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金融機構局 総務課 信用政策企画グループ
大学では授業の大半を英語で受講し、1年間の留学を経験しました。英語で自分の意見を正しく伝える難しさと重要性を痛感したことで、公共性の高い日本銀行で海外向けの情報発信に携わりたいと考え、語学専門職を志望しました。
入行後は情報サービス局に配属となり、金融政策関連資料や役員講演、英文年報などの英訳作業を通じて、金融・経済の知識を深めつつ、翻訳の基礎を学びました。入行するまで翻訳の経験はありませんでしたが、景気判断の英訳でよく使われる表現や専門用語に慣れながら、日本銀行の公表物として相応しい英語を作成する力を身に付けました。また、語学職の同僚や様々な関係者と綿密にすり合わせし、完成度の高い公表物へ仕上げていくスキルを高めていきました。
その後、金融政策の企画・立案を担当する企画局へ異動し、金融政策に関する公表文や、先行きの経済・物価情勢を分析した展望レポート等の英訳を担当しました。経済情勢の変化によって日本語原文が刻々と修正される中で、時には作業が長時間に及んだり、公表直前まで修文に追われたりと、プレッシャーを感じることもありましたが、迅速かつ正確に英訳する力が養われました。同時に、金融政策が作られていく過程を間近で見ることで金融政策運営についての理解を深め、視野が広がりました。
最近、金融システムの安定確保に向けた政策を担う金融機構局に異動になり、金融システムレポートや各種公表文、総裁講演等の英訳を担当しています。金融システム関連の文章は、これまで私が触れてきたものとは異なる専門用語が多く用いられているため、関連する背景知識をアップデートするとともに、過去の公表物とも整合的な英語表現を模索していくことが欠かせません。
また、気候変動への対応など中央銀行がカバーする分野が拡大しており、前例のない表現を英訳する必要もあります。そのために、他国の中央銀行のレポートなどを読み込み、どのような英語表現が使われているかを日頃から調査しています。日本語原文を、日本語の本意を損なわず、同時にグローバルに通用する英語表現へと昇華させられるよう、一語一語緻密に翻訳していく過程に面白さとやりがいを感じています。
入行以来、翻訳の仕事に携わってきましたが、日本銀行の英文公表物は多岐に亘ります。将来は、様々な分野で英訳のスペシャリストとして頼られる存在になりたいと考えています。
日本銀行に期待される役割は年々広がり、情勢の変化に対応した情報発信が不可欠です。例えば、感染症の拡大を受けた政策対応では、他中銀の表現も参考にしつつ、対外公表文の英語版を迅速に作成することが求められました。このような状況の変化にも柔軟に対応できるよう、日頃から自己研鑽に努めていきたいです。
また近年、AIを用いた機械翻訳が急速に発展しています。日本語の文章を意味が通るように英訳するだけであれば、AI翻訳で事足ります。しかし、日本銀行の公表物は、英語として自然であるだけでは不十分です。日本語の微妙なニュアンスが正しく捉えられているか、過去の公表物の表現と一貫性があるか等、細部にわたるまでその正確性を担保しなければなりません。こうした意味で、非常に高い専門的な知見が求められていると感じています。今後も専門性を高め、日本銀行の英文情報発信の一層の充実に貢献していきたいと考えています。