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金融市場局 総務課 市場統計グループ
私は、日本経済や地域経済の発展に関心を持ち、大学・大学院では企業の競争戦略論や経営管理を学んでいました。そこでは、一企業や産業の成長に焦点をあてていましたが、金融政策や金融インフラを通じて企業や個人の金融経済活動を支える業務に携わることで、日本の成長に資する仕事をしたいと思い、日本銀行を志望しました。
成長を実感した業務は、レポ取引に関する高粒度データを収集し、そのデータを用いた新しい統計の企画・分析等を担当したことです。ここで、高粒度データとは、取引1件毎の報告者や取引相手、取引レート、債券種類等の詳細なデータを指し、一般的な市場取引データと比較して、より実態に即した市場動向の把握に有用なものです。このプロジェクトは、金融危機を増幅させる一因となったと指摘されているレポ取引の実態について、国際的な取り組みのもと、各国で粒度の高いデータの整備および活用を行うことを目的としていました。
このプロジェクトを遂行する中では、データ量が膨大かつ多面的なデータを収集するための大規模なシステム開発や、海外中央銀行関係者や金融庁、金融機関等との調整、報告データの精査、情報の秘匿性に考慮しつつ利用者に有益な統計を公表するための検討など、多岐にわたる業務に携わることができました。金融危機の発生から長期に亘り、今なお市場の透明性向上および頑健性向上に向けて国際的な取り組みを進める中央銀行としての使命を感じました。
このほか、スイス(バーゼル)での国際会議に一人で参加した経験や、統計関連学会連合大会での発表(2年連続)といった経験を通じて、学術研究者の方々の観点を取り入れ、自身の分析能力を向上させることができました。こうした仕事以外にも、日々の市場参加者等へのヒアリングや対外公表レポート(「日銀レビュー」)等の作成、海外中央銀行関係者との英語でのディスカッション等、様々な仕事を行う中で、成長を実感しています。
現在は、レポ取引データの収集や統計公表に関する国際的な議論への参加、高粒度データ(レポ取引及び金融庁が収集する店頭デリバティブ取引)に関する分析等を行っています。
高粒度データの処理を迅速に行うために、PythonやR等の統計分析ソフトを用いながらデータを分析しているため、プログラミングの勉強を日々行っています。また、分析の基礎となる計量経済学等に関する本行研修への参加や、外部研究者の方との交流の機会を通して、理論と現実の往復を行うことができ、学びが活かされていると感じています。このほか、レポ取引データの分析結果については、国際会議の場でプレゼンを予定していることもあり、語学研修制度等も活用しながら、英語の勉強に取り組んでいます。
中央銀行員として、企業や個人の金融経済活動を支えることで、日本の成長に資する仕事をしたいという思いは、入行当初から変わっていません。
日本銀行の業務は幅が広く、かつ相互に連関しているため、金融経済情勢の支え方には多様なあり方が考えられますが、企業や個人の国境を超えた活動やデジタライゼーションが拡大するもとで、相互連関性やメカニズムの把握の重要性は増してきていると考えています。
これからも、変化し続けるグローバルな金融経済情勢に対してアンテナを高く保ちながら、現在培っている、金融市場や統計に関する知識、高粒度データの扱い方、プログラミング等の分析スキルを活かし、有益な情報還元を行っていきたいと考えています。