度以上になると発生しやすくなり、特に35〜45度が最も危険と言われています。

くろまる「落石注意」の標識が設置 など

くろまる低木林やまばらな植生の斜面

中高木が密に生えている斜面では雪崩が発生しにくい一方、低木林やまばらな植生の斜面では雪崩発生の危険が高くなります。笹や草に覆われた斜面などは裸地よりも発生しやすい地形です。(図6)

図6 低木林やまばらな植生の斜面

〈発生しやすい条件〉

表層雪崩

  • 気温が低く、既にかなりの積雪がある上に、短期間に多量の降雪があったとき(例えば、1メートル程度以上の積雪の上に30センチ程度以上の降雪があったときなど)
  • 急傾斜で、特に雪庇(せっぴ)や吹きだまり(雪が風で吹き寄せられ堆積した場所)ができている斜面
  • 0度以下の気温が続き、吹雪や強風が伴うとき

全層雪崩

  • 過去に雪崩が発生した斜面など
  • 春先や降雨後、フェーン現象などによる気温上昇時
  • 斜面に積雪の亀裂ができている場所など

〈主な前兆現象〉

1雪庇(せっぴ)
山の尾根からの雪の張り出し。張り出した部分が雪のかたまりとなって斜面に落ちる。

2巻きだれ
雪崩予防柵からの雪の張り出し。張り出した部分が雪のかたまりとなって斜面に落ちる。

3斜面が平らになっている
斜面に元の地形が分からないほど雪が積もって平らになっている場所がある。表層雪崩が起きる危険。家の裏山などは特に要注意。

4スノーボール
斜面をころころ落ちてくるボールのような、雪のかたまり。雪庇や巻だれの一部が落ちてきたもので、多く見られるときは特に要注意。

5クラック
斜面にひっかき傷が付いたような雪の裂け目。積もっていた雪がゆるみ、少しずつ動き出そうとしている状態で、その動きが大きくなると全層雪崩の危険。

6雪しわ
ふやけた指先のようなシワ状の雪の模様。積もっていた雪がゆるみ、少しずつ動き出そうとしている状態。積雪が少なくても全層雪崩の危険。

〈普段から心がけるべき事〉

  • 市町村が作成、配布するハザードマップによって、その地域の危険箇所を把握しましょう。お住まいの都道府県又は市町村のホームページで危険箇所を確認できます。
  • 気象庁が発表する「なだれ注意報」などの気象情報が出ていないかを確認しましょう。

現在発表中の警報

万が一、雪崩発生の場に遭遇したら?......
(全国地すべりがけ崩れ対策協議会「雪崩対応安全ガイドブック」より)

雪崩が自分の近くで起きた場合

  1. 流されている人を見続けること。
  2. 仲間が雪崩に巻き込まれた地点(遭難点)と、見えなくなった地点(消失点)を覚えておく。
  3. 雪崩が止まったら見張りを立て、遭難点と消失点にポールや木などの目印をたてる。
  4. すぐに雪崩ビーコン(無線機)などを用いて、捜索する。
  5. 見つかれば、直ちに掘り起こして救急処置を行う。
[画像:雪崩ビーコン]
雪崩ビーコン

自分が雪崩に巻き込まれた場合

  1. 雪崩の流れの端へ逃げる。
  2. 仲間が巻き込まれないように知らせる。
  3. 身体から荷物を外す。
  4. 雪の中で泳いで浮上するようにする。
  5. 雪が止まりそうになったとき、雪の中での空間を確保できるよう、手で口の前に空間を作る。
  6. 雪の中から、上を歩いている人の声が聞こえる場合があるため、聞こえたら大きな声を出す。

2.除雪中の事故(雪下ろしや雪かき中の事故)

1除雪中にはどのような事故が起こるのか

雪による事故の死者の多くは除雪中の事故によるものです。(平成26年度の大雪による人的被害の約8割が雪下ろし等の除雪中の事故。ただし交通事故を除く。)

除雪中の事故は、自宅など建物の屋根雪下ろしや雪かき等の作業中に発生しており、中でも高齢者の比率が高いことが特徴です。

[画像:屋根雪下ろし][画像:平成26年度 大雪による人的被害の状況]
平成26年度 大雪による人的被害の状況
(注)平成26年11月から平成27年3月31日までの数値のうち、除雪作業中の死者(65人)は全体の死者(83人)の78%
出典:消防庁資料(平成27年4月1日)から抜粋

除雪中の事故はこんなケース、こんな原因で起きています!

雪下ろしの事故の場合、屋根からの転落事故が多く、高齢者や一人での作業中に多く発生しています。

何かあった時に対応できるよう作業は複数人で行うようにしましょう。

くろまる屋根からの転落

雪下ろし中に屋根の上で足がスリップして転落したり、屋根の上の雪が滑り落ちてきてバランスを崩して転落する事故

くろまる屋根からの落雪

軒下で除雪中に落雪で埋まる、落雪が直撃する事故

くろまる水路等への転落

融雪槽に投雪中、槽内に転落する事故(発見までの時間がかかり、死亡に至る例も)

くろまる除雪機の事故

エンジンを止めずに、雪詰まりを取り除こうとして巻き込まれる事故

くろまる除雪作業中に心筋梗塞などを発症

寒い屋外での重労働によって作業中に心肺停止などで倒れる事故

2除雪事故に遭わないために〜除雪中の事故を防ぐためのポイント

除雪中の事故の危険を理解し、安全な対策を講じることが、事故を防ぎます。
また、事故は除雪作業に対する慣れや過信、油断が事故を招いています。除雪作業前に事故防止のポイントを確認しましょう。

[画像:事故防止のポイント]
事故防止のポイント

3.車による雪道での事故

1車による雪道事故はどのような時に発生するのか

降雪時、降雪後には路面の凍結や視程障害(吹雪等による視界不良)による事故に注意が必要です。

こんなときは路面の凍結に注意!

くろまる降雪が1cm以上の時は非常に滑りやすい圧雪に注意!

非常に滑りやすい圧雪(踏み固められた雪)は、ドライバーから見て白く見え、表面のみ凍ってつるつるの光沢ができ、滑りやすい状態です。
圧雪は降雪が1cm以上あり、雪が降った後早い時期(おおよそ24時間以内)に形成されます。

[画像:滑りやすい圧雪道路]
滑りやすい圧雪道路

くろまる前日の最高気温が0°C未満の時はアイスバーンに注意!
アイスバーンは、氷のようになった路面のことで、ドライバーから見て透明又は黒く見え、非常に滑りやすい状態です。前日の最高気温が0°C未満の場合できやすい路面凍結現象です。

くろまる実は滑る!凍って見えなくてもブラックアイスバーンに注意!
ドライバーから見てただの濡れたアスファルトに見えるのですが、実は氷で覆われていて非常に滑る状態です。

この路面状況は、これといって判断する方法がないので、低気温時は「路面が黒く見えたら要注意!」と覚えましょう。
特に、冷え込む夜間や朝方や日陰などは要注意です。

こんなところでは路面の凍結に注意!

くろまる信号交差点

都市部の信号交差点のある箇所では、車が発進や停止を繰り返すことによって、圧雪や凍結路面が摩擦熱で融けて、タイヤとの間に水滴ができるため、路面が非常に滑りやすくなることがあります。

[画像:凍結しやすい都市部の信号交差点]
凍結しやすい都市部の信号交差点

くろまる橋梁(橋げた)

区間橋梁区間ではほかの区間と異なり夜間には橋の下からも熱が奪われるので、路面の温度が低下しやすく、ほかの路面が凍っていなくても橋の上だけは凍結していることがあります。

くろまるトンネルなどの出入口

トンネルなどの出入口は日陰になることが多く、局所的に路面が凍結している場合があります。周囲が雪景色の場合には、トンネルの中と外での明るさが極端に異なることで状況が見えにくくなることを踏まえ、トンネル出入口付近での突然の路面変化に備え、走行には注意しましょう。
このほかにも、局部的に日陰となる区間では長期にわたり雪が残っていたり、融雪水が流れ込みやすい箇所では局所的に路面が凍結することがあります。

視程障害とは

空気中に浮遊物があると、それによって光が散乱・吸収・反射されて減衰するため、私たちの目に届く光の量が少なくなり、周りの景色が見えづらくなります。 これを視程障害といいます。降雪や吹雪によって雪が舞っている場合も同様に視界が悪くなりますが、霧のような小さな水滴とは異なり雪片は目に見えるほど大きいので、その視程障害も少し異なります。

雪による視程障害が起きやすい環境は......

  • 気温が低く、風速が8m/s以上のとき(高い地吹雪が発生しやすい)
  • 道路の雪堤が高くなっているとき(風速が強くないと低い地吹雪が発生しやすい)
  • 大型車が巻き上げる雪煙(降雪直後で道路上に新雪が積もっていると発生しやすい)
  • 周囲が開けた平坦な地形の道路(吹雪を遮る樹木や建物がない平地)
  • 峠区間や急峻地形の道路(特に標高の高い山地では気象の変化も著しく、短い区間でも視程が急変することも)
[画像:視程障害が起きやすい吹雪の中の運転]
視程障害が起きやすい吹雪の中の運転

ホワイトアウトとは...

人間の目が物と周囲を区別して識別できるためには、そのコントラストに差があることも重要です。周囲が白一色となる冬の道路では、道路と景色の区別がつけにくくなるため、実際の視程よりかなり悪く感じることがあります。時にはホワイトアウトと呼ばれ、地吹雪などで視界が真っ白になり、他に何も見えない状態になることがあり注意が必要です。

2雪道での車の事故に遭わないためには〜雪道での運転のポイント〜凍結路面での運転のポイント

くろまる坂道走行

あらかじめ適切なギヤにシフトダウンし、アクセルを一定にしましょう。急ブレーキやシフトダウンは尻振りやスピンを招きます。(下り坂はエンジンブレーキを効かせましょう)

くろまるカーブ走行

カーブの手前で十分に減速してから進入し、カーブ中は控えめな速度を一定に保って走行しましょう。

くろまる ブレーキング

急ブレーキをかけるとタイヤがロックしてグリップを失い止まれません。ブレーキは普段より手前からソフトにじわっと踏んで止めましょう。
(注記)四輪駆動車だからといって過信しないようにしましょう。二輪駆動車に比べ発進や走行の安全性は有利ですが、車の重量が重いためカーブや交差点の手前では十分にスピードを落として走行しましょう。またABS(アンチロック・ブレーキ・システム)がついていても過信しないよう、ABSを作動させずに済むように運転しましょう。

視界の悪い時の運転のテクニック

くろまる吹雪の中での運転はライト点灯、スピードダウン、車間距離!

相手に自分の存在を知らせるため、ライトをつけましょう。前方の車が急に止まるかもしれないので車間距離を十分に取りましょう。

くろまる大型車の雪煙に注意!

トラックなどの大型車が巻き上げる雪煙で視界が悪くなります。すれ違う時や追い越される時はワイパーを早めに作動し、減速しましょう。

くろまる車に雪が付いたら安全な所に止まって落とす

ヘッドライトやテールランプについた雪で、自分の車が相手から見づらくなります。また、ワイパーに付いた雪で拭きが悪くなります。道路から離れた安全な所で雪を落としましょう。

くろまる疲れたり、運転に危険を感じたら休憩を

吹雪の中での運転は緊張の連続です。疲れたり危ないと思ったら道の駅やパーキングエリアなどでゆっくり休みましょう。危険ですの決して路上では止まらないようにしましょう。

アクシデントに対応できる用具を必ず装備しておきましょう

冬道の運転は冬山の登山と同じようなもので、事前の点検・整備と、天候の急変等による様々なアクシデントにも十分対応できるような装備品を必ず装備しておきましょう。

くろまるタイヤチェーン、ジャッキ くろまるブースターケーブル くろまるスノーヘルパー

くろまるスペアタイヤ(冬道用タイヤ) くろまるスコップ くろまる除雪用ブラシ

くろまる防寒具、長靴 くろまる砂・軍手・作業衣類 くろまる毛布 くろまるけん引用ロープ等

4.歩行者の雪道での事故

1歩行者の雪道事故はどのような時に発生するのか〜歩行時の転倒にも注意!滑りやすい場所を知りましょう〜

冬期間は豪雪地帯に限らず、雪が少ない地域でも、積雪・凍結を原因とする転倒災害が多く発生しています。

転倒災害件数は、降雪量にほぼ比例しており、例年1〜3月に集中して発生しています。事故が多く発生している滑りやすい場所を確認しておきましょう。

くろまる横断歩道の白線の上

白線部は、乾いているように見えても薄い氷膜ができて、滑りやすくなっている場合があります。

くろまる車の出入りのある歩道(駐車場の出入口、ガソリンスタンドなど)

出入りする車のタイヤで路面上の氷が磨かれ、非常に滑りやすくなっている場合があります。

くろまるバスやタクシーの乗り場

多くの人で踏み固められて滑りやすくなっている場合があります。乗り場の路面状態を確認しながら歩きましょう。また、歩道と車道との段差にも注意しましょう。

くろまる坂道

坂道は、上るときよりも下るときの方が滑って転びやすく危険です。下るときは特に注意しましょう。

くろまるロードヒーティングの切れ目

ロードヒーティングが切れた所から雪や氷が融けておらず段差ができて、部分的に滑りやすい状態になっていることがありますので、注意しましょう。

2雪道を安全に歩くポイント 〜転びにくい上手な歩き方を知りましょう!

くろまる小さな歩幅で歩きましょう

歩幅を小さくし、そろそろと歩く「ペンギン歩き」が基本です。そうすることにより、体の揺れが小さくなり、転びにくくなります。

くろまる靴の裏全体を路面に付けて歩きましょう

つるつる路面では、体の重心をやや前におき、できるだけ靴の裏全体を路面につける気持ちで歩きましょう。
また、履物は靴底が滑りにくいものを選びましょう。(摩擦係数の高いゴム長靴等)

くろまるその他

転んだときの怪我の予防のために、帽子をかぶる、手袋をするなど、身に着けるものを工夫することも安全対策の一つです。
転びにくい歩き方を知っていても、両手をポケットに入れたまま歩いたり、急いで走ることは危険です。また、飲酒時もバランス感覚が鈍り危険です。
屋根の上の雪や氷が落ちてくることがありますので、足元にも注意が必要ですが、歩く先々の屋根にも目を配り、注意して歩きましょう。特に、暖かい日は要注意です。

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